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第五二章 よそ者と詐欺師

台湾出身の陸坡と申します。


この小説は、もともと中国語で執筆したものをAI翻訳を通じて日本語に変換しています。そのため、不自然な表現や誤った言葉遣いなどがあるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

新学期が始まり、林友達リン・ヨウダ日空南極ひぞら なんきょくは正式に阪海工はんかいこうの二年生になった。二年生からは授業やクラス編成にも変化があり、まず一年生の頃に友達と同じクラスだった野球部の三人――流星りゅうせいれん宇治川うじがわとは、普通科の授業を除き、専門科目の授業が別々になった。


友達と南極が選択した専門科目は「工業製図」で、他の三人は「造船工学」と「遠洋漁業」を専攻している。工業製図は阪海工の中では比較的新設された学科であり、専攻する生徒は少なく、クラス全体でも二十数人しかいない。なにしろ岬阪町みさきざかちょうという土地柄、もともと造船業と漁業が中心であるため、地元の人間は関連する職業に就いて工場に入るか、家業を継ぐ道を選ぶことが多いからだ。通常のクラスは四十人前後おり、造船工学などはA・Bの二クラスに分けて授業が行われるほどだ。


一年生の頃から南極や友達と親しくしている女子生徒の青木陽奈あおき ひなは「観光科」に在籍している。これは工業製図よりもさらに新しく開設された、地方観光の発展を主目的とした学科だ。彼女もまた、共通科目(普通科)の時だけ友達や南極と一緒に授業を受けている。


だが、だからこそ共通の授業の時には、三人はいつも阿吽の呼吸で同じ列に並んで座るのだった。


「そういえば、友達。あんた大丈夫なの?」

「え? 何が?」


ある日の放課後、ノートを写している友達に向かって陽奈が尋ねた。友達が困惑した顔で顔を上げたのを見て、陽奈は彼に直接聞くのをあっさりと諦め、隣の南極に話を振った。

「ねえ南極、友達ってあんな調子で本当に授業についていけてるの? 工業製図って、図面も描かなきゃいけないし、専門用語も暗記しなきゃいけないんでしょ。あいつ、本当に大丈夫なわけ?」


「んー……」陽奈の質問に、南極は少し考えてから、ニカッと笑って答えた。「大丈夫だよ」


「本当に大丈夫なの?」南極のその笑顔を見て、陽奈は全く信用できないといった目を向けた。


「大丈夫、大丈夫。だって、もし赤点を取ったりしたら……」南極は笑いながら言った。「野球部の白井しらい先生に殺されちゃうからね。だから友達は、何がなんでも点を取ってクリアしなきゃいけないんだ」


日空ひぞら、白井先生の顔を思い出させないでくれよ」南極の言葉を聞いて友達は眉をひそめ、お手上げだというようにため息をついた。「パソコンを使い始めれば何とかなると思ってたんだけど……やっぱり甘く見すぎてたよ」


友達が工業製図を専攻に選んだのは、主に東京でこの仕事をしている姉の林鈺雯リン・ユーウェンの影響だ。さらに姉の婚約者である川瀬かわせさんの実家も造船部品のメーカーであり、友達自身もこの分野に馴染みがあった。入学当初は、姉が学生時代に使っていた参考書を読めば日本の学業もクリアできるだろうと考えていたのだが、やはり見落としがあった。


学校のパソコンが、自分の持ち込んだノートパソコンとは違い、インターフェースもキーボードもすべて「完全な日本語仕様」であることをすっかり忘れていたのだ。


これは、人と会話したりテストの答案用紙に文字を書いたりするのとはまた違う、新たな試練であった。


「早く野球の時間にならないかなぁ」友達はボヤいた。


以前は、ボールを触れない体力作りだけの練習なんてつまらないと思っていたが、今では心底から「ランニングでも筋トレでもいいから、机に向かって教科書や専門ツールと睨めっこするよりはマシだ」と思うようになっていた。


友達のそんな様子を見て、陽奈は小声で南極に耳打ちした。

「助けてあげないの? 友達が今困ってるんだから、日本語キーボードの打ち方なんて些細なこと、絶好のアプローチのチャンスじゃない? あなたがタイピングを手伝ってあげれば、友達、あなたのことから離れられなくなるかもしれないわよ?」


陽奈のそのけしかけるような口調を聞いて、南極は心の中で少し迷った。今でこそ登下校から練習、寮に帰って一緒に課題をこなすまで、四六時中友達とべったり一緒にいるが、好きな人と一緒にいる時間はいくらあっても足りない。当然、南極も友達をもっと独占したいという気持ちはあった。


だけど……。


「今はこれでいいんだ。友達が自分でできるようになったら、俺もすごく嬉しいし」南極はそう言って、友達が日本語入力をマスターして嬉しそうに報告してくる姿をすでに思い描いているような、優しい目をした。


その表情を見て、陽奈は南極の考えを最初から見透かしていたかのように言った。

「そう言うと思った。だって南極、あなたは私とは違って、相手を死に物狂いで縛り付けて離さないようなタイプじゃないものね」


青木陽奈は自分の性格をよく理解していた。彼女は南極が友達に向けるような、「相手を見守って喜ぶ」というような器用な愛情表現はできない。表面上は気にしていないように装いながら、実際には相手を完全に自分の手中に収めたいと渇望してしまうのだ。自分のそんな性格を分かっているからこそ、周囲にいるのは、彼女の執着を全く気に留めない女装男子の柴門玉里しもん たまりか、彼女を「ちょっと怖い女」だと認識して適度な距離を保っている宇治川翔二くらいしかいない。そして残る一人は、何も言わずに大阪桐蔭とういんへと去ってしまった神谷蒼士かみや そうしだ。


神谷蒼士は名目上は桐蔭へ「逃げた」ことになっているが、陽奈はむしろ、彼こそが自分のこの歪な性格を最も受け入れられる人間だと思っていた。なにしろ神谷蒼士本人が、彼女にコントロールされることを強く望んでおり、時にはドマゾヒストかと思うほど意図的に彼女を煽ってくるからだ。いわゆる「需要と供給が一致している」関係。彼女と神谷はまさにそれだった。しかし、南極と友達の関係が、果たしてそういう「お互いが望んだ形」なのかどうか。


もし最終的に、南極の友達への感情がただの片思い(独りよがり)で終わってしまったら、そんな南極があまりにも可哀想すぎるのではないか?


「とにかく友達、何でもかんでも自分一人で抱え込もうとしないで、本当に困った時はちゃんと私たちに助けを求めなさいよね。特に南極がそばにいるんだから」

陽奈はそう言って学生鞄を肩にかけ、歩き出そうとした。教室の外では、吹奏楽部の後輩や友人たちが彼女を待っているのがすでに見えていた。


「ダメだよ! ちゃんと自分でマスターして、できるようになったら日空に自慢するんだから」友達はそう言って、南極に向かって少しおどけたような笑顔を見せた。南極も友達のその笑顔を見て、ウンウンと頷きながら「楽しみにしてるよ」と応えた。


「一応ツッコんでおくけど、日本語入力なんて日本の小学生でもできることなんだから、全然自慢にならないからね」

陽奈はたまらず口を挟んだが、口ではそう言いながらも、要するにこの二人の野球バカが楽しそうならそれでいいのだと思った。二人がまだワイワイと話し続けている隙に、陽奈はそっとその輪から抜け出した。


「陽奈、あんたもそろそろ決めなよ?」楽器を取りに音楽室へ向かう道すがら、陽奈と同じくトランペットを担当している吹奏楽部の友人が彼女に尋ねた。


「決めるって、何を?」陽奈はわざととぼけてみせた。


「どっちを選ぶかってことだよ。あの熊みたいにデカい男の子にするか、それとも小柄で可愛い外国人の男の子にするか」


「ええっ!? あの二人の男子、青木先輩にアプローチしてるんですか!?」

そばにいた一年生の女子が、とんでもないゴシップを耳にしたとばかりに驚いて声を上げた。しかし陽奈は全く意に介さず、すぐにその噂を否定し、友人にジロリと白眼を剥いて言った。

「どっちも違うわよ。あんたたちがいつもそうやって勝手な憶測を立てるから、『日空は私の彼氏だ』なんていう根も葉もない噂が流れるんじゃない。だから、そんな事実はないって言ってるでしょ」


「えー、本当かなぁ?」


陽奈の友人たちは彼女の言葉に疑いの目を向けた。そのうちの一人がさらに食い下がった。「だって、日空くんとあの『友達ヨウダ』って呼ばれてる台湾からの留学生のことになると、青木っていつもなんだか意味深な態度をとるじゃない。そこが怪しいのよ」


「やっぱり! あの二人、青木先輩のことを狙ってるんですね」


「……もしかしたら、あの二人は私を口説くより、よっぽど面白い関係なのかもしれないわよ?」


「えぇーーっ?」


青木陽奈が突然爆弾発言を投下したため、その場にいた吹奏楽部の女子たちは一瞬フリーズしてしまった。陽奈が言ったその言葉が、一体何を意味しているのか全く理解できなかったのだ。しかし陽奈はクルリと振り返り、陽の光を浴びてキラキラと輝く髪を揺らしながら、みんなに向かって言った。


「さあ、音楽室に着いたわよ。練習始めるわよ。今年の目標も、大阪代表として全国大会に出場して『金賞』を獲ることなんだから!」


そう言って、陽奈は颯爽と音楽室のドアを引いた。




※※※※




野球部に新入部員が入ってきた。意外なことに、今回の入部者数は友達ヨウダたちの代よりも多く、全部で11人もいた。一緒に練習していた宇治川うじがわが友達に「ほとんどが同じ中学の顔なじみだ」と教え、どの後輩が見込みがあるかも伝えてくれた。その中には全く見慣れない3人の新入生も交ざっており、阪海工はんかいこう野球部に加入した見知らぬ一年生たちは、当然二・三年生の先輩たちの注目を集めることになった。二年生になったばかりの友達たち「新米の先輩」の間でも話題になり、その中でも特に、多くの人の目を引き、一度見たら忘れられない新入生がいた。


その新入生こそ、一塁手ファースト神崎条かんざき じょうだった。一般的な新入生の初々しさや人見知りとは異なり、神崎は自己紹介からして愛嬌があり、実に八方美人で立ち回りが上手い男だった。キャッチボールや送球のテストでも機敏な反応を見せ、バッティングセンスも悪くない。さらに、お笑い好きの村瀬むらせ中西なかにし先輩の前でお笑いのネタを披露して喜ばせたり、田中龍二たなか りゅうじ先輩や田中廉太れんたとバッティング理論を語り合ったり、オタク趣味の流星りゅうせい、そして野球部には珍しくアートやファッションに詳しい栄郎えいろう柴門玉里しもん たまりとも難なく話を合わせ、話題を広げることができた。


敬語とタメ口の使い分けも絶妙で、先輩の顔を見れば「先輩、先輩!」と人懐っこく呼ぶ。南極なんきょくすら「この神崎ってやつ、特別面白いな」と思うほどだった。友達も当然神崎に悪い印象は抱かず、彼と野球の話を少し交わしたが、宇治川だけは少し厳しめの態度で、話しかけてくるこの後輩を二、三の言葉であしらっていた。


「嫌いなわけじゃないが、俺はああいうタイプの奴の相手が苦手なんだ」友達とキャッチボールのウォーミングアップをしながら、宇治川はそうこぼした。


「でも宇治川だって、いつも流星やれんと喋ってるじゃん?」友達が尋ねた。


「あいつらは別だ。俺たちは小学生の頃から一緒に野球をやってきたからな」宇治川はそう言うと、ウォーミングアップを終え、友達の肩をポンと叩いた。そして顎をしゃくって三年生の先輩たちの方向を示すと、こう付け加えた。「それに、あの後輩の相手が苦手なのは、どうやら俺だけじゃないみたいだぞ」


友達が視線を向けると、一年生の神崎がなぜか三年生の藤田迅真ふじた じんま先輩の周りをウロチョロしていた。藤田は少し気まずそうな様子で、二、三言葉を交わしたかと思うと、逃げるようにその場を離れてしまった。どうやら藤田も、あんなにオープンすぎる後輩の扱いは苦手らしい。


(やっぱり、ああいうノリが誰にでも通用するわけじゃないんだな。)

友達はそう思ったが、次の瞬間「ヤバい!」と直感した。慌てて神崎がいる三年生の練習エリアへと駆け出したが、一足遅かった。すでに三年生の佐久間さくま先輩が、後輩の神崎条の目の前に立ちはだかっていたのだ。


「今は体力作り(フィジカルトレーニング)の時間だろ。なんで一年生のお前がグラウンドにいるんだ? お前、さっきから色んな奴に話しかけてるが、ここを遊び場だとでも思ってんのか? みんなの練習の邪魔だ」


「あ、先輩。ごめんごめん、そんなに怖い顔しないでくださいよ。俺はただ、まずは先輩たちと仲良くなろうと思いまして、それで……」


「グラウンドは練習する場所だ。新しい友達を作る場所じゃない。それに、なんで一年が三年生の練習エリアに立ち入ってるのかって聞いてるんだ。答えろ」


佐久間は神崎のチャラチャラした言い訳を一切受け付けず、容赦なく遮って問い詰めた。神崎が気まずそうな顔を浮かべてもお構いなしに、佐久間先輩は続けた。「これ以上質問に答えず、トレーニングもせずに勝手にウロチョロするつもりなら、白井しらい先生に報告するぞ」


「えっ? あの、先輩……俺……」


「誠に申し訳ありませんでした! 佐久間先輩!」


突然、よく通る野太い声が佐久間の耳に飛び込んできた。佐久間が振り向くと、そこには見慣れない顔があった。彼も数日前に入部したばかりの新入生で、一年生の中ではひときわ体格が良くて屈強な後輩、岩崎隼人いわさき はやとだった。


岩崎は綺麗な90度のお辞儀をして佐久間先輩に謝罪し、言った。「申し訳ありません。俺は新入部員の一年、岩崎隼人です。一年生全員をトレーニング場へ誘導するのを忘れておりました。先輩方の練習の邪魔をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした!」そう言いながら、岩崎は横で呆然としている神崎を力づくで引き寄せ、その頭を強引に押さえつけて、自分と同じように佐久間先輩へ頭を下げさせた。


「えっ……ちょっと岩崎、何すんだよ。大げさすぎだろ……」無理やり頭を下げさせられた神崎が小声で文句を言うと、岩崎は声を殺して凄んだ。「このバカ、いいから黙ってろ!」


「おい、そこのもう一人の一年。誰が勝手に入ってきていいって言った? 今年の新入生はどうなってんだ! 先輩が甘くしてやってるからって、いい気になりやがって……」


圭一けいいち、もういいだろ」

「藤田? チッ、お前ってやつは……。今回は見逃してやる。入ったばかりで勝手にウロチョロするな。わけが分からん」

「ごめんな、佐久間。練習に戻ろう。一年生はまだ勝手が分からないんだ、気にするな」


頭を下げていた岩崎隼人と神崎条は、佐久間先輩の声が少し遠ざかったのを聞いて、ようやく顔を上げて盗み見た。キャプテンの藤田が、キャッチャーの佐久間先輩を連れて行ってくれたのだ。二人はホッと安堵の息を漏らした。そして、もう一人誰かが自分たちの方へ歩いてくるのを見た瞬間、岩崎は腰を曲げていた体をバネのように弾ませ、直立不動になってその先輩の名前を呼んだ。


林友達リン・ヨウダ先輩!」


「大丈夫だった? ごめんね、最初にちゃんと説明してなくて。三年生の先輩たちが練習してる時は、グラウンドを全面使うんだ。俺たち二年生と一年生は、端っこの方かブルペンで投球練習や体力作りしかできないから、なるべくグラウンドの中には入らないようにしてね」


「あ、ああ、はいっ! 分かりました! 先輩」岩崎は力強く頷いた。


「あの三年生の先輩、超怖かったな。ユーモアの欠片もねぇし」神崎条がボヤいた。その言葉を聞いた瞬間、岩崎は慌てて神崎の口を塞ぎ、「お前っ、滅多なこと言うな!」と叱りつけた。


「ぷっ」神崎の佐久間先輩に対する評価を聞いて、友達は思わず吹き出してしまった。


二人が不思議そうに笑っている友達を見ると、友達は言った。「佐久間先輩はもともとああいう性格なんだ。それに、あと数ヶ月で夏の大会が始まるから、今の三年生はみんなかなりピリピリしてるんだよ。岩崎くんは寮に住んでるから、先輩たちがずっと監督とミーティングしてるのを見て、なんとなく空気を感じてるんじゃない?」


「だから、佐久間先輩も練習の邪魔をされたくなかったんだと思う。あともう一つ……これはただの俺の推測だけど……神崎くんが藤田先輩に話しかけに行ったからかもしれないね」と友達は言った。


「え? そうなの!? 藤田先輩が関係してる? えええーっ! なんで!? 俺、別に変なことなんてしてないのに」神崎は全く腑に落ちない様子だったが、岩崎は「お前は存在そのものが変だろ」と言わんばかりの目で神崎を見ていた。


「でも、あくまで俺の推測だよ。昔、俺が藤田先輩とちょっと仲良くしてたら、佐久間先輩にすごい睨まれたことがあったからさ。それに、日空も昔グラウンドでよく佐久間先輩に怒られてたし」


「なんだ、そうだったのか。よかったー! 俺が最初に怒られたやつじゃなかったんだ」

「おい!」


また神崎が先輩の前で失言しそうになり、岩崎が慌てて神崎の服を引っ張った。友達は「気にしてないよ」と笑って手を振った。その後、二人は小走りで元の一年生の体力トレーニングの場所へと戻っていった。


走りながら神崎が言った。「林先輩って、すごくいい人だよな。でもなんていうか……ほら、ちょっと変っていうか」


「え? 何言ってんだよ、林先輩のどこが変なんだよ?」神崎の言葉に、岩崎はすかさず反論した。


「人はいいんだけど、なんというか、その……『エース』? そう、エースピッチャー特有のオーラみたいなのが欠けてるっていうか」神崎がそう言うと、岩崎がまた林友達を擁護しようと口を開きかけたので、神崎は先回りして笑いながら言った。「お前さ、本当に林先輩のこと大好きだよな。入学初日に会ってからずっと林先輩に執着してて、まるで『見捨てられた元カノ』みたいだぜ」


「誰が見捨てられた元カノだ!」岩崎は不機嫌に怒鳴ったが、耳まで真っ赤になっていた。そして最後に「ぶっ殺すぞ」と付け加えた。


「おお、そうそう! その感じ! チームのエースピッチャーっていうのはさ、そういう訳の分からないことを言ったり、どうでもいいことに異常に執着したりするような『変人』なんだよ」神崎は笑いながら岩崎を見つめた。岩崎は長身だが、それでも神崎条は手を伸ばして彼の頭をぽんぽんと撫で、こう付け加えた。

隼人はやとみたいにな」


「うるせぇ、俺は変人じゃねぇよ」岩崎隼人はそう言って神崎の手を振り払った。


「じゃあ、やっぱりお前がエースだな?」神崎が笑って言うと、岩崎は彼を睨みつけた。


今や耳だけでなく、顔まで真っ赤に染まっていた。こいつは本当にウザいやつだ。また神崎にからかわれたと思いながらも、岩崎の心の中では、「エース」と呼ばれたことに対してほんの少しだけ嬉しさがこみ上げていた。


「おお、いたいた! 岩崎、神崎、お前らどこ行ってたんだよ。さっき片岡かたおか先生が通りかかって、『二人がいないみたいだけど?』って聞かれたから、一緒にトイレに行ってますって適当にごまかしておいたぞ。ふう、マジで焦ったぜ」


岩崎と背格好が同じくらいの男子が駆け寄ってきた。高校生の顔立ちなのに、なぜか黒髪の中に白髪(若白髪)が多く混じっており、どこか老成した雰囲気を漂わせている。


「おお、建山たてやま先生じゃん」

「建山先生、ちわっす」


「お前らまで俺をそう呼ぶなよ、まったく……」と建山は呆れたように言った。


一年生の建山、本名は建山千晴。れん流星りゅうせいたちと同じ中学野球部の後輩だった。彼らといつも一緒に遊んでいたグループではないが、その代との関係はずっと良好だ。ただ、遺伝による若白髪があることと、名前の「千晴」の読みが「せんせい」と同じ音であることから、入部初日からすっかり「建山先生」というあだ名が定着してしまっていた。


建山は、岩崎たちが三年生の佐久間さくま先輩に絡んだと聞いて息を呑み、目を丸くして言った。「お前ら、マジで度胸あるな。さすが他校出身。佐久間先輩は昔から超怖いんだぞ。藤田ふじた先輩が一緒にいない時は、みんなビビってまともに話しかけられないくらいなんだから」


「やっぱりそうか」岩崎は言った。直感なのか、昔からの人間観察の癖なのか、入部初日に佐久間を見た瞬間から、岩崎は無意識に彼を避けていた。「ヤバい奴」だと察知していたのだ。もし神崎がいなくなったのに気づいて探しに行く用事がなければ、自分からあんな風に佐久間と真正面から向き合うことはしなかっただろう。


「へえー、そうだったんだ」トラブルの元凶である神崎条は、佐久間先輩の恐ろしさにはさして興味を示さず、代わりに建山に別のことを尋ねた。


「それじゃあ、『林友達』先輩のことは?」

神崎がそう聞くと、隣にいた岩崎も「林先輩」という名前に反応して即座に建山をガン見した。そのあまりに分かりやすい挙動に神崎は吹き出しそうになったが、なんとか笑いをこらえて続けた。「林先輩の名前って、すごく面白いと思わない? 漢字で『友達ともだち』なのに、先輩たちはみんな『ユウダイ(Youda)』って呼んでるしさ」


「ああ、それについてだけど。林先輩は日本人じゃないらしいぞ」と建山は言った。


「えっ! でも林って日本の名字じゃないのか?」岩崎が驚いて尋ねた。


「岩崎くん、世界には『林』って名字の国がいっぱいあるんだよ」と神崎が言う。


「ああ、その通り。林先輩は台湾人なんだ。台湾からの留学生なんだよ」


建山は、以前放課後に豊里(とよさと/流星)先輩たちから聞いた話をそのまま伝えた。岩崎隼人が口をポカンと開けて驚いているのをよそに、建山はさらに続けた。「でも、林先輩よりもっと面白いのは、林先輩と同室で、いつも一緒にいるあの熊みたいにデカい日空ひぞら先輩の方だぜ」


「あの人も台湾人なのか?」岩崎が尋ねると、建山は首を振った。


「ええっ──もしかして、宇宙人とか?」神崎がふざけて言うと、岩崎と建山から「アホか」という冷ややかな目を向けられた。「すみません、つまんなかったですね。切腹してお詫びします」


「これも先輩から聞いた話なんだけど、日空先輩は……」


「南極で生まれ育った日本人なんだってさ」


「…………」


あまりにも突飛すぎる設定に、岩崎隼人も神崎条も言葉を失った。二人の固まった顔を見て、建山は「面白い反応だな」と笑った。ちょうどランニングの時間が終わり、建山はふと思い立ったように二人に言った。


「なんだか少し似てるよな。お前ら二人と、林先輩、日空先輩のコンビって……」


もともとこの地元の人間ではないのに、ある日突然ここに現れた。周りの誰も彼らの素性をよく知らないまま、同じ野球部にいる。だけど……。


「お前らが一体何者なのかはよく分からないけど、少なくとも悪いやつじゃないってことだけは分かるよ」

建山はそう笑って、二年生の先輩たちの投球用具を運ぶ手伝いへと向かった。


「悪いやつじゃない……か」


その言葉を聞いて、岩崎は先ほどまでの高揚感がスッと冷め、少し沈んだ顔になった。だが次の瞬間、頬に冷たい感覚が走り、ビクッとして振り返ると、神崎がクーラーボックスから取り出した氷水を彼の顔に押し当てていた。


「もともと、最初からずっとそうだろ」神崎は笑って岩崎に尋ねた。「な?」


「ああ……」岩崎は短く応えたが、その表情にはまだ少し複雑な感情が入り混じっていた。


シュッ──カキィィン!


快音を残して打球が高く、そして遠くへ飛んでいく。潮風しおかぜ球場の三分の二を越える特大フライだ。

バッターボックスに立っているのは、二年生になった南極。彼は監督に呼ばれ、三年生の練習に参加していた。そしてマウンドにいるピッチャーは、三年生のエース・藤田迅真だ。ボールは高く上がったものの、最終的には外野手のグラブに収まり、平凡なセンターフライに終わった。


(まさか、藤田の球が打たれるなんて……)

セカンドの日下尚人くさか なおとはそう思いながら、外野から返ってきたボールを受け取り、藤田のグラブへとふわりと投げ返した。その時、審判の位置に立っていた白井先生がキャッチャーマスクを外し、声を張り上げた。

「一旦、その場で10分間休憩! 藤田、佐久間、ちょっとこっちへ来い」


その場での休憩に入ると、ショートの川原慎かわはら しんが日下のそばへ歩み寄ってきた。


「さっきの見たか、南極のスイング」と川原が言った。


「ああ。あの軌道、藤田の得意なカーブだったはずだ。南極は藤田の球なんてほとんど打ったことがないから、タイミングが合うはずがないのに……きっちり当ててきた。フライになったとはいえ、あれは……」


「すげえよな?」川原が言うと、日下も深く頷いた。日下は、以前高橋元監督がまだグラウンドにいた頃から、頻繁に日空南極を観察していたことを思い出した。そして今、白井先生がそれを受け継ぎ、さらには新任の片岡先生までもがわざわざ近くで彼のバッティングを視察している。三人の指導者が立て続けに日空南極に注目している事実。これは決して偶然でも、単に体がデカいからという理由だけでもないはずだ。


暴投ノーコンばかりだけど、南極のやつ、バッティングは逆にすげえ安定してるんだよな」と川原が言った。


「たぶん、監督はあいつを二号(田中龍二先輩)みたいな『強打者』として育てようとしてるんじゃないか? だからわざわざ三年生の練習に呼んだんだ」日下が推測した。


「ってことは、南極が二年生で最強のバッターになる可能性もあるってことか? いや、待てよ……流星りゅうせいのやつと比べたら、まだ分からねぇか」川原が二人の打撃スタイルの違いについて考えを巡らせていると、突然日下がボソリと呟いた。


「これは、マズいことになったぞ……」


「どうした?」川原が聞き返すと、日下は真剣な顔で言った。「もし以前の高橋監督なら、夏の大会は確実に『三年生全員(年功序列)』でスタメンを組んでた。今、白井先生に代わって、その方針が変わらない可能性もある。でも、片岡先生が加わった今の状況で、二年生を頻繁に三年生の練習に参加させている……これって、何かの『兆し』だと思わないか?」


「兆し?」川原には日下の言わんとしていることがピンとこなかった。


「つまり、去年のように藤田を単なる『控え投手』としてベンチ入りさせたような形にはならないかもしれないってことだ。今年はもしかすると、二年生の実力者を直接『スタメン』として抜擢するつもりかもしれないぞ」


「スタメン!? おい待てよ! 何言ってんだ……えっ……お前、マジで言ってるのか……うーん……」


日下の言葉を聞いて川原は最初はあり得ないと驚いたが、よくよく考えてみると、確かにこの一年ほどで野球部は練習内容だけでなく、日常的な雰囲気までもが大きく変わった。二人の監督も様々な新しい試みを行っている。もし本当に、三年生を差し置いて実力のある二年生をレギュラーに選んだとしても、今の状況なら不思議ではない。


だとしたら、最もポジションを奪われる可能性が高い三年生は誰だ?


川原慎は少し考え、一番危うい立場にいる人物を思い浮かべ、ハッとして日下尚人の顔を見た。

二人とも、頭の中に同じ人物を思い描いていた。


――レフト、吉岡大河よしおか たいが


「ふう、危ねぇ危ねぇ」

外野の定位置でしゃがんで休憩していた吉岡は、振り返って球場を囲むフェンスを見つめた。潮風球場はもともと山の中腹に突き出た大きな空き地であり、フェンスの向こう側には直接海が見下ろせると聞いたことがある。


グラウンドで野球ができるのはありがたいが、高いフェンスに囲まれて海が見えないのは少しもったいない気がする。吉岡はフェンスを見上げ、それから自分のグラブに視線を落とした。さっきは自分の方向に打球が飛んできたが、なんとか捕れてよかった。吉岡はそう思うと一人でクスッと笑い、手を伸ばしてホームベースの位置から、先ほど自分がボールを捕球した上空のポイントまで、ゆるやかな弧を描くようになぞってみた。


「まさか南極があんなに打てるなんてな。もし打球がもう少し飛んでたら……」


ホームランになってたかもな。


「あ、でもそういえば、潮風球場って普通の球場より広くないか? 毎回アップで外周を走る時、やたら時間がかかる気がするんだよな」


それは大河の錯覚ではなかった。ホームベース側にいる二人の指導者も全く同じことを考えていた。片岡先生の目から見ても、先ほどの南極の打球は、もし甲子園球場であれば、あわやホームランかというフェンス直撃コースだったはずだ。潮風球場はそもそも正規の規格で作られた球場ではなく、広い空き地をフェンスで囲って整備しただけの場所であるため、一般的な球場よりもかなり広いのだ。


先ほどの南極の打球の爆発力には、白井も片岡も大いに満足していた。なにしろこの巨漢は、事あるごとに「俺はピッチャーをやりたい」と言い張っている。暴投の確率は確かに下がってきているものの、依然として実戦で使えるレベルではない。現在三年生の仕上げに重点を置いている二人の指導者にとって、野球初心者である日空南極のピッチングを一からじっくりと矯正している余裕はなかった。


しかし今、南極の「打撃」のポテンシャルは「投球」を遥かに凌駕している。ここで阪海工野球部は一つの岐路に立たされていた。もう一人の強打者バッターを育てるべきか、それとも未知数の投手ピッチャーを育てるべきか。甲子園に行くために、今のチームに本当に必要なのはどちらなのか。


「日空、監督に何で呼ばれてたの?」

三年生のグラウンドから戻ってきた南極に友達が尋ねた。南極はヘルメットを脱ぎながら答えた。「バッティングの手伝いをしてこいって言われてさ。それでずっと藤田先輩の球を打ってたんだ」


「へえ、結果はどうだった? 藤田先輩の球、打ちにくかっただろ」と友達が言った。


「うん。何度も空振りしたし、ボールがどこに曲がるのか全然分かんなかった。でも、最後の方でやっと芯に当たって前に飛んだんだ。その後は、藤田先輩の球がどの辺に来るのか、なんとなく感覚で分かるようになったよ」南極は嬉しそうに笑い、素手でスイングの構えをとってみせた。


まさか藤田先輩の球をあんな短時間で捉えられるようになるとは。友達は南極を見つめ、思わずこう漏らした。

「やっぱり日空はすごいな」


「あはは、でも俺としては、ピッチャーとして呼ばれたかったんだけどなー」


「ははっ、それは絶対にないだろ」友達は笑って一蹴した。


ほんの一瞬。友達から「すごいな」と真っ直ぐに褒められ、二人の視線が交差した時。南極は自分の体温が、太陽の光に照らされるよりもずっと熱く、激しくざわめくのを感じた。まるで熱でも出たかのようにカッと顔が熱くなり、思考が真っ白になって、次に何をすればいいのか分からなくなってしまった。


だから、適当なことを言って慌てて話題を逸らしたのだ。


海風が吹いているというのに、今の南極はこの異常な熱を冷ますために、上着を全部脱ぎ捨ててしまいたい気分だった。その時、友達がクーラーボックスから氷水の入ったペットボトルを取り出し、ヒョイッと南極に向かって投げた。それを受け取ると、手のひらから冷たい感触が伝わってきた。友達も自分の分のボトルを手に持ち、こう言った。

「まだ春なのに、今日はなんでこんなに暑いんだろうな? そう思わないか? 日空」


「うん……」南極はそう答えながら友達のそばへ歩み寄り、クーラーボックスの氷水の中に手を入れて言った。「本当に、すげえ暑いな」


「おい! 南極のやつ、藤田先輩の球を打ったらしいぞ!」


横で素振りをしていた流星が、南極が三年生エースの球を打ったという話を聞きつけ、目を丸くして近づいてきた。「南極、お前まさか……本物の野球の天才なんじゃないのか?」


「野球の天才? 俺が?」南極はそう言って友達の顔を見た。友達もどう答えていいか分からず、「かもね?」とだけ返した。


「お前はまたすぐそうやって話を盛る」横にいた蓮が呆れたように言い、宇治川もそれに同調した。「流星の言うことは話半分で聞いとけ。こいつはいつも話を大げさに誇張する癖があるんだ。例えば、ちょっと平均よりデカい魚を釣っただけで、『俺は水怪を釣り上げた!』って騒ぎ立てるようにな」


「違うって! 今回はマジだって! 南極が本格的に野球を始めてからまだ一年だぞ、たったの一年! それなのに三年生エースのカーブを打てるようになるなんて、ヤバすぎるだろ! それと! あの時俺が釣った魚はマジで超巨大だったんだからな! 堤防の常連のジジイだって『こんなデカい魚、ワシも初めて見たわい』って言ってたんだぞ!」


「あんなの、あの爺さんが誰にでも言ってるお世辞に決まってるだろ」宇治川が冷静に切り捨てると、蓮もニヤニヤしながら続けた。「特にお前みたいにギャーギャー騒ぐガキの相手をするには、適当にヨイショして機嫌を取っておくのが一番だからな」


「お前ら二人! 最近俺への当たりが強すぎないか!? 一体俺が何をしたっていうんだよ……あっ! もしかして、俺にだけ可愛い彼女がいて、お前ら二人が悲しきシングル(独り身)だから嫉妬してんのか!?」


流星はそう言うと、いかにも勝ち誇ったような、最高に腹立つドヤ顔を浮かべた。


「宇治川、次釣りに行く時はこいつを縄で縛ってエサ(撒き餌)にしようぜ」

「大賛成だ。それならマジで『水怪』が釣れるかもしれないしな」


友達ヨウダ南極なんきょくは、三人組のしょうもない無駄話(軽口)を聞き流しながら素振りを続けていた。その時、南極がふと何かを思い出したように言った。

「そういえば、三年生の練習を手伝った後、監督に呼ばれて戻る時に、何かあったみたいなんだ。片岡かたおか先生と白井しらい先生が話してるのを少し聞いたんだけど、どうやら一年生のことらしい」


「一年生のこと? 今年のやつら、いくらなんでもトラブル多すぎだろ」とれんが言った。


「まあ、阪海工はんかいこうの野球部を選んで来るようなやつは、だいたい個性が強すぎる連中ばっかりだからな」と流星りゅうせいが言った。


日空ひぞら、どの一年生か分かる?」友達が尋ねた。


「えっと、確か名前は……」


長川ながかわ




※※※※




監督室。

白井先生が部屋に入ると、そこには片岡先生と、野球部に入部したばかりの新入生が立っていた。白井先生はすぐに片岡先生の方へ歩み寄り、尋ねた。「急に呼び出して、一体どうしたんですか?」


「来ましたね。白井先生、今目の前にいるこの一年生をちょっと見てください」


片岡先生の言葉を聞いて、白井先生は目の前の新入生をじっと観察した。


この新入生の名前は「長川ながかわ まこと」。身長は170センチ前後で、骨格はかなり華奢きゃしゃだ。耳にかかるくらいのショートヘアで、他の生徒たちと同じような出で立ちであり、少し肩幅が狭いことを除けば特に変わったところはないように見えた。白井先生は首を傾げながら長川を見つめ、片岡先生に尋ねた。「この生徒に何か特別なところでもあるんですか?」


そう言う白井先生を見て、片岡先生は小さくため息をつき、「そうですか。まあ、先生が気づかないのも無理はないですね」と、白井先生にとっては意味不明な言葉を口にした。白井先生が要点を言えと促そうとした矢先、女性コーチである片岡先生は逆に彼を制した。「もう一人、ここに呼んであるんです。質問は後で聞きますから、少し待ってください」


言い終わるか終わらないかのうちに、監督室のドアをノックする音が聞こえ、「失礼します」という声が響いた。


「入りなさい」と片岡先生が言った。


白井先生が振り向くと、入ってきたのは二年生の柴門玉里しもん たまりだった。


「片岡先生、僕に何かご用でしょうか?」柴門が尋ねた。


「柴門。この長川誠という後輩を見て、何かおかしいと思うところはある?」片岡先生は、白井先生に投げかけたのと同じ質問を柴門にもぶつけた。


「おかしいところ、ですか?」それを聞いて、柴門は目の前に立っている長川誠をじっと見つめた。そしてスッと近づき、数分間ほどまじまじと観察した後、片岡先生の言わんとしていることを察したようだった。後輩の長川誠に向かって言った。「確かに、普通の人はなかなか気づかないでしょうね。でも、注意深く見ればやっぱりボロ(違和感)はありますよ」


「一体、何の話なんだ?」白井先生がしびれを切らして尋ねた。


「柴門、白井先生に説明してあげて。私がなぜ長川誠をここに呼び出し、そしてなぜ『彼』をここへ呼んだのか。できるだけ分かりやすくね」片岡先生が言うと、柴門はこくりと頷いた。


「白井先生、単刀直入に言います。この長川誠という後輩ですが、実は……」


「女の子なんです」


「…………はあ?」


柴門の言葉を聞いて、白井先生の口からは、とても信じられないといったような素っ頓狂すっとんきょうな声が漏れた。

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