プロローグ
その日、イブキという名の24歳の日本人は、滞在先のホテルで火災に見舞われた
気が付いた時には逃げ場はなかった
出口を探してさまよったものの、どこに向かえば良いのかわからなかった
視界が真っ白だった
それは煙のせいなのか
次の瞬間、視界が開けると同時に目の前に女性がいた
「あなたを召喚しました」
その女性はそう言う
「召喚?」
イブキのその問いかけに対し
「はい。私は女神です。あなたを天界に招きました」
「それはどういう・・・」
いきなりの展開に全く思考が追い付かない
しかし、女神はそのまま続けた
「あなたは死ぬ運命にありました。だから私が助け出したのです」
「そうか。まあ、俺も死んだと思ったしな。一応、礼は言っておくべきなのかな」
「ただ、申し訳ございませんが、元の世界に戻してあげることはできないのです」
「え?」
女神は申し訳なさそうな顔になる
「このあと私があなたを送りだせるのは、私が管轄する世界だけなのです。ですので、その世界で暮らしてもらうしかないのです」
イブキは腕を組んで考え込む
「・・・・。もし断ったらどうなるんだ?」
「困ります」
「俺が?」
「いえ、私がです。非常に困ってしまいます」
なんだそれは
「なんで女神が困るんだ?」
「それは・・・・その世界を守ってほしいからです。おそらく、あなたにしか出来ないことです」
「へ?」
「あなたにはそういう力があると言いますか・・・・、そういう運命を持っていると言いますか・・・・・」
全くピンと来ない
「で、世界を守るってどういうことなんだ?」
イブキのその質問を受けて、女神はイブキへの依頼内容を話し始めた
その世界にはリーベル国とオルフェリア国という二つの国があり、長い間争いが続いていた
しかし、その二国は今まさに和平に向けて動き出している
長年の戦争が今まさに終わろうとしている
リーベル国は和平の条件として、オルフェリア国が持つ宝石「ステラクリス」の譲渡を申し出た
かつてオルフェリア国の英雄がその力で邪神を封じたとされる伝説の宝石
それを操るものは神々の力を得ると言われる
劣勢にあったオルフェリア国はその条件に応じることにした
そしてオルフェリア国の王女リリアーナが、和平のためにステラクリスを持ってリーベル国へ向けて旅をしている
そういう話だった
「あなたにお願いしたいことはリリアーナ王女の護衛なのです。彼女を無事にリーベル国の王都まで辿り着かせてほしい」
「うーん、護衛と言われてもな。俺は大して強くないし」
「いえ、あなたには私が魔法の力を授けます。私が授けられる限界までの魔力を」
その言葉を聞いてイブキは少し興味を持った
魔法なんてのは誰もが一度は憧れるかもしれない代物だ
しばらく考えたあとイブキは決断した
「まあ、せっかく命を助けてもらったんだし、その依頼引き受けるよ」
「ありがとうございます」
女神は頭を下げる
その後、女神は頭を上げるとその手が光り、イブキは魔法の力を得た
「試しに魔法を使ってみていいか?」
「ええ。でも私には向けないでくださいね」
「わかってるよ」
そして、イブキは魔法をいろいろ試した
「これは確かにすごい。ちなみにその世界には魔法を使える人は大勢いるのか?」
「ええ。大勢ではありませんが、それなりにいますよ」
じゃあ、魔法を使えるもの同士で戦うなんてことにもなるのかもしれない
「わかった。じゃあ、そろそろ俺を送り出してくれ」
「はい」
「おっと、その前に女神は名前はなんて言うんだ?」
「え?ええと、そうですね。どんな名前でもいいですよ」
「は?」
「好きな名前で呼んでください」
なんだそれは
名前が無いのか?
それとも秘密ということなのか?
「ちなみに俺はまたここに来ることはあるのか?」
「いえ、もう無いと思います」
「そうか」
「でも、また会えると信じています」
女神のその言葉にイブキは首を傾げる
女神は最後に
「リリアーナ王女は首からステラクリスのペンダントを身に付けているはずです。どうか彼女を守ってください」
そう言い残した
次の瞬間、視界が真っ白になった




