第一話 一作家
私は勇者である。まさに今成ったばかりである。
あまりに澄んでいる空に衝動を駆られ数週篭もっていた部屋を抜け出しどすんと実った贅肉ですでに息切れした。
キィ――と、弱音を吐く玄関を押し倒した。
桜が芽吹き切る前にその様子を見なければこの姿と共に見せることになる。
そうならない為、今のうちにと横断歩道へ足が動く。
体が死に急ぐように働くのは大それた理由ではない。
幼く、まだこの身が醜く変わる前に自分を愛でて下さった人に愛を赤裸々に謳った場が家の近所にある。
腐って使い物にならなくなった人生は見るのは辛い、何処までも幸せを噛み締めたくて、その同月に墓参りの如く、別れを告げられたきり訪れている。
同日にしないのは意味を知っている人に悟られない為。
自分の弱さに驚いてばかりだ。
足が筋肉で熱され、腰が自壊する様に痛い。
ドスドス――と足音が次第に大きくなる。
不安が大きくなる、明日が見えなくなるよりはマシだった。
だが、正直不機嫌だ。
己の体に嫌気が何度ささったか。
投げ出す様に角を曲がってしまったが最後だった。
所々掻き跡がある鉛筆を耳にかけた。
さて、どうこの男を殺そうか。
交通事故が王道だろ?
いや、物語りにありきたりを用いすぎると人は飽きてしまう。
では、変則に?
かけた鉛筆はいつのまにか手元で回り、シミが広がりすぎた天井を見つめるものがなく仕方なく眺める。
暖色系の電球がカーテンで暗い部屋をムーディーにする。
足を組んでは背を床に向かせる。
滲んだ消しゴムを手でこねくり考える。
その刹那思いつく。
「…あ、そうd」
「ソウカ〜!あ、あんたまた部屋暗くしちょん!
全く、一人遊びなんてせんと、ほれ、高校ん道覚えるためにチャリで走り!」
そして私は施錠できない戸をいつもの様に恨んだ。




