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『田中綾乃(草食動物の少女)』 3

『神隠しから生まれし少女』本編第15話です。

 

 綾乃は話しかけられた時の会話を思い出した。


「でも、話しかけられた時に学年を聞かれましたよ? 分かっているなら、そんな事を聞かないんじゃ?」

「今晩のおかずはハンバーグだけど、理由は分かる?」


 綾乃が首を振ると、一樹がまた笑いながら説明した。


「今日と同じように昨日も買い物に行ったんだけど、帰り道に前を歩いていた兄弟にいきなり話しかけたんだ。いきなり話しかけられた兄のほうは警戒していたが、菜々は更に何が食べたい?って聞いたんだ。でもね、それまでに何人か同じ歳頃の子とすれ違っていたけど、そんな事は聞かなかった」


 綾乃は何となく話の筋が見えた。いや、多分誰が聞いても同じ結論になるだろう。


「その兄弟の弟はハンバーグって答えた。それからの会話は君と同じ感じだよ。ちなみに俺には中一に見えなかった」

「本当だとしても、それだけなら偶然かも知れないじゃないですか?」

「まあ、そうなんだけどね。もう一つ同じだった事が有るけど、今日寝る前にもう一度最初から思い出してごらん。きっと気付くと思うから」


 その時に葉菜が立ち上がって、キッチンに向かった。それを追うように姉(娘?)の陽菜も立ち上がった。


「手伝うよ、葉菜ちゃん」

「うん」


 思わず綾乃も立ち上がりながら言っていた。


「私も手伝います」

「それなら、私も手伝うわ」


 瑠菜も立ち上がりながら言った。一樹がキッチンに向かって宣言した。


「悪いが、俺は手伝わないぞ。第一、邪魔だろ?」

「いいよ。皿洗いで許してあげる」


 キッチンでは葉菜が冷凍室から玉ねぎを三つ取り出していた。理由が分からなかったので、綾乃は葉菜に聞いてみた。


「なんで玉ねぎを冷凍室に入れたんですか?」


 葉菜は次々と皮を剥きながら言った。その手先は手馴れているようだった。


「冷やして切ると目に来ないんや。陽菜ネェ、大きい方のフライパン出して」

「そうなんですか? 今度やってみます」

「勿論、凍らせると駄目。瑠菜、一番大きな皿出して」


 そう言いながら、彼女は剥き終わった玉ねぎを縦に真二つに切った。次に根の部分は残して上側のへただけを切って、縦方向に切り目を入れていった。

 綾乃はその包丁捌きを見とれていた。葉菜が更に解説してくれた。


「ちゃんと切らんと大きさがバラバラになって、火の通りや食感が悪くなるからしたくないんや。8人分作るからこれは手抜きな。陽菜ネェ、ボウルを出して」


 葉菜は玉ねぎを横に切っていった。不揃いながらもまな板にみじん切りになった玉ねぎが山になっていく。その姿を見ながら陽菜が葉菜に言った。


「葉菜ちゃん、料理する時は言葉が多くなるね」

「そう? あ、瑠菜、玉ねぎを炒めて。透明になる位。陽菜ネェ、ボウルに卵3個と牛乳四分の三カップとパン粉3カップを入れて混ぜといて」

「はーい、葉菜お母様」


 葉菜は陽菜の返事を無視してソースの素を作り出した。ソースやケチャップ、更には醤油や料理酒を目分量で付け足していく。一旦味見をして、ケチャップを足した。そのソースの素にラップをかけて、邪魔にならない場所に置いて、瑠菜に指示を出した。


「うん、玉ねぎを皿に広げて、冷蔵庫に入れといて。田中さん、キャベツの千切りを頼める? 終わったら水に浸しておいて」


 その後も、葉菜はミンチをかき混ぜながら指示を出し続けた。三人の手下を自在に操りながら、彼女はハンバーグ8人分の下準備を手際良く終わらせた。気が付くと5時過ぎだった。


「あ、もう帰らないと」


 思わず綾乃は声を上げていた。


「助かったわ。焼きソバ頑張ってね」


 葉菜と陽菜が使った道具を洗いながら声を掛けてくれた。瑠菜が綾乃の買い物袋を冷蔵庫から出しながら声を掛けた。


「はい、これ。手伝ってくれてありがとう。また来てね、田中さん」


 松下家の一人一人に挨拶をしてから、綾乃は家路についた。

 今日はここ数年で一番楽しかった。家族全員が彼女を友人として扱ってくれた。

 それに葉菜は中学生と思えない料理の腕だった。一度、料理を教えてもらおうと思った。


 その夜、綾乃は一樹が言った『もう一つ同じだった事』を思い出そうとした。

 小学生の時から知っている盛田雄一はある事がきっかけで弟と一緒の時は、知らない人間に対しては警戒心が強い男の子だった。それが次の日には遊ぶ約束をしていたみたいだった。話しかけられた時に何故無視しなかったのだろう? 

 それとも、私と同じように彼女達に興味が有ったのだろうか? もしかして、私のように身動きが取れなくなったのだろうか? 

 明日、本人に聞くしか無さそうだった。


 田中綾乃にとっての平成20年5月29日木曜日は忘れられない日になった。

如何でしたでしょうか?

 いきなり始まるお料理教室って・・・・(^^;)

 次回はまた新章が始まります。

 3人の少女の初登校編です。

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