第4章 11話
-水谷優子の場合-
自宅には行ったけど留守だった。
電器も付いていないし、そもそも私が調べに行くなんて思ってもいないはずだから居留守を使う必要も無い。
となると、お金を持ち出したにしろどこへ持って行ったのかが問題。
そう。
あそこは秋葉原のメイド喫茶の中では大きい方。
かなりの資金が金庫に入っている。
それほどの大金を盗むとなると、そう目が付く所に隠す訳が無い。
一体どこに。
「きゃ!」
不意に誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさ。ちょっと考え事をしていたもので」
「いいえ。こっちも人を探していたの」
人を?
「誰を?」
もしかして、私が探している人物?
「今日、この秋葉原で起きている事件に巻き込まれた人」
え!?
少し驚く。
まるで自分の事かと思うような。
いいえ。
事件と言っても様々な事が起きているかもしれない。
確かに私が巻き込まれたのは犯罪。
私にとっては一大事な事。
でもそれはあくまで相対的な事。
赤の他人からすれば、そこまで大きな事件に見えない事もある。
彼女が言っているのは、もっと大きな事件かもしれないから。
「さあ。事件に巻き込まれたと言っても、この秋葉原には何万人って観光客も来る。その中には個人的な事件に巻き込まれた人だってたくさんいるんじゃないの?」
あまりにもあやふやな言い方だわ。
冷静にならなきゃ。
「そうね。それじゃ、その中でも不思議な感覚を体験した人ならどう?」
不思議な体験!?
「そう。例えば、死んだかのような夢でも見たけど、その感覚だけは残っているような不思議な体験を」
えぇ!?
「な、なんでそれを?」
「そう。それじゃやはりあなただったのね」
やはり?
「実は今から約1時間半前にもぶつかった事を覚えている?」
あっ。
あの時、チラシをばらまいた原因になった事を思い出す。
見知らぬ誰かにぶつかったとは思っていたけど。
「あの時も私だったの。でもあなたは仕事中みたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思ってその時は声をかけなかったんだけど」
「じゃあ、あの時から私を?」
頷く。
「なんで私を?」
「さっき聞いたわよね?不思議な体験をしたかって。私はその人物をどうしても探し出したかったの」
「じゃあ、あなたは知ってるんですか?あれは夢か妄想かと思っていたけど」
「それと、あなたは誰かを探しているわよね?」
え!?
「どうしてそれを?」
「怪しい人物を見つけたの。こっちに来てくれる?」
どういう事なのかしら。
これは単なるお店からお金を持ち出した窃盗犯の事件で済む話じゃないって言うの?




