69話 治療と理由
目の前で泣いている男になんて声をかければいいのか分からず俺は男の子の傷口を抑えることしかできなかった。
少しするとエマちゃんが来た。
エマちゃんが来てから少しするとソフィアも来た。
そのあとエマちゃんとソフィアの力で男の子の腕を繋げ男の子の治療が終わった。
もう片方の子だがどれだけ力の強いソフィアでも生命力がなくなった子はどうしようもなかった。
治療する姿を見るとやっぱりエマちゃんはソフィアと契約したんだなと改めて実感した。
その治療の手際の良さからこの三年の時間の努力を改めて感じることが出来た。
少しすると昨日会った学園長が息を切らしながら現れた。
「うちの生徒が怪我をしたというのは本当か」
学園長は最初に寝かされている子の姿を見ると舌打ちをした。
そのあと俺と腕の治療が終わった子を見る。
俺たちは無事だと分かると最後にエマちゃんを見た。
「そこの男の子は治療が終わりました。もう一人は私たちが来たときにはもう息をしていませんでした」
学園長が声を発する前にソフィアが状況を報告する。
「エマ様とソフィア様のおかげで助けることが出来ました。本当にありがとうございます。君の保護者とこの子の保護者に報告するから名前を言いなさい」
学園長はエマちゃんに感謝をすると男の子に名前を聞く
「お、俺の名前はテオ・タイロンです。そいつの名前がトム・レイバン」
男の子がかすれた声で言う。
「そうかきついと思うがあと少しで騎士が来る。騎士に何があったか報告するように。」
学園長はそういうとそのまま建物から出て行った。
俺はその時初めてこの子の名前を知ることになった。
また少しすると外が騒がしくなった。
「おいテオは無事か」
少し年を言った騎士の制服を着た男が入ってくるとテオ君の無事な姿を見ると安心したようだ。
「お、お父様」
男の子は入ってきた男の姿を見ると抱き着く。
「お前が無事でよかった。本当に良かった」
どうやらその男はテオ君の父親のようだ。
「一体何があったんだ。ゆっくり説明してくれるか」
男に言われてテオ君は少しずつ話始めた。
この前学園の剣術の授業の際俺に手も足も出せず負けてしまった。
この男の子はこの街の騎士団長の子供のようで剣術には自信があったようだ。
それでトムと二人で野生の動物を狩って憂さ晴らしをしようとしたらしい。
狩りは順調で何頭か動物を狩ることが出来てそろそろ帰ろうとした時突然現れた熊の魔物にトム君は即死しテオ君は腕を切り落とされたそうだ。
そのあと俺が来て魔物を退治しここに運びこんだ。
「俺が俺が悪いんです。俺が野生の動物を狩りに行こうなんて言わなければこんなことにならなかったのに、俺のせいでトムがうぅっ」
最後まで説明をすると完全にテオが泣き崩れた。
なにがあったのか分かったため俺は帰宅の許可をされた。
実際に俺が言った場所に熊の魔物がおりテオも俺に助けられたということで俺は関係ないということが証明されたためである。
「デニスちゃんは危ないことして、ちゃんとどこか行く時は私に言ってからにしてね」
エマちゃんからもカミラに言われたように叱られてしまった。
実際俺が抜け出して魔物が出るようなところに行ってしまって戦いになったのだから保護者に怒られるのは当たり前だ。エマちゃんは保護者じゃないけど。
「はいはい、カミラにも同じように怒られたよ。そんなことより今日は夕ご飯私が作るんだよね何が食べたい」
何度も何度も小言を言われたくない。
そのため俺は話を変えた。
最初は俺の態度になにか思うことがあったようだが夕食の話になると途端に笑顔になった。
やっぱりエマちゃんはまだまだ子供だ。
夕食は何を買うのか決まり市場で食材を買った。
「そういえばレットはどうしたの」
エマちゃんが建物に現れた時レットはいなかった。
そのあともレットの姿を見ていない。
「建物に怪我人がいるって言われてレットちゃんは危ないからって寮に連れて行かれたよ。」
お姫様が状況の分からないが怪我人がいる場所に行くわけには行かない。
「そういえば食材を買うときは教えてって言ってたっけ忘れてた」
最後にエマちゃんの言葉に後でレットに何を言われるか不安になりながら帰宅をした。
テオ君の剣術に自信があるのにCクラスにいる理由は学力のせいです。




