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第48話 お詫びと絶望

「う、うぅ・・・」


目が覚めると、見覚えのある天井を見ている事に気付いた。


ここは・・・あぁ、宿の部屋か。


俺は体を後ろに移動させ、壁を背もたれにした。


寝起きだからなのか、脳がまともに働いていない。


寝不足の寝起き感覚って感じだな。


なのに、頭痛の痛みだけはハッキリ分かる。


「スゥーー・・フゥーー・・スゥー・・フゥーー」


俺は深呼吸をして、何とか頭痛を抑え込もうとした。


すると、痛みが和らいで楽になった。


「・・・ん?」


ふと、自分の左手に覚えのない感覚があった。


俺は左に目をやる。


すると、床に座りベッドに顔を乗せているクレアの寝顔が目に入った。


確認すると、俺の左手を両手で握っている。


・・・何でこんな事になってるんだ?


俺は部屋の中を見渡した。


夜にしては少し明るい、多分早朝の時間だろう。


元々クレアが寝ていたベッドにはロミアが寝ている。


駄目だ、まだ頭がうまく働いていない。


とりあえず、昨日の出来事をせいりしてみよう。


えっと、昨日はエミリアと勝負して、終わったあとクレアに殴られて走っていったクレアを追いかけて町に戻った。


で、一回宿に戻ったけど部屋からクレアの返事がなかったから町の中走り回って、中流階級のエリアにはいなかったから下流階級に行った。


そこで金をすられてアルマに説教されて、町の外に探しに行って、そこでも見つけられなかったんだよな。


それで、町の入り口に戻った時にぶっ倒れて・・・


そうだよ。


俺、あの時あそこで倒れたんだ。


で、通りかかったアルマに担がれて・・・担がれて。


俺の記憶はそこで無くなっていた。


そうか、アルマの奴ここまでちゃんと俺を運んでくれた。


今度、会って改めてお礼を言わなきゃな。


そう思った俺の脳裏に、アルマの言葉が過った。


(礼は言葉じゃなくて飯で貰いたいな)


分かってるよ、美味い飯奢るよ。


俺がそう思い笑った時だった、アルマの言葉がもう1つ過った。


(そんなの、ごめんって言えばいいだろ)


俺はクレアの顔を見た。


昨日泣いたからだろう、目の周りが少し腫れている。


・・・一晩中、そばにいてくれたんだな。


「ガル、ファット、君・・・」


クレアが静かに俺の名前を呼ぶ。


寝言だろうけど、寝言で名前を呼ぶほど心配してくれたのか。


「ん、んぅぅー」


もう1つのベッドから声が聞こえた。


見ると、ロミアが体を起こし伸びをしていた。


「おはよう、ロミア」


俺が小声で言うと、ロミアはこちらを見て驚いた顔をした。


だが、すぐに寝ているクレアの姿を見て自分の口を手で覆った。


大声を出そうとしたのを抑えたのだろう。


ロミアはそのまま小走りで俺のそばに来た。


「おはよう、起きてたんだね」


口元から手を離して、ロミアは俺と同様小声で話しかけてきた。


「あぁ、ついさっき起きた」


見ると、ロミアの目も少し腫れていた。


「心配したんだよ、ガルがここに運ばれてきた時。

話しかけても全然反応しないし、体はすごく冷たかったし」


ロミアは小声で言っているが、その目は明らかに怒っていた。


「クレア、一晩中ガルのそばで看病してたんだよ。

お湯で濡らした布で体温めたり、お水飲ませたり」


「そうだったのか・・・」


まったくもってクレアには頭が上がらないな。


「あ、そうだ。少し待ってて」


ロミアはそう言うと、部屋の鍵を持って部屋を飛び出した。


ん?どうしたんだ?


それから10分くらいしただろうか、ロミアが帰ってきた。


ただ、部屋を出た時とは違いその手にはお皿が持たれていた。


「はい、これ」


そう言って、ロミアは持っていたお皿を俺に手渡した。


俺はそれを両手で受け取り、中を見た。


そこには、キレイな茶色い色のスープが入っていた。


温かくて、少し湯気がたっている。


とても、美味しそうな匂いがする。


「これは?」


「ギラールさんに教えてもらって作ったんだ。

ガルが起きたときに飲んでもらう為の特製スープ。

栄養たっぷりで、栄養不足の時にはこれが効くんだって」


「へぇ、じゃあさっそくいただこうかな」


「うん、はいこれスプーン」


俺はロミアからスプーンを受け取り、スープをすくった。


昨日の朝以来の食事だからだろうか、俺はすぐさま口の中にスプーンを運んだ。


「あ、ちなみに色々な栄養のある物使ってるからとっても苦いよ」


俺は盛大にむせった。


ロミアに皿とスプーンを渡した。


「ゲホッ、ゲホッ、なんだこれ」


あまりの苦味に涙が出てきた。


口の中いっぱいにあらゆる苦味が広がっていて、ものすごく後味が悪い。


「ほんとは美味しく出来るんだけど、クレアと私を心配させた罰として美味しくする物はあえて入れなかったんだ」


「な、なんてことを・・・」


「でも、ギラールさんが言ってたけど栄養に変わりはないし食べれない訳じゃないから大丈夫だよ」


「いや、大丈夫じゃない・・・」


その食べれないはきっと体内に入れてはいけないって事だろ。


体内に入れちゃいけないものは使ってなくても、これを食べるのは苦行だ。


「ほら、ガル口開けて」


ロミアが笑顔で、先程のスープをすくったスプーンを俺に向けている。


「あの、ロミアさん、それ全部飲まなきゃ駄目ですか?」


「うん、全部飲まなきゃちゃんと栄養がとれないんだって。

はい、あーん」


「あ、あーん・・・」


俺は涙目になりながらスープを飲んだ。


残したい気持ちはあるけど、俺のために作ってもらったものだから残せない。


・・・残せないんだ。


その後、俺は涙目になりながら何とかスープを飲み干した。


「ご、ごちそうさまでした」


俺は空になった皿と使い終わったスプーンをロミアに渡した。


「良かった、これでもう一回寝れば大丈夫だよ」


ロミアさん、笑顔でそれを言ってくれるのは嬉しいが口の中がそれどころじゃないんだ。


「そうしたいのは山々なんだが、口の中が大変な事になってて寝れそうにないです」


「少しすれば口の中の苦味は無くなるよ。

じゃあ、私はお皿とスプーン戻してくるね」


そう言って、ロミアは部屋を出た。


「・・・すっげぇ目が冴えたな」


スープを最初に飲んだ時のインパクトが強すぎて、頭がボッーとしてたのが吹っ飛んだ。


俺は隣で寝ているクレアの顔を見た。


少しうるさくしてしまったけど、起こしてはいないようだ。


俺はクレアの手を握った。


武術をしているにしては綺麗で、だがそれでいて頼もしい手だ。


とても落ち着く、安心感があるというのだろうか。


俺はそのまま静かに目を閉じた。


その後、ロミアが部屋に戻ってきてバイトの時間まで寝ると言って寝た。


俺も、クレアが起きるまではそのままでいた。







「ん、んぅぅー!」


どれくらい時間が経ったかわからない頃、近くで声が聞こえた。


俺は静かに目を開けた。


すると、すぐ近くでクレアが伸びをしていた。


「おはようございます」


俺が挨拶をすると、クレアが伸びをした状態で止まりこちらを見た。


「ガルファット君!?

良かった目が覚めたんだね!」


そう言って、クレアが俺に抱きついてきた。


「はい、ご心配おかけしました」


「ほんとだよ・・・心配だったんだよ」


クレアが俺をギュッと抱きしめる。


「・・・昨日からずっとそばにいてくれてたんですよね。

ロミアから聞きました」


「ロミアちゃんも、僕がバイトがあるから寝なよって言うまで、ずっとガルファット君の側にいたよ」


「そうだったんですか。

今日起きた時にロミアと話しましたけど、本人はそんな事言ってませんでした」


俺は、そこでクレアとの会話を一度終えた。


勇気を出して、言わなきゃいけない言葉があるからだ。


「クレア、僕はあなたに言わなきゃいけないことがあります」


「言わなきゃいけないこと?」


俺はクレアの体をゆっくりと自分から離して、クレアの肩を掴んだまま目を見た。


「・・・ごめんなさい」


俺の言葉を聞いて、クレアが俺に優しく問いかける。


「それは、何に対して?」


何に対して・・・何に対してか。


「あなたとした大切な約束があったのに、それを忘れて伝えることを疎かにしてあなたを傷つけてしまったこと。

あなたに心配をかけてしまったことです」


俺が真剣な目で言うと、クレアは少しして小さく溜め息をついた。


「はぁ、僕との約束忘れてたんだ」


「あ、いや、その・・・はい、殴られるまで忘れてました」


俺は正直に答えた。


「あんなにお願いしたのに・・・」


「返す言葉もございません」


俺は頭を下げた。


「・・・ガルファット君、僕の顔を見て」


頭を下げて謝る俺に、クレアが優しく言った。


「え?はい、これでいいで・・・」


俺が喋りながら頭を上げた時だった。


俺の言葉は止められたのだ。


クレアの唇によって。


「!?!?」


驚きのあまり、俺は固まった。


柔らかい感触を唇に感じる。


そして、どれくらい時が経ったか分からない頃クレアがゆっくりと顔を離した。


「これで、もう約束わすれないでね?」


クレアが頬を赤くしながら、俺に言ってきた。


「は、はい!」


俺はあまりの出来ごとに動揺しながら返事をした。


「あ、そうだガルファット君。

もし体調が大丈夫なら、少し外の空気を吸ってきなよ。

いつも体動かしてる人がずっと寝たままだと、逆に体調悪くしちゃうから

僕は今日は外出しないから、いつでも部屋に入れるし」


「そ、そうですね。

じゃあ、少し散歩行ってきます」


俺は自分の顔が赤くなっているのを悟られないように、足早に部屋を出た。


良かった、ロミアはバイトに行っているから今のは見ていないな。


見てたら絶対私もって言われる所だった。


俺は、先程のクレアの顔を思い出す。


・・・可愛すぎるだろ。








昨日、アルマちゃんがガルファット君を部屋まで担いで来た時はさすがに驚いた。


しかもガルファット君は脱水症状と栄養不足で死にかけてるって言われた時は、正直ガルファット君が起きるまで生きている心地がしなかった。


「あんたがクレアか?

俺が言えたことじゃないけど、このバカ起きたらちゃんとあんたに謝ると思うからその時は許してやってくれないか?

こいつ、気絶するまでずっとあんたに謝りたがってたから」


昨日のアルマちゃんの言葉が僕の脳裏によみがえる。


ガルファット君は倒れるその時まで、僕をずっと探してくれた。


僕を忘れてなんか、いなかったんだ。


むしろ、約束をちゃんと思い出してくれた。


僕が一方的に殴ったのに、怒ったのに、謝ってくれた。


それが嬉しかった、同時に申し訳なさを感じた。


だから、何かお詫びをしなきゃいけないと思った。


でも、だからって・・・。


先程自分がした行為を思い出す。


「何で、あんな事したんだろう・・・」


僕は、ベッドにうつ伏せにダイブした。


今まで覚えている限りで誰かとキスした事なんてなかった。


唇になんて、尚更だ。


「僕の初めて・・・あげちゃった」


何だろう、ガルファット君にもらわれたのは別に嫌じゃないしむしろ嬉しいんだけど。


・・・嬉しいんだけど!


何とも言い表せない感情で胸が締め付けられる。


「でも・・・」


僕は仰向けになって、手で顔を隠す。


唇って、あんなに柔らかいんだ。


自分の顔がまた赤くなったのがわかった。


僕はしばらくの間、顔の火照りが無くなるのを待った。







「・・・さっきの感触、まだ残ってるな」


俺は町の中を歩きながら、ポツリと呟いた。


いや、決して不快に思っている訳ではないしクレアみたいな美少女にキスされたのは嬉しいんだけど。


嬉しいんだけどさ・・・成人女性にキスしてもらった事実は色々ヤバイよ!


フィーネは頬だからまぁセーフで、ロミアも口にした事はあるけどまだ子どもって事でギリギリセーフだけど!


クレアはほぼ成人でしかも口同士だった!


はぁ、次クレアと顔合わせる時どんな顔をすればいいんだよ。


・・・とりあえず赤面だけはしないようにしとくか。


そう思いながら、前を見た時だった。


見覚えのあるお店と見覚えのあるお爺さんが目に入った。


「どうも、昨日ぶりですね」


俺が近寄って声をかけると、お爺さんは左右をキョロキョロした後下を見た。


「おぉ、坊や待っておったぞ。

結局、あの後お嬢ちゃんは見つかったかの?」


お爺さんの問いかけに、俺は頷いた。


「はい、少し死にかけましたけど何とか謝ることもできました」


「ホッホッホッ、それは良かったの。

そうじゃ、これが約束の金じゃ」


そう言うと、お爺さんは懐から少し大きめの茶色い袋を出して俺に手渡した。


「ありがとうございます。

それにしても、何か今日は人が多いですね」


俺は辺りを見渡した。


ここ数日町の中を歩いたり走ったりしたけど、今日は人が多い気がする。


いや、多いというか何か皆そわそわしているって感じだな。


「坊や知らぬのか?

今朝、隣のエリアで火事があったんじゃよ。

幸い燃えたのは小さな建物一戸だけで済んだんじゃが、全焼しておったらしい」


「火事・・・ですか」


この世界では火を扱うには魔法か道具を使う事になるけど、放火かただの事故でなったのか分からないのかな?


「その火事って、事故ですか?

それとも、放火ですか?」


俺が尋ねると、お爺さんは首を横に振った。


「それは分からん。

ただ、あそこじゃ何があってもおかしくないからの。

放火でも不思議はないじゃろ」


「・・・そうですか。

やっぱり物騒なんですね」


「そうじゃな。

スマンが、ワシはこのあと用事があるからこれで失礼するよ。

お嬢ちゃんにもよろしく伝えといてくれ」


「分かりました、また何処かで見かけたら声をかけてください」


「ホッホッホッ、そうじゃな。

・・・また近いうちに会えるじゃろう」


お爺さんはそう言うと、俺に背を向けて手を振ってそのまま歩いていった。


また近いうちに会える?


何だろう?あのお爺さん毎日徘徊でもしてるのか?


「とりあえず特に約束とかもないし、一回宿に戻るか」


俺はお爺さんから貰った袋の中を確認した。


確かに約束の額と同じだけ入っているな。


・・・何だか不安になってきたな。


あまり金は持ち歩かないからな、この額でも不安になるんだよな。


しかも、前に金をすられたばかりだし。


さっさと宿に戻るか。


そう思い、俺は宿へ向かって歩きだした。


少しして宿が見えてきた時だった、前から見覚えのあるやつが歩いてきていた。


あれは・・・アルマか?


そいつは俯いてふらつきながら歩いているが、見たところアルマのようだ。


俺はそいつに歩いて近づいた。


・・・うん、確かにアルマだ。


「おーい、アルマ」


俺は手をあげてアルマに声をかけた。


しかし、アルマは気づいていないのか足を止めない。


そして、そのまま体を預けるように俺にもたれかかった。


「ん?おい、どうしたんだよ?」


そう言って、俺はアルマの背中が目に入った。


「・・・おい!アルマ!なんだこれ!」


俺はアルマの体のあちこちに小さなケガを確認した。


いや、そんなのは言ってしまえばどうでも良かった。


問題なのはアルマの背中だ。


アルマの背中には、幅10センチ近くの木の板が突き刺さっていた。


俺はアルマの顔を確認した。


アルマは額から血を流している。


何だ!?意識がないのか!?


アルマは目は開いてはいるが、心ここにあらずという様子だ。


俺の言葉にも反応しない。


「クソッ!とりあえず文句は言うなよ!」


そう言って俺は、アルマをお姫様抱っこの要領で抱えて宿へ走った。


「クレア!僕です!扉を開けてください!」


俺は宿へ到着すると、真っ先に部屋へ向かって扉の前で中にいるクレアを呼んだ。


そして、すぐに扉が開く。


「ガルファット君どうしたの?

そんなに慌てて・・・え!?アルマちゃん!?」


クレアは俺の抱えているアルマを見て驚いた。


「一刻を争います!クレアも手伝ってください!」


「う、うん!分かった!」


俺はそう言って、中へ入り床にアルマをうつ伏せの状態で寝かした。


俺は自分の手の平を見た。


そこには大量の血がついている。


「・・・クソッ!」


出血が多すぎる。


とりあえず他に大きな傷はなさそうだから、まずは背中の傷を塞ぐか。


「クレア!僕が合図したらアルマの背中の板を抜いてください!」


俺は入り口で立ち尽くしているクレアに言った。


「で、でもそんな事したら血が・・・」


「板が抜けた瞬間に僕が傷口を塞ぎます!

スピード勝負です!お願いします!」


俺がおねがいすると、クレアは真剣な顔で頷いた。


「・・・分かった!だけど、僕は治療は何も出来ないから期待しないでね」


「僕が何とかします。

アルマには、まだ飯を奢る約束を果たしていませんから」


俺が言うと、クレアは俺の横に膝をついた。


俺は、右手に魔力を注入した。


属性は治癒だ。


俺はロミアやシルビアと比べて使える治癒魔法は少ない。


だけど、今ロミアを呼びに行っている余裕はない。


俺が使える中で最善で最高の魔法を使う。


「・・・よし!クレアお願いします!」


「うん・・・!」


クレアはアルマに刺さっている木の板を右手で掴み、左手で背中を押さえた。


「アルマちゃん!ごめん!」


クレアはそう叫んでアルマの背中から一気に板を引き抜いた。


血が溢れるように出てくる。


俺は右手をアルマの背中の傷口に向けた。


絶対修復アブソリュティーリペア!」


俺が呪文の名前を叫ぶと、アルマの傷口が白い糸で縫われ始めた。


絶対修復アブソリュティーリペアは治癒魔法の中では難易度が高い方だ。


体の外と中の傷を同時修復するという魔法だ。


しかし、一見便利な魔法に思えるがこの魔法は使える範囲が決められており多分アルマの傷口ぐらいの大きさが限界だ。


尚且つ、燃費も悪いせいで使う人は少ないとシルビアが言っていた。


だけど、俺なら人より魔力の回復速度が早いから気にせずに使える。


逆にいえば、他にこの状況を打破できそうな魔法を俺は使えないのだ。


「・・・ふぅ、終わった」


俺はアルマの治療が済んだのを確認して、魔法を止めた。


とりあえず、これで命の方は大丈夫そうだな。


小さな傷が何個かあるが、それは後でこまめに治癒魔法を使って治そう。


問題は・・・だ。


俺はアルマの体を抱き起こして、顔を確認した。


「こいつ何で・・・」


俺はアルマの左胸に耳を当てた。


心臓の音はちゃんと聞こえる、口もとに手をかざすが息もしている。


「何で、痛がらなかったんだ?」


俺と会った時も、さっきクレアが板を引き抜いた時も、そして今もだ。


町の中で会った時と今は目を閉じている。


とりあえず、ベッドに寝かせて目を覚ますまで待つか。


「クレア、とりあえず命の危険は無くなったので水と布を持ってきてもらえますか?

アルマの血を拭きたいんで」


「分かった、すぐに取りに行ってくるね」


クレアは頷くと、部屋を飛び出した。


しかし、何でこいつこんな状態で町の中をふらついてたんだ?


「・・・ん、うぅ・・・」


俺が疑問に思っていると、アルマが唸りながらゆっくりと目を開いた。


「アルマ!気がついたのか!?」


俺が尋ねると、アルマはこちらを向いた。


「お前は・・・ガルファット、か。

どうして、お前が?」


「それはこっちのセリフだ!お前こそ何があったんだよ!」


「俺・・・?俺は・・・」


アルマは少し考えこむと、何かを思い出したのか急に顔を青くして震え始めた。


「ガルファット・・・」


「どうした!?」


アルマは一言、ポツリと呟いた。


「母さんが・・・死んだ」


「・・・え?」

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