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第69話確認と冗談

「そういえば、アルマの誕生日っていつなんだ?」


俺は隣を歩くアルマに思い出した事を唐突に尋ねた。


「なんだよ急に」


「いや、考えてみたら教えてもらってないと思ってな」


そう俺はアルマとは一緒にいる時間が日数が短いとはいえ、結構濃密だったのだが未だに誕生日すら知らないのだ。


ちなみに今日はクレアとロミアは仕事へ行っており、俺とアルマは町を散歩中である。


俺の質問に、アルマは前を向いたまま答えた。


「俺の誕生日はまだ先だぞ。

まぁ、ろくに祝ってもらった事なんてないから忘れかけてたけどな」


「あっ・・・そっか、そうだよな」


そうだ、こうやって一緒に生活していると忘れそうになるけど、アルマは元々下流階級のエリアで育ったんだ。


誕生日を祝う余裕とかなかったよな。


「まぁ今はどっかのバカが養ってくれているから、今年は誕生日プレゼントをもらえるかもな」


アルマは俺の顔を見ながら言ってきた。


「別に誕生日プレゼントくらい渡すけど、俺のセンスで良いのか?」


俺が返すと、アルマは少し疑うような目で俺を見た。


「お前、いったい何を買う気なんだよ」


「ん?うーん、そうだなぁ・・・」


俺は辺りを見渡した。


アルマへプレゼントを贈るなら、候補というかコンセプトみたいな物は何となく俺の中である。


それにあった物だと・・・


「アルマ、ちょっとあの店に入らないか?」


俺はそう言って、近くの洋服屋を指差した。


「別にいいけど、何かあるのか?」


「誕生日近くになってプレゼント選びで慌てるのも嫌だし、今日せっかく二人でいるから何個か候補を作っておこうかと思ってな」


俺がそう言うと、アルマが納得したように頷いた。


「なるほど、お前にしては考えたな」


「俺はいつでもちゃんと考えてから行動してるよ」


「嘘つくな、お前はいつもある程度考えたらそのあとは出たとこ勝負だろ」


何故俺はこうもアルマに性格がバレているのだろうか。


「ま、まぁ、早速入ってみようぜ」


俺はそう言ってアルマと一緒にその洋服屋に入った。


「へぇ、色々あるんだな」


店の中に入ると、色々な衣類が売られていた。


たしか、この店は上の階もあるからそう考えるとなかなかに大きいところだ。


「お前、こういう店は初めてか?」


アルマに尋ねられて、俺は頷いた。


「あぁ、今まで服を自分で選んでこなかったしな。

それに、一部ならまだしも全身自分で決めるとろくな事にならない気がする」


前の世界で一度全身コーディネートをしたことがあったのだが、その姿を見た親に「着ている本人が薄いのに服の上下の主張が激しすぎて、体の乗っ取り戦争みたいな感じになっている」と言われたことがあった。


・・・俺はいつか洋服に体を乗っ取られるのだろうか。


「そういうアルマは来たことあるのか?」


「いや、俺も来るのは初めてに近いかもしれない。

色んなのがあるんだな」


そう言うと、アルマは周りの商品を見始めた。


「じゃあ、候補に良さそうなのあったら持ってくるよ」


「分かった、俺はこの辺ウロウロしてると思うから探してくれ」


「了解」


こうして、俺はアルマと一旦別れて誕生日プレゼント探しを始めた。


といっても、コンセプトはあっても選ぶとなると意外と難しいな。


うーん、アルマにはもう少し女の子っぽい洋服が良いかなぁ。


俺の周りの女の子達は皆スカートを普段履かない。


唯一スカート派なのはフィーネくらいか。


まぁロミアは俺との手合わせや修行の事を考えて、クレアとアルマは動きやすいようにとそれぞれに考えがあっての事なのだが。


それでも、そういう子達がスカートを履いたら普段とのギャップもあって可愛いのではないかと思っているのだが。


「やっぱり、アドバイスくれる人がいないと大変だな」


前のクレアへのプレゼントの時はアルマが一緒に考えてくれたけど、あれで結構助かったんだよな。


一人で考えると、そのありがたみが分かる。


と、アルマのありがたさを再認識したところで俺はある物を見つけた。


「・・・よし、これにしよう」


俺はそれを手に持ってアルマの元へ向かった。


探してみると、アルマはすぐに見つけることが出来た。


最初に入った入り口のそばにいるアルマに、俺は近づいていった。


「アルマー、良さそうなの見つけたぞ」


俺が声をかけると、アルマはこちらを見た。


「そうか、どんなのだ?」


そう尋ねてきたアルマに、俺は後ろに隠していた物を見せた。


「これとかどうだ?」


俺はアルマに、隠していた物をパッと前に出して見せた。


「これは・・・」


アルマはそれを見ると数秒固まったが、その後静かに口を開いた。


「・・・ガルファット、1つ訊いていいか?」


「ん?何だ?」


「お前、何を考えてこれを持ってきた?」


「え?そりゃあ、アルマに女の子っぽいものを身に付けてもらおうと思ったからだ」


「そうかそうか。

ガルファット、ちょっとこっちに来てくれるか?」


そう言ってアルマが俺に手招きをした。


何だ?お礼でもくれるのか?


・・・あれ?これに似たような事が前にもあった気が


「バカ野郎!」


「いてっ!」


アルマに思いっきり頭を殴られた。


俺は涙目になりながら、殴られた箇所を擦る。


「うぅ、何するんだよ」


「それはこっちのセリフだ!

何でこんなの持ってきたんだよ!」


そう言って、アルマは俺の持ってきた下着を指差した。


「だってお前、クレアの誕生日プレゼント一緒に選んでる時下着を提案してたから、提案した本人になら渡しても大丈夫かと思って」


「うっ、ま、まぁ、それは俺が言ったことだし実際もらって困る物じゃないから下着は良いとしよう。

だけどな・・・」


そう言ってアルマは俺の持ってきた下着を手に取った。


「何でこんな薄いのを選んだんだよ!」


たしかに、今アルマが手にしている下着は言ってみればピンク色のランジェリーに近いものだ。


まぁ、下着部分の生地がスケスケなのでとてつもなくエロくなっているのだが。


「いやぁ、女の子っぽくで色気やエロさを追求したらこれに辿り着いてしまって」


「もっと他に色々あっただろ!

お前は7歳のガキに何を追求してるんだよ!」


そう言われると確かに少しなんとも言えない罪悪感が来るな。


「そして何で大人用の大きさを持ってきたんだよ!

スケスケに加えてスカスカじゃねぇか!」


「それは見逃してくれ、サイズがそれしか無かったんだ」


「じゃあその時点で諦めろよ!」


「どうしても、諦めきれなかったんだ・・・!」


「どんだけこの下着に執着があるんだよ!」


そう言ってアルマは俺の胸に持っていた下着を押し付けてきた。


「まったく、せめて下着を選ぶにしてももう少しまともなのを選んでこい」


アルマは腕を組んで、そっぽを向いてしまった。


どうやら下着は失敗だったようだ。


いや、実際のところこれが良いって言われても俺が困るから失敗してくれて良かったのか。


というか、早く戻しに行ってくるか。


いくら見た目が子どもでも、こんな派手な女性用下着いつまでも持ってたら変な目で見られるかもしれないし正直言って俺も恥ずかしい。


いや待てよ、このあとこれを返しに行く時に擬態ミミクリーを使えば皆に姿を見られずに済むか。


・・・ダメだ、姿を消したら返しに行く間空中浮遊するランジェリーができてしまう。


そんな怪奇現象が起きれば別の意味で目立つからな。


仕方ない、このまま戻しに行ってくるか。


しかし、そんな俺を羞恥心が・・・。


俺が羞恥心と戦ってなかなか返しに行かないからか、アルマをこちらを見て溜め息を吐くと俺から下着を取った。


「これ、どこにあったんだ?」


「え?えっと、二階の下着売り場です」


「はぁ、そんなところから一階のここまで持ってきたのか。

ほら、さっさと返しに行くぞ」


「一緒に行ってくれるのか?」


俺が尋ねると、こちらに背を向けたアルマが振り返った。


「内容はともかく俺のために選んでくれた物だからな。

それにお前、今回は買わないでこうやって俺の所に見せに来るだけで済んだけど、もしこれを買うことになったら、下手したら一人で買わなきゃいけないって考えてなかっただろ?」


うっ、言われてみればそうだ。


さすがにこれを「ください」って店員に言うのは色々ダメな気がする。


「アルマ、ありがとう」


「これに懲りたら、今度はもう少し考えてから選ぶんだな」


アルマは少し笑いながらそう言うと、俺の前を歩き出した。







その後、何品か真面目に検討したのだがアルマから良い返事は返ってこなかった。


俺も衣類は諦めようと考えた頃、二人で店を出た。


「結局、プレゼントに良さそうなのは無かったな」


「手袋を選んだ時は季節さえ間違えなければ良いものだと思ったのにな。

お前があんな事言わなければだけど」


実は途中でアルマに似合いそうな可愛い季節外れの手袋が売っていたので本人に見せてみたのだ。


まぁ、アルマ自体もそこそこ気にいってくれていたのだが俺の理由がダメだったらしい。


「お前、何でこれを選んだんだ?」


「ん?だって、お前がこれ着けてくれれば仮に俺が殴られても痛みが軽減されると思って」


「悪かったな暴力女で!」


と、わざわざアルマが手袋を着けて顔面を殴ってくれたのだが、やっぱり痛いものは痛かったので却下になった。


「お前って、何でああいう所で嘘とか言わないんだよ」


アルマが呆れた様子で俺に言ってくる。


「いやぁ、何か本音がポロッと出ちまって」


俺も苦笑いしながら返す。


「まぁ、とりあえず宿に戻ろうぜ」


「そうだな」


そう言って、俺とアルマは並んで歩き出した。


「なぁ、ガルファット」


少し歩いた時だった、アルマがふいに俺の名前を呼んだ。


「どうした?」


「お前、何で俺にばっかり冗談とか言ってくるんだ?」


俺はアルマの質問に恐る恐る返した。


「もしかして、嫌だったか?」


「あっ、いや、その、そういう訳じゃないんだ」


俺が返すと、アルマは頬をポリポリかいた。


「嫌ではないけど、何か俺といる時にそういうのが多いから理由を聞きたかったんだよ」


「あー・・・」


俺は空を見上げた。


「何て言うのかな、アルマ相手だと安心出来るんだよ」


俺の言葉を聞いて、アルマが驚いた顔で俺を見てくる。


「クレアやロミアって俺も未だに、ん?って思うこと言うときあるからさ。

冗談言って仮にそれが通ったらどうしようって思うときが、時々あるんだよ。

だから、あの二人に言うときは少し考えてから言うようにしててさ。

だけど、アルマは基本俺の冗談はちゃんと言い返してくれるから二人みたいに考えないで言えるんだよ。

だから俺もそれが楽しくてついついお前といると調子に乗ってボケたくなっちまってな」


俺が笑いながら言うと、アルマは少し俯いた。


「・・・ロミアのやつ、本当にこいつの事ちゃんと見てるんだな」


「ん?何か言ったか?」


俺が尋ねると、アルマは首を横に振って前を向いた。


「何でもねぇよ。

まったく、こっちの身にもなってみろよ」


「悪いな、今度何かお礼するよ」


「おう、期待してる」


俺はそう言ったアルマに、心のどこかで引っ掛かっていた疑問をぶつけた。


「アルマ、逆に俺から質問していいか?」


「ん?何だ?」


「お前は俺達といて楽しいか?」


俺はアルマと一緒にいて楽しい。


多分、クレアとロミアもアルマの事は嫌いではないだろうしどちらかと訊かれたら好きと答えるだろう。


だが、アルマ本人はどうなんだろうか。


突然母親を亡くして養ってくれると言ったのがたまたま俺だった。


アルマの状況からしたらこういうことだろう。


俺が一時的とはいえアルマを養うと提案した時、アルマに拒否権はあっただろうか?


いや、拒否権自体はあってもアルマにそれを選択できる余地はあっただろうか?


俺はアルマが弱っている所に漬け込んで、金をちらつかせて一緒にいさせている。


そう、解釈されてもおかしくはない。


頭のどこかで、そういう考えがあった。


だからこそ、今訊いておきたかった。


もうすぐ魔法学校に入学したら、アルマとはなかなか会えなくなるかもしれない。


その前に確認しておきたかった。


アルマは俺の質問に溜め息を吐いた。


「はぁ、お前やっぱりバカだな。

今さらそんなこと訊いてくるなんて」


「・・・すまない」


「楽しくなかったらとっくにお前らの前からいなくなってるよ」


アルマの返答に、俺は笑顔で返した。


「そうか・・・」


「どうせお前の事だ。

俺が金が無くて仕方なく一緒にいるとか考えてたんだろ?」


もろ図星である。


俺が返答に困っていると、呆れ顔をした。


「まったく、確かに俺は金優先で物事を考えるけど全部が全部そういうわけじゃねぇよ。

世の中、金以上に大事な物だってあるんだよ」


「お前の口からそんな言葉が出るなんて思ってなかったよ」


「お前なぁ!」


そう言ってアルマが拳を構える。


ヤバイ!殴られる!


俺は咄嗟に目を閉じた。


・・・あれ?


いつもならとっくに殴られているのに、今回は何の痛みもない。


俺は恐る恐る目を開いた。


「約束しろ、俺は黙ってお前たちの前からいなくなったりしない。

だから、お前たちも黙って俺の前からいなくなるなよ」


そう言って、アルマは俺に拳を向けていた。


「・・・あぁ、約束する」


俺は自分の拳をアルマの拳に合わせた。


「よし、じゃあ帰って昼飯食うぞ。

ちゃんとおごってもらうからな」


アルマはそう言って少し笑顔で走り出した。


「おう、わかってるよ」


俺もそのあとを追って走り出した。

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