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第81話 手紙と関節技

ガルファットが王子様と友達になった頃、ファーリン家には一通の手紙が届いていた。


「ジーク様!シルビア様!」


フィーネが慌てて私とジークの元へ走ってきた。


この子がこんなに慌てるなんて、何かあったのかしら?


「どうしたの?そんなに慌てて」


私が尋ねると、フィーネは息を切らせながら一通の手紙を私とジークに見せてきた。


ジークはその手紙をフィーネから受け取ると、差出人の名前を確認した。


「これ・・・ガルからの手紙か」


ジークが呟くと、フィーネは嬉しそうに頷いた。


「はい!さっき確認したら届いてました!」


フィーネが早く読んでほしいという眼でジークを見つめている。


ジークもそれを察したのか、封筒を切って中から手紙を取り出す。


そして、文章を確認すると声に出して読み始めた。


「皆へ、元気にしていますか?僕とロミアは元気です」


「フフッ、なんだかおかしいわね」


「そうですね、手紙を書き慣れていないからですかね。

文章がぎこちないです」


私とフィーネは二人して笑った。


こういう身内からの、しかも息子からの手紙はなんだか新鮮で楽しいわね。


「まず、手紙を出すのが遅くなってすみません。

色々報告したい事はありますが、優先順位の高いものから書いていきたいと思います。

初めに、魔法学校の入学試験には無事に二人とも合格しました。

少し不安でしたが、合格発表で名前を呼ばれた時には心の底から嬉しかったです」


「良かった!無事に合格できたんですね!」


フィーネが嬉しそうに笑った。


本当にこの子は、ガルの事になると自分の事のように喜ぶんだから。


でも、正直私もホッとした。


合格できるって信じていても、やっぱり報告が来るまでは不安になるわね。


「次に、オリビアさんに会いました」


「ん?オリビアさん?」


首を傾げるフィーネに私が軽く説明した。


「オリビアは私の妹よ。

最後に会ったのはもう十何年前ね」


「シルビア様妹様がいらっしゃったんですか!?」


そういえば、フィーネには言ったこと無かったわね。


もしかしたら、ガルがオリビアと会っていなかったら一生言わなかったかもしれないわね、


「えぇ、少し生意気だったけど可愛い子だったわよ。

今頃、元気にしているかしら」


「ガルの手紙によると元気らしいぞ。

あと、王位継承の話されたけどめんどくさいから断ったと」


「あの子らしいわね。

血は争えないのかしら」


「あの、シルビア様。

王位継承というのは?」


私が笑っていると、フィーネが尋ねてきた。


「王位継承っていうのは言葉どおり、その国の王様になるってことよ。

私も言われた事あるけど、めんどくさいから断ったわ」


「めんどくさいで王様になるの断ったんですか!?」


「だって、本当にめんどくさいわよ?

それに私は別に国民全員が幸せじゃなくても、自分の大切な人たちが幸せならそれでいいのよ」


私がそう言うと、フィーネは「そうですか・・・」と少ししょんぼりしながら言った。


フィーネ、あなたもちゃんと私の大切な人達の中に入っているわよ。


「まぁ、ガルはまだしもシルビアが王になったら国が滅びかねないしな」


「あなた、それはどういう意味かしら?」


私が笑顔で尋ねると、ジークは手紙に視線を移した。


「手紙読むの再開するぞー」


あ、逃げた。


「えーっと、次に色々な友達が出来ました」


「ガルファット様、ちゃんとお友達を作られているんですね」


「みたいだな。

何か色々書いてあるぞ。

少し頼りないけどいざって時はカッコいい人、暴力的だけどしっかり者で自分の意見を言ってくれる子、人見知りだけど頭の良いエルフの子」


「本当に色々な子がいますね」


「そうね、あの子ロミアちゃん以外に友達って枠の子がいなかったから少し心配してたけど、ちゃんと友達が出来ているようで安心したわ」


学校や知らない町で作った友達はいざっていう時助けてくれるから、絶対に作っておいた方がいいし。


「あと、先輩で人柄の良い・・・」


あら、人柄の良い先輩が友達なんて羨ましいわね。


「変態紳士も友達になりました」


『変態紳士!?』


全然羨ましくなかったわ!


「なんですか!?変態紳士って!」


「なんか手紙には四六時中頭の中ピンク色の一角族の奴だって書いてあるな。

ただ、言動や立ち振舞いは紳士的だから変態ではなく変態紳士らしい」


「ものすごく危ない匂いがする人ですね」


「ガルはともかくロミアちゃんが心配ね」


私とフィーネが心配していると、ジークが少し笑いながら言った。


「それは心配ないみたいだぞ。

手紙に変態紳士は成人以上の女性しか恋愛対象じゃないため、ロミアは危なくないですって書いてある」


「あの子もそこはちゃんと気にしていたのね」


「考えてみれば、ガルファット様が何も考えずにそんな危ない人と友達になるはずないですもんね」


それにしても、あの子の周りは癖の強い子ばかり集まるわね。


誰に似たんだか。


「あとは、町や学校で起こった出来事がチラホラ書いてあって終わりだな。

まぁ、まとめると元気にやっているってとこだな」


「何はともあれ、お元気そうで良かったです」


「そうね、学校で何か問題起こして先生たちに迷惑とかかけてなければいいけど」


「シルビアの血が入っているからな、心配だ」


「あなた、それは聞捨てなりませんよ?」


私はそう言って、笑顔でジークに歩み寄る。


すると、ジークが逃げ始めたので私はそれを追いかけた。


リビングの中をグルグル走りながら回っている状態になった。


「だってお前必ず一日に一回喧嘩してただろ!」


「あれはイジメられている子を助ける為です!」


「俺が何回学校に頭下げに行ったと思ってるんだよ!

あれは絶対護衛騎士の仕事じゃなかっただろ!」


「でもあなただって帰るときに必ず、イジメられている子を助けるのはいいことだ。

もっとやれって言ってたじゃないですか!」


「だからって他に頭を使う解決方法があっただろ!

何でいつも真正面から拳で会話するんだよ!

言葉で会話しろよ!」


「仕方ないじゃないですか!

現場を見たら、言葉より先に手が出るんですから!」


「さっきの変態紳士よりお前の方がよっぽど危険人物じゃねぇか!」


「なんですってー!!」


私はジークを捕まえて、その場で前にクレアに教えてもらった関節技をかけた。


「お前いつの間にこんな技を!?」


「前にクレアにあなたを捕まえるのに使える技があったら、使いたいってお願いしてこっそり教えてもらってたんです」


「クソッ!しかもかなり本格的じゃねぇか!

関節外れるぞ!」


「大丈夫ですよ、外れた後の関節の戻しかたも教わりましたから」


「何で最初から外す気マンマンなんだよ!

ギャー!」


私がジークの関節を外そうとしていると、外から声が聞こえてきた。


「たーいーちょー!!!」


「シルビア!ストップ!外から声が聞こえる!」


「私にはあなたの声しか聞こえませんよ?」


「怖いこと言うなよ!

いやそうじゃなくて本当に外から叫び声が聞こえるんだよ!」


「シルビア様、ジーク様のおっしゃられるように外からどなたかの声が聞こえます」


フィーネに肩を叩かれて私はジークにかけていた関節技を解いた。


「本当に?」


「はい、しかもどんどん近づいてきています」


フィーネの言葉を信じて、私は耳を澄ませてみた。


「たーいーちょー!!たー!いー!ちょー!

たいちょー!たいちょー!」


コンコンコンコン!コンコンコンコン!


その声は玄関のほうから聞こえていて、ものすごい大きめのノック音と共に聞こえてくる。


「まったく、騒がしいな。

一体誰だ?」


ジークはそう言うと、腰を上げて玄関の方へ歩いて行く。


私とフィーネもその後に付いていく。


玄関の前へ行くと、叫び声とノック音はいっそう大きく聞こえた。


「ハイハイ、今開けるよ」


そう言って、ジークが扉を開けると見覚えのある人物が飛び込んできた。


「たいちょー!」


「ぶわぁっ!?」


ジークはその人物に抱きつかれる形になり、床に倒れた。


「レオナルドさん!?どうしたんですか!?」


フィーネが慌てて声をかける。


そうジークに抱きついてきたのは、半べそをかいているレオナルドだった。


「たいちょー!」


「あーもう!暑苦しい!

一回離れろ!」


そう言うと、ジークはレオナルドを無理矢理引き剥がした。


「よう、邪魔するよ」


そう言う声が聞こえ扉の方を見ると、カリアが苦笑いしながらこちらに顔を覗かせていた。


「カリア、レオナルドさんどうしたの?」


私が尋ねると、カリアは懐から一通の手紙を取り出した。


「実はさっきこの手紙が届いていてね。

まぁ、とりあえず読んでみてくれよ」


私はカリアからそれを受け取り、文を確認する。


・・・ロミアちゃんからの手紙のようね。


でも、別におかしなところは無いわね。


「別に変なところはないんじゃない?

むしろ、七歳でお仕事の手伝いしたなんてスゴイ事よ?」


私がそう言うと、カリアは笑いながら手紙の下のほうを指差した。


「いやぁ、私とレオもその辺りは誇らしいし嬉しかったりしたんだけどさ。

問題はこの文」


「ん?えっと・・・」


私はカリアの指を差した部分の文章を読んだ。


「そういえば、パパとママに質問なんだけど処女って何?」


・・・!?!?!?


「・・・フッ、ハッハッハッハッハッハッ!」


ジークがお腹を抱えて大声で笑った。


「隊長!笑いごとじゃないですよ!」


「だって、おま、最初普通だったのに急にあんなの来たら、ハッハッハッ」


「だから心配になるんじゃないですか!

親元離れた娘から来た最初の手紙にあんな事書いてあったら!」


お腹を抱えて涙を流しながら笑っているジークと、そんなジークに涙を流しながら怒るレオナルド。


よくわからない絵になっている。


「まぁまぁ、レオナルドさんの気持ちも分かりますけど逆に変な知識を自分でつけられるより、ちゃんと親に訊いてくるなんて信頼されている証拠ですよ」


「それはそうかもしれませんけど・・・」


「それにロミアちゃんも色々な事に興味を持ち始める歳ですし、ちゃんとした答えを教えてあげれば大丈夫ですよ」


私とフィーネが言うと、レオナルドも少し落着き始めた。


「ハッハッ、ハァー面白かった。

それでレオ、カリア、お前たちこの質問になんて返すんだ?」


やっと笑い終えたジークが二人に尋ねる。


「うーん、私はあんまりはぐらかしたりしても良くないと思っているんだけど」


「どんな風に言うの?」


「男の○○○を女の○○○に入れた時に・・・」


「直接的すぎませんか!?」


カリアの言葉を、フィーネが咄嗟に遮った。


たしかに、今のはさすがに表現が危ないわね。


「カリア、あなたが飾りっけがなかったりサバサバしているのはいつもの事だけど、さすがにそれはダメだと思うわよ」


「まぁ、七歳の子どもに言うような言葉じゃないな」


私とジークが苦笑いしながら言うと、カリアが首を傾げた。


「そうかな?これくらいが良いと思うけどなぁ」


「と、うちの妻だと加減が出来ないので皆さんの知恵をお借りしたいです」


レオナルドが申し訳なさそうに頭を下げる。


たしかに、こういうデリケートな問題はカリアには向かないわね。


「そう言われてもな、どこまでを教えれば良いか悩み所だな」


「ロミアちゃんはまだ七歳だし、そこまで詳しく言わなくても良いんじゃないかしら?」


「でも、あまり離れすぎた答えでもダメですよね?

難しいです」


その後、何個か意見が出たがどれもイマイチだったので却下になり再度悩んでいると、ふとフィーネが一つの提案をした。


「なら、こんなのはどうですか?」


と、フィーネが自分の考えた意見を言うと全員が「それだー!」と言って満場一致になった。


最終的にファーリン家とサダージュ家の知恵を絞った結果、処女とは“女の子が大人になった時に本当に好きな男の子にあげる大切な物”という、少しロマンチックな答えになった。

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