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001_現代_恋愛未満

 

 夕暮れ時のファミレスは、ドリンクバーの機械が立てる低い音と、遠くの席の話し声で満たされていた。

 窓の外では、燃えるようなオレンジ色がビルの間に沈んでいるところだ。

 そのまばゆい光が、テーブルを挟んで向かい合う席に座る彼の横顔を照らしている。


「あ、それ一口ちょうだい」


 彼が私の頼んだフライドポテトを指さす。私が皿を少し差し出すと、彼は「サンキュー」と笑って、長くて骨ばった指でポテトを口に運んだ。


 別に、付き合っているわけではない。

 かといって、ただの「暇つぶしの友達」と割り切るには、最近会う頻度が高すぎる気がしていた。


 週末になればどちらからともなく連絡を取り合い、特に目的もないのにどこかで集まって、気づけば数時間一緒に過ごしてる。彼がふと見せる優しい眼差しや、私をからかうときの楽しそうな声。その一つひとつに、最近の私は少しだけ胸の奥がくすぐったくなるのを感じていた。


「なぁ、次は何飲む?」

 グラスを空にした彼が、私を見て訊ねる。

「うーん、メロンソーダにしようかな」

「子供っぽいな」

「いいじゃん、好きなんだから」


 そんな何気ないやり取りが、妙に心地いい。


 これが世間でいう「恋」なのかと聞かれたら、正直言って自信がない。胸が締め付けられるような苦しさも、独占したくてたまらなくなるような嫉妬も、まだ私の中には芽生えていないからだ。


 だけど、帰り道の駅の改札で「じゃあね」と手を振るとき、もう少しだけこの時間が続けばいいのに、と思う。彼の歩幅に合わせて歩く時間が、私にとって特別になりつつあることだけは確かだった。


 急ぐ必要はない、と私は思う。

 この心地いい温度のまま、少しずつ、ゆっくりと近づいていければそれでいい。


 グラスの氷をストローでつつきながら、楽しそうに次の休みの計画を話す彼の顔を見つめる。


 恋してるだとか好きだとか、まだよくわからないけど、この関係がいずれそうなればいいって今は漠然と思っている。


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