14.テッドは解答用紙を手に入れた
全身真っ黒のローブで覆った隣の受験生の呪いに抵抗するために全力で全身に魔力を巡らせながら筆記試験の問題を解いている。
クロード兄さんの想定問題集のお陰でスラスラ解ける。
年代を答える問題が少ないことも救いだ。語呂合わせで覚えるのも限界があったからな。前世の記憶でも年表を覚えるのは苦手だったから仕方ないはず。
出題内容は王家の歴史に始まり、帝国や政教国との関係性、国内の農業分布や特産品、さらには貴族家の種類やスキルの種類に算術問題と多岐にわたった。
問題を解きながら隣の真っ黒ローブの魔力の動きを注意深く観察する。
魔力糸の熟練度が上がったお陰で魔力視で見なくても魔力糸でも魔力の動きがある程度分かるのだ。
決してカンニングなんてしてませんよ。
『ボキッ』
隣からの呪いに注意しながら試験問題を回答すると言う他の人よりも高度なことをやっていると何かかが折れる音が聞こえた。
もしかして呪いに使う触媒を使用したのかも。
一旦ペンを止めて魔力を巡らせることに意識を集中する。
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アレ、何も起きないぞ?
いや、油断を誘うための時間差攻撃かもしれない。
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・・・・・・
うん、問題の続きを解こう。
フムフム、さすがクロード兄さんだ。ほぼ全ての出題が想定問題集と同じ内容だ。初めは300ページ5冊の問題集を見たときはゲンナリしたけど頑張って解いて良かった。
ありがとうクロード兄さん。
しかし、さっきから隣から聞こえていたペンを走らせる音が全く聞こえない。
他人のことだから気にしなければ良いのだが一度気になったら頭から離れない。
呪い対策に思考強化しているせいで同時複数のことを考えているので試験の邪魔にならないから良いけどやはり気になる。
もしかして隣の子は天才で既に解答し終わって暇になったのか?
いや仮にクロード兄さん並みに頭が良くても答えを書く時間は必要なはず。それを考慮するとやはりまだ途中のはずだ。決して俺がまだ四分の一までしか終わってないからそう思うわけではないぞ。理論的に考えてそれはありえないだけだ。そう理論的に考えて。
そういえばさっき『ボキッ』って何かが折れる音がしたよな。まさか筆記用具が壊れた。いやいやもし仮に筆記用具が壊れた音だとしても予備を持っているでしょ。
俺なんて5本持ってきてるもんね。(キリッ)
あ~、気になる。気~に~な~る~。
魔力視を視野を広げる方向に強化して・・・もう少し・・・あとちょい・・・見えた!あ~イカンイカン。答案用紙の内容が見えるところだった。
やはり俺の考えは正しかった。隣の真っ黒はまだ試験の解答途中だ。そしてさっきの音は筆記用具を壊した音で間違いない。
キラーン、天才テッド君に解けない謎はありません。答えは予備の筆記用具がないです。
フー、スッキリしました。これで心置きなく試験に集中できます。
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・・・
集中できません。早く試験官に言って筆記用具を借りろよ。もしかして筆記用具って借りれないのか?
そうすると勿体無いです。チラっと見た限り解答している部分は全て正解しているのに。
え?カンニングだって?違いますよ。ウッカリ見えてしまっただけです。事故です。
言うなれば試験中に身体を解したら偶々斜め前の人の答案が見えてしまったようなものです。
そう、事故、故意ではないのでセーフなはずです。
そもそもバレなければ犯罪は立証されないのです。
今はカンニングうんぬんよりも隣の真っ黒をどうするかだ。気付かなければ問題なかったのだが気がついたのだから仕方ない。
後はどうやってこの状況を解決するかだ。
俺は静かに手を挙げた
「どうしました。」
試験を補助している女生徒が気がついてくれた。
さてどうするか。隣の人が筆記用具を壊して困っていますではいけない気がする。だってカンニングを疑われかねないですから。
「となり方の調子が悪いようです。さっきからずっとペンを走らせる音がしません。」
「調子が悪ければ回復魔法をかけましょうか?」
なんとこの人回復魔法が使えるらしい。試験会場にいる生徒は試験官の補助をするだけかと思ったら体調が悪いと回復魔法をかけてくれるらしい。なんて親切なんだ。
前世では体調管理も試験勉強の内と言われていたのに、あのとき回復魔法をかけてもらえていたら・・・
「・・・体調は大丈夫です。」
「そう。」
えぇぇ!それで終わっちゃダメじゃん。筆記用具かしてもらわないと!
このままじゃ何も解決しない。
怪しくなるけどもう一言だけ言っておこう。それでダメなら諦めよう。
「さっき大きな音がしたのですがどこか怪我をされたのではないですか?」
「そうなの?」
「・・・いや筆記用具が折れただけです。」
「「「・・・・」」」
そこで黙っちゃダメじゃん!
え~い、明らかに不自然だけど、ここまで来たら最後までやり通す。
「これを使ってください。」
相手のほうを見ないように筆記用具を差し出す。
「・・・ありがと。」
「え~っと、それじゃ二人とも試験を頑張って。」
女生徒は私って必要なかったんじゃと言いながら試験官の仕事に戻って行った。
ゴメンなさい。
さてこれで試験に集中できるぞ!
余計なことに時間を使ってしまったけど、クロード兄さんに恥をかかせないためにも全力で頑張るぞ。




