第2話 出会い
基本は毎週金曜18:00頃更新予定です。
後、1話くらいは今日中に上げたいです。
チートスキルは何もない、ステータスの数値はゴミ。最後の希望の権能は、動悸・息切れ・気つけに効きそうなだけ。そんなかなり詰んだ状態で異世界に放り出された月野 光です。
いつか物体Xに会うことがあったら力の限り拳を振るおうと思います。Atk1だけど。
魔物とか現れて戦闘になった瞬間、全力で命乞いをしてみるね。異世界土下座系ってあんまり聞いたことないんだけど、大丈夫?
ああ、一通り現在地の確認したら、お腹減ったし喉も渇いたわ。飲食物なんて何もないよね・・。魔法なんて使えんし、煮沸消毒のための火も起こせんもんなぁ。!!・・・一応、こういう時は火を想像しながら身体の中の魔力を探して・・・お約束だと使えるはず・・・。
「ファイア・・」
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はい、何も起きませんね。はっず!!恥ずかしい!!!
分かってるよ!手心なんて加えてくれませんよね、あの物体Xは。そもそも、身体の中の魔力ってどう感じるんだよ!それに動物を捕まえても捌けないから、丸かじりしかないんだけど!
小河の水が飲めるか確認して、飲めそうなら飲んで、一旦渇きだけでもしのぎますか。
「うっま!なんだ、この水うめぇ!!」
透明度の高い水を手にすくって恐る恐る飲んでみると、ひんやりとした水で少し甘く、色々と絶望している自分の心と身体に染み渡っていく。
「ひゃっはぁ!!こいつはうめぇぜ!!」
世紀末風にガブガブ水を飲んでいると、上流の方から何かが流れてきた。何だ、あれ?・・・人?修道服みたいなの着てるぞ・・・人だろあれ。
え・・土座○門が浮かんでた水呑んでたの、俺?何が『幸運』だよ!まじでいい加減にしろよ物体X、異世界転移物のスタートでここまでやるか?ハードモードなんてレベルじゃねぇぞ!
< 権能 救神誓約が発動します >
どこからともなく、聞いたことがあるような機械的な音声が頭に響く。
「いったあああああああああああああああああっっっっぅ!!!」
声が響いた瞬間、ものすごい頭痛と土座○門に身体が引き寄せられる感覚を感じる。
権能がなんか発動したんだけど、死体に引き寄せられる権能って何なの?動悸・息切れ・気つけに効くだけじゃなかったの?
ザブザブ小河の中に入っていき、浮かんでいるその物体に近づくと、自然に頭痛も消えていった。その物体を岸に引き上げて確認してみると、人間だった。
胸は僅かだが上下に動いているし気を失ってるみたいだけど、どうやら生きてるみたい。土座○門と決めつけてすまん。身体を見てみると、あちこち傷だらけで、血が滲んでいる。深い切り傷や矢のようなものが刺さってて痛々しい。GOA表現軽めでオナシャス。
よ・・よっしゃ、いっちょ、おいちゃんが助けたる。若干、土座○門気味なのが気になるところだが、義理と人情のツキノヒカリたぁワイの事やで!待っててや!
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おぅ・・どうする?勢いよく何かしようとしたけど、傷薬なんてないし、包帯とかも持ってない。ヒールなんて魔法も使えない。権能発動したけど、何も起きてない。・・・どどどどどうする・・・!死にかけの人を引き上げただけなんだけど・・。
よく見てみると、溺れたその人は大量に水を飲んでるみたいで正常な呼吸では無いようだ。また、かなりぐったりしてる。一旦、まずは一旦心肺蘇生しよう。
女性だと思われますが、救命処置だから!やましいことは何もないから!
会社の研修で一次救命処置は習ってる。まずは胸骨圧迫で胸の真ん中に手の付け根を置き、肘を真っ直ぐ伸ばし上半身の動きで、少なくとも5~6cm程度沈むよう、1分間に100回のテンポで圧迫する!その後は気道確保、仰向けに寝かせた状態で額に手を当てて、もう片方の手を下顎に添えて上へ引き上げる、そして最後に人工呼吸、鼻を押さえ軽く胸が上がる程度に息を吹き込み胸骨圧迫30回毎に2回行っていく。
頑張れ~生き返ろ~と応援しながら、何度も処置を行った。
「ゴボッ!ゴホッ・・ゴホッ!!」
しばらくすると水を吹き出し、呼吸と意識が戻ってきたようだった。
「ここは・・どこで・・・くっ!」
「気が付いた、大丈夫かい?!いろんな所怪我してるみたいだから、ちょっと安静にしてて。包帯の代わりになるような草とか何かないか探してくるから!」
といってもここがどこかも分からない俺は棒立ち状態。何かないか~どうかできないか~と足りない頭をフル回転させていると、頭の中にさっきの機械的な音声が響く。
< 権能 救神誓約を使用しますか? >
< 対象はリオン=アステリアスで宜しいですか? >
きったぁあああ!!頼むぜ、困ったときの権能さん!
「当ったり前だろ!!!使用する!!使用する!!」
大声で叫ぶと、目の前の人物の周りを囲うように光の粒子が発生する。彼女の身体全体を光の粒子が包んだかと思ったら、傷口が時間を巻き戻すかのように修復されていく。深い切り傷も、矢が刺さった個所も、何事もなかったかのようにすべてが修復され、光の粒子が徐々に消えていく。それと共に傷も汚れも何もかもが綺麗な状態に戻っていった。
おお、ごめんよ権能さん、使えねーなんて思って。超絶回復魔法やったんやね。ありがてぇ、これならワイ生きていける。低ステータスはかなり気になるけど、大けがしない限り、権能で何とかなるわ。やるじゃん、物体X様。
「あの・・・」
今後の明るい行く末を思い、感極まっていると呼びかけられた。
ああ、良かった意識が戻ったんだね。不審者じゃない感じでお返事しなければ。
「すみません多少物思いに耽ってまして。でも良かったです、一時はどうなることかと心配しました。傷ももう大丈夫なようですし、良かったです、ホント。」
「あの・・・大変失礼かとは思いますが質問しても宜しいでしょうか」
「もちろんオッケーですよ!あなたのような綺麗な人からの質問は大歓迎ですよ!・・・綺麗・・?」
さっきまでは助けるのに夢中で全然気づかなかったけれど、何だ、この美女。ふわっとした金髪のセミロングに、王冠を形作るように茶やオレンジの差し色が入ってて、大きな瞳は蒼く、桃色の唇はぷっくりと煽情的だ。前の世界だとハリウッド女優だと言われても驚かないほど美しい女性がそこにいる。また水で張り付いた修道服らしきものは身体のラインがはっきりと主張されており、否が応でも意識してしまう。また、異世界らしく腰には長剣らしきものを携えている。
俺、胸骨圧迫とか人工呼吸してるんだけど、セクハラで切られませんかね?
「え・・えとあの、無事なようで何よりです。か・・風邪を引いたら大事ですので、汚いかと思いますが、自分の服を上から羽織ってください・・。」
童貞臭い言動とムーブをかましつつも目のやり場に困るため、おもむろに自分のシャツを脱ぎ、美女に羽織るように促す。
隠して頂かないと凶器のような肢体が目に毒なんです。よく考えると俺はシャツの下に何も着ていなかったので、29歳半裸オジが爆誕しました。
29歳半裸オジが水に濡れた修道服スケスケ美女に救命措置と称しセクハラ行為。新聞紙の一面を飾りそうな文章が頭に浮かんでくる。
あ・・・アカン・・・通報案件や・・・これ・・・。
美女は呆然としながらも服を受け取り、食い入るように俺の胸を見てる。その後、ハッとした表情を見せ、ぐぐっと自分の方に身を寄せ聞いてきた。
通報ですか?それだけはご勘弁願いたいのですが。
「お・・・男っっ!!?男性なんですか?!しかも黒髪、黒瞳・・・なんて美しい・・・。」
なんか、容姿をほめられた気がする。良かった通報じゃなかった。
「は・・・はい、男ですが・・・あんまり近づかれるとその・・・ちょっと・・・」
女性免疫のないワイは、こんな絶世のスケスケ美女に近づかれると股間のコルトパイソンマグナム357が火を噴いてしまう。
「す、すみません、取り乱してしまいまして。淑男に対して失礼でしたわ。申し訳ありません・・ワタシのような下賤な女が近づき・・不快な思いをさせてしまったこと心よりお詫び致します。気まぐれとは言え救っていただき感謝申し上げます。少し回復すればすぐに立ち去りますので、もうしばらくここに居させていただいても宜しいでしょうか・・。」
伏し目がちに美女が申し訳なさそうに聞いてくる。
ん・・・?淑男・・・?下賤・・・?不快・・・?何を言っているのか良くわからんが下賤な29歳半裸オジが不快だから目の前から立ち去ってほしいということだろうか。
現代社会日本のブラック企業職員として生き抜いてきた俺は、気遣いだけは出来ますよ。分かりますよ、助けてもらった恩はあるものの半裸で動き回る生理的に気持ち悪いオジサンには距離を取ってほしいんだよね。
了解です、その辺の気遣いは前の世界でもきちんと出来てましたから。まずは詫びますかね。
「も、申し訳ない!不快感をあたえるつもりは無かったんだけど・・・お姉さんみたいに綺麗な女性を見たことなくて、挙動不審になって・・・不快感を与えてしまったみたいです。お、俺がいると邪魔だしキモイと思うので、向こうの方に行きます。安心してください!まだお姉さんの体調も戻ってないと思いますので、ここでゆっくり休まれてください・・・ホントすみません・・。」
一応、謝罪も入れつつ、気遣いも伝えれた。大分気持ち悪い感じになってしまったのはご愛敬だろ。異世界初の美女との邂逅が、残念な結果になった事に肩を落としながら立ち去ろうとする。
「____は?」
声がしたお姉さんの方を振り返ると、鳩が豆鉄砲喰らったような素敵な間抜け顔をするお姉さん。おお、やっぱり美女はきょとんとする顔も美女なんですねぇ・・・すげぇ・・・。聞こえなかったみたいだし、もう一度伝えよう。
「だから、自分のような半裸オジが近くにいると不快だと思いますので、自分はすぐに立ち去りますから、ここで休まれてください。結構、離れますけど何かあったら呼んでください。ホントお目汚し申し訳ありm・・」
「だだだだだだだ大丈夫です!」
ぐいっと大型哺乳類に捕まえられたように体ごとお姉さんの傍に引っ張られる。力強っ!おお、よく考えたら精神的には29歳でも身体は14~5歳程度だもんな。半裸オジではなくキモオタ半裸少年やったか!少年なら近くに居てもまだ許されるんかな?
そんな考察をする暇なくお姉さんにがっしりと腕を捕まれ、逃げ場を無くす俺。立ち去ろうとする俺を引き留める美女。ちょっと憧れていたシチュエーション、ご馳走様です。
「ワ、ワタシは陽光教会 聖騎士団団長のリオン、リオン=アステリアスと申します。宜しければあなた様の尊き御名をお教えいただけますでしょうか。」
おお、すごい。この爆美女お姉さんは聖騎士団団長のリオンさんって言うのか。自分もその聖騎士団入りたいっす!低ステ、ごみスキルですがたまに権能が役立ちます!お姉さんが名乗ったんだ、こちらも素敵に名乗らんといけませんな。
「え、ええと、お、俺はツキノヒカリと申します。デュフッ」
おっと、小粋に名乗って少年特有の笑顔でメロメロにしたろと思ったら、キモオタ名乗りになってしまった・・・本質は隠せないんやなって。
「ツキノヒカリさま・・・なんと美しい響き・・・いと尊き名ですね・・。」
おっ何か良い感じで受け取ってもらえたみたい。いと尊きなんて古文の授業以来、久しぶりに聞いたぞ。美女からの誉め言葉、心のアルバムに刻み込ませて頂きます。
命を助ける⇒お礼を言われる⇒多分、好感度高めというか異世界だしチョロイン補正で好きになってくれるかも!ならば、ここは女性免疫無しの自分とはいえ、決め時として考え抜いた台詞を言ってみよう!やってみよう!
「ええと、リオンさんこそ、綺麗で恰好いい名前だと思いm」
「えっ」
リオンさんは大量の鼻血を噴き出した。
え・・これどうすんの。俺のせい?
これどういうタイプの異世界転移ものなの?
救心製薬㈱:動悸・息切れ・気つけに効く「救心」という薬を販売している日本の製薬会社。昔は、「きゅーしん♪きゅーしん♪」ってCMが流れていました。
一次救命処置については、役に立つ事があるかもしれないので詳しく書いています。
コルトパイソンマグナム357:昔「シティハンター」という漫画の主人公が使用してた銃。とても好きでした。




