第30話:【朗報】国境の「壁」は心の壁w お隣さんに挨拶に行ったら、全力で拒絶されたので「自動ドア(粉砕)」にしてあげた件www
【国境:巨大な隔絶の壁】
エングラム王国の実権を「決済(物理)」したアリシアは、翌朝、隣国・ベルガ帝国の国境へと辿り着いていた。 そこには、暴走するアリシアを警戒し、帝国が数十年かけて築き上げた「絶望の防壁」がそびえ立っている。厚さ数メートルの石材に、幾重もの防御魔法が施された、まさに難攻不落の要塞。
その前で、帝国の老将軍・バルカが数千の精鋭部隊を率いて叫んだ。
「アリシア・エングラム! ここから先は帝国の神聖なる領土である! 一歩でも踏み込めば国際問題、即ち全面戦争と見なす! 貴様の野蛮な暴力も、この歴史ある壁は通さぬぞ!」
バルカ将軍の主張は、主権国家として至極全うなものであった。兵士たちも「これなら防げる」と、法と物理の厚みに縋るように構えている。
「……あら。お隣の将軍さん、随分と恥ずかしがり屋さんですのね」
【近所付き合い:壁は語るためにある】
「恥ずかしがり屋だと……!? 貴様、この数千の槍が見えぬのか!」
「ええ、見えますわよ。でも、そんなに高い壁を作って引きこもっていては、せっかくの『ご近所挨拶』が届きませんわ。お母様も仰っていました……『心の壁を取り払うには、まず壁を壊せ』と」
アリシアは、ドレスの袖を少しだけ捲り上げた。 彼女の脳内では、国境線という概念はすでに消滅し、ただ「隣の部屋とのパーテーション」程度の認識へと書き換えられている。
「……あ。お姉ちゃん、あの壁、魔法ですっごく固めてあるよ? さっきのサリバンさんの時より、何倍も頑丈そうだよ」
後ろで銀の箱を抱えた少女が、冷静な分析を口にする。だが、アリシアはそれを「褒め言葉」として受け取り、屈託のない笑顔を浮かべた。
「あら、それは素敵。わたくしの『誠意』を、より強く、より深く受け止めてくださるということですわね」
【施工開始:一撃の親睦】
アリシアは、一歩だけ踏み込んだ。 地面がクレーターのように陥没し、その振動だけで国境警備隊の数人が転倒する。
「や、やめろ! くるな! 撃てッ! 一斉射撃だッ!!」
バルカ将軍の悲鳴に近い号令と共に、数千の矢と魔導砲がアリシアに殺到する。空を覆い尽くすほどの攻撃。 だが、アリシアはただ、真っ直ぐに右拳を壁へと突き出した。
ドォォォォォォォォォォォォォンッ!!
王都の城門を壊した時とは比較にならないほどの重低音が、大地を激しく揺さぶった。 帝国の誇る「絶望の防壁」は、アリシアの拳が触れた一点から、蜘蛛の巣状に亀裂が走り――次の瞬間、一キロメートルにわたる範囲が、砂粒のように粉々に砕け散った。
防御魔法? 物理耐性? そんなものは、アリシアの「思考を放棄した純粋な暴力」の前では、ただの計算ミスに過ぎなかった。
【挨拶回り:静まり返る帝国】
砂煙が晴れると、そこには広大な「平地」が広がっていた。 さっきまで壁の上で威張っていた兵士たちは、全員が瓦礫と共に帝国側へ数十メートル吹き飛び、綺麗なアーチを描いて地面に突き刺さっている。
アリシアは、唯一その場に立っていた(腰を抜かして動けなかった)バルカ将軍の元へ、優雅に歩み寄った。
「……。……。全く。最近の若者は、挨拶一つするのにも、こんなに大掛かりな仕掛け(壁)が必要なのですわね」
バルカ将軍は、自分を「若者」と呼び、国境を地図から消した少女を、震えながら見上げた。
「……ひ、ひぃ……あ、あ……」
「そんなに感動しなくて良くてよ。さあ、将軍さん。わたくし、帝国の王様とも『直接的な対話』をしたいのですの。案内してくださるかしら?」
アリシアは、気絶しかけたバルカ将軍の襟首を掴むと、そのまま「新しい引きずり椅子」として再利用することを決めた。
【新女王の行進:世界は一つ】
「お姉ちゃん、お隣の国も……たぶん、すぐに静かになるね」
「ええ。暴力は善――わたくしたちが分かり合えば、国境なんてただの線に過ぎませんもの」
アリシアは、破壊された壁の残骸を踏み越え、帝国の中央へと突き進む。 極悪令嬢による、物理的な「世界平和」。 彼女の歩む先には、言葉の通じない沈黙と、圧倒的な暴力による「理解」だけが広がっていた。




