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第38話 旅立ち

日が昇り、朝日が顔を照らす。


突然暗かった視界が明るくなったので、俺は目を開けた。


「今日は修行しないのに、結局はいつもと時間に起きるんだな」


今日は魔法学校に行くために家を出る日だ。


そのため、今日は修行をしないで朝食の時間まで寝ていようと思っていたが習慣で起きてしまった。


「二度寝していざ朝食の時間になって起きれなくても嫌だし、リビングにでも行くか」


そう思い、俺は体を起こしベッドから降りて自室を出た。


「あ、ガルファット様おはようございます」


リビングに行くと、いつもと同じメイド服に身を包んだフィーネがいた。


「おはようございます。

フィーネさんは相変わらず朝が早いですね」


俺が言うと、フィーネさんはキッチンで朝食を作りながらこちらを見て笑った。


「習慣になっていますからね。

ガルファット様こそ、今日は修行はなさらないんですよね?

朝食の時間まで眠られてても大丈夫ですよ?」


「僕も修行の習慣のせいでこの時間に起きてしまったんですよ。

二度寝しても良いんでしょうけど、起きれなくなったら嫌ですからやめました」


そう言って俺はあくびをしながらのびをした。


慣れているとはいえ、この時間に起きるのは眠いな。


「ふふっ、これ飲みますか?

少し眠気も覚めると思いますよ」


そう言って、フィーネはカウンターの上にコップ一杯の水を置いた。


「ありがとうございます」


俺はそれを手にとって一気に飲み干した。


「ふぅ、少しスッキリしました。

そういえば、フィーネさんって師匠に洋服をもらってから一回しか着てないんじゃないんですか?」


俺が尋ねると、フィーネは料理をしながらこちらを見ずに言った。


「そういえばそうですね。

どうしても汚れる事を気にしてしまって、結局着れていませんでしたね」


「汚れるといけないからって言って、僕やロミア、師匠の誕生日とかでも着ませんでしたもんね。

出発するまでに一度だけでいいから、もう一度フィーネさんのあの姿を見たかったなぁ」


「・・・やっぱり、今日出発されるんですよね」


キッチンのほうから聞こえてきたフィーネの声が、少し暗くなった気がした。


「フィーネさん・・」


「大丈夫です。

ちゃんと心の準備はできてますし、伝えたい事もちゃんと伝えました。

2年以上って言われると少し長い気もしますが、ちゃんと帰りをお待ちしています」


フィーネは俺を見て笑いながら言った。


「・・・長い、か」


俺は最初、最短2年で卒業できるって聞いたときに特に何も思わなかった。


それは俺が魔法学校やこの世界の基準を知らないからだと思っていたけど、フィーネの反応を見てそうじゃないことが分かった。


多分、俺がゲームでいうところの強くてニューゲームに近い状態だから何だろうな。


皆が初めてニューゲームをやっている中で、俺はそのゲームの長さや難易度を少しだけ知っている。


周りとのズレが生じるのはそのせいなんだろうな。


まぁ、単純に俺とフィーネじゃ年齢が違うっていうのもあるだろうけど。


俺は今7歳で、フィーネは17歳だ。


10歳も年が違えば、そりゃ年月に対する考え方も違ってくるよな。


「そういえばフィーネさん。

結婚ってしないんですか?」


俺が尋ねると、料理をしていたフィーネの手が一瞬止まった。


「・・・急にどうされたんですか?」


「いえ僕が言うのもなんですけど、フィーネさん成人されてるし結婚とかどうするのかなと思ったんです。

見た目良し、性格良し、家事できるとなれば貰い手なんてそれこそ困らないくらいにいるでしょうし」


俺が言うと、フィーネは料理を再開して話した。


「私はファーリン家に仕えた時から、ここのメイドですから。

皆さんから必要にされなくなって追い出されたりしたら考えなくもないですが、そうでもない限りは結婚はしないと思います」


「それ、事実上死ぬまで結婚しませんよね?」


フィーネが必要とされなくなるなんて考えられないからな。


そうじゃなくても、俺含めて皆が家族として見てるんだ。


追い出すなんてこと天地がひっくり返ってもないだろうな。


「まぁ、その条件下でもできる方法がないわけでもないですが、今はお相手のほうが脈が無さそうですので無理ですね」


「フィーネさんに好かれて脈なしですか?

死んでるんですか?」


この人に好意を寄せられて脈が無いなんて死体以外あり得ないと思うが。


「いえ、ちゃんと生きてますよ。

元気一杯ですね」


そう言って、フィーネはできた料理を皿に盛り付けてカウンターの上に乗せた。


俺はそれをテーブルに配置していった。


「あ、ガルファット様。

私がやるので大丈夫ですよ」


「しばらくはやる機会がないですからね。

やれる時にやっておきます」


俺がそう言うと、フィーネは笑顔で「ありがとうございます」と言って料理を続けた。


そうなんだよな、こういう風にフィーネの手伝いをするのも当分先まではないんだよな。


そんなことを考えながら手伝いをしていると、ジークとシルビアがリビングに来た。


二人ともいつもと変わらない様子だった。


その後クレアも来たが、そちらも変わらずという感じだった。


まぁ、今から死にに行くって訳でもないからそんなものだよな。






「さて、そろそろか」


朝食を食べ終わったあと、俺は自室で荷物の最終確認をしていた。


確認したところ、特に忘れている物はなかった。


シルビアにもらった指環と本、ジークにもらった短剣、そして紅にもらったペンダント。


全部忘れずに入れていた。


「ガルファット君、入っても大丈夫?」


俺が荷物の確認を終えてカバンを閉めると、ドアがノックされてクレアの声が聞こえた。


「はい、大丈夫です」


俺が返事をすると、クレアはドアを開けた。


「準備はできてる?」


クレアの問いかけに、俺は首を縦に振った。


「はい、できてます。

あ、少しだけ待っててください」


俺はクレアにそう言って、紙とペンを出して机の上である言葉を書いた。


「よし、これでOK」


俺はその紙を小さく折り畳んでポケットに入れた。


「お待たせしました。

それじゃあ、行きましょうか」


「何を書いてたの?」


クレアに訊かれて、俺は笑いながら答えた。


「秘密の暗号です」


俺が言うと、クレアは首を傾げた。


「秘密の暗号?」


「はい、それよりも玄関に行きましょう」


俺はそう言って、キョトンとしているクレアの腕を引いて荷物の入ったカバンを持って部屋を出た。


「あ、ガル!クレアさん!

おはよう!」


玄関を出ると、ロミアが笑顔でこちらに手を振った。


その隣には、カリアも一緒だ。


「二人ともおはよう!」


カリアも俺とクレアに挨拶をして来た。


『おはようごさいます』


俺とクレアが挨拶を返すと、なぜか綺麗に被った。


それを見て、ロミアとカリアが笑った。


「そういえば、結局今日はレオナルドさんは仕事で見送りには来れないんだっけ」


俺が尋ねると、ロミアが頷いた。


「うん、だから昨日のうちに行ってきますって言っておいた」


「何度言っても、最後の最後まで止めてたなぁ」


「でも、最後はママがパパを担いで部屋に連れていってたよね」


「ああでもしないと、大人しくならないからね」


ロミアとカリアが笑いながら説明してたけど、絵面にしたら何か凄いな。


「おう、カリアとロミアちゃんおはよう」


俺たちが話していると、玄関からジーク、シルビア、フィーネの3人が出てきた。


「これで皆揃いましたね。

それじゃ、そろそろ出発ですね」


クレアがそう言って、俺たち出発する側とそれを見送る側で気づいたら別れた。


「ガル、ロミアちゃん。

魔法学校で一杯学んできなさい。

ただし、人には得意不得意があるから落ち込むことがあってもあまり落ち込まないでね」


「はい」


「治癒魔法、一杯学んできます!」


シルビアの言葉に、俺とロミアは頷いて返した。


「ガル、ロミアちゃんに何かあったら守ってやれよ。

ロミアちゃん、頼りない息子が何かバカな事やったら遠慮なくぶん殴っていいぞ」


ジークが笑いながら言った。


「はい!全力で殴ります!」


「よし!さすがは私の娘だ!」


ロミアが元気良く返すと、カリアが笑いながら言った。


俺の命が一気に危なくなった気がするが、イチイチ気にしてたらキリないか。


「クレアも、道中は二人の事頼んだぞ」


ジークに言われて、クレアが力強く頷いた。


「まぁ、やることなくなって暇になったら遊びに来いよ」


ジークの言葉に、クレアは笑顔で「はい!」と嬉しそうに答えた。


「皆さん、体に気をつけて下さいね」


「はい、分かってます」


フィーネの言葉に、俺、ロミア、クレアの3人は頷いた。


「それじゃあ、行ってきます」


俺はそう言って、見送り側の皆に背を向けて歩き出した。


ロミアとクレアも、そのあとについてくる。


・・・少し歩いた時だった。


俺は忘れていた事を思い出して、振り返って走り出した。


見送っていた皆がキョトンとして俺を見ている。


俺はそのままフィーネの所に走っていって、ポケットに入っていた物をそっとフィーネの手に握らせて耳元で囁いた。


俺が少し離れると、フィーネは事態が呑み込めていないようで未だにキョトンとしている。


「それじゃ行ってきます!」


俺は笑顔で皆に手を振りながらロミアとクレアの元に走った。


「二人とも早く行こう!」


そう言って、俺は二人の間を走って抜けた。


「ガル!待ってよ!」


「ガルファット君!そんなに慌てなくても大丈夫だよ!」


二人が慌てて俺を追いかけてくる。


こうして、俺たちの旅は少しドタバタしながら始まった。






「俺たちの姿が見えなくなったら、皆にバレないように読んでください」


ガルファット様が旅に出られる時に、私に囁いた言葉。


その言葉を思い出しながら、私は自分の持っている小さく折り畳まれた紙を見た。


皆様に見られたくない内容なのでしょうか?


とりあえず、自分の部屋で周りに誰もいない状態ではありますが。


私は恐る恐るその紙を開いた。


「・・・何で」


私はその紙に書いてある言葉を読んで、涙が溢れてきた。


何であの方は、私の気持ちには気付いていないのにこういうことをするのでしょうか。


その紙にはこう書かれていた。


「家族に会いに行くためなら、例え神でも悪でも倒してきます」


・・・私とガルファット様しか分からない暗号ですね。


私は数年前にガルファット様に頂いた本の内容を思い出していた。


主人公が旅に出るときに書いた奥さん宛の手紙に書かれていた文章の一部。


これだけ見たら、家族へ必ず帰るという意思を書いたものに見えます。


ただ、この話には続きがある。


この手紙を主人公の奥さんが読んだとき、主人公と奥さんはまだ結婚していなかった。


その後、主人公は予定よりも少し遅くなったけどちゃんと奥さんの元に帰ってきた。


そして、その時にプロポーズをしてめでたく主人公とその奥さんは結ばれた。


そういうお話の回だったと思う。


・・・期待しちゃうじゃないですか。


多分ガルファット様はギリギリまで決心をしきれていなかった私の為に、これを去り際に渡してくださったのでしょう。


ただ、そのあとの話を知っている私からしたら本と同じようなその後の展開も期待しちゃうじゃないですか。


私は、頭の中がもやもやしてしまいベッドにうつ伏せにダイブした。


こうなったら、何年でも待ちますよ。


例え2年以上経っても、何年経っても待ちますからね。


本当に婚期逃したら、責任とってもらいますね。


私は少しの間ベットに顔を伏せたままでいた。


最低でも、顔が赤いのが元に戻るまでは。


・・・もう、ガルファット様のバカ。

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