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『少女たち(過去からの来客)』 2

 母親が『神隠し』の影響で3人の少女になってしまうという異常事態に直面している家族が、その少女たちと対面しています。

 ファーストコンタクトはどうなるのでしょうか? 

 浩史は三人の少女が座っているベッドの前まで近付いて声をかけた。


「ちょっといいかい? 大事な話をしたい」


 彼女達の目は赤かった。浩史は病室に入る前から彼女達の心境を想像していた。

 そして実際に会ってからはじっと観察をしていた。その上で確信をしていた。


『信用を勝ち取るには正直に話すしかない。彼女達に嘘は通じない』


 そう思った理由は色々あった。

 この異常な状況で彼女たちはパニックになっていない。並外れた自制心を持った子供達だった。自分と同じ人間が居れば普通は落ち着いていられないはずだ。

 そして、洞察力も高いと思う。わずかな時間で周囲を警戒し始めた。両親や祖母への面会に拘っていた事は医師を含めた周囲の大人を信用していない裏返しだった。情報を求めているが、信用できる人物(両親か祖母)以外の言葉を信じないと決めているようだった。そんな状況では大人の嘘など簡単に見破られる。

 加えて興味深い事に、真っ先に敵対関係に入ってもおかしくないのに、三人の間には信頼関係があるようだった。ある仮定を思い付いていたが、他人に知られるのは避ける方が無難だった。その他にも気付いていた事が有ったが、これも後回しにした。


 彼は折り畳み椅子を出しながら了解を求めた。


「座って話してもいいかな?」


 少女達は同時にうなずいて、改めて座り直した。浩史は敵意も騙すつもりも無い事を示す為に、全身を真正面から見やすい位置に椅子を置いた。座って三人の目を見た。

 そして、様々な心情が表れている彼女達の目の中に、微かだが救いを求めている色を見つけた。それは懐かしい記憶を思い出させた。出会った頃の妻の目にも浮かんでいた。若かった彼はその正体に気付くまでに一年以上掛かった。


『榛菜、今度は直ぐに気付いて上げられたよ』


 浩史はそんな思いを込めて彼女達の目を見詰めた。彼女達の目に出る心情がまた比率を変えた。その思いに答えたいと考えながら、彼は話し始めた。


「まずは自己紹介をしよう。僕は松下浩史。あそこに居るお兄ちゃんとお姉ちゃんの父親だ。職業は金属熱処理会社で総務課の課長をしている」


 少女達はまたうなずいた。


「年齢は43歳だ。ちなみに血液型はO型で、星座は乙女座だ。ここまでで何か聞きたい事はあるかな?」


 左端の少女が訊いてきた。


「誕生日は?」

「9月17日だよ」


 三人を順番に見て、他に質問が無いかを目で尋ねた。また左端の少女が聞いてきた。


「お兄さんとお姉さんの名前と歳は?」

「お兄ちゃんはかずき、一番目の樹木と書いて一樹。16歳、高校2年生だ。お姉ちゃんはひな、太陽の陽と菜の花の菜で陽菜という。14歳、中学3年生だ」


 答えながら浩史は新しい情報をインプットした。


『なるほど。個性も有るんだな』


 ここで浩史は一旦、間を置いてたずねた。


「一つだけ教えて欲しい。君達の名前の事だが、最後の『な』は、まさか名前の『な』じゃないよね?」

「菜の花の『な』よ」


 答えた左端の少女は明らかに驚いた顔をしていた。


「奥さんは?」


 今度は右端の少女が聞いてきた。


『やはりこの子がリーダーか? 問題の核心に軌道修正した』


「事情があって、今は会わせられない。その代わりに写真が有るけど、見たい?」


 三人は顔を見合わせた。そして、同時にうなずいた。浩史は札入れからラミネートをした写真を取り出した。今年の正月に撮った家族写真だった。背景には初詣をした神社の鳥居が写っている。写真の榛菜は子供達の肩に手を掛けて笑っている。初めて会った時とは人格が替わったとしか言えない笑顔をしばらく眺めてから少女達に渡した。


「やっぱり・・・・」


 右端の少女が呟いた。


「いつ気付いたの?」

「一樹さんの顔がお父ちゃんに似てた。おじさんの目も他人を見る目やない」

「多分君が考えている通りだよ」


 そう答えた浩史は、彼女達から話しだすのを待った。沈黙は数分に及んだ。

 沈黙を破ったのは真中の少女だった。


「おばあちゃんに会わせて」

「家に帰れば・・」


 それ以上は言えなかった。彼女達の忍耐にも限界が有り、それはもう直ぐ溢れてしまう。

 今度の沈黙も5分間は優にあった。左端の少女が沈黙を破った。


「おじさんは信じられると思う。だから明日、もう一度来て。今日はもう寝るから」


 残りの二人はうなずいた。浩史もこれ以上は無理と判断していたので同意した。


「明日の朝にまた来るよ。お土産は『前田のクラッカー』とイチゴのジャムで良かったね」


 三人の顔に初めて笑顔が浮かんだ。返事は同時だった。


「楽しみや」


如何でしたでしょうか?

 まあ、ファーストコンタクトは成功でしょうかね?

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