第31話 理想と現実
紅とロミアと何か色々な約束をした日から、10日ほど経った。
それで、今はどんな状態かと言うと・・・
「じゃあロミア、次の問題解いてみようか」
ロミアに、俺の部屋で勉強を教えている。
「えっと1番の答えがこれで、2番目は・・・これ!」
ロミアが紙に答えを書き終えて、俺に見せてきた。
「・・・どっちも正解だ。
流石だな、ロミアはどの教科でも不得意がないからすごいよ」
俺が言うと、ロミアが照れながら笑った。
「ガル、教えるのうまいから。
でも、ガルも勉強得意でしょ?
こんなに教えるのうまいんだから」
「別にうまくはないよ。
それに俺は何回も復習とかしてるから、一回教わっただけであらかた覚えちゃうロミアが羨ましいよ」
俺が言うと、ロミアは少ししょぼくれた。
「・・・でも、ガルの方が運動できるの羨ましいなぁ」
「それは、俺の方が先に剣術とか学んで自主トレとかもしてからな。
そっちだって、ロミアがこれから頑張れば俺なんかすぐに抜かせるよ」
まぁ、個人的にはロミアは魔法の才能あるし魔法一本でいったほうがいい気がするけど。
俺が言うと、ロミアは不思議そうに聞いてきた。
「ねぇ、ガル。
ガルは何で自慢しないの?」
ロミアの言葉に、俺は少し疑問を感じた。
「ん?どういうこと?」
「だって、ガルは剣術も武術も魔法もできて、能力もすごくて、かっこよくて、優ししいから。
だけど、ガルが自分の自慢してるとこ一度もない」
あー、そういうことか。
「うーん、そうだなぁ。
どれも自慢できるほどじゃないからなぁ」
「あんなにすごいのに?」
ロミアの言葉に、俺は首を横に振り優しく言った。
「いや、どれもまだまだなんだよ。
剣術は未だに父さんに勝てないし、武術も本気を出した師匠相手なら多分勝てない。
魔法だって、ロミアの方が使える種類は多いし母さんにも勝ててない。
それに、俺はかっこよくも優しくもないよ。
ただ自分が言いたいことを言って、やりたいことをやってるだけなんだよ」
ある意味、俺の身内や知り合いの中で一番子どもなのは俺かもしれないな。
俺が一通り説明すると、ロミアは俯いていた。
少し説明が長かったかな?
だが少しすると、ロミアは何かを小さく呟いた。
「ガルの・・・」
「ん?どうした?」
「・・・ガルのバカー!!」
顔を一気にあげ俺の顔を見たロミアは、泣いていた。
そして大声をあげて、走って部屋を飛び出した。
ど、どうしたんだよ急に。
俺は呆気に取られて、少しの間固まっていた。
「おい、ガル。
お前、ロミアちゃんに何かしたのか?」
開きっぱなしになっている扉から、ジークが顔を覗きこませて言ってきた。
「え?いや、えっと」
「ガルファット君、女の子泣かすのは良くないよ?」
クレアが顔を覗かせて言ってきた。
「いや、そんなひどいことした覚えはないんですけど・・・」
「さっきロミアちゃんの声聞こえたけど、何かあったの?」
シルビアが超高速で編み物しながら覗いてきた。
・・・スピードもすごいけど、その明らかに通常の人が着ないような大きさのセーター何?
「あの、さっきロミアちゃんが走ってどこかに行かれたんですけど何かあったんですか?」
フィーネが洗濯物を畳ながら、こちらを覗きこんできた。
・・・正確に言えば、床に置いた洗濯かごから左手で洗濯物を取り、そのまま畳んで右手の手の平の上に置いている。
さすがスーパーメイドだな。
「えっとですね・・・」
俺は、さっきのロミアとのやり取りを説明した。
「なるほど、そういうことか」
ジークが腕を組んで、頷いた。
「はい、僕的には何でロミアが泣いて走っていったか分からなくて」
俺が言うと、ジークが深くため息を吐いた。
「はぁ~・・。
皆、この件誰が悪いか指差すぞ。
せーのっ」
・・・皆が一斉に俺を指差した。
「何で!?」
驚く俺に、ジークが質問してきた。
「じゃあ聞くが、お前はクレアを師匠としてどう思う?」
「え?うーんそうですね。
強いですし、自分の非があることは素直に認めるところとかはものすごく尊敬しています」
俺が言うと、クレアが嬉しそうに笑った。
「じゃあクレア、お前はこういう風に言われたとき何て答える?」
ジークに聞かれて、クレアが微笑みながら言った。
「ありがとう、ですね」
「あっ・・・」
クレアの言葉で、俺も察した。
「そうだな、お前なら否定はするかもしれないがまず何よりありがとうを先に言うだろうな」
「確かに僕はそんなすごい人間じゃないけど、ガルファット君はそういう風に見てくれてるから最初から否定はしないね」
俺は、ロミアの事を考えてあげれてなかったんだな。
「まぁロミアと同い年のお前に、ロミアの気持ちを考えながら言ってあげろっていうのは少し難しい注文かもしれないけど、お前は結構大人な所あるから大丈夫だろう」
ジークが言い終わると、ポンッと手を叩いた。
「そうだ。
皆、今からガルの悪いところ言っていけ」
「え!?
いや、急に何ですか父さん」
俺が言うと、ジークは手の平を俺に見せて突きだした。
「いいから、お前は大人しく聞いてろ。
まずは俺から言うぞ。
・・・ガル、お前は子どもっぽくなさすぎる。
少し可愛くない」
・・・何だろう、何かが胸に刺さった気がする。
「そうね、その年の子どもが親に敬語は何か不自然だし」
「特にワガママとかも言わないですしね。
可愛いげがない気がします」
「何か、聞き分け良すぎてつまらない感じがする。
物足りないって言うのかな」
「自分が良いところ言われても、素直に受け取らないくせに人はすぐ褒めるよな。
正直本当にそう思ってるか疑いたくなる」
「その年でフィーネやクレアとお風呂入って良い体験してるわよね」
「そのお年でロミアちゃんっていう、将来大切な約束をした方がいらっしゃる」
「僕たちにモテモテなのに、気づかないよね。
鈍感」
「甘えてこない」
「生意気」
「全部背負おうとなされる」
「僕と一緒に寝たのに、何もなかった・・・」
その他諸々、皆が好き勝手いってきた。
何か所々おかしい部分があった気がする。
「よし、これくらいでいいだろう」
少しすると、ジークが皆を止めた。
・・もう、俺のライフポイントは0だよ。
「お前の悪いところは分かった?」
俺はジークの言葉に力なく頷いた。
「嫌ってほど分かりました」
「そうか。
今言った通り、お前にも悪いところは一杯ある。
だけどな、ロミアはあえてお前の優れている所を言ったんだ。
何でか分かるか?」
ジークの言葉に、俺は首を横に振った。
「いえ、分かりません」
「前に言っただろ。
ロミアにとってお前は目標なんだよ。
目標のすごいところを言う時は、自分が超えたい奴がどれくらいすごいのか再確認してるんだよ。
それをお礼も言われず、真っ向から否定されてみろよ。
俺だったらぐれるぞ」
ジークに言われて、俺は反省した。
もう少し、違う言い方があった気がする。
「・・・ガル、ロミアちゃんを探してきなさい」
シルビアが俺に優しく言ってきた。
「そうだよ、女の子泣かしたままでいるのはカッコ悪いよ?」
「ガルファット様なら、ロミアちゃんの行きそうな所に検討はついていらっしゃるんでしょう?」
クレアとフィーネも、後に続いて言ってきた。
「・・・とりあえず探してきます」
俺は立ち上がって、外へ向かった。
「大丈夫ですかね、ガルファット様」
「まぁ、何だかんだいってうまくやるだろう。
そこまで心配することはないさ」
「あの子、無意識に優しいですからね。
もう少し考えて言葉選ばないと、この先大変そうね」
「自分に自信がないって感じだからなぁ。
もうちょっと自信もって良いと思うんだけどなぁ」
「まぁ、そこら辺も俺達で教えていってやるか。
皆、頼んだぞ」
『はーい』
で、とりあえずロミアを探しに外へ出たものの何処にいるんだ?
俺はとりあえず、ロミアの家の方向へ歩き出した。
そんなに遠くには行かないだろうから、順番に探すか。
しかし、見つけたところで何て声をかければいいんだ?
うーん・・・分からん。
仕方ない、ロミアを見つけてから考えるか。
そんなことを考えながら歩いていると、川沿いに膝を抱えて座っている人を見つけた。
ここって・・・。
そこは俺とロミアが最初に出会った場所だった。
「ガル・・・」
そして、そこにはロミアが座っていた。
・・・どうしよう、何て声かければ良いか。
言葉が出てこない。
「ロミア・・・」
俺はロミアに近づこうと歩き出した。
すると、ロミアは体をこちらに向けて左手の手の平を俺に向けた。
「来ないで・・・」
ロミアの手の平に、水の塊ができた。
・・・そういえばあの時もこんな感じだったな。
あの頃と違って、ロミアの魔法の準備速度が早いけど。
俺は構わず、そのままロミアに近づいた。
ロミアは俺に腕を伸ばしままの態勢で、涙目で俺の目を見ている。
あの時は、お互いを知らなくてとりあえずロミアの傷を治したけど。
今回はお互い知っていて、事の原因もわかってる。
・・・そして、どっちが悪いかも。
俺は、ロミアの目の前で立ち止まって頭を下げた。
「ロミア、ごめん!」
結局言葉が思い浮かばず、謝ることしかできない。
でも、まずは謝るしかない。
「ねぇ、ガル。
ここで最初に会ったの覚えてる?」
俺は頭をあげて、ロミアの顔を見た。
ロミアは腕をこちらに伸ばしておらず、俺の顔をじっと見ていた。
「俺がお前と一緒に、昼飯食べたことか?」
「うん。
あの時、ガルが言ったこと覚えてる?」
俺が言ったこと?
色々話したけど、どのことだ?
「私に、友達にならないか?って言ったの」
「・・・そういえば、言ったな。
そしてそのあと、ロミアの家に行ったんだよな」
俺が言うと、ロミアが嬉しそうに頷いた。
「私、嬉しかったんだ。
ガルと友達になれたのが。
でも、それよりもガルみたいになりたかったんだ」
「俺みたいに?」
「うん。
ガルといると、みんな楽しそうだから。
でも、どうやったらガルみたいになれるか分からなくなっちゃった」
そうか、だからあんなに俺を褒めてくれてたのか。
ロミアなりに、どうすれば俺みたいになれるか考えてたんだな。
うーん、そこまでできた人間じゃないんだけどなぁ。
気を付けてる事とかないしなぁ。
・・・あー、あれは気を付けてることか。
「ロミア、もし俺みたいになりたかったら2つの事を守れるか?」
「2つのこと?」
不思議そうに聞くロミアに、俺は片膝をついて頷いた。
「そう。
1つは、なるべく人を傷つける嘘をつかないこと。
2つ目は、人を傷つける嘘をもしつかなきゃいけないときは、覚悟を決めること」
「その2つを守れば、ガルみたいになれるの?」
「うーん、俺みたいになれるかは分からないけど俺はこの2つを守ってるかな」
俺が苦笑いしながら、言うとロミアは少し考えるように俯いた。
「ダメだったかな?」
俺が苦笑いしながら訪ねると、ロミアは首を横に振った。
「ううん、何となく分かった」
何となく、か。
まぁ、何はともあれ伝わったなら良かった。
「じゃあ、帰ろっか」
俺が手をさしのべると、ロミアは俺の手を握った。
俺は自分が立ち上がりながら、ロミアを引き上げるように手前は引っ張った。
「ありがとう」
立ち上がって俺にお礼を言ったロミアの顔は、いつもの可愛い笑顔だった。
ロミアは、俺の手を離すと家に向かって歩き出した。
俺は、そんなロミアに後ろから近づいてロミアの手を握った。
「どうしたの?」
ロミアが俺の顔を見て言った。
「またどっか行かれると困るから、こうして捕まえてるんだよ」
俺が言うと、ロミアが笑いながら返した。
「もう、大丈夫だよ?」
「俺がみんなに色々言われるんだよ」
俺がぶっきらぼうに言うと、ロミアが笑っていた。
案の定家に帰ったら皆から色々言われました。
ロミアも一緒になって色々言ってるけど、今回ばかりは何も言えないな。
まぁ、ロミアのは可愛いものばっかりだから別に良いんだけどね。
ただジークよ、あんたのは聞き捨てならないぞ。
誰が鈍感罪深息子だ。
鈍感も罪深も思い当たるふしがないぞ。
と、言ったらロミア以外から一斉に「はぁーー」
という物凄く深い溜め息が出た。
え?俺とロミアが気づいてないだけなの?
俺、自分が知らないだけで鈍感罪深なの?
・・・いったい俺は何をしたんだーー!?
特に何かやった覚えもないけど、みんながこんなに一斉に溜め息を吐いたって事は何かやったのだろうか。
・・・ダメだ、心当たりが無さすぎて謎だ。
まぁ、いいや。
自分で心当たりが無いなら、考えたって分からないだろうしな。
皆に聞いてもいけど・・・どんな答えが返ってくるか分からないから怖いしな。
と、何か色々考えた1日だった。




