第13話 PT(パーティ)名
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リオンが放ったPT名「月の光教団」を聞いた瞬間、ギルマスは渋い顔をした。
いや、さすがにアングラ宗教臭たっぷりだし、俺の名前ですしおすし・・・。
「リオン、それはダメだ。そのPT名だけは絶対にダメだ。」
「何故ですか?」
「月の光教団・・・教団つーことはだ、とどのつまり宗教団体だろ。」
俺の名前を使った宗教団体とか止めてください。
「・・・あれを見ろ、リオン」
ギルマスがサムズアップしている親指の指さす方を見てみると、「宿り木亭」が良く見える出窓の所に何か置いてある。
・・・よく見ると、額縁に入った紙に達筆な文字で書かれたものが飾ってある。社訓みたいなものか?
<<ギルド十戒>>
1⃣ 詐称に関わることなかれ
2⃣ 政事に関わることなかれ
3⃣ 宗教に関わることなかれ
4⃣ 姦淫に関わることなかれ
5⃣ 殺人に関わることなかれ
6⃣ 盗みに関わることなかれ
7⃣ 誘拐に関わることなかれ
8⃣ 利益に関わることなかれ
9⃣ 麻薬に関わることなかれ
10 以上をもって全てのギルド所属者に不利益を与える事なかれ
「お前らのPT名(月の光教団)は、ギルド十戒の3項「宗教に関わることなかれ」に引っかかる。だからそのPT名は、白金貨100枚積まれようが認められねぇ。そのPT名を認めるっつーことは全ギルドがその宗教を認めたことになるからな。
お前も含め宗教団体に所属している個人の冒険者登録は認めても、陽光教や星辰教と名のつくPT名登録は認めていないだろ?」
「ふむ・・・。」
皆さん、ご機嫌よう。二人の会話に入れず俺の名前入りPT名が却下されたところです。
良いんだけどね、良いんだけど・・・何だろこの悔しい感じ。
ちなみ”陽光教”と”星辰教”についてだけど、リオンから前に聞いた話では、このディオスと呼ばれる世界には7つの大国があって、その全土に渡って信徒が最も多い宗教はリオンを追い詰めた憎き『陽光教』なんだと。陽光教は教義である子孫繁栄の名のもとに男性を保護し、救世済民を歌っているそう。男女比率7:1というとんでも異世界ディオスでは男性尊重を重んじる『陽光教』が国教として定められてる国が多く、最も権威ある宗教として定められているんだそうな。
ただ、男性保護の側面には、誘拐に近い場合もあるのでそれが国際問題になることが度々あるみたい。今回の冒険者ギルドから依頼を受けたケースがそれに該当していますな。
『星辰教』は『陽光教』の次に信徒が多くて、こちらは女性優位を唱え男性を迫害し優秀な男性は子孫を残すための道具と見なすという俺にとっては恐怖しかない宗教となっているそうな。ここでいう「優秀な」というのは魔力やスキル持ち、社会的地位の高い職業に就いている男性を指すとのこと。
俺のような低スペ無職にはとことん厳しそうな宗派ですな。いつになったらステータスボードに職業が生えるんですかね?
基本的にこの2つがこのディオスという世界における2大宗教として名を馳せているとのこと。男性の誘拐と迫害が2大宗教だなんて碌な世界観じゃないんですが、男性である俺の転移先間違えてませんかね?
そんなわけで全ギルドは、男性の誘拐と迫害を行う2大宗教のどちらかに加担することはデメリットでしかないと判断し、十戒に「宗教に関わることなかれ」を明記して新興宗教を含め宗教団体には表向き一切関わらないようにしてるんだってさ。宗教戦争に巻き込まれてもたまったもんじゃないだろうしね。
そんな背景を分かったうえで、何故リオンは十戒に引っ掛かる可能性のある『月の光教団_通称月光』という名前を付けようとしたんだろうか。~~教とかじゃないからワンチャン通ると思ったのかな。
でも結果としては教団=宗教団体と見なされ、ギルド十戒に引っかかるから認められないという結果になったってことのようだ。
正直、『異世界転移したら新興宗教立ててみた』とかにならなくて、俺は少しホッとしてるのが正直なところですな。
俺の名前があまりに目立つ新興宗教はちょっと・・・。
それでも諦めきれないのかリオンはギルマスに再度交渉を持ち掛けている。
「何とかなりませんか、ラフロイグ」
「さすがに十戒は破れねーよ、リオン」
「・・・分かりました。依頼を断ると脅してもダメですか?」
「・・・依頼は是非にお願いしたいが・・・いやダメだ、さすがに十戒破りは俺のリスクが高すぎる。さっきの条件を全て飲むんだぜ?・・・欲かきすぎは良くねーぞ。」
リオンは少し悩む素振りを見せ・・・白旗を上げた。
「・・・はぁ、分かりました。PT名は一旦保留で。依頼は引き受けるので先ほどの条件はよろしくお願いいたしますよ。」
「まぁ、保留しようが無理なもん無理だぜ。ギルドプレートと“鑑定”の魔法書は用意させとくから、受付でもらってくれ。」
「・・・ありがとうございます。依頼の件は今日から始めますね。」
話が終わったという事で、リオンと俺は席を立ち、執務室から扉を外に出ようとすると、俺たちを見送りながら、ギルマスが声を掛けてきた。
「ああ、依頼の件は宜しくな。それと、嬢ちゃん素敵な黒髪・黒瞳だね。男だとバレないようにもう少し声高に話しな。」
おお、バレてーら。一応アドバイスをもらったのだからお礼言っとこ。
「ありがとう、ラフロイグさん。リオンに迷惑かけないように気を付けるよ。」
それを聞いたギルマスは大きな声で笑いだした。
「ハハハッ、な・る・ほ・ど、なるほどなるほど。男が女に素直にお礼かよ。こりゃあのお堅い”獅子王”が骨抜きにされるわけだ!」
「ええ、骨抜きは間違いありませんが、下品な詮索は死期を早めますよ。」
「ハイハイ、わーったよ。んじゃ宜しく頼むぜ。」
その後、1階フロアの受付で冒険者登録を済ますと、鉄鋼で出来たギルドプレートと呼ばれる紐がついた板みたいなものを貰い、俺とリオンの2人をPT名がまだ決まっていないため、「月の光(仮)」という俺の名前でPT登録しやがった。まぁいいけど・・・。
PTにも等級があるらしく、俺たちのPT等級は「銅等級」という最低等級であった。
これについてリオンは
「・・・やられました・・・確かにPT等級については言及していませんでした・・・。申し訳ありません、ヒカリさま。」
「いいよいいよ、気にしないで。最初からの方がやる気出るからね。リオン、色々教えてね。」
「・・・ヒカリさま、本当そういうところですよ。」
顔を赤らめたリオンから怒られた。あるぇ?
PT階級に関しては今後、ギルド依頼の案件をこなしながら積極的に上げていこうという方針を決め、冒険者ギルドを後にした。PT等級アップについてはそんなに急ぐ必要ない気がするが、評価を上げることはいいことだ。
※ ※ ※ ※ ※
「宿り木亭」までの帰り道、リオンから何故か謝罪を受けた。
「ヒカリさま、PT名の件・・・申し訳ありませんでした。」
「いいよいいよ、気にしないで。リオンは何か考えがあったんでしょ?ただ流石に俺の名前がPT名についちゃうのはねぇ・・・リオンの方が有名だし何か申し訳ないよね。」
「いえ、違いますよ。ギルドにPT名を認めさせれなかったことです。」
そっちかーい!!そっちとは思わんかったわ!
「あとヒカリさまに事前にご相談していなかったことも申し訳ないと思いまして。」
基本的にリオンは俺最優先で色々考えてくれるから、別に事前相談なくても特に気にはしてないんだけどね。PT名に俺の名前は事前に教えてくれたら止めれたのになくらいなモンですわ。
「いや、別に本当気にしなくていいけど。この世界についてはリオンの方が詳しいんだし、基本はリオンの指示に従うつもりだよ。・・・ただ俺の名前が付いたPT名は恥ずかしかったけどね。」
「・・・ヒカリさま本当に申し訳ありません、ですがヒカリさまを様々な事からお守護りするためにしたことなのです。」
「え?どういうこと?」
「ヒカリさまをお守護りする上で重要な事は武力と口が堅いことです。ですので武力においては優秀な戦士たちで周りを固めること共に何かに囚われていない自由な冒険者でPTを作る事が賢明だと判断しました。次に重要なのはヒカリさまの秘密を洩らさないという条件です。その条件を加味すると宗教団体のような秘儀を守り抜く性質が必要になります。ですので、ヒカリさまの名を冠する宗教団体のようなPT名であることこそが唯一の解なのです。」
なるほどね、俺が男性であること・異世界人であることや、権能でリオンにスキルを与えていることとかよく考えたら秘密にしないととんでもないことが沢山あるかもしれませんな。
元陽光教の聖騎士団団長が「秘密を洩らさないことにおいて宗教団体が間違いない」というのであればそうなんだろう。
まぁそれに俺の為じゃなければ、陽光教でひどい目に合ったリオンがわざわざ宗教臭のするPT名なんて付けないだろうしね。俺のために嫌な気持ちも我慢してくれてるんだろうな。
リオンは本当、いつも俺のことを考えてくれてるんだなぁ・・・本当ありがとう、リオン。
「リオン、色々考えてくれててありがとう。」
「いえ、当然です。」
「ところで、PT名は俺の名前じゃなくてもいいんじゃない?”~教団”なら何でも良かったんじゃない?」
「いえ、”月の光教団”だから意味があるんです。ヒカリさまを神祖にし奉ることで権能などがばれた時も神を言い訳にごまかせますし、それに・・・。」
「それに?」
「PT幹部だけが密接な関係を持つことが出来ます。」
ニヤリとハイライトの消えた目でこちらを見るリオン。
いやまぁ。ヤンデレ好きなのでむしろこれくらいの軽い?感じはありがたいが・・・。確かに、普通のPT名で俺という男が多くの女性集団の中にいたら・・・狩られますな(性的な意味で)。・・・あれ別に良くない?
って冗談はさておき確かに好みではない女性たちに無理やり関係を持たされるのは正直きついですな。いや、かなりきつい。・・・確かにリオンの言う通りかも。ルッキズムだなんだと言われてもこればっかりはしょうがない。
月の光教団か・・・名前がなぁ・・・我慢するか・・・。
「リオンの言う通りかも・・・ん?でも”ギルド十戒”に引っかかるからPT名は変えないといけないんじゃない?」
「大丈夫です、ヒカリさま。それに関しては考えがあります。」
おお。心強いお言葉。
うん!いいよ、もうPT名は了解した。でもどうするんだろ?ギルマスは白金貨100枚でも首を縦に振らないってなこと言ってた気がするけど大丈夫か?白金貨100枚って1億円だぞ?
まぁ、リオンに任せよう!
そんな会話を交わしながら我らが生活拠点の「宿り木亭」に到着する。
部屋に急いで駆け込むとお待ちかねのこれぞ異世界という・・・“鑑定”の魔法書ですよ!
リオンから聞いたけどステータスのintelligence(知力)が100程度あって、Ma(マナ・魔力)が0でなければ魔法が使える可能性があるって!!
よしっ!よしっ!異世界系最強魔法と呼んでも過言ではない“鑑定”ですよ!情報は異世界生活を生き抜く上での最強の武器なんだ!絶対に覚えるぞと意気込んで、魔法書を開いた。
________字が読めないんだけど。
助けて、リオえもん!!
リオン=リオペディア=リオえもん




