第50話 相談と笑顔
「さてと、何が良いかなぁ」
俺は町の中を歩きながら辺りを見渡した。
「そういえば、お前いったい何を探してるんだ?」
そんな俺を隣で見ながら、アルマが尋ねてくる。
「あぁ、クレアの誕生日プレゼント何にしようかなぁと思って」
「・・・プレゼント?」
「プレゼント」
首を傾げるアルマに俺は言った。
そう、今日はクレアの誕生日プレゼントを購入するために朝から中流階級のエリアを歩き回っている。
ちなみにアルマが一緒なのは、昨日の今日で部屋で一人にするのは良くないと思って散歩として誘った。
まぁ、他にも理由はあるんだけど。
「それで、何で俺を誘ったんだ?」
アルマの質問に、俺は辺りを見渡しながら答えた。
「お前にもプレゼント選び手伝ってほしいんだよ」
「はぁ?何で俺なんだよ?
お前の方が一緒にいる時間は長いんだし、俺なんてクレアの事ほぼ知らないんだぞ。
役にたたないだろ」
「いや、そうでもないぞ。
俺、女性にプレゼントなんてほとんど渡したことないから女性の意見を教えてもらいたいと思ってな」
「・・・そういうことか。
つまりクレア本人には訊けないし、ロミアは仕事だから時間がないから身近で1番暇な俺を選んだと」
「言い方は何ともいえないが、まぁそういうことだ」
俺が言うと、アルマは溜め息をついた。
「・・・はぁ、別にじっとしているのも落ち着かないから良いけどよ。
言っておくが、俺は人に物渡した経験ないからまともなアドバイス出来ないからな。
むしろ、人にあげるぐらいなら自分が欲しいくらいだし」
「お前らしいな。
まぁ、自分でこれが良いんじゃないかって思った物を教えてくれれば二人で審議しようぜ。
俺が良いなって思った物もお前に教えるし」
「それは良いけど、本当に0から探すのか?
何か候補みたいな物はないのか?」
「それが、一応服を候補に入れてたんだが・・・諸事情で選べなくなった」
「何だよ?諸事情って」
俺はアルマに尋ねられて、苦笑いしながら言った。
「前に誕生日プレゼントあげるってクレアに言った時に、冗談で胸の気にならない服あげましょうか?って言っちゃって笑い話で終わったから、ここにきて服をあげるわけにはいかないし変にハードルを自分で高くしてしまったんだ」
俺が長い文を言い終わると、アルマは理解のために考え込んだがすぐに顔をあげて手を叩くと俺に近づいてきて
「いてっ!」
グーで俺の後頭部を殴った。
「どう考えてもお前が自分で自分の首しめてんじゃねぇか!」
「いや、まさか今になってあの時の事がここまで響くとは思っていなくて・・・」
「まったく・・・。
しかもお前、服ってサイズと好みや雰囲気が分かっていれば結構選びやすいじゃねぇか」
「俺も今になって少し後悔してます」
何であの時あんな弄りかたしちまったんだ俺は。
「はぁ・・・お前といると溜め息ばっかり出るな」
「何か・・・申し訳ない」
俺がしょんぼりしながら言うと、アルマが少し困った顔をした。
「あぁ・・・いや・・・何か、俺のほうこそすまん」
「・・・大丈夫、全然気にしてないから。
この町の大きさと同じぐらいにしか気にしてないから」
「それめちゃくちゃ気にしてるだろ!」
アルマの言葉を聞いて、俺は笑顔で顔を上げた。
「・・・嘘だよ。
申し訳ないとは思ってるけど、やっちまったものは仕方無いと割りきってるよ」
アルマは俺の顔を見ると、一瞬驚いた顔をしたがすぐに溜め息をついて歩き出した。
「はぁ・・・俺、何でこんなやつに・・・」
「ん?何か言ったか?」
俺がアルマに横に行って顔を見ながら言うと、アルマが顔を赤くした。
「なっ!何でもねぇよ!
ほらっ!ささっと探すぞ!」
そう言うと、アルマは俺の腕を掴んで走り出した。
「ちょっ!アルマさん!
そんなに速く移動したら、店を確認できない!」
「安心しろ!この辺りはよく盗みに入ってた店もあるから、どこにどんな店があるかはだいたい覚えてるんだよ!」
「それはありがたいけどもう盗みするんじゃないぞ!」
「お前がずっと養ってくれるっていうなら良いぞ!」
「良いぞ!養ってやるよ!」
「・・・はぁ!?」
アルマが急に止まって、俺は前に放り出された。
俺はそのまま何回転か地面を転がった。
「いててっ、急に止まるのは良いけど放り出すことはないだろ」
俺は頭を擦りながら立ち上がった。
「お前・・・本気か?」
「ん?何がだ?」
俺はアルマの質問の意味が分からなかったので、アルマの方を見た。
アルマは驚いた顔をして、固まったまま俺を見ている。
「いや、何がって・・・さっきの事だよ!」
「さっきの事・・・?」
「・・・ったく!俺を養ってくれるって事だよ!
言わせんな!」
何でだろう、理不尽に怒られたんだが。
「あ、あぁ、その事か。
いいよ、ちょうど金も入ったしな」
「おまっ、俺達会って数日だぞ!?」
「ん?それがどうしたんだよ?」
「どうしたって・・・」
「それとも、お前は俺に養われるの嫌か?」
俺が尋ねると、アルマは顔を赤くしながら頬をかいた。
「いや、その・・・お、お前が養いたいっていうなら俺は別に良いけど・・・」
「なら決まりだな。
お前の働き先がちゃんと決まるまでは、ずっと養ってやるよ」
「・・・はぁ?」
俺が言うと、アルマが首を傾げた。
「昨日言っただろ?
お前が身の振り方決まるまでは一緒にいろって。
仮に働き先がなかなか見つからなかったとして、俺とロミアが魔法学校に入学した後でもお金関係は何とかするよ」
「・・・そうかそうか。
ガルファット、それは俺としてはありがたいからちょっとこっちに来てくれないか?」
アルマが笑顔で俺に手招きをしながら言ってきた。
何だ?お礼でもくれるのか?
「紛らわしい事を言うな!」
「いてっ!」
何故だ、またグーで後頭部を殴られた。
「何だよ・・・理不尽だよ」
俺は涙目になりながら頭を擦った。
「うるせぇ!お前今日飯おごれ!」
「何か急にたかられたんだけど!?」
俺は急に歩き出したアルマのあとを追った。
もう、急に怒るわ急に笑顔になるわアルマの事が分からない。
ふと、隣を歩くアルマが何かを思い付いたように上を向いた。
「ん?待てよ?
俺が働かなければずっとお前が養ってくれるんだよな?
それって実質・・・」
「ニートだな」
「よっしゃ!絶対仕事見つけてやる!」
アルマが右手の拳を左手の手の平で受け止めて、イキイキした目をした。
仕事探しにやる気を出してれたようだ。
何だかよく分からないが、まぁ俺としても自分で生活する術を持ってくれるのはありがたいから細かい事はいいか。
「まぁ、そうは言っても俺が働くのは難しいと思うけどな」
さっきまでやる気に満ち溢れていたアルマが、急に冷静になって俺に言ってきた。
「ん?何でだよ?」
「言っておくが、仕事に対してやる気がない訳じゃないからな。
考えてもみろよ、俺はここら辺で盗みを続けてきたんだぞ?
特に食べ物売っている店には、顔がわれてて泥棒で有名だ。
そんなやつがある日突然雇ってくれって来たら、疑わない訳がないだろ」
「確かに言われてみればそうだな」
有名な泥棒がある日突然、心入れ換えたんで雇ってくださいとか怪しすぎるしまず信用されないな。
「だから、お前にはそこそこ長い期間を覚悟して俺を養ってもらうぞ」
「別に構わないぞ、お前に提案したのは俺自身なんだし」
「・・・何の迷いもなく答えるんだな」
そう言ったアルマに、俺は笑顔で返した。
「男が自分から言った事を簡単に放り出したらカッコ悪いだろ?」
「お前・・・そういうところは格好よく決められるのに普段は何で色々残念なんだよ」
アルマが文字通り残念そうな目を俺に向けて言った。
「そういうアルマだって、時々可愛かったりかっこいいのに何で普段はそんな男口調でキツイ言い方するんだ?」
「べっ、別に俺は可愛くねえしキツイ言い方もしてねえよ!
・・・男口調なのは気付いた時からそうだから直しようがないんだよ。
まぁ、俺は特に気にしてないから直す気もないけど」
「・・・そうか。
まぁ、その方がギャップがあって可愛さが増すしな」
「だから可愛くないって言ってるだろうが!
ほら行くぞ!」
そう言ってアルマが走り出した。
「あっ!待てよアルマ!」
俺もアルマを追いかけるように走った。
その後、良さそうなお店を見つけた俺とアルマは店の中に入り本格的にプレゼント探しをしていた。
「それでクレアってどんなのが好みなんだ?」
隣で品物を物色しているアルマが俺に尋ねてきた。
「そうだな、こんなこと言うのも失礼かもしれないけど中身はしっかり女の子だから可愛い系とかが良いかな」
「へぇ、てっきり見た目から実用性を重視すると思ってた」
「クレアは武術を使う関係上、なるべく身軽にしているからそう思うのも無理ないな。
でも、しっかりしていながらも中身は可愛い女の子だぞ」
「武術?何だそれ?」
「ん?あぁ、そっかアルマは武術知らないよな」
周りで知らない人がほとんどいなかったから気にしてこなかったけど、よく考えればそんなポピュラーなものじゃないんだよな。
「剣術は分かるか?」
「それは知ってる。
剣使って相手を斬るんだろ?」
「うーん、それも間違ってはいないけどもう少し説明を付け足すなら、剣を扱う技術やそれを応用した技の事を剣術って言うんだ」
「・・・何か、めんどくさいんだな」
アルマがこちらを見ずに呟いた。
「それで、武術は剣ではなく自分の肉体で戦うものなんだ」
「ふーん、つまり殴ったり蹴り飛ばしたりするものか」
「その返しだと理解できているのか分からないけど、まぁそういうことだ」
「なるほどな・・・じゃあこんなのどうだ?」
そう言って、アルマは1つの指輪を俺に見せた。
「これは・・・指輪か」
「あぁ、女ってこういうの好きだろ?」
「うーん、まぁそれは間違いではないと思うんだけど・・・アルマ1つ聞いて良いか?」
「ん?何だ?」
「何でこれを選んだんだ?」
俺が尋ねると、アルマは当然という顔をして答えた。
「そりゃ、それ付けて殴れば戦いが有利になるだろうからな」
「こんなもん付いてるもんな」
俺はアルマからその指輪を手渡してもらい、まじまじと見た。
指輪のリング部分に、大きい宝石並のトゲが付いているのだ。
そりゃ、こんなもん付けて殴ったら相手は血だらけだろうな。
俺は指輪をそっと元あった場所に戻した。
「お前、武術使うって事に引っ張られすぎだぞ。
普通に生活する時に使うものでも良いんだからな」
「・・・言われてみればそうだな」
「それに、これをもらって喜ぶ女の子は多分いないぞ」
「生活で使えるものかぁ。
・・・じゃあ、これなんてどうだ?」
そう言うと、アルマはエプロンを俺に見せた。
「これは・・・可愛いな」
そのエプロンはピンク色で、シンプルだがとても可愛いものだった。
「だろ?これなら料理作るときはほぼ身につけるし、デザインはシンプルだから似合う似合わないは色で決めれるからな」
そう言うと、アルマは同じデザインの色違いのエプロンも俺に見せてきた。
なるほど、確かにこれなら深く考えずにクレアに似合いそうな色を選ぶだけで良さそうだな。
しかも色もそこそこ種類があるから、選ぶ色の幅も広がる。
それにしても・・・
俺は両手にエプロンを持って見比べるアルマを見た。
さっきあんな指輪を選んだ奴が、次はこんな良い物を選ぶとはな。
こいつ、人にプレゼント渡した事ないって言ってたけど本当はプレゼント選びのセンスがあるんじゃないか?
「ガルファット、お前はどの色が良いと思う?」
そう言って、アルマが何枚かエプロンを持って俺に見せてきた。
何だろう、普段男っぽい奴がこういう家庭的な物を選んでる光景は個人的に好きなんだよな。
普段見れない女の部分を見るからそのギャップからか?
「うーん、アルマは赤が似合うと思うぞ」
「いや、俺じゃなくてクレアに似合うのを選べよ」
俺が少し悩みながら答えると、アルマに冷静に返された。
「そうだなぁ・・・クレアならその色かな」
俺はそう言って、オレンジ色のエプロンを指差した。
「・・・これか。
確かに、クレアならこの色は似合いそうだな」
アルマが上から覗きこんでエプロンを見て言った。
「・・・でも、考えてみたらクレアにエプロンのプレゼントは合わないかもしれないな」
俺はアルマに苦笑いしながら言った。
「ん?何でだ?
さっきも言ったが、これならハズレる事はそんなにないし何よりお前だって似合うの選んだじゃねえか」
「いやぁ、そうなんだけどさ・・・」
俺は首を傾げるアルマに、少し申し訳なさそうに言った。
「クレアって、料理しないんだよ」
「・・・マジで?」
「マジで」
俺が言うと、アルマは溜め息をついた。
「お前、そういうのはもっと早めに言えよ」
「わるいわるい」
アルマが残念そうにエプロンを元々あった場所に戻していく。
本当はもう少し早くに気づいていたんだけど、アルマが楽しそうに選んでたから言い出せなかったんだよな。
「さて、そうなってくると選択肢がかなり絞られてくるなぁ」
アルマはそう言ってまたプレゼントに合いそうな物を選び始めた。
俺もその隣で品物を物色している。
その後、二人で色々な候補を出しては話し合った。
そして、ついにプレゼントに相応しい物を決定することが出来た。
「・・・これなら喜んでくれそうだな」
俺がそれを購入して紙袋を片手にアルマの元に行くと、アルマが頷いた。
「そうだな。
俺的にはもう少し遊び心があった方が良いと思ったけど」
「プレゼントに下着をチョイスするやつの遊び心は信用できないな」
「何でだよ?
下着なら毎日身につけるじゃねえか」
「異性から下着プレゼントされて喜ぶのは、交際関係か夫婦関係良好の男女間だけだぞ」
「そうか?
まぁ、プレゼントは買えたし今更いいか」
「そうだな」
俺とアルマは店を出た。
「そうだアルマ、付き合ってくれたついでにもう一ヶ所付き合って欲しい所があるんだけどいいか?」
俺が尋ねるとアルマが首を傾げた。
「ん?別についでだから良いけどどこに行くんだ?」
「まぁ、行けば分かるよ」
俺はアルマにそう言って、ある店に向かって歩いた。
「お、あったあった」
俺は目的の店の前に辿り着くと、足を止めた。
「ここって・・・鍛冶屋か?」
アルマが店の中を見て呟いた。
そこは見た感じ、文字通りの鍛冶屋だ。
店の前には木の台が置かれており、奥では何かゴツいおじさんが汗だくになりながら鉄を叩いているのが見える。
ここまで分かりやすい鍛冶屋ってあるものなんだな。
「鍛冶屋で何か買うのか?」
隣でアルマが俺に尋ねてくる。
それに対して俺は笑って頷いた。
「ちょっと買いたいものが特殊で、店で探すより鍛冶屋で直接頼んだ方が手っ取り早いんだよ。
注文してくるから、ここで少し待っててくれるか?」
「分かった、待ってればいいんだな」
「すまないな、なるべく早く戻るよ」
俺はアルマにそう言い残して、鍛冶屋に向かって歩いた。
「すみませーん」
俺が入り口で声をかけると、奥にいたおじさんの一人がこちらに来た。
「・・・何のようだ?」
おじさんは俺を見ると、低い声ドスのきいた声で尋ねてきた。
ていうか・・・このおじさんこわっ!
間近で見ると、スキンヘッドで今にも俺を殺すんじゃないかという目付きで見下ろされている。
見た感じ、40代くらいだろうか。
絶対街中で会ったら、目合わせないようにしちまうな。
・・・いや、ダメだ。
ここで目をそらしたら命が危ない。
ここは相手の目を見て話さなくては。
「実は作ってもらいたい物があるんです」
「・・・形と材質は?」
おじさんは声のトーンを変えないまま俺に尋ねてくる。
「材質は鉄、それか肌に触れていても肌触りなどが気にならない物で。
形は・・・これくらいの鎖を複数つなげてネックレスのようにしてもらいたいんですが」
俺は右手の人差し指と親指で小さい隙間を作っておじさんに見せた。
ちょうどこれっぽっちもないっていうときに、指で表すくらいの大きさだ。
「・・・全体的な大きさは?」
おじさんに尋ねられて、俺は後ろで待っているアルマを指差した。
「あの子に合うくらいの大きさが良いんですが・・・」
俺が指をさすと、アルマは首を傾げて俺を見てきた。
「・・・少し待ってろ」
おじさんはアルマを見ると、少しして店の奥に入っていった。
なんかもう一人のおじさんと話しているけど、ここからじゃ会話の内容は聞こえないな。
・・・あっ、奥に消えた。
時間にして3分位した頃だろうか、おじさんが戻ってきた。
そして、俺の前に来ると右手の拳を俺の目線まであげて手を広げて俺に中を見せた。
「これは・・・」
そこには俺が注文した通りの物があった。
色は銀色で多分鉄製、小さい鎖を繋ぎ合わせたものだ。
「・・・3日前にこれを注文した客が今日取りに来た時にキャンセルしたものだ」
「売ってもらえるんですか?」
俺が尋ねると、おじさんは静かに頷いた。
「どうせこのままじゃ処分する。
買い手がいるならそれに越したことはない」
「ありがとうございます。
それで・・・値段は?」
俺が尋ねると、おじさんはボソリと値段を言った。
「えっと・・・失礼かもしれませんがずいぶんとお安いんですね」
おじさんの提示した値段はオーダーメイドで作ってもらった物って事を考えるとかなり安かった。
「・・元値の半額にしてある。
ガキでも女の前ならかっこつけたいだろ。
女に物渡す時は、こんな値段どうってことないって余裕でいるのが男だ」
おじさんは表情を変えずに俺に言った。
・・・何だこのおじさん、めちゃくちゃカッコいい。
「あ、ありがとうございます!」
俺はおじさんにお辞儀をして急いでお金を渡した。
「・・・大きさを調整してくるから少し待ってろ」
おじさんはお金を受けとると、そう言って奥に行った。
あのおじさん、顔恐いけど無茶苦茶優しいな。
俺、鍛冶屋で買えるものは絶対にここで頼むようにしよう。
これは客になって得はあっても絶対に損しないぞ。
俺がおじさんのかっこよさに惚れて見事に常連客になることを決意すると、おじさんが戻ってきた。
「・・鎖の両端に小さな切れ目を入れてある。
取り外しするときはそこを使え」
おじさんはそう言って、先程のネックレスを俺に手渡した。
「ありがとうございます!」
俺はそれを受け取ると、おじさんにお辞儀をしてアルマの所に戻った。
「・・・どうやら、お目当ての物は買えたようだな」
俺の笑顔を見て察したのか、アルマが言ってきた。
「あぁ、運が良かったよ。
それでアルマ、1つお願いがあるんだけどいいか?」
「ん?何だ?」
「・・・お母さんの指輪、貸してくれないか?」
俺は真剣な顔でアルマに言った。
すると、アルマの表情がくもった。
「・・・何に使うんだ?」
アルマが慎重に尋ねてくる。
まぁ、それが当たり前だよな。
アルマにとっては大切な物だし。
「おまえの悩みを解消するんだよ」
俺が言うと、アルマが首を傾げた。
「俺の、悩み?」
「そう、おまえの悩み。
そこから先は、指輪を貸してくれれば分かるよ」
俺が言うと、アルマは少し考えた後溜め息をついた。
「・・・はぁ、分かったよ」
そう言うと、アルマはズボンのポケットから指輪を取り出した。
「ありがとな」
俺はその指輪を受け取った。
「それじゃあ、悪いがこれを持って目を閉じてもらえるか?」
そう言って、俺はアルマに持っていたクレアの誕生日プレゼント入りの紙袋を渡した。
「はぁ?そこまでしなきゃいけないのかよ」
「悪いな」
俺が苦笑いしながら言うと、アルマは渋々といった感じで紙袋を受けとり静かに目を閉じた。
「・・・言っておくが、このままいなくなったらぶっ飛ばすからな」
目を閉じたアルマが俺に言ってくる。
「俺ってそんなに信用ないか?」
「お前には借りがあるけど、その指輪が関わるなら別だ」
「・・・あぁ、分かってるよ」
だからこそ、これを買ったんだ。
「・・・よし。
アルマ、目開けていいぞ」
俺が言うと、アルマがゆっくりと目を開けて自分の首もとを見た。
「・・・お前、これって」
アルマが自分の首からぶら下がっている物を見て驚いた顔をした。
「お前、今日俺といる間ずっと指輪を落としていないか気にしてただろ?
だから、そうしちまえばそんな心配しなくていいと思ってさ」
アルマの首からは、先程俺が購入した鎖に通されて指輪が垂れ下がっている。
「・・・気付いてたのか」
俯いて言うアルマから紙袋を貰い、俺は笑いながら答えた。
「頻繁にポケットを触ってたからな。
そういうものって落としても気付かないから恐いよな」
俺なんて前世じゃよく携帯とか財布とか落としてたから、気持ちはすごく分かる。
「・・・あぁ」
アルマが優しく指輪を握る。
「ガルファット」
アルマが俯いたまま俺の名前を口にする。
「ん?」
そしてアルマは顔を上げて、自然なそれでいて満面の笑顔で俺に言った。
「ありがとう」
俺はあまりの出来事に固まった。
・・・え?
今、お礼言われたんだよな?
・・・なんだこれ、めちゃくちゃ可愛い。
「なんだよ、急に黙りこんで」
アルマがいつもの表情に戻って俺に言ってくる。
何だ?さっきの一瞬、俺の心を何かが満たした。
それが何だったのかはよく分からないが、1つだけ言えることがある。
今・・・アルマがすごく愛おしい。
マズイ、やったらいけないとは思ってはいるが思ってはいるんだが・・・アルマを思いっきり抱き締めたいと思ってしまっている。
抑えるんだ!
いくら可愛くてもそれはダメだ!
てか、さっきの可愛さはダメだろ!
フィーネが初めて俺への敬悟やめた時並の可愛さだったぞ!
「おい、聞いてるのか?」
声をかけても俺が反応しないからか、アルマが俺に尋ねてくる。
「あ、あぁ、悪い」
「なんだ?おかしな奴だな」
「なぁ、アルマ」
「ん?どうした?」
アルマに尋ねられて、俺は素直な感想を口にした。
「・・・さっきのお前、めちゃくちゃ可愛かった」
俺の言葉を聞いて、アルマが顔を真っ赤にした。
「べっ、別に可愛くなんかなかっただろ!
ただ礼を言っただけだぞ!」
そう言うアルマに俺は首を横に振った。
「いや、正直な話をすると・・・俺、あの時のお前大好きだ!」
「・・・はぁ!?
ちょっ、おっ、お前何言って・・・」
「あんな笑顔なかなか見れるもんじゃないからな。
もう心の可愛いのメーターが壊れるかと思った」
「はっ、恥ずかしい事言うんじゃねえ!
ていうか、あの時のってことは普段どうなんだよ!?」
「ん?そうだなぁ・・・」
アルマに尋ねられて、俺は少し考える
「普段も嫌いではないけど・・・」
「・・・けど?」
俺は苦笑いをした。
「もっと優しいほうが嬉しいな」
俺が答えると、アルマが俯いて体をプルプルと震えさせていた。
そして急に顔をあげると・・・
「悪かったな!暴力的で!」
と言って、また俺の後頭部をアルマに殴られた。
「アルマ・・・殴りすぎだよ」
「うるせえ!用事は終っただろ!
飯食いに行くぞ!」
「え!?ちょっ!?はーい!」
アルマは俺の腕を掴んで引きずりながら歩き出した。
・・・チラチラ見えたアルマの顔が嬉しそうに見えたんだけど、多分見間違えだな。




