『少女たち(過去からの来客)』 1
こんばんは mrtkです。
『神隠しから生まれし少女』本編第7弾です。
今話から、『神隠しから生まれし少女』たちが本格的に登場します。
どのようなキャラなんでしょうか?
そして、“大人の事情”も進行します(^^;)
どの様に物語は転がって行くのでしょうか?
病院は彼女達の為に、たまたま空いていた一番広い個室にベッドを二つ追加で運び込んでいた。本来ならば別々の部屋に収容すべきだし、病院側も一応の準備をしていたが、本人達が同じ部屋にして欲しいと訴えた為に急遽用意された病室だった。
医師がノックをしてから松下家の三人を含む五人が入ると、ベッドの上に正座している少女達と女性の看護士が見えた。壁面に付いているボタンの説明を受けているようだった。三人は振り向くと、順番に入って来た人物を値踏みするかのようにじっとこちらを見た。
本当に同じ顔をしていた。三人とも病院が用意した同じ柄の浴衣を着ているせいで、全く見分けが付かない。
最初に見た時はマネキンのようだと一樹は思ったが、今は人間としか思えなかった。髪の毛と眉毛が生えていなくても女の子にしか見えない。
視線は気味が悪いほど揃っていた。一番前に居た医師が思わず立ち止まった程だった。
一樹はその視線に疑問というか困惑というか、複雑なものが混じっている気がした。
「入っていいかい? 紹介したい人たちを連れて来たけど。君達の遠い親戚だよ」
医師は打ち合わせた通りに三人を紹介した。いきなり夫や子供が居ると言っても混乱するだけなので、そういう事にしていた。
「親戚? 親戚がおったかな? お母ちゃんがおばあちゃんだけだって言ってたし」
右端に座っている子が正座のまま反論した後、残りの二人に顔を向けた。
「よね? お年玉をくれるはずの親戚はおらんって」
「戦争でみんな死んだって。それに」
「お父ちゃんもすまんなって言っていたし」
医師と刑事は浩史の方を見た。浩史はうなずいた。榛菜の希望で結婚式も披露宴もしなかった理由を『見せたい人が居ない』と言っていた。その時に親族が全く居ないと言っていたが、まさか中学一年生の時から知っていたとは考えていなかった。お年玉で知ったという理由も聞けば納得しないでもないが。
今度は左端の少女が質問した。
「それより、父と母とおばあちゃんはまだですか?」
その質問に真中の少女が答えた。少し声が小さかった。
「お父ちゃんもお母ちゃんも火事で死んでる」
両脇の二人が真中の少女を見て、一緒にしゃべった。
「うそ? 寝る前には生きてたで。うそつかんといて」
真中の子は益々小さな声で言った。
「四日前の夜やった。おばあちゃんが放火やったって」
「そんな・・・」
少女達は黙り込んでしまった。
稲本刑事はしまったと思った。
医師も同じような顔をしていた。先入観から関係者全てが少女達は同じ記憶を持っていると勘違いをしていた。稲本刑事は、少女達が中学一年生だと言っていると病院が知らせた時に、本人達の聞き取りをやはり警察サイドでやっておけば良かったと思った。犯罪性が無い為に病院の判断を優先したつけが出ていた。
そして、浩史にとっては、今の会話は深刻な内容を含んでいた。
浩史が刑事と医師に「いいですか?」と小声で話しかけた。
「私に任せてもらえませんか?」
「これ以上刺激しては彼女達の精神に影響が残ります。反対です」
「嘘をつけばもっと傷付くだけでしょう。それに彼女たちは私達を信用していませんよ。気付きませんでしたか?」
「とはいえ、医師の立場からは反対です」
「責任は取ります。いつかは家に連れて帰らないといけないのに、ここで信用してもらえなければ、それこそ将来に影響が出ます」
「そこまで言うなら・・・」
浩史は警察の横槍を排除する為に刑事の方を向いて確認した。
「それと念の為に確認しますが、記録は取っていますね? 後で確認させて頂く条件で、家族は了承済みとします。それでよろしいですか?」
「いいでしょう。課長が言う通り、あなたは話が分かる人のようだ。任せます」
刑事は取引に応じた。ベッドに仕掛けたレコーダーのデータを聞かせる位は彼の権限で何とかなる。プライバシー侵害を声高に責められるよりは、合意の下で情報を収集した方が良い。
それに先ほど課長から聞かされたこの人物の過去はなかなかのものだった。この夫を敵に回すと厄介そうだった。
如何でしたでしょうか?
三者三様の大人の事情が絡み合っていますね(^^;)
とは言え、ちゃっかり主導権を握った“浩志父ちゃん”、食わせ者です(^^)
若い方にとっては、ピンと来ないかもしれませんが、“大人の事情”は世の中では大切なファクターなんですよね・・・
まあ、そんな事を言う段階でオジサンくさいって気もしますが(^^;)




