第7章 7話
5回目で出会った子は矢野理香と名乗った。
一瞬矢野摩耶の名前を思い出すが、もちろん矢野君のいる世界じゃない。
つまり苗字が一緒なだけの赤の他人。
彼女の場合は、彼女の通っている料理教室から食材が盗まれたという事。
これまで聞いた中で、残念ながらいちばん大したことが無いと思う事件。
何故ならその日の教室が行えないというだけで、水谷優子の時のように店の存続が危ういって訳ではない。
ただ。
そんな小さすぎる事件が、殺人事件にまで発展した。
これはさすがに一大事。
そしてその犯人が、例の研究所のある所へと姿を消した。
つまり今回もダイビルの地下にいる人間が関係している。
そしてその事が分かり、警察が侵入したにも関わらず戻って来る気配がない。
これもまたこれまでと同じかもしれない。
他の介入は拒むけど、私達の侵入は許している。
まるで運命がそうさせるかのように。
いや。
余計な事は考えないようにしよう。
これが抗えない運命だとしたら。
私はこれから永久に同じ日の同じ時間を繰り返す時間という檻に閉じ込められる事になる。
これがまだ毎回違う事ならいい。
だけど。
山田さんの推測だと、同じ事が起こる事もある。
そうでなければ、もう一度会う事を予測できる訳が無い。
そしてその時が来たら、彼女は私に会った事すら忘れている。
それはそうだろう。
この同じ時間を繰り返しているのは私だけなのだから。
やがてダイビルへと下り。
実験が失敗する様をまた見る事になる。
これで初めて失敗したのを見たのを含めて6回目。
そして。
また秋葉原駅に降り立つ私。
だんだん感覚が麻痺し始めている。
それはそうかもしれない。
23日の16時にここにいるのはすでに7回目。
もう新鮮さは薄れている。
それでも辺りを見渡す。
まずバスの中にいない事から、矢野君の時間じゃない。
次に科学者もいないから山田さんの時間でもない。
残りの3人か、もしくは新たな時間なのか。
その為にも中央通りに行かなきゃ。
ここで思い出した。
前回、方位磁石を持って地下に潜った。
そしてダイビルがどこにあるのかは把握している。
そこで改めて方位磁石を買う。
そして秋葉原駅に戻る。
今回の人に会うまでに確かめなきゃ。
方角とだいたいの距離は覚えている。
特に距離は何度も行ったから、いい加減感覚で覚えている。
そして。
研究所らしき所までたどり着く。
そこでようやく納得がいった。
そこは間違いなく中央通り。
私の推測通りだわ。




