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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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165プレイ目 ヴィスタ

 年末年始はイベントもなく、お年玉の魔物のタマゴが運営から送られて来ただけだった。


「お年玉のタマゴとか、今年も親父ギャグだね」

「1万(リグ)のほうが喜ばれるのにな」

「いまだに1万でも嬉しいとか、インフレする様子がないよなあ」


 クリスマス以降、(もみじ)は王都ヴィスタに滞在していた。

 オーフォロ王国の王都カドマンのダンジョンで薬草系を集めたい気持ちもあるのだが、頼闇(らいあん)がトシュメッツ国とハイレオン帝国のあたりをうろついているのだ。


 まだ会いたくないので、こちらに来る気配がないからと居座っていた。


 今は冒険者組合(ギルド)でクラメンたちとぐだぐだと新年を過ごしているところだ。


「はー、おせち食べたい」

「ヤマト国を解禁してから言えよ」

「頼闇が怒るぞ」

「なんで兎の国を優先しなかったのかな…」

「俺らも西の大陸に行くタイミングを掴み損ねたままだし…」

「そういえば忘れてた」


 行きたいとは思うが、思い出してもさほど熱心に行く気は起きない。完全にタイミングを見失ってどうでも良くなってしまっていた。


 あとリアルの正月ボケもちょっとある。

 三が日は寝正月でゲーム三昧したいが、結局ぐだぐだしているし。


「西の大陸に行きたくなる情報は?」

「カレーはやっぱりライスがなかった…」

「ラーメンに味噌も醤油もなかった…」

「それもないよね、当然…」

「エルフの国は他種族蔑視が酷くて、なんか試練をクリアしないとマトモに相手してもらえないってよ」

「隣のドワーフの国と仲が悪いらしい」


 椛は情報収集していないので初耳情報ばかりだ。だがしかし。


「行きたくならない情報ばっかり…」

「兎の国か?」

「狐の国もあったっけ」

「ランクSの菓子職人がいて、スイーツショップがいくつも並ぶ通りのある国があったらしい」

「初めてときめいた!」

「まあランクSの菓子職人の作った物なんて買えないらしいけど」

「それ以外の店もクオリティと値段が高いってさ」


 椛はどこの国か調べて、そこは必ず行くと誓った。メモも書いておく。

 美味しい食べ物の話は忘れにくいほうだ。


「そういえばキャットテイルはタマゴのドロップ率の前に、主どん並みに素早いし、小さいから余計に攻撃は当たらないし、主どんのような隙も見せないしで阿鼻叫喚」

「魔物界の猫又、容赦ないな…」

「主どんの優しさが効くねえ」


 キャットテイルはしっぽが2本ある以外は猫そっくりな魔物だ。日本のミケとかタマと呼びたくなる野良猫を思い浮かべればだいたい合っているだろう。

 血統書付きの猫ではないほうだ。


 なので去年のお年玉タマゴガチャで当てた人が出て以来、ずっと人気だった。

 ようやくキャットテイルが手に入る!と西の大陸に向かったプレイヤーたちは、容赦ない現実に血の涙を流しているらしい。


 なんでそんな設定にした、運営。


「妖狐にゃんイベントをスルーした層が多いらしいから、キャットテイルを優先してるのにって悔しさ倍増だってさ」

「食い意地の張った狐なのに…」

「あいつの胃袋、マジで底なしだから破産したってアホも見た…」

「逆に自慢げに連れ歩いて、餌は一切与えないドけちも良く見る」

「見た目のせいで可哀想になるんだよな、中身アレなのに」

「ああ、見た見た」


 食べなくても平気な妖怪らしいが、誘惑の多い街の中で召喚しておいて何も与えないとか、性悪狐を超越しすぎだろう。

 椛はフィールドとダンジョン以外では基本的に召喚していない。


「って言うかイベント参加者は貰えたのに、自慢する意味が分からない…」

「貰い損ねた連中が悔しがるからだよ」

「再配布はなさそうだし」

「殺生石の数だけ可能性はある、かもしれない…」


 詳しいことは冒険者ごときには教えられなかったのだ。だが殺生石が残っているのは確実である。

 封印はしたが、封印が解けない確証はないのだ。


 解けて欲しいとは思っていないが。






 ぐだぐだしたまま椛たちが組合の酒場で兎のシチューを食べていると、検証クランのメンバーがやって来た。

 シラベも装備の新調のために今はヴィスタにいるそうだ。


 例の危険度C以上のダンジョンのボスしかドロップしない加工素材が理由だ。


 検証クランの者たちは椛たちの近くのテーブルに着いて、本日のおすすめの兎のシチューを頼んで持って来る。セルフサービスなのでカウンターでもらって自分で運ぶシステムだ。


「これ、レベル70あたりで行き詰まってる攻略組にも必要な情報な気がするんだ…」

「その辺は任せた」

「装備の強化的な意味で?」

「格上と戦う装備の情報としてだよ。ボク達でも装備の性能で危険度Cが攻略できてるんだよ。レベル上げにも応用できるよ」


 検証クランの実力は知らないが、レベル上げにも使えるのはそうだろう。


「あー、また戦いにくくなる前に主どん素材を集めないと!」

「1日2回しか戦えないの、絶対わざとだよな」


 主どんは素材が優秀で、MP回復ポーションの番人で、とにかくずっと戦う相手である。

 上位素材がどこかにあるかもしれないが、まだ見つかっていないようだし。


「流したほうが良い情報だけど、殺到するからね…一時占拠して怒らせてたのに」

「罪作りな主どん…」


 殺到する前にアンセムに戻るのは決定した。椛の主どん素材はだいぶ足りない。

 夜香花(やこうか)も集めてからカドマンに行きたい。


「とりあえず属性耐性が80%もあれば、かなり上げやすくなる計算で、危険度Cは行かなくても…」

「主どん素材、魔法には激弱なピーキー君だよ…耐性100は必須じゃね?」

「…ああ!そこ忘れてた!」

「無属性魔法には気をつけろよ」


 デメリットが高いから許された性能である。それを踏み倒す装備は必須だ。


 その組み合わせの情報こそが肝だろう。


 シラベは仲間に「だから危険度Cを回ってるんだろ」と言われてうなだれていた。

 誰にでもうっかりはある。椛は人よりうっかりが多いので、心から同情した。


「あ、加工素材のほうは試したの?」

「いくつか作って鍛冶師に確認したよ。基本素材になるから数は必要ないけど、強化率は10%以上になりそうだから誤差とは言えないね」

「革鎧派はどうしたら」

「布のローブ派も金属鎧を羨むよ」


 他の強化方法も欲しいくらいだが、こうも考えられる。

 回避できない奴は防御上げとけ、被ダメが増すぜ。


「回避ガンバレってことか…」

「最初の主どんからその方向性を感じるね」


 タンクを軽視しているということではない。

 だから金属限定の加工素材があるのだろう。防御力増強のために。


 タンク以外は回避しろと言っているだけだ。


「見つけてないだけかもしれないけどね。あ、東の海のカニは?」

「進展なし。まだ椛がランスロット様に頼めば進むのに!って言ってるらしいから、むしろ現実を突きつけたほうが良いんじゃないかな…」

「ランスロット様は聖女様でもなければ動かないし、皇帝陛下の許可なく軍は動かせないと思う…」

「ランスロット様が進言したって進む話じゃないよね」

「あいつ、しばらく兎の国に行くべきじゃね?」

「ぜひ行って欲しい」


 そして正気に戻って欲しい。

 いろいろと世話になったから我慢しているが、椛は気が長いほうではないのだ。


「レンツのゴースト老人のクエストは順調だから、それでトシュメッツ国の状況に変化があればって感じになって来た。他にアテがないだけとも言うけど」

「何もないよりいいよ」

「地味とかお使い系のサブクエって言って見向きもしないから静かだし」


 メインシナリオを進めてドヤりたい連中には不人気だった。派手に話題になりたいだけで、内容を理解してないし。


「あの話が通じない判定受けてた連中がいないなら、平和だね」

「最近オネエ言葉の人が話が通じない判定なんだけどね…」


 邪魔をしたりはさすがにないらしいが、そちらの担当の検証メンバーはげんなりしているそうだ。


 クラメン一同、謝罪しておいたのだった。






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― 新着の感想 ―
メモも書いておく。(但し忘れる) 美味しい食べ物の話は忘れにくいほうだ。(忘れないとは言ってない)
まあさくさく進みすぎるのもMMOらしくないか
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