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第40話 扱いと親心

ブロンさん達の馬車に乗せてもらってから、2週間の時が過ぎた。


もうすぐ、ローリンに到着するとのことだ。


初めての事が多かったからか、色々な出来事が頭の中で蘇る。


ロミアは最初から最後のほうまで、馬車から見える景色に目を輝かせていた。


周りが木々に囲まれた森、その姿の途中が雲で所々隠されている山、底が見えない真っ暗な谷、甘い香りが辺りを満たす綺麗な花畑、その他色々な所を見た。


俺も、初めて見る景色には心が踊った。


今は仕事を持っているわけではないのに、ここの景色はこういう場面で使えるなぁとか考えてしまったのは職業病だな、きっと。


夜は馬車を止めて、俺、ロミア、クレアの3人で交代で見張り役をした。


ロミアは慣れてなかったからか、最初は反動で朝とか昼に少し寝ちゃっている時があったなぁ。


俺はというと、少し退屈だなぁと思うことはあっても途中で寝たりするということはなかった。


ある日、退屈しのぎに何かないかなぁって探してたら全身緑色の男の子がいたのでその子と遊んだ事はあったけど。


夜でしかも森の中だから不思議に思ったけど、俺の言葉は分かるみたいだけどあっちは言葉を話せなかったから、特に何か聞き出せる訳でもなかったから交代の時間まで遊んだんだよなぁ。


それで突然いなくなった後に大量の木ノ実とか持ってきて俺にくれた後、森の中に消えてその一回以来会わなかった。


次の日訊いてみたら、俺が遊んでいた子はゴブリンの子どもだったらしい。


多分、その日馬車を止めた場所がゴブリンの巣の近くだったのだろう。


通常ゴブリンは人間に近づくことが無いんだけど、子どもだから興味本位で来たようだ。


ちなみに、そのゴブリンの子どもが持ってきてくれた木ノ実や葉っぱは全部食用で、中には市場じゃ滅多に出回らないレアな物もあったみたいだ。


荷物の運搬をしているブロンさんとミレルダさんが目を丸くしながら、必死に力説してくれていたから間違いないだろう。


近くの町に着いた時に高価な物は売ってしまおうかという意見も出たが、せっかくの貰い物だから皆でその日の夜に料理して食べた。


・・・俺のこれまで食べた料理のランキングの上位に間違いなく食い込むくらい旨かった。


ミレルダとロミアが張り切って料理していたなぁ。


その時に、クレアがミレルダにあげた包丁とフライパンも活躍してたな。


光輝く満天の星空の下で、薪を集めそれを石で囲って火を焚いて料理をする。


出来た料理を皆で笑いながら、話しながら食べる。


何かキャンプみたいで楽しかったなぁ。


食料も足りないものは自分達で調達したりした。


クレアは肉、俺は魚、ロミアはミレルダ達と木ノ実や葉っぱなどの野菜果実類を担当した。


クレアは素手で獲物を仕留めるおかげで、綺麗な状態で料理できるからって評判だったなぁ。


ミレルダやブロンが動物を捌く光景は俺も見たときは少し罪悪感があったけど、その分食べ物のありがたみはより一層増したな。


あ、俺は魚を川で釣ってたよ。


・・・最初はね。


結局一匹も釣れなかったから、自分で網を作ってすくい始めました。


本当に、釣りのうまい人は尊敬します。


俺は網でさえ、時々魚に逃げられてました・・・。


ロミア達はというと、何か見たこともない木ノ実や葉っぱを取ってきてたなぁ。


火を通さなきゃ食べれないものや、逆に火を通したらいけないもの、保存がきかなくて新鮮なうちに食べなきゃいけないものや、長期保存のできるもの。


この旅でたくさん学んだなぁ。


そういえばロミアのやつ、色々な事をミレルダやブロンに訊いてたな。


何でもそつなくこなすように見られがちだけど、その根本はああやって疑問に思ったことをすぐに人に尋ねるところからなんだろうな。


「おーい、見えてきたぞ!」


馬を使って馬車を走らせているブロンが、後ろの荷台にいる俺たちの方を見て叫んだ。


その言葉に反応して、俺とロミアがブロンの横まで行って外を見る。


「お、おっきい・・・」


ロミアが驚きながら、ぽつりと言葉を漏らす。


「これは確かにすごいな」


俺も同じように感心した。


俺たちが見たのは、とてつもなく大きな壁だった。


何かを囲うようにそびえ立つ壁と、その中から飛び出している一本の塔が見える。


「ハッハッハッ!驚いたか!

ローリンの中ではここが一番大きな町だからな!

ソロモン名物の巨壁もバカみたいにでかいしな!」


「ソロモンってこの町の名前だっけ?」


ロミアの問いかけに俺は頷いた。


「その通り。

ローリンで一番大きい町で、魔法学校のある唯一の町だ。

貿易も結構盛んで色々な人がいるらしい。

まぁ、俺も本で読んでそれくらいは知ってたけど実際に見ると凄いな」


田舎で生まれ育った子が都会に行ったのと一緒だからな。


これはワクワクするわ。


「・・・もうそろそろ着く頃だし、二人には話しておこうかね」


ミレルダが前で景色を見ている俺とロミアに向かって言った。


俺とロミアが後ろを振り返ると、ミレルダが手招きをしていたので俺たちはミレルダの前に座った。


「本当はもう少し早めに言っておけば良かったんだろうけど、結局はギリギリになっちまったね」


「どうしたんですか?」


俺が尋ねると、ミレルダはいつになく真剣な顔で話し出した。


「二人とも、魔法学校へ入学する事に変わりはないんだろ?」


「はい、その為にここに来ましたし」


「二人とも、アビリル以外の国に来るのは初めてかい?」


「そうですね、むしろミレルダさんとブロンさんと会ったあの町ですら数える程度しか行ったことありませんでしたし」


「そうかい・・・」


ミレルダが少し暗い顔をする。


「さっきからどうしたんですか?

いつものミレルダさんらしくないですよ?」


「二人には、特にロミアには知っておいてもらいたいことがあってね。

この町の特徴でもあるからね」


「特徴?」


「この町はさっきガルファットが言ったように色々な人種がいるんだよ。

中には、魔族の事をよく思っていない人達もいる。

その事を最初に頭に入れといて欲しいんだよ」


ミレルダにそこまで言われて、俺も察した。


「それは、だいたいどれくらいの割合の人なんですか?」


「貴族なんかの上流階級に多いね。

ああいうのは周りの目を気にするから、魔族の事はまず毛嫌いしていると思っていいね。

ただ、中にはそういうのを気にしない貴族もいるからそこはやっぱり人それぞれだね」


「なるほど。

・・・師匠はその事を知ってたんですか?」


俺が尋ねると、クレアは俯きながら頷いた。


「少しはね。

ただ、魔法学校の生徒や先生達は人間も魔族も差別なく接する人が多かったから大丈夫だと思ったんだ。

入学試験まで日がそこまである訳じゃないから、寮に入ってしまえば町に行くのも少なくなるって考えてたし」


なるほど、それでシルビアもロミアが魔法学校に入学するのを止めなかったのか。


「じゃあ、パパが最後まで私を止めてたのも・・・」


「多分、それを考えての事だと思う。

レオナルドさんも、カリアさんと一緒に旅をしたことがあるみたいだしその時に経験してたんだろうね」


だから、最後までロミアが魔法学校に入学するのを止めてたのか。


いや、正確にいえば魔法学校への入学っていうよりはローリンの町に行くことか。


そりゃ、自分の娘がそんなところに行くって聞いたら止めるわな。


レオナルドは俺の中で、娘離れできてない父親ってイメージだったけどちゃんとロミアの事考えてたんだな。


「なるほど、大体の事は分かりました。

ロミアどうする?今ならまだ引き返せるけど・・・」


俺は尋ねながらロミアの方を見たとき、この質問に意味がないと悟った。


なぜなら、ロミアも俺を見ていたのだ。


・・・いつもと変わらない笑顔で。


「・・・その顔は、何がなんでも行くって顔だな」


「もちろん、私が行かなくてもガルは行っちゃうでしょ?」


「だからって、わざわざ自分から行くことはないだろうに」


「じゃあ、ガルは私が困ってたら助けてくれないの?」


「・・・多分助けるだろうな」


「なら私は大丈夫だよ」


はぁ、何か丸め込まれた気がするな。


「ミレルダさん、そういうことだから私は大丈夫です」


ロミアが笑顔でミレルダに言った。


「そりゃ、あんたが良いなら私が言うことはないけどほんとに良いのかい?」


「ガルのパパとも約束してますから。

ガルが何かバカな事をしたら、全力で殴って止めるって」


そういえば、そんな約束してたな。


「・・・クレアが諦める気持ちが何だか分かる気がするよ」


そう言って、ミレルダはクレアを見た。


クレアも苦笑いしながらミレルダを見る。


「二人とも!面白いものが見れるぞ!」


ブロンさんが俺たちに向かって叫んだ。


「ガル!行こう!」


俺はロミアに手を引っ張られて、引きずられるように前に行った。






「それにしても、よくあなたがロミアちゃんが魔法学校に行くのを許したわね」


私が言うと、カリアが不思議そうに首をかしげた。


「急にどうしたんだ?」


「ロミアちゃんとガルに聞かれると困るからあの子たちが出発するまであえて訊かなかったけど、私はレオナルドさんよりもロミアちゃんを一番止めるのは、カリアだと思ってたから」


私の言葉に、カリアが察したのか苦笑いをした。


「あー・・・うん、最初は私もレオほどじゃないけど反対しようと思っていたんだけど」


「だけど?」


「無理だった!」


カリアはそう言うと声をあげて笑った。


「ロミアの奴、私とレオに魔法学校に行きたいって最初言った時バカみたいに笑顔だったんだよ。

あんな顔されちゃ、さすがに止められないわ」


「ロミアちゃん、ガルと一緒に旅できるのもそうだけど魔法学校に行くこと自体も楽しみににしてたものね」


「それに、親としてやる前からダメって言わないでとりあえずやらせて自分で経験させる方がいいと思うし」


「それは、自分の経験上の話し?」


私が尋ねると、カリアは俯いて先程より少し暗い表情になった。


「そうだな、私もあの時レオに会ってなかったら今頃したくもないことさせられてただろうなぁ。

まぁ、レオと一緒に旅してる間も嫌なことは色々あったけど。

レオはその時の事を思い出して、ロミアを止めてたんだろうし」


「ローリンなんてそんなことが頻繁に起こっているものね、正直私もあの町はそこまで好きじゃないわ」


私が苦笑いしながら言うと、カリアが顔をあげて笑いながら言った。


「そんなこと言って良いのか?

まぁ、あんたの血筋聞いたときに最初は信じられなかったけど」


「カリアこそ、普通だったらこんな所で私とお茶飲んでいられるような立場じゃないでしょ?」


「私はいいんだよ、もうあの家は捨てたんだから」


「私もよ、私にとってあの家の身内であることでプラスに思うことなんて1つもなかったわ」


「似た者同士ってことだな」


「そうね」


私とカリアはお互いに見合わせて笑った。


違うところはあっても、似た者同士だからなのかカリアとはやっぱり気が合うのよね。


「そういえばそっちこそ良かったのか?

ガルファット君がローリンに行くことを許可して。

絶対目つけられるんじゃないのか?」


「あの子こそ止めても絶対に行くから、あえて接触しやすいようにしといたわ。

ガルならなんとかできるだろうし」


「いや、ガルファット君は大丈夫だと思うけどロミアに何かされたらどうするんだ?」


「・・・ガルならきっと屋敷を消し飛ばしてくれるわ」


「ガルファット君を怒らせたら、命がいくつあっても足りないな」


笑いながらカリアの言った言葉に私も笑った。


ガルなら何とかするだろうけど、正直私でもあの子が本気で怒った所を見たことがないからなんとも言えないのよね。


・・・主にやり過ぎないかで。


「まぁ、ガルもそこらへんは分別ついてるから大丈夫だと思うわ・・・多分」


「何か相手が不憫になってくるな」

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