203 神仙術奇門遁甲
【神仙術奇門遁甲】をお送りします。
宜しくお願い致します。
「南の出口から潜ってみろ! 」
クラビスは直ぐに指示を出す。何が起こっているのか?
兵士が数人、南の出口をくぐると、また東の入口から盆地の内側に入って来る。
「幻術?! 」
カズキは朱雀と眼を合わせた。
「……幻術では無いな。空間を捻じ曲げられているこれは……」
思い当たる事はあるが、そんな事があり得るのか?
「神仙術……奇門遁甲……」
玄武が呟く。
「馬鹿な……平安の時代に失われた術だ。それに神仙術など……」
朱雀は頭を振る。
「そう……我らの太祖が行方不明になり、その術は絶えた。現代に残る奇門遁甲の術は、奇門遁甲であって、奇門遁甲でない」
玄武は地面に何やら紋様を描き始める。
「奇門遁甲って、あれだろ? たしか幻術で人を惑わせて前に進めなくする」
カズキはそれぐらい知ってるという顔だ。
「それは鎌倉以降の陰陽師が生み出したコピーでしかない。呪力を使っての幻術……だがこれは日本に陰陽の術が生まれる前の、古代中国で生み出された神仙力を使った奇門遁甲のオリジナルだ。その術を中国で学び、我ら太祖は光の力、陽の力である神仙力と、闇の力、陰の力である呪力を混ぜ合わせた最強の陰陽奇門遁甲を生み出した……だがその太祖が行方不明になり、その術は失われ、後世の陰陽師はその術を真似て似たものを作ったのだ」
玄武はさらに、複雑な紋様を描く。
「同じ陰陽師でも再現できなかった? 」
「本当の意味で、陽の力と、陰の力を混ぜ合わせて使用出来たのは太祖だけだった。陽の力とは、宇宙において膨張する力。広がる力だ。それに対して陰の力は、収縮する力。どんどん縮まり、最後にはブラックホールとなる力。そんな相反する力を混ぜ合わせるのだから、その反発は想像を絶する。我ら【土御門一門】が探している太祖の残された書物もこれに関係する」
「オリジナルは、幻術で惑わせるのではなく、実際に空間を捻じ曲げ操作する術だ。このままだと、我らは出られぬぞ」
朱雀も玄武が描く紋様に、書き足してゆく。
「古代中国、炎帝神農の血を引く蚩尤は、ときの支配者である黄帝に対して反乱を起こした。その際に蚩尤を封じる為に天帝より授かった術が真伝奇門遁甲。その後、神々が住まう崑崙山にて書物として残された。それから二千年後、崑崙山で修行する道士である太公望にその書物が伝わり、周の軍師となって、殷と戦う際に使用したのが、神仙術奇門遁甲。さらに春秋戦国時代を経て、秦、そして漢へと伝わった」
玄武はさらに紋様を書き足してゆく。
「そんな物を使うって事は、紅蓮の軍の召喚者だな。どうすんだ? 」
クラビスは地面に座り込んで、アサルトライフルを布で磨き出した。
「この術に、我らが構築した【羅生門】とを繋げる。だがこの作業に時間がかかる。それまでは耐えろ! もうそろそろ来るぞ」
朱雀は妖艶な笑みを浮かべる。妙に嬉しそうだ。
「来るって……何が来るってんだよ? 」
それは、その時起こった。
北側の出口から這い出したそれは、真っ直ぐに【黒龍の軍】に襲いかかって来た。それは目と鼻が無い口だけの真っ白な顔、全身も白く、そして手も地面について、四足歩行で這い回る人の様な化け物。それが大量に湧き出してくる。
「な、なんだありゃ?? 」
クラビスはアサルトライラを構え、迷いも無く引き金を引いた。
連続した発射音が響き渡り、先頭を走る化け物の頭部が、次々と炸裂して行く。
「魑魅魍魎の類いだな。魂の無い、穢れで出来た化け物だ」
だがそんな事を言う朱雀は嬉しそうだ。
「くそ! さっさとこの術を破りやがれ! 」
クラビスは悪態をつきながらでも、その射撃の腕は正確だった。
そんなクラビスを眺めなが、ゆっくりと立ち上がったカズキは、溢れ出る化け物の中心に向かって、ゆっくりと手を翳す。
「爆ぜろ!! 」
その一言で、空間が爆裂した。だがその規模は、通常の爆裂魔法の数十倍の威力の衝撃波を炸裂させた。
その爆風をものともせずに、白虎と青龍が凄じい攻撃力を発揮して、次々と化け物を薙ぎ倒す。
「きりが無い! まだ術を破れねーかよ!! 」
そんな焦りを滲ませるクラビスは、だがその正確な射撃に狂いは無い。それに時折、弾丸があり得ない角度に曲がって化け物に着弾する。
「あと、少し、だ! もう少し! 」
玄武が最後の書き込みに入った。
【神仙術奇門遁甲】をお送りしました。
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(映画【鋼鉄城のカバネリ】観ながら)




