最終話「エピローグ」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
長く続いた「Ametiara結成譚」も、今回のエピローグで一区切りとなります。
本編では、四人が出会い、迷い、ぶつかり合いながら、少しずつ同じ舞台へと歩み寄っていく過程を描いてきました。
そして最後に、四人は「Ametiara」という名前を持つバンドとして初めてのステージに立ちます。
このエピローグでは、その先にある景色――
プロローグで描かれていたステージへと繋がる時間を描いています。
四人の音がどこへ向かっていくのか、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
悠花がマイクの前に立つ。
少しだけ笑った。
「初めまして」
会場が静かになる。
「私たち」
一拍。
「Ametiaraです」
歓声が小さく上がる。
悠花はギターを構えた。
「最初の曲」
刹那がマイクに近づく。
紫苑の指が鍵盤の上に置かれる。
希愛のスティックが空中で止まる。
悠花が言う。
「Still, We Play」
ギターが鳴る。
最初の一音。
それは、
四人がここまで歩いてきたすべての時間だった。
ベースが低く響く。
ドラムがリズムを刻む。
ピアノが旋律を広げる。
そして――
歌が始まる。
刹那の声。
そこに、
悠花の声が重なる。
そして。
サビで――
紫苑の声が加わる。
四つの音が、
重なっていく。
観客が揺れる。
手が上がる。
声が上がる。
けれど四人は、
ただ音を鳴らしていた。
迷った日々も。
遠回りも。
全部を乗せて。
演奏が終わる。
一瞬の静寂。
そして――
大きな拍手が広がった。
悠花は笑った。
刹那も笑った。
希愛は小さく息を吐き、
紫苑は静かに目を閉じた。
それは、まだ小さなフェスの舞台だった。
けれど四人にとっては、確かに“始まり”の場所だった。
ここから先、もっと大きな舞台に立つ日が来るかもしれない。
もっと多くの観客の前で演奏する日が来るかもしれない。
もっと強い光の中で、
もっと大きな歓声を浴びる日が来るかもしれない。
いつか、きっと。
あの眩しいライトの下で――
四人は再び立つことになる。
時は過ぎ…
夜の会場は、すでに満員だった。
照明が落ち、観客のざわめきが波のように揺れている。
その中央に、巨大なステージ。
スクリーンには大きく名前が映し出されていた。
Ametiara
観客の歓声が広がる。
「来るぞ!」
「Ametiaraだ!」
「待ってた!」
ステージ袖。
四人は並んで立っていた。
悠花はギターのストラップを握り直す。
「……すごい人数」
希愛が客席を見て呟く。
「……前より多い」
刹那が静かに笑う。
「当然でしょう」
紫苑が眼鏡を整える。
「ここまで来たのですから」
悠花は振り返る。
高校の軽音部。
刹那と希愛の衝突。
あの屋上。
受験の勉強会。
紫苑母との衝突。
フェスの初舞台。
全部が、一瞬で頭をよぎる。
そして今。
四人は、ここに立っている。
スタッフの声が響いた。
「Ametiara、スタンバイお願いします!」
悠花は小さく息を吐く。
「ねえ」
振り向く。
「覚えてる?」
「最初に四人で音出した日」
希愛が言う。
「……私の学校の文化祭」
刹那が頷く。
「あの時は大変でしたね」
紫苑が静かに微笑む。
「ずいぶん遠回りしたね」
悠花は笑った。
「でもさ」
ギターを軽く鳴らす。
「まだ途中だよね」
刹那が言う。
「ええ」
「音楽は終わりません」
希愛が小さく言う。
「……Still」
紫苑が続ける。
「We Play」
悠花が頷いた。
「よし」
「行こう」
ステージの暗転が解ける。
ライトが一斉に輝いた。
歓声が爆発する。
四人は歩き出す。
眩しい光の中へ。
ギターが弦をかき鳴らす。
ベースが地を揺らす。
ドラムが鼓動を刻む。
ピアノが旋律を紡ぐ。
その音に名前がある。
四人の少女が紡ぐバンド――
Ametiara。
遠回りして、迷って、ぶつかって。
それでも四人が同じ場所に辿り着いたこと。
その音に、名前がついたこと。
新しい音は、ここから始まる。
Ametiara結成譚 完
改めて、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
この物語は、四人の少女が「Ametiara」というバンドになるまでの記録でした。
悠花は帰国してから居場所を探し続け、
刹那は自分の音楽と向き合い続け、
希愛は静かな世界から一歩踏み出し、
紫苑は自分の意志で音楽を選び取りました。
それぞれの遠回りが重なって、ようやく四人の音が一つになりました。
結成譚はここで終わりですが、Ametiaraの物語はまだ始まったばかりです。
これから先、四人がどんな音を奏で、どんな舞台に立っていくのか。
その続きも、いつか描いていけたらと思っています。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。




