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3-7

「え、おれ?」


 アーシュは自分を指差して言った。


「ああ、ちょうどいいだろ。アーシュも駆け出しだし、魔宮の攻略は常に固定パーティーとは限らない。その時々で組む相手も変わるし、その相手と連携もとれなきゃならない。難度もEだし、魔宮攻略の基礎を学ぶにはもってこいだ」


 ディアスが言うとアーシュは姉弟へと視線を向ける。


 姉弟もまたアーシュへと視線を向けて。


「スペルアーツはどれくらい使える?」


 赤い髪の少女がアーシュにいた。


「おれ、魔力なしです…………」


「索敵とかトラップ感知とかは?」


 青い髪の少年がいた。


「全く使えないです。『神秘を紐解く眼(アナライズ)』も使えません…………」


「んー、ダメじゃね」


 赤い髪の少女はバッサリと言った。


「ちょっと、ねぇちゃん?!」


 青い髪の少年は姉の発言に慌てる。


「だってサポートも斥候せっこうもできないんじゃ他に何ができるの?」


 赤い髪の少女はアーシュの腰と背中の剣を。

そしてアーシュの左腕に視線を移して。


「片手で剣が振れるような筋力があるようにも見えないし、クリフトフさんがわざわざ魔宮攻略の基礎を学べって言うからにはまだ冒険者諦めてないんだろうけど────」


 赤い髪の少女はずいとアーシュに迫って。


「君、無理だよ。片腕を失うようなミスをする注意力の欠如。あるいは自身の力量を見誤る慢心。どちらにしろ冒険者としての心構えがなってない。すでに隻腕せきわんていう大きなハンデを背負ってる。魔力もない。このまま冒険者を目指しても死ぬだけだと思う」


「ねぇちゃん……」


 青い髪の少年は赤い髪の少女とアーシュを困ったように見た。


 アーシュはディアスへと振り返ろうとして。

だが視線をすぐにおろした。

赤い髪の少女へと向き直り、顔を上げる。


「おれは、冒険者になる」


 赤い髪の少女はアーシュの言葉にやれやれと肩をすくめて。


「言っちゃえばギルドに登録さえ済ませば等級は別として晴れて冒険者。難度Fの薬草摘みとかをしてても冒険者を名乗れる。あなたがそれで冒険者だって胸を張って生きれるならそれでいいと思う。下級の任務だって誰かがやらなきゃいけない仕事だもの。それも十分誇れる仕事よ。でも君の言う冒険者はきっとそうじゃない」


「ねぇちゃんの言い方が悪かったところは謝るけど、俺も君が冒険者としてやっていくのは難しいと思う」


 青い髪の少年が言った。


 赤い髪の少女は続ける。


「そしてパーティーを組むって事は役割分担を任せないとならない。でも私達から見て君に何かの役割を任せるのは不安しかないのよ。君に背中は預けられない。君の援護を信じられない。だから、ごめんね」


 赤い髪の少女は申し訳なさそうに目を伏せた。


「アーくんは────」


「エミリア」


 エミリアの発言をディアスは遮って。


「君達の言うことももっともだ。元々2人きりで魔宮に挑もうとしてたくらいだし、連携に自身はあるんだろ? そこに足手まといを加えても連携に乱れが出る」


「そういうこと」


 赤い髪の少女が答える。


 アーシュはディアスの足手まといという言葉に涙目になった。

大きく鼻をすする。


 その姿にいたたまれなくなった青い髪の少年はアーシュから視線を外した。


 少しの沈黙。


 そして赤い髪の少女はため息を漏らして。


「あーもう! 君、名前は?」


 赤い髪の少女がアーシュにたずねる。


「ア、アーシュガルド、です」


「アーシュガルド、君は私達とパーティー組んだらどの役割をするつもりだったの?」


「……前衛?」


「なんで疑問系?! 君、パーティーの役割をまず分かってないでしょ。クリフトフさん?」


 赤い髪の少女はディアスに振り返った。


「すまない。アーシュは本当に駆け出しだからその辺も含めての基礎だ」


「基礎中の基礎。基礎の『き』の字からね。オーケー」


 赤い髪の少女はアーシュに視線を戻して。


「前衛にもざっくり分けて敵の攻撃を受けてパーティーを守る防御役と近接で敵を仕留める攻撃役があるの。アーシュガルドはどんなソードアーツと剣技が使えるの? まさか剣技を覚えてないなんて言わないわよね」


「おれの剣のソードアーツは火炎系の攻撃と自己強化で速度を上げるやつ。剣技は遠隔斬擊(ストーム系)を」


遠隔斬擊(ストーム系)? またマイナーな剣技ね」


遠隔斬擊(ストーム系)なら中衛のが向いてないか」


 青い髪の少年が言った。


「その剣振れるの? 愚弟! ちょっと!」


「はいはい、ねぇちゃん」


 赤い髪の少女の呼び掛けに青い髪の少年が応えた。

背中に背負った短槍を抜く。


 槍を抜いた青髪の少年をアーシュが見つめていると、赤髪の少女はパンパンと手を叩いて。


「君、ほうけてないで剣抜いて」


 アーシュは言われるままに腰の剣を抜いた。


「んじゃ、ファイト!」


「え、ファイト?」


 赤髪の少女の言葉にアーシュは首をかしげる。

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