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第77 近況と愛深き種族

魔法学校に入学して、一週間が経過した。


特に大きな事件なども無く、一応は平穏な日常を過ごせている。


といっても、何も無かった訳ではない。


まず、俺はというと光と闇の魔法の授業を重点的に受けている。


今まであまり触れてこなかったというのもあり、なかなか新鮮で面白い。


攻撃系の魔法もそうでない魔法も、光と闇は使えると楽しいものばかりだ。


授業が無い時は皆で話したり図書室で読書をしている。


ちなみに、今ハマっている本はバーデン・アリソンの実体験を元にした冒険ものだ。


迷宮、俗にいうダンジョンの話しなどが主でこれが結構面白い。


まぁ、俺はこんなものかな。


あとは、朝の修行は欠かさず続けていることくらいか。


さて、他の三人はというと。


まずロミアだが、治癒魔法の上級の魔法をいくつか覚えたらしい。


本人もかなり嬉しかったらしく


「これでガルの手足が切れてもくっつけられるね!」


と、笑顔で言っていた。


・・・本人的には別に深い意味は無いのだろうけど、実際にそんな事になるのは嫌なので実現しないことを祈ろう。


あとは、食堂のメニューに一部ロミアの考案したメニューが載ったことくらいだろうか。


あの時は本当に驚いた。


ある日昼飯食いに行ったら、食堂のおばちゃん数人が体調不良で休みだったらしくて厨房が大忙しになっていた。


そしたら、一緒に行ったロミアが自分が手伝うって言って厨房の中に入っていってものの見事に忙しい昼の時間を乗り越えた。


まぁ、それだけならすごかったなぁってだけの話なんだが本題はここからだ。


さすがのロミアも食堂のメニュー全部を把握しているわけもなく、自分の知らない料理を作ることになった時何種類かオリジナルの料理を作って提供したらしい。


普通だったら許されないのだが、その時の料理があまりに美味しくて生徒達の間で爆発的に人気になった。


しかもどの料理も、作るのが難しくなく、一般的な食材で作れて材料費も安く、所要時間も短く、なにしろ美味いというメニューに載せる条件をすべてクリアしたものだった。


ということで、その日のうちにロミアがレシピをメモして食堂の料理長に渡してメニュー化されたのだ。


もはや生徒達の間ではロミアは一生徒から、凄腕の食堂のおばちゃんという認識になっていそうだ。


さて、次はシガラだが。


シガラはコツコツと地道に授業を受けて魔法を習得している。


入学試験の時の魔法も練習を積んでいて、徐々にではあるが射撃精度が上がってきている気がする。


将来は凄腕の暗殺者とかになりそうだな。


まぁ、シガラの性格上無いだろうけど。


あとは、本人の希望していた軍略や集団戦術の授業もちゃんと受けているらしい。


無いとは思うが、もし俺たちが戦わなきゃいけない時があったら司令塔はシガラだな。


俺は一対一は慣れてるけど集団戦は慣れてないし、ロミアは作戦とかは考えない方だし。


・・・司令塔兼暗殺者とか凄すぎだな。


最後はヘレナだが、あいつも基礎的な事から学んでいるらしい。


ただ、一応は座学での知識もあるから魔法の習得は他と比べて早いみたいだ。


まぁ、これには他にも理由があって、実は少し前からシガラがヘレナに個人的に魔法を教えている。


ヘレナは最初魔法を使うのが苦手だった。


座学の知識があるとはいえ、やはり実際に使ってみると感覚的な物は想像とは全然違っていたのだ。


そこで、俺とロミアでシガラにヘレナの個人指導をするのを勧めた。


シガラは最初戸惑っていたが、ヘレナは詠唱ありで魔法を使うから無詠唱の俺とロミアじゃ教えられないというのを理由に最終的には押しきった。


まぁ、ラッキーな事にシガラの教え方も上手いらしくヘレナの実力は向上中だ。


放課後に、よく二人っきりで個人練習をしている。


もちろん魔法のだ、子作りではないぞ。


と、近況は大体これくらいかな。


で、そんな近況を思い出しながら何をしているかというと


「はぁ~、美味い」


四人で昼飯を食べていた。


最近はもうこのメンツで飯を食べるのが当たり前になってきているな。


「そういえば、僕は午後授業はないけど皆はある?」


俺の隣で飯を食べているシガラが尋ねてくる。


「俺も午後はなし」


「私も」


「私もないです」


俺に続いて、向かいの席で飯を食べているロミアとヘレナも無いらしい。


なるほど、今日は全員午後はオフか。


俺は今日も図書室で読書するかな。


俺がそんな事を考えていると、誰かが隣に座ってきた。


何となくその人物を見た。


「あっ・・・」


思わず声が漏れた。


「ん?君は・・・」


相手も俺の事を思い出したのだろう。


俺の顔をじっと見つめている。


「あぁ、思い出しました。

前に道を訊いてきた子ですね」


そう、俺の隣に座ってきたのは前に道を教えてくれたイケメンだった。


イケメンは俺の事を思い出すと、笑顔になった。


「あの時はありがとうございました。

おかげで、迷わずに寮に辿り着けました」


「それは良かった」


イケメンは相変わらず俺に微笑みかけている。


あのウィリアムってやつもこれくらい愛想良ければ良いのにな。


「ガル、その人知り合い?」


俺は尋ねられて、ロミアの方を見る。


「あぁ、前に道わからなくて教えもらったんだ。

えっと、名前は・・・」


あ、名前は知らないんだ。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。

私の名前はイヴァン・ビレドル。

見ての通り、一角族です」


「僕はガルファット・ファーリンです。

後ろにいるのがシガラ、その向かい側に座っているのがヘレナ、そしてその前に座っているのがロミアです」


俺が皆の名前をイヴァンは皆の顔を順番に見た。


「なるほど、君を含めた皆も私と同じく特別生なのですね」


「ん?私と同じく?」


俺はイヴァンの言葉に疑問を持ち、イヴァンの制服を見た。


すると、その制服は俺たちと同じ白色の制服だった。


前に会ったときは全然気がつかなかったな。


「イヴァン先輩も特別生なんですね。

でも、たしか前のホームルームの時にいませんでしたよね?」


「あの日は朝から体調を崩していて、休んでいたんです。

ところで、見た感じ皆一年生ですかね?」


「はい、そうです」


「この学校の屋上には、もう行きましたか?」


「屋上、ですか?」


俺は三人の方を見る。


すると、三人は同時に首を横に振った。


どうやら、俺を含め全員行ったことはないらしい。


「いえ、行ったことないですね」


「あそこから見る景色はとても良い所ですよ。

よかったら、午後にでも案内しましょうか?」


へぇ、そんなに良いところなのか。


俺は再度、三人の顔を見た。


「俺は行くけど、皆はどうする?」


俺が尋ねると、三人は同時に言った。


『行く』


決まりだな。


「それじゃあ、案内お願いできますか?」


「えぇ、もちろん」


その後昼飯を食べ終わった俺達は、イヴァンの案内で屋上へと行った。








「わー!キレイ!」


ロミアが目を輝かせながら、鉄柵越しに景色を眺める。


たしかに、屋上から見た景色は高い建物が他に無いおかげか周りの景色を一望できて壮大だ。


「うぅ、高い」


ロミアの隣でヘレナが下を見てプルプル震えている。


「ヘレナちゃん大丈夫?」


ヘレナの隣で同じく景色を見ていたシガラが声をかける。


すると、ヘレナはシガラの制服の袖をギュッと握りしめた。


「た、高いところは苦手です」


「大丈夫だよ、柵が落ちでもしない限り僕たちも落ちることはないから」


シガラは笑顔でヘレナに言ったが、ヘレナはその言葉を聞いてプルプル度が増した。


シガラはヘレナに対して無意識にSなのだろうか。


「気に入ってもらえましたか?」


背後からイヴァンの声が聞こえる。


「はい、こんなに景色が良いんですね。

知りませんでした」


俺が答えると、イヴァンも鉄柵へ近付き前を見た。


「他に来る人がほとんどいない場所ですからね。

とても良いところなのにもったいないです」


「そうですね、昼寝とかしたら気持ち良さそうです」


「それは良いですね、良い夢が見れそうだ」


俺の隣でイヴァンが笑う。


どうやら悪い人ではなさそうだな。


ちょっと警戒してたけど、大丈夫か。


「もっとも、そちらの二人のお嬢さんは景色の他にも気になっている物がありそうですね」


「え?」


笑顔でそう言ったイヴァンの視線の先を見ると、そこにはこちらを見るロミアとヘレナの姿があった。


いや、正確に言えばロミアとヘレナの視線はイヴァンの顔へと向けられていた。


「私の角が、気になるかな?」


「あ、えっ、えっと・・・」


ロミアとヘレナの二人が指摘されて、オドオドしている。


なるほど、角を見ていたのか。


「良かったら、触ってみますか?」


そう言うと、イヴァンは自分の角に巻いていた包帯をスルスルとほどいた。


そこから姿を見せたのは、一本の神々しい角だった。


別に光輝いているとかそういう訳ではない。


だが、その角の存在感はすごいものがある。


「どうぞ、触ってみてください」


そう言って、イヴァンはしゃがんだ。


それを見て、ロミアとヘレナは恐る恐る近づいて角を撫でるように触った。


「すごい・・・立派だね」


「うん、思ってたより太いし、それに大きい・・・」


ロミアとヘレナもイヴァンの角の神々しさを目の当たりにしてうっとりしている。


何故だろうか、少しいけない光景に見えてきた。


「そろそろ、良いですかな?」


イヴァンが二人に尋ねると、二人はすぐさま手を引いた。


イヴァンは立ちあがり、先程と同様に角に包帯を巻く。


「一角族の角を触れる機会は滅多にありませんから、良い思い出になってくれれば幸いです」


「そうなんですか?」


俺が尋ねると、イヴァンは笑顔で頷いた。


「もしかして、皆一角族について詳しく知らないのですか?」


俺は三人の顔を見た。


三人とも首を横に振っている。


「知らないですね。

一角族って、どういう種族なんですか?」


「我々一角族は、他の種族から愛深き種族と呼ばれています。

愛というものを最も大切にし、美しいものが大好きな種族です」


「なんか、ロマンチックな種族ですね」


俺の後でシガラが言うと、イヴァンは笑顔のまま頷く。


「よく言われます。

その中でも特徴的なもの一つが額から生えているこの角ですね。

エルフ族の耳が少し特徴的なように、魔族の目が左右で色が違うように、獣人族に色々な動物の耳や尻尾が生えているように、我々一角族にとってこの角は自分が一角族だという証である大切な物なのです」


そんなにすごいのか、この角は。


でもたしかに、イヴァンが元々イケメンなのもあるだろうがカッコいいんだよな。


ユニコーンとかこういうイメージになるのかな。


「あともう一つ特徴的なことは、やはり先程も言った愛ですかね」


「愛、ですか?」


「私たち一角族は先程も言ったように愛深き種族と呼ばれています。

しかし、実はもう一つ別の呼ばれ方もしているのです。

それが、呪われた種族」


「呪われた種族・・・何か呪いでもかけられているのですか?」


「はい、我々一角族の者達は生まれた時からある一つの呪いを背負って生きています。

それは・・・」


イヴァンは鉄柵越しの景色を、少し悲しそうに笑いながら見た。


「我々一角族は、処女の女性しか愛せない」

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