01.
はじめまして。
こちらは、異世界転移で言葉が最後まで分からない主人公が、何とか生き残るお話です。
よろしくお願いします。
気がついたら、教会のような場所に座り込んでいた。
寝起きのように重い頭で思い出したのは、子供の頃九州に旅行した時入った教会。少し薄暗い室内に、木製のベンチ、ステンドグラスから差し込む色とりどりの光。綺麗だが普段の私には馴染みがないものばかりの空間で、祈る人達の邪魔にならないように静かに見学をした。そんな場所に、今いる場所はよく似ていた。
今の私の服装は寝間着にしている上下黒の半袖に短パン。バージンロードの途中にいる私の足に触れている床には、ゴワゴワした赤い絨毯が敷かれ、10m程先に黒っぽい出口が見える。上を向くと天井は高く、目が悪い私にはぼやけて見えるが、何か絵が描かれているようだった。
ここはどこだ。
自宅近くにこんな教会は無かった。
寝間着で外出したこともない。
眼鏡、コンタクト無しで出かけることもない。
……誘拐かぁ。
拘束はされていないようだ。
落ち着こうと両手を握ると、緊張しているのかとても冷えている。
突然背後から、ワッと複数の人間の歓声が聞こえた。
「●●●●●!●●●●●●●!」
「●●●●●●!」
ビクッと身体を震わせ、素早く振り向くと、祭壇のように少し高くなった場所に、白い布を着た人間が10人以上立っていた。
肩を叩きあったり、抱き合ったりして盛り上がっている一団は、何語か判別できない言葉で、頻りに興奮して叫んでいた。
私が振り返ったことで、何人かこちらを指差し、さらに歓声をあげている。
意味がわからない。怖すぎる。
現実逃避したくなる自分を何とか押し殺していると、1人、背の高い人が祭壇から降りて私に近づいてきた。一団は先ほどまでと打って変わって静まりかえり、じっとこちらを見つめる空気が肌に痛い。
私の側まできたのは男性で、短い金髪に彫りの深い顔に笑みを浮かべていた。恐らく外国人だろう。近づくと分かったが翠の宝石がついた金色の装身具をジャラジャラ身に付けている。白い布の下から見える足元も豪華な金属のサンダルのようなものを履いていた。
男性は座っている私に対して、立ったまま、何事か話しかけてきた。
「●●●●● ●●●●●●●●●●●●」
完全に日本語じゃない。
「……● ……● ●●●●」
英語や今まで聞いたことのある言語でもない。
私が黙ったまま見上げていると、
「●●●!●●!」
言葉が通じていないことが分かったのか、一団に向かって何か叫んだ。すると、先ほどまで静かだった彼らは、ざわざわと話し始めた。一団から、もう1人髪の長い女性が近づいてきた。女性は栗色の髪を高い位置でポニーテールにしており、海外女優のように綺麗な顔をしていた。こちらも装飾品が眩しいほどに、その身を飾っている。
「●●●●●●」
「………●●●●●●●●」
「●●●●」
「●●●●●」
「……●●」
2人は、何か真剣に話し込んでいるようだった。
これから何が起こるのか、座り込んだままではいけないと立ち上がろうとした。すると女性がこちらに向かって「●!!」と何か叫んだ。
顔は怒っているようだった。
立とうとすることをやめて、座った状態に戻ると、また男性に顔を向けて話し込み始めた。
なぜか分からないが立ってはいけないらしい。
10分ぐらいだろうか。
私にはもっと長く感じる時間が経ち、女性は一団から更に2名の女性を呼び、男性と共に祭壇の上に戻っていった。
私を挟んで立った女性達は、祭壇に向かって頭を下げた後、私の腕をとり、何度も引っ張った。
「立て」という意味かと、慌ててその場に立つと、女性達は160cmの私と同じぐらいの身長で装飾品は身に付けておらず、それぞれ美人だった。祭壇と反対の出口に向かうように腕を思い切りひっぱられたので、仕方なく女性達についていく。
やっと、このどこか分からない教会から出られそうだ。




