エピローグ
焦土と化した固い土に男が鍬をふるう。
その時、黒く立ち枯れした林の影から虚ろな瞳をした青年が、シロツメクサの花を手に現れた。
宰相とその娘が惨たらしい私刑に処され、国王が磔にされるという凄惨な最期を辿った隣国の暴動のさなか、男が逃げる途中で拾ったこの青年は、どこか品があったが酷く痩せこけ言葉も話せず、日がな一日虚ろに空を眺めては過ごしている。
武器を手にした民衆が迫ってきても逃げるどころか、立ち上がる素振りさえ見せなかった青年は、「一緒に行くか?」と手を差し出した男の瑠璃色の瞳を食い入るように見つめると、黙ってついてきて今に至っていた。
放っておくと食事すら摂らないが、小屋の中の木片へ手向ける花を摘むことだけは毎日欠かさず続ける青年を養うために、男は十数年前の戦争で焦土と化した故郷の土地に鍬をふるい、僅かばかりの糧を得ている。
遠い昔に娘たちにシロツメクサの花冠を作ってやった時にはもっと細かった男の手は、何度も豆が潰れて今ではすっかり無骨な掌となっていた。
「大事な約束だからな。だが命を懸けて守ったあの子をみすみす逝かせてしまったせいで、あっちへ行ったら二人にどやされそうだ。本当に……どちらの子も母親に似てしまったおかげで、生かされた奴はたまったもんじゃないよな」
困ったように泣き出しそうな顔でそう言って、青年を見る男の瞳は憎んでいるようでも慈しんでいるようでもあり、また哀れんでいるようでもあった。
その時ふいに風が流れ、永遠に広がっていると思われた、どんよりと暗い鉛のような灰色の空の切れ間から一筋の光が差し込み、透き通った青色の空が覗きだす。
地上に降り注いだ光は一筋の帯となって、小屋の中の木片に手向けられたシロツメクサの花を瑠璃色に照らしたのを、男と青年はいつまでも見つめ続けていた。
バッドエンドですみません。恋愛要素も薄くて申し訳ありません。
ご高覧くださり、ありがとうございました。




