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十話 魔物との邂逅

(アリス視点)



 

 今日でゴードンさんが加入してちょうど一か月が経ちました。この一か月で、私はDランク冒険者になる事ができました。




 今日もいつも通り、Dランク依頼のオーク討伐を行いに森へ出発します。


 「みんな、いつも通り安全第一でいこう。オークが出たら、ぼくとゴードンが攻撃を抑えて、その隙にフリーエンとマリが遠距離で攻撃。アリスは万が一のために回復の準備をしてくれ。」


 「いちいち言われなくても、分かってますよアレンさん!それよりそろそろもっと強い魔物と戦いましょうよ~、ゴードンもそう思うだろ?


 アレンさんの作戦にフリーエンさんは不満を発し、ゴードンさんに同意を求めます。

 ゴードンさんは困ったように頭を掻き、こちらに助けを求めるような顔を向けてきます。

 

 


 ゴードンさんと初めて会った時は、何も喋らなく、表情も分からないゴードンさんが何を考えているのか分からないので、怖がってしまいました。

 

 しかし、この一か月間ゴードンさんを観察していると、どうやら感情がないという訳ではなく、子どもに優しくしていたり、猫を優しそうに撫でているところを街でよく見かけました。


 最近では、兜を被っていてもゴードンさんがどんな気持ちなのか何となく雰囲気でわかるようになってきました。



           ☆

           ☆

           ☆





 オーク討伐のノルマ数も半分を終え、私たちは少し休憩することにしました。


 私はバックパックからお茶を取り出し、みんなに配ります。


 みんなが普通に飲む中、いつもゴードンさんだけは少し兜をずらして口元だけを出すような形で飲むのです。

 喉仏が男らしくてかっこいいです。


 (でもいつか、顔を見てみたいな……。)


 なんて思いながら、各々リラックスをしていました。

 だれも警戒しないのは、ここがまだ浅い方の森で強い魔物が出ることは滅多にないからです。

ーーしかし、今日だけは違いました。




 奥の木陰から、片眼に傷を負っている、真っ黒な魔物が現れたのです。その威圧感に誰一人として動くことはできません。


 「ブラックパンサー!?」


 マリさんはその正体を知っているようで、歯をガタガタと揺らしながら叫びました。

 

 ブラックパンサーは通常Cランクの魔物ですが、目の前にいるブラックパンサーはそれ以上の威圧感を放っていました。


「あああ、ぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 そんな中、フリーエンは取り乱したように発狂したと思えば、街の方角に向けて逃げていきました。



 私たちはフリーエンの行動に、呆然としてしまいました。

 ブラックパンサーはこちらをじっと睨みつけたまま微動だにしません。


 いつも頼れるリーダーのアレンさんの方を見ると、「な、なんであいつがここに……」と独り言のように呟いて、蒼白としていました。

 



 そんな中、ゴードンさんは私たちの前に立ち、盾を構えました。そして、街の方角を指差しました。

 恐らく、逃げろという合図でしょう。


 たとえ、パーティ全員でこの魔物に挑んだとしても勝てるビジョンが浮かびません。

 そのことを分かっているからこそ、ゴードンさんは私たちに逃げろと合図したのでしょう。


 でも、そんな魔物にゴードンを残して逃げたりなんかしたら、見殺しにしたようなものです。

 

 (私はゴードンさんを見殺しにしてまで逃げたくありません!)





 誰も動かない状況を見てか、ゴードンさんは突然アレンさんにゲンコツを食らわせました。


 誰もがその行動に驚きました。というのも、ゴードンさんが誰かを殴るなんて初めてだったからです。



 ゲンコツを食らったアレンさんは、ハッと目が覚めたように正気を取り戻し、ゴードンさんを見ました。

 ゴードンさんはまたも「逃げろ」とでも言うように、街の方角を指して合図を送ります。

 



 アレンさんはゴードンさんの顔をじっとみた後、「すまない……」と言い放ち私とマリさんを担ぎ上げて、走り出しました。

 

 アレンさんもここでゴードンさんを残すことがどんな意味かをわかっているはずです。なのに、そんな……


 私は必死になって、アレンさんの手を解こうとします。

 しかし、アレンさんの手は私をガッチリと掴んでいてびくともしません。


 「ゴードンさんっ!!ゴードンさんっっ!!!」


 私の叫びが森に響き渡った。


この先が気になる。早く続きが読みたいという方がいましたら、是非下の星マークをつけて……くださいっ!励みになります!

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