『少女たち(過去からの来客)』 5
本編11話目、通算14話めの投稿です。
相変わらず、地味に進行します(^^;)
警官の誘導で、救急患者用搬入口から病院に入った家族三人と美紀は医師団の出迎えを受けた。一樹と陽菜は容態が悪化したと思って身構えたが、院長と名乗った50代の医師は困った口調で浩史に頼んだ。二人は顔見知りだった。
「早速で悪いけど、あの子達の説得をお願い出来ないかな?」
「言う事を聞かないんですね?」
「ああ。挨拶だけはしてくれたが、その後は一言も口をきいてくれないんだ。その為に昨日と同じように検査一つ出来ん」
院長はお手上げという印に肩をすくめた。
「機嫌を損なうような事をした覚えは無いんだけどね」
「まあ、身を守る為の対応だから仕方有りませんよ」
医師団を後ろに引き連れた一行はそのまま病室に向かった。病室に入った時に彼女達は見詰め合っていた。浩史が声を掛けると、昨夜と同じように一斉に彼を見た。
「おはよう。約束通り、『あたり前田のクラッカー』とイチゴジャムを持って来たよ」
彼女達の返事は満面の笑顔だった。
そして、話がしやすいように一番手前のベッドの端に三人揃って座り直した。
「沢山買っておいたので、しばらくは大丈夫だろう。それと下着類も持って来たよ。後で欲しい柄があったら、彼女に頼んでおいて」
紹介された美紀が一番近くにいた少女に買い物袋を手渡した。本当に一緒の顔をしていた。
そして松下兄妹の話は本当だった。思わず心の中で呟いていた。
『本物の美少女だ』
髪の毛も眉毛も無いし、化粧気無しで何のテクニックも使ってない(最近の子供は小学生の時からテクニックを磨くことを彼女は知っていた)にもかかわらず輝いて見えた。
彼女達の鼻筋は細いままスマートな小鼻につながっていた。唇はやや薄いが、リップクリームを塗ったようなつやが有って、口紅を塗るとかえって汚れてしまう気がする。そして驚いた事に、まつ毛が無いのに目元がぱっちりとしている。
美紀の美に対する常識がガラガラと崩れて、化粧では作れないものを見た気分だった。
それに同じ顔が三つも有るせいかも知れないが、浮世離れしている気もした。
ただ、何なのか分からないが、違和感が有った。
「おおきに。でもその前に何か用が有るみたいや。先生達が早く話して欲しそうな顔をしてるわ」
真中の少女が答えた。
「君は昨日、右側に居た子だね? 確かに院長先生始め、皆さん困っている。でも、その前に君達が置かれた状況を説明しておきたい。院長先生、よろしいですか?」
院長は、それが癖なのかまた肩をすくめながら返事をした。
「私達が同席するという条件なら」
昨夜と同じように椅子に座った浩史は説明を始めた。医療に携わる立場から医師団はいつでも待ったを掛ける為に身構えていたが、少女達の表情に特に危険な兆候は現れなかった。20分間でおおまかな説明を終えた浩史は最後に質問が無いかを確認した。左端の少女が口を開いた。
「証拠は?」
「君達も気付いていると思うが、そこにある平べったい板はテレビだ。君達の時代には無かった物だよ。多分、もう試したと思うが、昨日は状況を複雑にしない為に電源が入らないようにしていたはずだ。院長先生、電源が入るようにしてもらえますか?」
そして、準備が整う間に彼は買い物袋から数紙の新聞を取り出した。来る途中に買って来るように頼まれていた部下の松田が気を利かせて全国紙全てを購入していた。
「これが今朝の新聞だ。どの新聞も君達の事を一面で取り上げている。まあ今は日付だけを確認してくれたらいいと思うよ。年号は昭和から平成に替わっているから、西暦で確認した方がいい」
液晶テレビの準備をしていた職員が完了したと声を掛けたので、浩史は電源を入れた。現れた画面はNHKの教育テレビだった。リモコンで民放に切り替える。画面では白いビルの窓にかかっていたカーテンが開いた瞬間がスローで再生されていた。そこに現れた三つの顔は全く同じだった。思わず浩史が言った。
「本当は写真写りがいいみたいだね。きれいに写っている」
「すごい。こんなにきれいなテレビを見たのは初めてや。でも横に広いのはなんで?」
真中の少女だった。
「横に広いのは映画館と一緒だよ。臨場感が出るからだよ」
次いで右端の少女が呟いた。
「まるでSFみたい。一晩して起きたら、夢だったというオチを期待していたのに」
浩史の返事は短かった。
「すまない」
如何でしたでしょうか?
何と言うか・・・・・ やはり地味でした(^^)




