第十三話
「懐かしいかい?」
「五月蠅い、喋りかけるな」
なにが悲しくて男と二人で肝試ししなきゃならないんだ。てかこいつやけに突っかかってくるし。
別に待ち合わせする気は無かったが、新谷は校門前で待っていた。抜け駆け防止とか言って19時から待ってたらしい。
「ここが恵真の母校だったなんてね……」
「案外、お前が呼び出したんじゃなくて、初めっからここにいたのかもな」
「そっか……そうかも知れないね……」
校庭を歩きながら、こいつの下らない話に付き合う。
「俺、恵真のこと好きだったんだよ」
「そうか」
「てか告白したこともある」
「……」
もうすぐ校舎に着くって時に、こいつなに言ってんだ?き、気になるじゃないか……。
「で?恵真はなんて?」
「あれ?歩かないのかい?」
立ち止った俺を見て、新谷はニヤニヤしながら先を急かす。
「いいから!なんて言ったんだ!?」
「ふられたよ、俺の事は普通に好きだけど、もっと好きな人がいるからって」
「よし、行くぞ」
まったく、こいつは本当に下らない話しかしない。
「君だったんだね、それ」
「お前には可愛い彼女がいるじゃねえか」
「そう……そうだね……」
校舎の窓を見ながら、俺は昔の記憶を呼び覚ます。懐かしい思い出しかない校舎。そこの花壇でチューリップを植えた。あの水飲み場の前で転んだ。校舎の壁捲るのが流行って怒られたなぁ。
「ここが3年1組だな」
「流石卒業生。迷いがないね」
「俺と恵真が初めて会ったのがここだよ」
「そうなの?」
「俺は転校してきたからな」
初めての転校。ビクビクしながら入った教室。都会と違ってあまりにも少ない生徒数。でも、入った瞬間、恵真が、皆が歓迎してくれた。
「よくこの窓から出入りして怒られたんだよ」
「へえ、そうなの。でもここは鍵が閉まってて開かないよ?」
「あ?ここに恵真がいるんだろ?」
「そうだけど、あっちの1年1組から入って……って!なにやってんの!?」
「一枚も二枚も一緒だ」
小気味いい音と共にガラスが割れ、内側にある鍵を開けた。
「さて、ご対面だ」
「無茶するなぁ……」
中には乱れた机と椅子が散乱し、桶やら人形やらが落ちている。まったく、人の思い出の場所で遊びやがって。
「おい、恵真。出てこいよ」
俺がそう言うと、教室の空気が一変した。重苦しい、息が詰まりそうな空気だ。
「き、来た……」
新谷が指さした先に、確かに恵真がいた。顔はボコボコに腫れ、ワンピースも血塗れだ。でも……。
俺はどんどん恵真に近づいて行く。
「おい!危ないぞ!」
「うるせえ」
目と鼻の先、並んでみると余計に分かる。あぁ、俺こんなにデカくなったんだな。
俺が恵真に話しかけようとした時、教室の扉が勢いよく開かれる。そこに現れたのは、血塗れのワンピースを着た女。鎌を持っている事から、こいつが今川を襲ったやつだとすぐ分かった。
「やっぱり、もう一人いたんだな」
俺がそいつに向き直し、戦闘体制に入った時、なぜか新谷が俺の前に躍り出た。
「もう止めろよ……里穂……」
里穂?誰だっけ……それ……。




