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202 妾の能力を見た瞬間が最後よな

【妾の能力を見た瞬間が最後よな】をお送りします。


宜しくお願い致します。

 「その様な者が、五十万近くの軍を率いている……大丈夫なのか? 我らの倍だぞ? 」

 アメン将軍がナイアス大陸南方域の広域地図に、【蒼炎の軍】の駒を置く。兵士五万を一駒として、十個置く。



「その強さこそが、付け入る隙となります。この世界は魔法技術の使用が、私のいた現世よりも盛んです。それを鑑みても、我らの銃士部隊を考えれば、我らの方が有利。このナイアス大陸で銃の技術を持っている軍は、我ら【白銀の軍】と【黒龍の軍】のみです」



「だが、奴らとて間者や使い魔を介して見聞きし、入手もしているだろう? 」



「銃の事は見た事がある。扱ってもいる。だけど、実際に戦で使った経験も、使われた経験も無い。だからその優位性を最大限に利用します」



「銃を知っていると言う事と、実際に理解していると言う事は違うか……」



「当時のモンゴル軍は、爆薬の知識は持っていますが、銃と呼ばれる物が出現する三百年前の話しです」

 ヒロトは、ヴァイアの街から北上したライアット公国国境地帯に、駒を四つ置く。



「奴らの主力は騎馬です。それさえ動きを止めれば、何とかなる。まず、馬防柵をさらに広範囲に構築。同時に塹壕も掘ります。これは【災厄の渦】の大軍を止める際にも有効でした。同じ物を後方のヴァイアの街周辺にも構築させています」



「伝令!! 」

 息を切らせて、伝令兵が飛び込んでくる。


「敵勢力は軍勢を三隊に分けて移動を開始しました」

 それを聞いたヒロトの口元に笑みが浮かんだ事を、ライラックだけが見逃さなかった。




◆◇◆




 クザン渓谷の中ほどで始まった【黒龍の軍】と【紅蓮の軍】との戦闘は、【黒龍の軍】の優勢で始まった。黒龍の軍第二軍は、【四聖獣】と呼称する召喚者四名を全面に押し出し、紅蓮の軍先方部隊を押し退けた。

 その最も凄まじい戦闘能力を発揮したのは、最後に登場した【朱雀】と呼ばれた妖艶な女で、夜会の舞踏会にでも登場した面持ちで、優雅に敵先方部隊の中ほどに入って行った。



「妾の能力を見た瞬間が最後よな」

 くっくくっと、笑いを堪える仕草は成熟した女性と、まだあどけない少女の狭間を行き来する様な、そんな印象を与える。その表情に見惚れる敵兵士がいるほどだ。

 朱雀の右手に、いつの間にか呪符が数枚握られている。その呪符をおもむろに放り投げた。



「オン キリキリハッタ ウンハッタ 誘え! 地獄への扉へ! 」

 放り投げた呪符が形を変えて巨大化し、現れた物に周りの兵士達は唖然とした。そこには巨大な蜘蛛の化け物達が溢れ出たのだ。



「我が式蜘蛛破邪方陣は破れはせぬぞ! さあ! 逃げ惑え! 」

 一斉に巨大蜘蛛が紅蓮の軍の先方部隊に襲いかかった。魔導部隊が火炎魔法で応戦するが、数が少な過ぎた。巨大蜘蛛は、あろう事か、兵士達を捕獲し、そして喰った! 巨大な前足で兵士を抑え込み、そして巨大な(アギト)で、兵士に喰らいつく。前線が崩壊して、紅蓮の軍先方は逃げ惑い、遁走を始めた。




「あ〜あ、もう終わりかな? 全軍、さらに前進! 残敵を掃討しつつ、中程の盆地を取るよ! 」

 カズキは手を叩きながら指示を出す。

 前進を始めた黒龍の軍が、クザン渓谷の中ほどにある盆地に到達し、軍の大半が中に入った頃に、辺りに濃い霧が立ち込めて来た。

 身体に纏わりつくほど水分量の多い霧だ。

 最初に異変を感知したのは、玄武だった。



「……なんだ? 霧に微かな呪力が混ざっている……残穢か? いや違う……これは伝え効く原初の呪力……【神仙力】か?? だがこの様な失われた力が、何故この異界に? 」

 軍の先方が、盆地からクザン渓谷の北側への出口に向かう。そして出口を潜った瞬間に違和感が襲いかかって来た。



「?! な? 」

 出口を出たと思ったら、そこは入口だった、盆地へと入った東側の入口に、あろう事か、軍の先方がそこに……



「ば、馬鹿な?! 元に戻った?! 」

 




 

【妾の能力を見た瞬間が最後よな】をお送りしました。


(映画【リバーランド・スルーイット】を観ながら)


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