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第7話 初期設定

 ダンジョンの中は、春の陽気と比べて涼しい。


 物珍しさから辺りを見回しながら歩いてる内に、広間に到着した。


 先ほどまで歩いてた細い道は土と岩ばかりだが、この広間は違う。


 床はタイルが敷き詰められており、壁沿いには、謎に大きいコンピューターや台がズラリと並べられてる。


 転移装置、刃機、自身の肉体強化を経てもなお、秀矢は幾何学模様のように並べられた機材の数々に圧倒された。


「何か……凄いな。ここ」


「ふふ。初めて見ると呆気にとられるよね」


「岩と土しかない洞穴の中に、秘密基地みたいなところがあるなんて」


「秘密基地……言い得て妙ね。ここは、ダンジョンに潜るための準備するための部屋よ。というわけで、まずは秀矢のスキルとステータスをチェックしようか。スマホをだして」


「わかった」


 秀矢は、スマホを取り出した。


「――で、まずはアイボーの初期設定ね。アイコンがあるから、それをタップして」


 亜由美の言われるがまま、秀矢はスマホを操作した。


 アイボーの初期設定画面が開かれた。


 初期アバターのタイプ1とタイプ2の選択が出てきた。


 1は、国産のアニメ調ゲームの主人公に居そうな所謂、没個性の青年。


 2は、1と同様のコンセプトで作成された女性アバター。


「亜由美。これは、アイボーのキャラメイクをしろってこと?」


「うん。後で変更できるし、課金すればオリジナルのパーツやコラボしてる企業のキャラクターや音声にする事も出来るわよ」


「課金は、どうでもいいや」


 秀矢は、ささっと操作してキャラメイク画面を終えた。


 パーツ毎に細かい調整も可能だが、この手のビルドは億劫に感じる性分のため、プリセットで用意されたいくつかのアバターから、自分好みに寄ってる女性アバターを選択した。


「それじゃ秀矢のステータスとスキルツリーを見せて。自分で操作してもいいけど、アイボーに言えば、開いてくれるわよ」


(ステータスにスキルツリーか、本当にゲーム感覚なんだ)


 秀矢は半信半疑で「アイボー、俺のステータスを見せてくれ」と言った。


 すると《かしこまりました。マスターのステータス画面を表示します》と、女性話者の合成音声が返事をした。


 スマホの画面には、ロールプレイングゲームを彷彿とさせるステータス画面が映し出された。


 力、体力、知力、素早さ、集中力【固有ステータス】……そしてレベル。


 ちなみにレベルは1。


 他のパラメータもレベル1に相応しい低い数値が並ぶ。


 秀矢は、シノビ衆から受けた固有ステータス説明を思い返した。


 集中力は、戦況把握能力、回避率、刃機の命中率等、主に前衛に関わる能力に影響を与えるパラメータ。


 シューターが得意なゲーマーなら高確率で、集中力になるとマニュアルに書いてあった。


「お、ちゃんと表示したね。どれどれ――」


「数値自体は、どれも大した事はないけどね」


「気にすることはないわよ。レベリングすればいいだけだし。そんなことより、ステータスが出たってことは初期化は無事、完了したってことね。次はスキルツリーを見せて」


「アイボー、俺のスキルツリーを見せてくれ」


 先ほどと同様、女性話者の合成音声と共に、ゲームで見た事があるスキルツリーが映し出された。


 始点は7つ。それぞれ途中で枝分かれして、最大21階層まである。


 アクティブスキルは、近接が属性付与と剣技で、剣技の中でも通常の剣技と種族特攻系。


 種族特攻は、主に悪魔とアンデット系。


 パッシブスキルは、近接に関わるもの全般と微量だがヘイトに影響を与えるスキル。


 他に、遠距離攻撃には装填速度、速射性能、サイレンサーの有無、エーテル弾の聖属性変換と装填する弾の変更。


 当然ではあるが、各ツリーは最初の1つ以外は全てロックがかかってる。


 加えて、所持スキルポイント0、と表記されてる。


(無属性の剣術はともかく、その先にある十文字斬り(ホーリークロス)黄泉送り(ターンアンデッド)浄化の光(デイブレイク)、清流剣、清浄剣、(はらい)の太刀、退魔斬(デモンズブレイク)降魔斬(デモンバスター)光魔斬(デモンスレイヤー)……種族特攻系スキルは頭が痛くなるな)


「さすが秀矢。凄まじいスキルツリーね」


「見た感じはね。でも、習得してないなら無いものと同じだろ」


「いやいや本当に凄いわよ。だって、私なんてほら」


 亜由美がスマホの画面を秀矢に向ける。


「1年先輩なだけあって、沢山のスキルが解放されてる」


「見てほしいのは、全体図の方ね」


 画面には、4本のスキルツリー。その中でも一番長い階層は7つ。


 主に射撃系のスキルを中心に味方へのバフ、敵へのデバフスキルがあるようだ。


 スキルの数だけで言えば、秀矢よりも大分少ない。


「わかったでしょ? お世辞じゃなくて本当に驚いてるのよ」


「あ、ああ……それにしても、同じ射撃なのに俺がエーテル弾? とかいう意味不明なものと違って、亜由美は実弾なんだな」


「そりゃまあ物質の転送が出来るから、実弾も撃てるわよ」


「せっかくだから、実弾撃ちたかったなぁ」


「エーテル弾――要するに魔力を弾丸に変えたものと実弾は、それぞれメリットとデメリットがあるわよ」


「そうなんだ」


「実弾のメリットは、物理が通る敵なら確実にダメージを与えられる。デメリットは、物理攻撃が効かない霊体系や軟質系、まあ幽霊とかスライムにはめっぽう弱いことかな。エーテル弾は、その反対ね」


「どちらも一長一短あるんだな。それなら、役割が分担されてる方がいいな」


「そういうこと。――それはそれとして……ふんふん、秀矢はそういう子が好みなの?」


「どういう意味だ?」


「アイボーの話だけど」


「俺は、この手のキャラメイクに時間を掛けたくないの。だからプリセットで良さそうなものを適当に選んだだけだよ」


 そういう子が好み、と言われて、秀矢の頭によぎったのは、一人の女の子だった。


 その子は、一言で言えば地味。


 眼鏡をかけてて、垢ぬけてなくて、学校では常に俯いてて口数も少なく、休憩時間は読書に勤しむ感じの女の子。


 秀矢の好みからすれば、対極的な位置にいるタイプ。


 しかし、とあるイベントの握手会で、その子と握手をする機会があった。


 イベントと割り切り、手を握った瞬間……体中に電流が走った。


 一言二言、挨拶を交わそうとするも、言葉が出てこない。


 ただ、一目ぼれでは無いことなのは確かだった。


 体温や心拍数に変化を感じなかったためだ。


 むしろ、物懐かしい気持ちと言える。


 その子も口をつぐみ、手をずっと握り返したまま、時が止まったかのように微動だしない。


 二人は、係員の呼びかけるまでの数秒間、ずっと手を握ったまま動く事はなかった。

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