第4章 12話
坂本凛と名乗る女性と共にダイビルの地下へと降りる。
このビルは頻繁に来ている訳ではないけど。
ここに地下があるなんて初めて知った。
しかも降りる階段はかなり下の方まで続いている。
確かエレベーターを使った時は、せいぜい地下駐車場くらいだった気がした。
少なくとも、こんなに深い下があるなんて聞いた事も無い。
私の心がただ事ではないという警鐘を鳴らす。
「ねぇ、大丈夫なの?」
「おそらく。これで3回目だけど2回とも見つかった事は無いわ」
3回目!?
「どういう事?」
「どうも私は今日23日の16時を3回繰り返してるみたいなの」
えぇ!?
「そんな事あるの?」
「私だって信じたくはないし、信じられないのも無理ないと思うわ。でも、今日秋葉原に不思議な事が起きているのは紛れもない事実なのは、あなたも知ってるでしょう?」
それは確かにそうだ。
今日、店の売り上げを盗む人物が出たというだけでも信じられない出来事だというのに。
それ以外にも、もっと信じられないような体験はしている。
一度諦めて家に帰った事と、一度爆発に巻き込まれて死んでいる事。
まるでそんな夢を見て起きたらその記憶が幻のように消えているような感覚。
でも、感覚としては残っている。
それこそ、誰に言っても信じられる訳が無い。
「それはこれから起こる実験に関係しているの」
「実験?」
迷う事なく、奥へと進む。
間違いなく、彼女はここへ来るのは初めてでは無い。
少なくとも2度か3度は来ているのは確か。
関係者か?
でも、そうだとしたら何故私を?
「見て」
え?
こっそり覗くように指示されると、曲がり角からゆっくりと向こう側を見る。
なんだ!?あれは?
慌てて引っ込める。
「何あれ?」
「大型ハドロン衝突型加速器」
え!?
「分かりやすく言うと、小さな陽子同士を高速に近いスピードでぶつけるための装置。本来はそこから発生する素粒子を観測するのが目的」
「本来は?」
「えぇ。残念だけど、これは素粒子じゃなくてブラックホールを作り出すのが目的」
「出来るの?」
「理論的には可能。そしてそのブラックホールを制御して、タイムトラベルをするのが最終目的」
タイムトラベル!?
「あと30分後には実験を開始するはずだけど、もちろん失敗。この秋葉原はブラックホールに飲み込まれるわ」
「えぇ!?じゃあ止めないと」
「その方法を模索してる所なのよ。肝心の制御盤の近くにはたくさんの科学者がいるから、うかつには近づけない。他に急所となるべく装置があるのかも分からない。まだ情報を収集している途中なの」
そんな。
「まずどうすれば止まるのか。それに必要な事は何か。まるで分かっていない状態だし、今のままじゃ止めるのは不可能」
どんどんと目の前で実験の準備は進んでいる。
どうする事も出来ないの?




