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第二章  『田中綾乃(草食動物の少女)』 1

『神隠しから生まれし少女』本編第13話です。

 新たなキャラも登場して、物語は新章に突入します。



『え、まさか・・・』


 田中綾乃は食品スーパーの中で思わず棒立ちになってしまった。

 ややぽっちゃりとした可愛い系の彼女の顔は、思いがけない場所でアイドルグループを見たかのように、信じられないという表情になっていた。

 彼女の視線の先には同い年ながら、世界的有名人が精肉コーナーで買い物をしていた。ミンチ肉を三人で選んでいる。その後ろで家族だろう、少女達より年上の少女と兄らしい男性が三人を優しい目で見詰めていた。


 少女達の一人がこちらを見た。目が合ってしまい、身体が動かなくなった。


『あ、みんながこっちを見た』


 彼女達はミンチ肉のパック三つを買い物カゴに入れて年上の家族に何かを告げると、こちらに一直線に歩いて来た。視線は三人ともこっちを見ている。


『本当に顔が一緒なんだ』


 事態の改善に役立たない考えが浮かぶ。そして、何となく普通の子供と違う雰囲気を感じていた。透明感というか、汚れていないというか、似ているけど、自分とは違う生き物という気がした。

 彼女達が目の前に立ち止まった。挨拶したほうがいいのか、見詰めてごめんなさいと謝ったほうがいいのかを考えていると、右端に立っている軽い感じのポニーテールをした美少女が声を掛けてきた。


「こんにちは。私は菜々。で、こっちが葉菜、あっちが瑠菜」


 かろうじて声が出た。


「こ、こんにちは。田中綾乃です」

「今晩のおかずは何にすんの?」


 綾乃はパニックになりそうだった。

 彼女達の事は余りにもインパクトが有った為に、あらゆるメディアで報道されていた。

 最初のうちは実名が出ていたが、最近は出されていなかった。ワイドショーでは『神隠しの美人絵本作家』や、ひどいのになると『神隠し分裂少女』と呼ばれていた。被害に遭った直後に放送された数種類の写真と病院の窓から顔を覗かせた三人の少女の映像はもう何度目にしたか分からなかった。

 そのおかげか、入院して直ぐに体調が悪化すると全国から励ましの手紙が病院に殺到したそうだった。

 被害者の松下榛菜は近所に住んでいたし、テレビで見た写真の顔には見覚えがあった。一時は重体説も出て、綾乃も心配した。無事に退院した時は心からほっとしたものだった。最近はテレビでも取り上げる事が少なくなってきたので、どうしているのかと思っていたが、まさか向こうから声を掛けてくるとは考えてもいなかった。


「や・・焼きソバにしようかと思っています」

「焼きソバかぁ。うん、明日は焼きソバにしよ、葉菜」

「いいよ」

「うん、決まり。ところで、中学一年生?」

「は・・はい」

「そうなんや。何中?」

「M中です」

「一緒や。来週の月曜日から行く事に決まってん。よろしく」

「あ、いえ、こちらこそ、よろしくお願いします」

「ほら、瑠菜、葉菜、ちゃんとお願いしときや」

「私は瑠菜。よろしくね」

「葉菜や。よろしく」


 名前を呼ばれた二人は声を掛けてきた少女とは性格が違うようだった。瑠菜と名乗った子は三人の中で一番大人びていた。髪はきつめのポニーテールにしている。そして葉菜はおとなしそうな子だった。髪の毛はストレートに降ろしていた。だけど、顔だけでは見分けが付かない。


「あ、はい。よろしくお願いします。あ、そうだ」

「ん? なに?」


 菜々が何でも聞いて! と言う顔をした。


「えーと、もうお身体はいいんですか?」

「心配してくれるんや? おおきに。もうすっかり良うなったで。先週からリハビリって言う奴? それで外を出歩いてんねん」

「安心しました。だって、一時は重体だって聞いたから」

「あー、あれね。実はほとんど死にかけやったみたい。うちらは意識を失ってたから、後で聞いただけやけどな」


 綾乃は目を丸くして驚いていた。菜々と名乗った少女は他人事のように話しているが、軽く言えるような内容ではなかった。


「あ、そうや。家に遊びに来ーへんか? まだ友達が少のうて、もっと学校の事とか話を聞きたいねん」

「私はいいですけど、本当に行っていいんですか?」

「もちろんや。昨日から『お友達作ろう週間』やねん。それにカズニィも陽菜ネェも最近の中学校は恐ろしい所やって脅すねん。現役の中学生から話を聞いとかんとな」

「おいおい、俺の言う事が信じられんのか?」


 綾乃の頭の上で男性の声が響いた。次いで女性の声が続く。


「そうよ。カズニィはともかく、私は嘘つかないわよ。それに私も現役の女子中学生よ」

「えー、でもいじめだの、援交だの、悪口だらけのインターネットだのって、悪いことしか言わんやん」


 綾乃は表情を暗くしながら菜々に言った。


「怖くはないけど、疲れる所かも」

「ふーん。ま、詳しい事は家で聞くわ」


 田中綾乃はこうして『お友達』にされてしまった。


如何でしたでしょうか?

 これまた地味な新キャラですね、田中綾乃さんは(^^)

 さあて、どんな展開になるんでしょうか?

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