第2話 「面白い」についての私的考察(前編)
今回は「小説」という物語形式の「面白い」について、考察してみたいと思います。
作者は面白い小説を書きたいし、読者は面白い小説を読みたいですよね。
ぼくは、たくさん面白い小説を読んできました。
皆さんもきっとあるはずですよね。
(凪野晴の小説を面白いと思っていらっしゃる方、いつもありがとうございます)
さて、「面白い」って、何でしょう?
ぼくらは頻繁に、この「面白い」という言葉を使います。
小説だけでなく、マンガ、アニメ、ゲームにも、時にお笑い芸人さんに対しても。
「面白い」という言葉の語源を検索すると……。
「面(目の前)」が「白く(明るくはっきりと)」なる、ということらしいです。
辞書で調べると……。
(1)見て楽しい。愉快だ。気持ちがいい。
(2)興味をそそられる。興味ぶかい。独特の魅力がある。
(3)趣がある。風流である。風情がある。
といった意味。
「面白い」には、なんだか複合的な要素がありそうですね。
こういった場合は、似たような言葉や関係する言葉と比べてみることで輪郭がはっきりとしてくるものです。
そのようなアプローチを取ってみましょうか。
ここからは、あくまで私的考察です。
小説を前提に書いています。
気楽に、お読みください。
【「面白い」と「わかる」を比べてみる】
先ほど引用した「面白い」の語源から考えると、「わかる(理解できる)」というニュアンス(意味合い)がありそうです。
確かに面白さを感じる前に、読者さんは物語の内容がわかっていないといけないでしょう。読んで理解できているから、「面白い」と感じる。
「面白い」のためには「わかる(理解できる)」という前提はありそうです。
※でも、なんだかよくわからないけれど、面白いってのもありますね(逃げ腰)
【「面白い」と「楽しい」を比べてみる】
辞書での意味のひとつ「楽しい」と比べてみましょう。
前段で「わかる」ということが「面白い」の前提と述べました。
物語の内容がわかったとしても、ぼくらは面白くないと判断することがあります。
どうやら「わかる」の次には、「楽しい」という感覚が「面白い」に必要なのかもしれません。
小説の場合、読んでいて「楽しい」という要素はいろいろあるでしょう。
瞬間、瞬間で味わう楽しさというのが、確かにありますよね。
キャラクターたちの個性。
ボケやツッコミなどの会話のやりとり。
惹きつけられる独特な地の文。
共感してしまう心理描写。
ちょっと変わった物語展開。
など。
面白い小説には「楽しい」と感じる要素があると思います。
【「面白い」と「好き」を比べてみる】
「面白い」から「好き」と感じるのか。
「好き」だから「面白い」と思うのか。
卵が先か、鶏が先か。
自分が面白かったと感じた物語のジャンルは、好きになりますよね。
ミステリーを好んで読む人は、過去に面白いミステリーを読んで魅了されたことがあるでしょう。
ハイファンタジーが好きな人は、ゲームや映画などで体感したその世界に入り込みたくて、そのような小説を読むかもしれません。
自分の中に前例という経験があるから、似たものが好き。というのはありそうです。
チーズバーガーが美味しかったから、ダブルチーズバーガーもありだし好き。みたいな。
逆に、「こういうのは好きだから、きっと面白いに違いない」という思い込みもありそうです。
似たような作品だとしても、好きなジャンルだから、小さなこだわりを楽しんだことはありませんか?
例えば、俺TUEEEE系が好きな読者は、世界観の違いやキャラクター関係の違いを楽しみつつも、約束された爽快な展開を期待して読むことでしょう。
もっと言えば、「好きな作者の作品だから、面白いに違いない」とページをめくる前から思っているというのはありそうです。
言い換えれば、好きなアーティストの新しい楽曲は、無条件で好きになる前提があって聴くみたいな。
「面白い」を経験すると、その類が「好き」になる。
「好き」だから、ひいき目に「面白い」と思うようになる。
こういうことは、自分の体験を踏まえてもあると思っています。
【「面白い」と「期待」を比べてみる】
「期待」という言葉と比べてみようと思った理由は、ぼくらは少なからず読む前から「期待」を抱いているからです。
具体的には以下のような期待ですね。
・ジャンルとしての期待。
・あらすじ(うらすじ)から推測される期待。
・口コミやレビューの内容からの期待。
サスペンスのジャンルを読むなら、ハラハラドキドキした物語展開を期待してページをめくり始めますよね。
期待どおりの内容が展開されると、安心するでしょう。
同時に、自分の期待を超えてくれたらという願いも抱くでしょう。
期待以上の内容であった時に、「面白い」と感じるのではないでしょうか。
【「面白い」と「共感する」を比べてみる】
これは物語の展開や世界観よりも、キャラクターへの感情移入というところです。
――こんな状況なら、こんな気持になるよなぁ。わかるよ。
と、小説を読んでいると感じることはありますよね。
主人公をはじめ主要キャラクターに共感できると、物語に没入しやすくなります。
困難に立ち向かうキャラクターの行動を応援したくなり、その結果に一喜一憂して、いつの間にかページをめくり続ける。
そんな経験があるものです。
シリーズの新刊が出た時も、そのキャラクターに再会したくて、手にとってしまうこともありますよね。
「共感」というのは、「面白さ」に寄与する要素でしょう。
「共感」して、「好きになる」ということかもしれません。
【「面白い」と「感動する」を比べてみる】
「共感する」とはすこし違った要素として、「感動する」が「面白い」には大事と思います。
感動した物語は、心に残ります。
好きなシーンを読み返すことがあるでしょう。
良い物語、面白い物語だと、人に薦めたくもなりますね。
個人的に、「物語に感動する」であって、「キャラクターに感動するではない」と定義したいです。
人物たちのやり取りに胸が熱くなる。
物語の流れの先にたどり着く、あるシーンに対して湧き上がる感情かなと思います。
「面白い」のために、読者を感動させるシーンがあると良いと考えます。
物語の構成と惹きつける文章など、いろいろな要素が寄与しそうです。
感動を呼び起こすためには、読者さんが過程を理解するという疑似体験が必要なので。
感情曲線という技術的な言葉もありますね。
さらに、もう少し「面白い」について考察していきたいと思います。
ですが、長くなったので、一旦ここまでで前編とします。
次回は、「面白い」の対義語や人間の本能的なことに迫る形で、同じテーマの後編をお届けいたします。
凪野晴 2026年5月




