表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

リプレイ第六話〜「お疲れ様」が言いたくて

『お疲れ様でしたぁ!』

「お疲れ!帰り道気をつけてな」

『ウッス!』


いやぁ、今日も働いたなぁ。


俺は学校に許可を貰い、生活費を稼ぐ為にバイトをしている。


学校が終わり、夕方6時〜夜12時までの6時間労働。


バイトと言うより、仕事だ。


製品工場で働いていて、かなり給料が良い。

週に四日も入れば、生活費としては充分な額になる。


施設に入れる金はごく僅かだし、学費は家庭の事情から免除されている。


よって出費は食費だけで済むのだ。


愛に留守番を頼んでいるから、早速帰らなくては。


『ただいまー…』

「ムニャムニャ…」

『おい、こんな所で寝てると風邪ひくぞ?…エアコンもつけっぱなしじゃないか…』

「……ムニャムニャ」


…起きない。


まぁ仕方ないと、愛をソファーからベットに運ぶ。


俺が家に着くのは深夜1時だ。無理もない。


とりあえず汗を流すためにシャワーを浴び、飯の準備に取り掛かるべく、台所へ向かった。


よしよし、ちゃんと愛は俺が用意しておいた夕飯も食べたようだな。



仕込みが済んだ状態の煮物を温め、白米のおかずにする。


派手な味はないが、疲労と手間を考えればこれがベストなのだ。


綺麗に平らげた後、食器を洗い、俺も寝床についた。



ーーーーーー。


朝、充分な睡眠時間は取れていないが、学校のため重い瞼を懸命に開く。


『……ねみぃ』


睡魔に負けてポックリ逝きそうになった。


「譲君!朝だよー!!」

『ぐはぁ!』


しかし睡魔は愛のジャンピングボディプレスによって消え去った。


「さ、学校学校」

『なんか今日テンション高いな』

「そりゃそうだよ。今日はアタシも行くんだもん」

『そっかそっか。じゃあサッサと準備して…ハァァ!?』


コイツ今なんて言った?

学校に行く?


「早くぅ〜遅刻しちゃうよ!」


時計の針は家を出る時間に迫っていた。

昨日の疲れからか、寝坊してしまったらしい。


『やべっ、早く行かなきゃ』


速攻で制服に着替え、鞄だけ持ち、勢い良く玄関を飛び出した。


「もっと速く走れないの?」


『俺は人間だ。お前みたいに飛べないの!…ってか着いてくんなぁ!』


遅刻ギリギリで間に合った。結局、愛は着いて来てしまった。


『姿は見えないようにしとけよ』

「分かってるナリ!」


うん、すげぇ不安だって。


「おはよう譲君…と、なぜ愛ちゃん!?」


『おはよう大樹。…なんか着いてきた』


「だってヒマなんだもん」


ま、おとなしくさせとけば良いか。


大樹以外の人間に見えてないよね?


そんな不安を胸に教室を開ける。


すでに出席を取っているところだった。


「木下ー…遅刻ギリギリだぞ……ん?」


担任の野中のなか先生。教科は家庭科を教え、歳は30近いらしいが、全然若く見える。


落ち着いた茶髪を巻いていて、結構美人。男子生徒に人気高し。


でも性格はちょっと悪い。


そして忘れてた…




野中先生は…




「おい、譲。そこの可愛い子ちゃんは誰だ?」


霊感が最強に強かった事に…。




ーーーーーー



「ほぅ、この子は天使なのか。こりゃまた珍しい」


「すごいね先生!人間から見えないようにしてたのに」


「私の霊感をナメるなよ。低レベルな霊ごときだったら除霊だって可能だ」



ここは調理室。HRは中断し、俺、大樹、愛は野中先生に呼び出されたわけだ。


バレた事をヒヤヒヤしてた俺だったが、愛と野中先生はすっかり仲良くなり、心配してた俺がバカみてぇじゃねぇか。


「譲もスミに置けないねぇ。こんな可愛い天使といっしょなんて」


「ホントだよ。譲君ったら毎晩アタシに色んな事を強制で…」


「何!譲君ってそんな人だったのかぁー!」


待てコラ。

変な事いうんじゃねぇよ。


「まぁ、愛は私が預かっててやるから。お前らは授業に戻れ」


『あ、お願いします』


まぁ野中先生と一緒なら心配ないな。俺のクラスの授業に家庭科はないし。っていうか、家庭科があるクラスは、ほんの一部。


よって野中先生はほとんどがヒマで、調理室も独占している状態だ。



うん、心配しすぎは良くないな。



そんな安心感からか、疲労からか、授業中に睡魔がやってきて、ポックリ逝ってしまった。



「調理室から火災警報が出ました。生徒の皆さんは、待機して下さい」



そんな放送が入り、慌ただしく走る先生達。

そんな事が起きているなど知らず、俺はまだ夢の中にいた。



ーーーーーーー


「ゴメンなさい…」


放課後、俺と愛は改めて野中先生に謝りに行った。


「ハッハッハッ、気にするなって。愛も反省しているこどだ!それより譲、仕事、遅れるぞ?」


ヤベッ、今日も仕事入ってたんだった。


『あ、じゃあ俺帰ります!ホントすいませんでした』


「気をつけてなぁ」


「さ、先生。早くあの続きを…」


「あぁ、分かってるよ」



ーーーーーーー


学校もギリギリ。仕事もギリギリ。


今日は疲れる日だったなぁ。


あ! 愛の夕飯の支度してなかった!


…怒るだろうなぁ。



『ただいまぁ…って何だコリヤァア!!』



酷く散らかった台所。

床に飛び散った卵に水に食器…。


「ムニャムニャ…」


そして、いつも通りソファーで寝ている愛。


『起きろ愛…ん?』


テーブルの上に置かれた、なんとも形の悪いオムライス。


そこにはケチャップで丁寧に


《おつかれサマ☆》


と書いてあった。



『不器用なお前がよく頑張ったな』


さしずめ、野中先生に教えてもらってたんだろう。


火災警報機を鳴らしたのもこれが原因か。


愛の手に巻かれたバンソウコウ。


満足にフライパンも持てないくせに。


自分には慈悲能力が使えないくせに。


『オムライス…もう冷めてるじゃねぇかよバカヤロウ…』


でも、こんなに温かい料理を食べたのは初めてだった。


「あ…譲くん…」

『わりぃ、起こしちまったか?』


「ゴメン…散らかしちゃって」

『そんなの俺が片付けとくから、寝てて良いぞ?』


「アタシがいっぱい食べるから…仕事いっぱい入れたんでしょ…?だから…ちょっとでも役に立とうとしたんだけど…余計迷惑かけちゃったね…」

『気にすんなって…』


「譲…くん」

『うん?』


「…お疲れ様」

『あぁ、愛も…お疲れ様』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ