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第51話 義賊と正座

俺はその日、夜中に突然目が覚めた。


月明りが窓から差し込む中、部屋の天井が目の前に広がる。


「・・・珍しいな」


この体になってから寝付きは良く、起きる時間まではぐっすり眠れていた。


まぁ、人間生きてれば突然起きる事なんて一度や二度はあるよな。


俺はそう思いながら、体を起こした。


隣を見ると、アルマが規則正しい寝息をたてながら眠っている。


違うベッドでは、ロミアとクレアもぐっすりと眠っている。


俺は皆を起こさないように、ゆっくりとベッドから降りて窓に近づいた。


今日も月明りが夜の暗闇を照らしてくれている。


今日はクレアに誕生日をプレゼントを渡した。


物は、タオルだ。


それも普通のタオルより、大きめのバスタオル位の大きさの物を選んだ。


ちょっと値段が高めの肌触りが良くて柔らかい、ピンク色の可愛いタオルだ。


俺は振り返って寝ているクレアを見た。


渡した時、嬉しさのあまり俺とアルマに抱きついて来たっけ。


俺は何となく慣れてたけど、アルマの奴は照れながら離せってじたばたしてたな。


俺の目には、クレアの隣で寝ているロミアの姿が映った。


そういえば、ロミアもバイト頑張ってるんだよな。


最初は帰ってきたらベッドにダイブで泥のように眠ってたけど、今じゃ笑顔で帰ってきて俺達と同じ時間帯に寝てるし。


今度頑張ってるご褒美に、ロミアにも何かプレゼントあげようかな。


・・・甘いな、俺は。


俺は自分で自分の考えに苦笑いしながら、窓から外を見た。


静まりかえった町が月明かりで、幻想的な雰囲気を醸し出している。


・・・魔法学校の入学試験まであと少しか。


そういえば、あの日以来シガラに会ってなかったな。


どのくらい魔法扱えるようになったか見たいし、近いうちに探すか。


ロミアのほうは・・・心配ないな。


むしろロミアなら俺よりもよっぽど優秀だ。


「・・・なんだあれ?」


俺は向かいの店の屋根で、黒い影が動くのを見た。


その影は、素早い動きで屋根伝いにどんどん移動している。


動物か?でも、それにしては影がデカイんだよな。


まさか、人か?


・・・いや、それは無いか。


この世界の人の運動能力が高いからって、あんな事を簡単にするのはなかなか度胸がいるからな。


「・・・ガルファット、何やってるんだ?」


背後から尋ねられて、俺は声のした方を見た。


「アルマか。悪いな、起こしちまって」


そこにはベッドの上で上半身だけ起きて、眠そうにこちらを見ているアルマがいた。


「・・・いや、別に。

俺、寝ても朝までぐっすりは眠れないんだよ。

絶対に一度や二度は目が覚める」


「そうなのか?」


「・・・あぁ。

それで、お前はそこで何してるんだ?」


「俺もさっき起きて外見てたんだけど、何かデカイ影が屋根伝いに走って行くのが見えてな。

それを観察してたんだ」


俺が答えると、アルマが眠そうに頭をかきながら返した。


「あー、多分ウィルズ兄弟だ」


「ウィルズ兄弟?」


俺が尋ねると、アルマが頷いた。


「貴族や裕福な家からだけ金目の物を盗んでいるやつらだ。

あいつらにとってはこの辺は庭だからな、屋根伝いで追っ手から逃げてたんだろう」


「すごいな、そんな奴らがいるのか」


つまりは義賊って事か。


この世界でもそんなのがいるんだな。


「でも、そういうのって貴族とかが黙ってないんじゃないのか?」


「そりゃ追いかけたり捜索したりはするけど、ウィルズ兄弟は盗みが上手くいくと下流階級の奴らに飯とか奢ってたからな。

仮に貴族の手下とかが来ても皆知らないの一点張りで捜しようがないし、根本的にウィルズ兄弟は盗みで顔見られるなんて間抜けな事はしない」


「なるほど、捜そうにも情報が少なすぎるのか」


周りの人間には情報を言わないようにしてもらって、その見返りは飯を奢ること。


確かに良いやり方だな、貴族も手を焼くわけだ。


「まぁ、盗みが成功した時は俺はすぐ分かったけどな。

あいつらの笑い声がうるさかったし」


「ん?ウィルズ兄弟ってお前の家の近くに住んでたのか?」


「あぁ、うちの隣だ」


「・・・それは確かにうるさそうだな」


「あまりにうるさくて何度か殴りに行こうかと思った事もあったな。

まぁ、俺も飯奢ってもらった事あったから手は出さなかったけど」


「恩があったら手は出せないよな」


俺が笑いながら言うと、アルマが頷いた。


「さて、俺もそろそろ寝るか」


俺はそう言いながらアルマのいるベッドへ戻った。


「そういえば・・・今日は抱きしめなくて良いのか?」


ベッドに入り、目の前にいるアルマに俺は笑いながら言った。


「・・・バカ、あの時今日だけって言っただろ」


「そういえばそうだったな」


「・・・だけど」


アルマが俺に体を寄せてくる。


「お前が近くにいると、夜起きなくて済むから近くにいさせてやる」


「・・・そっか、ありがとう」


そう言って俺はアルマの頭を優しく撫でた。


「やめろ、子ども扱いされてる気がする」


アルマが不機嫌そうな声で俺に言ってくる。


「子ども扱いも何も実際子どもだろ」


「うるせえ・・・何でもいいからやめろ」


「分かったよ」


俺は引き下がって、アルマの頭を撫でるのをやめた。


「ん?アルマ、何か顔が熱くないか?」


撫でるのをやめた俺の手が偶然アルマの頬に触れたのだ。


すると、手にはいつもよりも熱を感じた。


「・・・別に、いつもと変わらないだろ」


「・・・そっか。おやすみ、アルマ」


そう言って、俺は静かに目を閉じた。







「っん・・・うぅ」


俺は光を眩しく思いながら静かに目を開けた。


「・・・朝か」


部屋の明るさで、俺は今が朝だというのを認識した。


「ん?」


ふと、目の前で何かが動いたのを感じた。


それは布で姿は見えないが、何となく予想はついていた。


昨日もアルマと一緒に寝たからな、多分アルマだろう。


「どうやらぐっすり眠っているようだな」


俺はアルマを起こさないようにゆっくりとベッドから降りようとした。


「・・・え?」


俺がベッドから降りようとした時、服の裾を掴まれた。


何だ?アルマの奴寝ぼけてるのか?


俺はその手を引き剥がそうとするが、手は服の裾を掴んだまま離そうとしない。


「・・・仕方ないか」


俺は渋々ベッドの中へ戻った。


まぁ、起こすのも可哀想だしアルマが起きるまで一緒にいてやるか。


「ん~、ガル~」


夢でも見ているのだろうか、俺の名前を呼ぶ。


やっぱり、可愛い所もちゃんとあるんだよな。


・・・あれ?


俺は違和感を覚えた。


今、ガルって言ったよな?


・・・おかしい、アルマは俺をガルファットと呼ぶことはあってもガルとは呼ばない。


俺をガルって呼ぶ奴は・・・まさか。


俺は布に手をかける。


何だろう、この展開何回か経験している気がするんだが。


俺はデジャヴ感に襲われながら布を剥いだ。


「・・・ガル~」


そこには、幸せそうに俺の名前を呼ぶロミアの姿があった。


「・・・何故なんだ」


何で俺が寝て朝起きると、予想外の人物が寝ている事が多いんだ。


ていうか、ロミアって逆側のベッドで寝てたはずじゃなかったのか?


何でこっちで寝てるんだ?


俺はもう1つのベッドを見た。


アルマとクレアの姿が無い。


何がどうなってるんだ?


ていうか、ロミアバイトに行かなくていいのか?


いつもなら俺が起きる頃にはとっくに起きているんだけどな。


ロミアの事だから大丈夫だとは思うけど、一応起こすか。


「おいロミア、朝だぞ」


俺が揺らすと、ロミアが眠たそうに目を擦った。


「ふぁ~。あ、ガルおはよー」


ロミアは眠そうにあくびをしながら伸びをした。


「おはよー。

って、お前仕事の方はいいのか?」


俺が尋ねると、ロミアは眠たそうに返した。


「ん?昨日言ったじゃん。

今日はお仕事お休みだって」


「え?・・・あ、そういえば言ってたな」


そうだ、昨日バイトを始めて最初の休みが貰えたって喜んでたっけ。


すっかり忘れてた。


「いや、それでも何でこっちのベッドでお前が寝てるんだ?」


俺が尋ねると、ロミアは幸せそうに微笑みながら俺を見た。


「ん~?えっとね・・・」


あ、これはまずい。


「ガル~」


俺がそう思った時だった。


ロミアが突然俺に抱きついてきた。


やっぱりか!寝起きのロミアは見境なく抱きついてくるからな。


「ロ、ロミアさん、離れてもらえませんか?」


「ん~?」


だ、ダメだ、反応はしてくれるけど全然離れてくれる気配がない。


「ロミア離れてくれー!

身動きが取れないー!」


俺はロミアを必死に引き剥がそうとするが、一向に離れない。


いや、別にロミアに抱きつかれるのが嫌な訳じゃないんだけど身動きが取れないんだよ。


「・・・うっ、うわぁ!?」


俺はロミアを引き剥がそうとして、ベッドから転げ落ちた。


「うぅ・・・ガル、痛いよ」


ロミアが床で仰向けになりながら、涙目で俺を見ている。


どうやら俺と一緒にベッドから落ちたようだ。


「わるいな、引き剥がそうとしたらバランス崩しちまった」


「ガル・・・私に抱きつかれるの嫌?」


ロミアが涙目のまま俺に尋ねてくる。


「い、嫌って訳じゃないけど・・・」


や、やめてくれロミア!


そんな目で俺を見ないでくれ!


何かものすごくいけない事している感じがしちゃうから!


「ガル・・・?」


俺が話さないからか、ロミアが不安げに訊いてくる。


「あっ、うん、その・・・嫌じゃないけど、抱きつくのは頻繁にはしないほうが良いんだよ」


「・・・そうなの?」


ロミアがキョトンとした顔で首を傾げる。


「うん、ここぞっていう時にやるから効果があるんだよ。

頻繁にやってたら飽きられちゃうかもしれないだろ?」


「そっか・・・」


ロミアが悲しげな表情をする。


うーん、うまくフォローしながら言ったつもりだけど下手だったか。


「・・・まぁ、仕事始めてからできてなかったんだし今日ぐらいはいっか」


俺が苦笑いしながら言うと、ロミアが満面の笑みを浮かべた。


まったく、最近はなんだか大人びたなぁと思う事もあったけど中身はまだまだ子どもなんだな。


俺は優しくロミアの頭を撫でた。


しかし、こうなるとクレアとアルマがいないのが幸いだったな。


こんな光景何があったか知らずに見たら、俺がロミアを押し倒しているようにしか見えないからな。


まぁ、クレアは大丈夫だろうけど会ってから日が短いアルマにどんな風に思われるか。


「ふぅ、良かった」


「ん?どうしたの?」


俺が安堵の息をつくと、ロミアが尋ねてきた。


「いや、なんでもない」


俺は笑顔でロミアに返した。


・・・ガチャ


「・・・」


あれ?今入り口のほうから音が聞こえたような気が・・・


部屋の入り口の扉が開く。


「朝に風呂入るのも気持ちいいな」


「さっぱりした気分で朝を迎えられるからね」


会話をしながらアルマとクレアが扉の前で立っている。


・・・あっ、二人と目が合った。


クレアは笑顔、アルマは無表情でこちらを見ている。


「・・・邪魔したな」


そう言うと、アルマが静かに扉を閉めた。


・・・言わんこっちゃねぇー!!!


「ちょっ!アルマ!クレア!誤解だ!」


俺は閉ざされた扉に手を伸ばしながら叫ぶ。


「ガルどうしたの?何で泣いてるの?」


ロミアがキョトンとした顔で俺を見る。


「・・・ロミアさん、すみませんが俺と一緒に来てもらえませんか?」


「うん、いいよ」


涙を流しながら笑顔で俺が頼むと、ロミアは頷いて返した。


うぅ、恐れていた状態になってしまった。


俺はロミアと一緒に、クレアとアルマのあとを追った。







「それで・・・あれはどういう状況だったんだ?」


アルマとクレアを連れ戻した後、気付いたら部屋でアルマに見下ろされながら俺は質問されていた。


俺はというと、なぜか知らないけど怒られているように正座しながら俯いてます。


俺、何も悪いことしてないのに・・・。


「えっと・・・朝起きたらロミアが隣にいて、急に抱きついてきたので引き剥がそうとしたらベッドから落ちてあんな態勢になってました」


俺が説明すると、アルマは少し考えた後ベッドに座っているロミアの方を見た。


「ロミア、さっきガルと何があったんだ?」


アルマがロミアに尋ねる。


うぅ、俺まったく信用されてない。


「ん?うーん、私が起きたらガルがいたからとりあえず抱きついて」


とりあえず抱きついて!?


「そこからはあんまり覚えてないけど・・・気付いたらガルが私の上にいて優しく頭を撫でてくれた!」


ロミアが嬉しそうに笑顔でアルマに言った。


俺は悲しそうに泣きながら床を殴った。


ロミア、アカン。


それは誤解を生む説明だ。


「なるほど・・・つまり朝起きたときにロミアからアプローチをかけて気が付いたら良い雰囲気になってたって事だな」


「ちょっと待て!

事実と違う答えが導かれている!」


俺は頷きながら納得しているアルマに向かって叫んだ。


「だけど、さっきのロミアの説明だとそうなるぞ?」


「いや、俺の説明も入れてくれよ」


「明らかに押し倒した側の言い分を考慮すると思うか?」


アルマが俺に尋ねてくる。


いや、確かにそれは分かるんだけども・・・。


「ていうかさっきから笑って見てますけど、クレアは絶対僕が冤罪だって分かってますよね!?」


俺はロミアがいるベッドとは逆のベッドで笑顔で こちらを見ているクレアに尋ねた。


「まぁね。

ロミアちゃんがガルファット君に抱きつくのは日常茶飯だし、ガルファット君がロミアちゃんに手を出すことはないと思うからね」


「何でそこまで言い切れるんだ?」


アルマがクレアの方を見て尋ねる。


「だってガルファット君、鈍感で無意識だから」


クレアが当然というようにアルマに答えた。


「はあ?どういうことだ?」


アルマが意味が分からなかったらしく首を傾げる。


俺も意味が分からなかったので首を傾げる。


鈍感で無意識?どういうことだ?


「うーん・・・そうだなぁ」


クレアは少し考えると、アルマになにかを耳打ちした。


少ししてクレアが耳打ちをやめると、アルマは静かにため息をついた。


「はぁ・・・ガルファットすまなかったな。

どうやら俺の誤解だったみたいだ」


「え!?何で急に!?

ちょっ!クレア、アルマに何を言ったの!?」


「ん?別に大したことは言ってないよ。

それよりガルファット君、あんまり色々な女の子に手を出すとフィーネさんが泣いちゃうよ?」


クレアが面白そうに俺に言ってきた。


「え!?僕女の子に手なんて出してませんよ!?

ていうか何でフィーネさんが出てくるんですか!?」


もう何が何だか分からない。


「まぁまぁ、もう良い時間だしご飯食べに行こうよ」


クレアが俺の質問には答えず立ち上がって、部屋のドアのほうへ歩いていく。


「そうだな、朝から腹が減った」


それに賛同してアルマもクレアについていく。


「ガル、早く来ないと置いてっちゃうよ?」


そう言うと、ロミアも二人についていく。


「・・・あーもう!

女の子の考えはよく分からん!」


俺は考えるのをやめて3人のあとを追った。


その日の朝飯はいつもより多く食べました。

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