『少女たち(過去からの来客)』 4
新たな登場人物が2人出て来ます。
その内、登場人物紹介を掲載します(^^)
『神隠し』翌日の朝、一樹は枕元に置いていた携帯の着信音に起こされた。寝ぼけまなこで見ると発信者の代わりに『午前7時00分』と『起きろ』という文字が目に入った。そう言えば、寝る前にアラームをセットしていた。
「せっかくのゴールデンウィークなのに早起きだよな、俺?」
思わず愚痴がこぼれた。いつもの一樹に戻っていた。
昨日、翔太が冷静な一樹に驚いたように、本来の彼は公立高校の進学校と言える大阪府立M国丘高校に通う、ごく普通の(成績はトップクラスではあるが)高校生だった。面倒な事が嫌いで、クラブにも入らない数少ない帰宅部だった。確かに家の手伝いはするが、自分から夕食を作ったり買い物に行ったりする訳ではなかった。家事は妹の陽菜の方がよく手伝っている。昨夜のもやし炒めもどきも陽菜が作ったが、結構おいしかったので素直にほめたら何故かはたかれた。
『女心は分からん』
そんな彼にも彼女がいるのだから、世の中は分からないものだった。
昨夜はあの後で携帯に着信していたメールに一括で返信をして、付き合いだして半年の小平美咲に電話をした。彼女なりに心配してくれていたようだった。
『心配やなぁ。一樹は女心が分かんないからね。中一と言うても、女の子の相手が出来るんかねぇ? せめて妹の気持ちが分かる奴なら安心やけど、無理やろうね』
今考えると、心配しているというより痛いところをえぐられただけのような気がしてきた。
まあ、美咲はずばずば言ってくれる女の子だから付き合えているのも事実だが。
一階に降りると、陽菜がベーコンエッグを焼いていた。
「おはよう。父さんは?」
「ちゃんと早く起きてきたわね。吉田さん所に行ったよ。まだテレビ局が来ていない内に、ご近所への根回しをお願いするって。もう帰って来るはずよ」
「そう言えば、ゆうべ言ってたな。俺らも落ち着いたら挨拶に行こうか?」
「そうね。シロに会いたいしね。昨日驚いた分の寿命が減ってなきゃいいんだけど」
「おいおい、俺の寿命は気にしないのか?」
「もちろんしないわよ。いじわるな人ほど長生きするもの」
「母さんに似てきたなぁ」
陽菜は各自の皿に分けながら言った。
「ありがとうって言っとくわ。私にとってはほめ言葉だもん」
その時に玄関のドアが開いた音がした。どうやら浩史が帰って来たようだった。
陽菜がそそくさと浩史のお碗にご飯を盛った。母親の榛菜の影響でファザコン気味だったが、昨日の出来事で更に加速したようだった。
浩史は朝食を食べながら、今日の予定をもう一度念押しをした。
8時半には迎えの車が来る事になっていた。
「すまんな、折角の休みなのに」
「いえ、課長の頼みなら何てことないですよ。それに外でやきもきする位なら、お手伝いした方がいいですから」
「そうですよ。じゃんじゃん頼んで下さい、課長」
「ありがとう。好意に甘えさせてもらう」
8時半に迎えに来たのは浩史の部下の松田貴志と杉浦美紀だった。
「課長、頼まれた物は後部座席に置いてあります。それと『前田のクラッカー』は多めに買っておきました。でも、課長、説明するのに『あたり前田のクラッカー』って言われても私達には通用しませんよ。そうそう、下着類は無難な柄にしています。次に購入する際は好みのデザインとサイズを確認しておいて下さい」
「すまんな。とりあえずお茶を飲む時間くらいは有る。上がってくれ」
貴志と美紀の二人は今年の冬に結婚する予定だった。車は仕事でしか使わない浩史の方針で、松下家にはマイカーが無かった。自分達が身動きを取れない為に、昨夜のうちに買い物と迎えを頼んでいた。
「あ、松田さん、美紀さん、結婚の話を聞きましたよ。おめでとうございます」
リビングに通された二人を見た途端に陽菜が声を掛けた。よくホームパーティーで顔を合わせていた間柄だった。
「ありがとう。君たちを見ていたら、結婚して子供が欲しくなってね」
「あら、喜んでいいのかな? でも女性の立場だったら、君を一生幸せにする! とか言われる方が嬉しいかな? ね、美紀さん?」
「そうね、ロマンチックな方がいいよね? ま、貴志さんも頑張ったから、合格点よ」
「ありがとう。でも参考にはなるが役に立たないな。もうプロポーズする事は無いから」
「さすがに結婚が決まったら、言う事に余裕が有りますね、松田さん」
「はは、陽菜ちゃんも立派な大人の女性になったな」
それに応える軽口を叩きながら、陽菜が二人の前にコーヒーを置いた。
「でも、休みの日にわざわざすみません」
ぺこりと陽菜は頭を下げた。その時に一樹が一階に降りてきた。病院に行く服装に着替え終わっていた。
「あ、新婚さんだ。おめでとうございます」
松田が返事をした。
「うらやましいか、青少年?」
「ええ、うらやましいですよ。 社交辞令って奴ですが・・・・・」
「お前の口の悪さは誰の影響だろうな?」
「母親の影響ですよ。そうそう、松田さんはロリコンじゃないですよね?」
「もちろん違う。あんなのと一緒にしないで欲しいな。で、なんでだ?」
「いや、ちょっと気になっただけだから。忘れていいですよ」
「おいおい、引っ掛かるな。陽菜ちゃん、なんの事?」
「母さんが3人の少女に分裂した事は知ってるでしょ? それで、その少女達がびっくりする位の美少女だったの。小学生の頃の授業参観で、母さんは一番若くて美人だったから友達に羨ましがられたけど、若い頃があんなに可愛かったなんてね」
「そんなに凄いの?」
「ね、カズニィ?」
「我が親ながら、確かに驚いた。でも可愛いというよりきれい系だな。髪の毛や眉毛が無いせいで、ごまかせないはずなのにね」
「ふーん、君たちもたいがい美男美女だけどね。会うのが楽しみだな」
コーヒーを飲みながら三人の会話を聞いていた美紀が浩史に尋ねた。
「皆さん、冷静ですね。もっと悲しんでいるかと思っていました」
「いや、悲しんでいるよ。その証拠に昨日は寂しくて、俺はなかなか眠れなかったぞ」
「課長は愛妻家ですからねえ」
照れ隠しの為か浩史は慌てて言った。
「さて、そろそろ出ようか?」
自宅を出る松下家をテレビ局のカメラが一斉に追いかけた。昨日の夜に松田が大急ぎで目隠し用のカーテンを付けていたので、車内を隠せた事が救いだった。
如何でしたでしょうか?
相変わらず、地味に進行中です(^^;)




