第十八話 催眠術万能説?
中天にさしかかった真夏の如き太陽の強烈な日差しが、木々の影に潜んでいる俺にすらジリジリと容赦のない熱を浴びせてくる。アリスの白い肌に汗の筋が幾つも跡を残し、風通しの悪い冒険者装備の中もすっかりムレムレである。
「 レッド。大丈夫?」
『 タイミングは掴みました。今度こそ、いけます!』
よし、と俺は頭上を振り仰ぐ。俺の遥か高みに見えるのは人類に限りなく近い姿、しかし肩から手の先までが鳥の翼を持つ魔族「バードマン」の姿がゆるやかな弧を描き飛んでいるのが確認できる。
ここは魔樹の森の更に奥。森の中でも僅かに開けた小さな草原――通称「フライヤーの湖」と呼ばれる場所。俺達は木々と草原、その境目に身を潜め虎視眈々とターゲットに狙いを定めている最中という訳だ。
以前レッドに相談されていた案件――空飛ぶ魔族ゲットしようぜ!――を実践中なのだが、これが実際やってみると中々に難しい。
なにせ、殺してはいけないのだ。
俺の能力では遥か上空、目測で三百メートル以上はあるだろう、そんな高度を移動する相手に攻撃する手段がない。いやアリスとの同化を解けば無理ではないが、同化を解いた途端にバードマンに俺の魔力を気取られ逃げられてしまう。前にも言ったが、俺は魔力を操れないので当然魔力を隠す事ができない。こればかりはいくら練習しても魔力自体を感じられないので諦めるしかない。
――だが、俺がダメなら出来るヤツにやってもらえば良いだけだ。
俺は周囲に放った虫達と意識を繋ぐ。具体的には「そういったイメージを」脳内で描くだけだが、それによって俺の脳裏には放った数だけの虫達の視界イメージが自動的に俺の脳内に投影される。分かりやすく言えば無数のモニタールームにいると思ってもらえばいい。この能力の及ぶ範囲であれば俺は無限に近い視界を持つという事だ。更に損得感情まで無意識に彼等に流れる為、俺にとって今現在もっとも必要な情報がピックアップされ脳内に展開される。
つまり、集中した俺に見えない物(物理)など存在しない。
今の俺には空高く上空を飛ぶバードマンの翼の腱の動きから始まり、僅かにしかし鋭く地上を睨めつける眼球の動きや、小さく舵を取るラダーの役割を果たしているのだろう、ほっそりとした両足の傾き、真っ白なきめ細やかな肌に、ちょうど手に収まりそうな形の良いおっぱいが見える。
――偶然である。他意はない。たまたま狙いをつけたターゲットが女性であっただけである。勘違いなどされては俺の名誉に関わるので本当に困るんだよ?
ただ、当初は「バードマン」などという呼称で話を聞かされていた為『男しかいない魔族なのかなあ』と俺が勝手に勘違いしていたのは事実である。だから、ここに来て女性型がいたのを確認した後、それについてレッドや魔王にツッコミを入れたのは言う間でもない。
話が脇にそれたが、彼らの根城である此処には知性を持たない低位魔族「フライヤー」と呼ばれる魚に似た魔族が無数に存在している。彼らの見た目は鮭によく似ている。だが似ているのはそこだけだ。なにせ、それが普通に空中を泳いでいるのだから、もはやファンタジーではなくメルヘンに近い。翼すらなく海と同じように魚群を作り、草原をスィーと優雅に飛び回る姿は異世界に慣れてきた、今の俺でも極めて違和感を感じる。だがこれは『鮭は川なり海だろ』と、まあ俺の現代知識との大きなズレの為だろう。
兎も角、バードマンの主食が彼等フライヤーなのだ。確かに魔族の中でも遥かに低位だが、それでも魔族である。少なくない魔力を持ち、空を支配しているバードマンにとってはこれ程容易い主食は存在しないだろう。
ちなみにレッド等の空を飛ぶ事の出来ない魔族がフライヤーを捕らえる事は不可能に近い。理由は簡単。俺の能力に近いが「数の暴力」によって返り討ちが確定しているからである。見た目は鮭だが、フライヤーはその高い仲間意識によって、群れが襲われると圧倒的な数を持って敵対者に襲い掛かる。無数の鮭が体当たりをかまし捲くってくるのだ、結果は想像するまでもない。
そんなフライヤー達だが、彼等は今、俺の完全催眠下にある。
例の如く彼らの脳に蠅を侵入させ『俺に従え』と命令を持たせた寄生虫を脳内に放ったのだ。これに関してはテスト的な試行だったのだが、予想以上の効果があり、今や彼らの意識は完全に俺の手中にある。これが意識がある相手だと違うかもしれないが、それはまたの機会に試せばいい。
さて、そんな訳で催眠フライヤー達を操って、大掛かりなバードマン釣りをしているのが今の俺達の置かれた状況である。仕掛けは単純。フライヤーを操り、バードマンをおびき寄せ、近づいた所をレッドの魔法で撃ち落とす。単純だが、これ以外の方法がないので仕方がない。むしろフライヤー達を自在に利用できるだけ予定より良くなったくらいだ。
……だが、そう簡単に話が進む訳がない。バードマンは高位魔族である。知性があるのだ。飢えによって確かにまともな思考は難しいが、草原を泳ぐ獲物を捉えようとするたびに自分に向かって魔法が飛んでくるのだから、警戒しない筈がない。バードマンの飛行速度が早すぎる為に、既に二十回以上撃ち落とす事に失敗している。まあこれだけ繰り返されたら余程の馬鹿でも警戒して当たり前だ。
しかし、彼等は俺の眷属ではない。彼らは自らの逃れられざる本能、魔力飢え、の呪縛には逆らえない。つまり、狙われている事が判っていてもフライヤーを「食べたい!」という欲求からは逃れられないという訳だ。馬の鼻先に人参ぶら下げてるのと同じようなモノで、あのバードマンはフライヤーを捕らえる事も、さりとて此処から立ち去る選択も選べないというちょっと可哀想な事態に陥っている。あまりに憐れなので、次こそは決着をつけてやるとしよう。
俺はフライヤー達を操り彼等の登れる最大高度まで一度上昇させる。そして、その輝りのある美味そうな身体を存分にバードマンに見せつけるようにゆったりと少しずつ高度をさげ、俺達の隠れ潜む木々へと移動させる。憐れバードマンは敵対者の存在より腹を満たす事を優先させたようだ。まんまとこの誘いにのってバードマンは一気に加速するとフライヤーの一群めがけて急降下してきた。今度こそタイミングはばっちりだ。
「 レッド!今!」
『 赤き牙、業火の牢獄へ我が敵を誘え――カサプリングス!』
スナイピング用にカスタマイズされた長杖を構え伏せ、まるで芋虫みたいにジッと狙い定めされたレッドの杖先から一気に炎の弾丸が射出される。弾丸の速度は一瞬、秒速二百から三百近いソレから逃れる事は今度こそ不可能だ。バードマン――彼女は既に罠に嵌った小鳥である。撃たれる前から、彼女が餌を優先した時点で俺達の勝ちは決まっていたのだ。
レッドの弾丸が、今まさに態勢を入替え両足でフライヤーを掴もうとした彼女の脇腹に直撃し、その瞬間、凄まじい衝撃波が周囲に広がり、五十メートルは離れている俺の身体すら大きく揺さぶられる。衝撃に耐えるよう、傍の木に捕まり左腕で顔を庇いながら、撃たれ弾け転がるバードマンの様子を必死に確認する。――呼吸は、止まっていない。直撃した脇腹は赤く火傷を負っているが貫通はしていないようだ。予定通りだ。衝撃だけを大きく、可能な限り貫通力を落としていたのだから。だが、流石は高位魔族。衝撃により強い脳震盪が起きている筈だが既に態勢を整えようと身体を動かし始めている。俺は彼女に向かって駆け出すと、左手を突き出し
「 蜘蛛達!拘束して!」
掛け声と共に、俺の手の平に出現した蜘蛛達から即座に青空を覆い隠すか如く蜘蛛の糸が大量に規則正しく吐き出される。その糸は鋼のように強固でゴムより柔軟性をもつ。更に今だけ可能な限り重量を持たせた、つまり、対魔族用投網である。意識の朦朧とした彼女にソレに抗う力がある筈もなく、容易に網に絡め取られ仰向けに倒れ込んだ。それでも抜け出そうと藻掻いているが、鋼網は一トン近い重さがある上に、トリモチ効果のある粘着する糸からは俺が解除する以外の脱出手段はない。
『 俺の勝ちだな』
ふぅ、半日も係ったが何とか生け捕りにできたか。やれやれだ。
『 キサマ……!殺シテヤル!!』
……毎度の事だが、せっかく知性を持っていても飢餓で狂っているので魔族とまともな会話は通常不可能に近い。今思えばレッドはかなり特殊なケースであったのだろう。今も仰向けにひっくり返され指先ひとつ動かす事すらできない、野生丸出しの美しい顔を歪めながら罵声を浴びせてくる彼女を見ながら、この生物達の不条理をしみじみと感じる。不憫だな、と。
『 君、この子にも蠅を使ってみたらどうだい?』
背後から魔王が提案してくるが、返答は決まっている。
「 ダメ。死んじゃう。かもしれない、のに出来ないよ」
『 ふーん、だけど眷属化させるのと大差ないと思うけどねえ』
「 ……どういう、意味?」
『 どうって、どちらにせよ君が彼女の支配者になるのだろう?もし死んだら、また捕まえれば良い。君がよくやっているじゃないか。実験と検証、そのひとつになるだけさ』
……これが魔王という生き物だ。行動の全てが一貫している。極めて己の利のみに理論的であり、それ以外には冷酷無比な判断しかしない。確かに価値がないとは言えない。だが、相手には知性があり狂化さえ取り除いてやれば理性を獲得する事が判っているのだ。それを判っていて良くそんな酷い事が言えるモノだ。
『 おお、流石ですアイリス様!お待たせして申し訳ありません!』
狙撃場所から、よほど急いで走ってきたのだろう。息を切らせながらレッドが俺の前に立ち止まる。その両肩に緑のふたつの物体を載せながら――。
『 レッド、降ろして!』
『 ……降ろして…』
そのふたつの緑は、片膝を着き低くなったレッドの肩から飛び降りると、ヒシリと俺にしがみついてくる。
『 ママ!お仕事終わった?!』
小さな緑の笑顔に「色々」ささくれだった気持ちが消えていく。
「 うん。終わった、よ。ご飯に、しよう」
両脇のそれぞれ見上げてくる二つの笑顔、俺の娘 双葉とみつ葉の頭を撫でてやる。俺の子供達はパウダーの影響で既に本来のゴブリンから変化が始まっている。頭の両脇、耳の少し上にある角が従来のゴブリンより小さくなり、体毛が生えない筈のゴブリンに人間と同じよう彼らには毛髪が生え揃っている。顔もゴブリンというより、人間に近い。流石に牙は無くなってはいないが、今は無くなっていない、というだけで進化次第で消え去るのかもしれない。
『 ……ママ…手を…』
双葉がおずおずと俺の手を握ってくる。それをそっと握り返し微笑んでやると、安心したように彼女も微笑んだ。
この大人しい娘が姉の双葉、落ち着き無くぴょんぴょん飛び跳ねているのが妹の みつ葉である。他の子供―― 一郎達男の子組は、トーチカ砦の周辺でクロに狩りの仕方を教わっている。
子供達の成長具合は落ち着いたのち変化がなく、現状を見る限り人間と同じように成人するまで長い時が必要になる可能性があった。その為、レッドやクロと話し合いクラスや魔法刻印、属性から各々の子供達に合った教育をしていく事にしたのだ。
可能性の問題だが、極論、俺が今いなくなったら無力な彼等には死しかない。であれば、可能な限り生き残る術を教育するだけだ。幸い人間と違い俺の子供達は魔族として生まれ落ちた時に「クラス」を授けられている。つまり教育すると決まれば話は早いのだ。得意分野に絞って教育すれば良いのだから迷う必要がない。
レッドに確認して貰った結果、男の子組は全員「ファイター」スキル無し。双葉が「ウォーロック」みつ葉はこの世でも希な「ヒーラー」共にスキル無しであった。『変に偏ってるなぁ』と思ったが聞けば女性の方が魔法クラスに成り易く、逆に男性は戦闘クラスに就きやすいのだそうだ。それはこの世界の全ての生物に適用されている法則で別段特別な事ではないという事だった。
かくして、泣きべそをかく一郎達をクロに託し俺達は一泊予定で「バードマン確保兼女の子組合宿」を開催した訳である。魔法とは関係ないのだが、俺達トーチカ砦に住まう住人も多くなり俺ひとりで調理を賄う事がキツくなってきた為、できれば双葉とみつ葉にも料理を覚えてもらい俺の手番をして貰いたいのだ。
いくら俺の外見が美貌の少女とはいえ、中身は蠅(男)である。普通に考えても可愛い女の子に料理して貰いたい。他のヤツ等は知らんが、少なくとも俺はそうだ。
『 ……アイリス様。そろそろ如何でしょうか?』
おっと、子供達の事で考え込んでしまったようだ。
「 ごめんね、レッド。じゃあ、みつ葉。こっち、来て?」
俺は子供達を連れ立って、地面に拘束されたバードマンの横に立つとレッドの魔法が直撃し赤く腫れ上がった脇腹にしゃがみ込み傷の具合を確認する。思っていたより火傷が酷い。『ググ…』とバードマンが押し殺した声を僅かに上げているが、俺の糸によって口を塞がれているので罵声が飛んでくる事はない。
「 みつ葉、この怪我。魔法で治して、みて。」
俺は僅かに横にズレるとみつ葉をバードマンの怪我の前に座らせる。みつ葉は『ここ?ここで良い?』と妙に馴れた様子で小さな手を恐れもなくバードマンの傷口へと手を翳すと、
『 我が愛を以て、この者の傷を癒せ。ヒール!』
スラスラと小さく呪文を詠唱する。途端に傷口に当てた手の平が僅かに輝き、彼女が手を離した時にはバードマンの熱傷が完全とはいかないが、かなり回復していた。
…うーん、おかしいぞ…。双葉の攻撃魔法は兎も角、みつ葉の回復魔法はここまで数えるくらいしか練習していない。にも係わらずこの手際は良すぎる。どういう事だ、これは…。
訝しがる俺に『 ママ!これで良い?』と褒めて欲しいのが解る、期待に満ちた笑顔をみつ葉が向けてくる。
「 …うん。良く、できたね!良い子いい子」
上手くできる理由は分からない。だが思わず、その小さなみつ葉の身体を抱きしめる。くっ、子供がこんなに可愛いとは反則すぎる。この感情が親になったという事なのだろうか?俺の中には既に血が繋がっていないとか、そもそも種族が違うといった事柄は遥か時空の彼方である。
『……ママ!』とそれを見ていた双葉が俺の腰にしがみついてくる。
「双葉も。いい子。二人とも、本当に良い子だよ」
彼女達の目線に腰を落とし二人をぎゅーっと改めて抱きしめる。子供って本当に可愛いなあ。だが、こんなに愛おしく思うのは、もしや俺がアリスと同化しているからかもしれない。どちらにせよ、今の俺にはアリスと同様に大事な存在だ。いずれ離れる時が来ても後悔しないように育てねば。
『 パパ!やったよ、ママ褒めてくれた!!』
…ん?
みつ葉が「レッド」に嬉しそうに、聞き捨てならない台詞を言ったような気がする。まてまて、もう一度聞いてみよう。俺の勘違いかもしれぬ。
『 ねえパパ!どうしたの?パパは嬉しくないの?』
………―。
「 …おい、レッド?」『お前、この子に何をした?』
久々に俺とアリスから同時に言葉が発せられる。ジワリと俺の本体から様々な虫が湧き始め周囲の草原が一気に黒く染まっていく。俺の子供達に虫への忌避は皆無だ。生まれてからずっと俺の傍にいた為か、子供らは虫がいる方が安心感すら覚えるようだ。
だが、子供達以外の眷属は違う。彼等にとってこの状況は――恐怖以外の何者でもない。みつ葉に声をかけられたレッドの表情が一気に強張り直立不動になる。
『 ち、違いますアイリス様!この子らは私にとっても大切な存在なのです!だから、及ばずながら私も応援――』
俺の怒りの感情に反応した虫達がガチガチとアギトを鳴らし始める。空気に殺気が漂い始める。もう猶予はないぞ、レッド。
『 そうだよ、ママ!パパで何度も練習したんだもん。だからスゴく出来るようになったんだよ!』
この異様な光景の中、みつ葉が不思議そうな顔で俺に訴えてくる。
「 ……みつ葉、どういう事?教えて、くれる?」
『 うん!パパがね、ママをびっくりさせようって、パパで練習させてくれたの。……上手にできてなかった?』
急に不安げな顔色になったみつ葉の頭を一撫でして安心させると、
「 その事、じゃないよ。なんで、レッドが。パパなの?」
『 うん、僕も是非それは聞きたいねえ』と、
魔王が口を挟んでくるが今回だけはヤツに同意である。
『 え…?パパがパパって呼べって言ったから…。ね、双葉?』
『 ……うん。パパが言った』
……へー、ふーん。そうか。なるほどね。
『 アイリス様、違うのです!深い意味があった訳ではありません!ただこの子らには父親が居りませんでした!だから、つい「人間の親なら女性はママ、男性はパパ」だとアイリス様が仰ったと聞いたのを思い出し、つい言ってしまったのです。そこの邪な魔王とは違います!信じてください!』
「……で?なんで、みつ葉。魔法うまく、なった?」
普段、巌のような顔を今は真っ赤にし言い訳をするレッドを睨みつけ俺は残った疑問を尋ねるが、そこにみつ葉が口を挟んでくる。
『 パパねえ、自分の手やおなかを切って、それを私に治させてくれたの!だから、こんなに上手くなったんだよ!』
……。
『 ハハハ、馬鹿だねえ。其処までする必要があるかい?そのうえ今は僕らが守ってるんだぜ?無意味だね』
魔王の言葉にすっかり悄気返るレッド。
だが、俺は――。
「 レッド」
『 はい、アイリス様』
「 自分を傷つける事。どんな理由でも。絶対、しないで」
『 分かりました。何があってもお約束します』
俺がこの異世界にきて、初めてできた眷属――仲間、いや家族か。そうだ、この赤銅色の肌をもつ巨人も最早俺の家族の一人なのだ。
まったく、俺はこの森から逃げたいだけだった筈なのになあ…。
『 アイリス様…』
「 良いよ、レッド。許して、あげる。」
草原を埋め尽くしていた虫達が俺の中に消えていく。レッドは余程緊張していたのだろう、珍しく地べたに座り込み大きく肩で息をしている。
「 だけど。何度も、言ってるけど。隠し事は、ダメだからね?」
『 はい、今後気をつけます…』
ふふ、まあ珍しくテンションの低いレッドをこうして見る事ができたのだ。これ以上責めるのは勘弁してやろう。
『ねえ、お話おわった?』
場の空気が変わった事を理解したのだろう、みつ葉と双葉が俺の腰にしがみついてくる。
「うん。終わった。バードマン眠らせたら。私達も野営、準備するよ」
俺の言葉に子供達が嬉しそうに草原を走り出す。とにもかくにも手駒は揃いつつあるのだ。今はそれで十分だ。明日の事は明日考えれば良い。
向こうで子供達が俺に向かって大きく手を振っている。俺は彼女達に向かって歩きだし、
『 ママーパパー!早く行こう!!』
まてぃ!!それは許していないぞ!レッド、貴様なにをにやけている。邪な考えはないって今さっき言ったばかりだよな?!
俺は自分でも信じられないくらい早く子供達の元へ駆け寄ると「パパ、っていうのはね……」と夜がふけるまでパパ呼び禁止を理解させる事になるのであった―――。
読んでいただきありがとうございました。次話も宜しくお願いします。
私事ですが転職いたしまして暫く趣味の時間をあまり取れそうもありません。
その為、更新が今後遅くなると思います。
俺の妄想まみれの駄文に今後も気長にお付き合いくだされば幸いですヽ(;▽;)ノ