幸せな2人
私の授賞式から半年後。ラウルは公爵の地位を与えられ、領地として私が暮らしていた森を含む一体の土地を受け取った。
元々、王家の別邸として城を建てたような王家直轄の土地だったので、そのまま城ごとラウルの管理下となった。
普段は王都のタウンハウスから仕事に通い、長期の休暇が取れると領地の城に戻る。そんな暮らしだ。
私は婚姻を期に護衛の仕事を辞め、魔法薬を作ったり、時には都市近郊に出没した魔物を狩ったりしている。
流石に「魔物を狩りに行くのはやめてくれっ」とラウルに言われるものの、誰かに必要とされる嬉しさに気付いてしまった私は、呼ばれるとホイホイと出向いてしまう。
「リーネ?今日、魔物討伐に出ていた騎士に『魔女様に助けられましたっ!』て言われたんだけど、やっぱり行ってたの?」
帰ってくるなりラウルに聞かれて"ドキッ"としてしまう。
決して隠している訳では無いけれど、急ぎ呼び出された際にはラウルへの報告が遅れてしまうからだ。
「えーっと、魔物は数が多いだけのスライムだったので……」
「だからそういうことじゃ無いんだよ…。その騎士がさぁ、『魔物を瞬殺する姿が格好良かったです』って、言ってたんだよ?」
ラウルは未だに、私が騎士様や他の男性達にモテると勘違いをしている。
強い筋肉魔女を好きになるのはラウルくらいなのだと、早く気づいて欲しい。
「そうですね。それじゃラウル殿下も令嬢からのダンスのお誘いは断っていただけますか?」
ラウルは私と結婚する前は近寄り難い雰囲気と、側近たちの鉄壁の守りで社交の場では遠巻きにされていたらしい。
だが最近では、多くの人と気軽に言葉を交わすようになり、今まで憧れながらも近づけなかった令嬢達がチャンスとばかりに押し寄せているのだ。
「あまり深く考えずに皆と話が出来るようになったのは、リーネと結婚出来たからなんだけどな…。確かに怪しげな物をもらう事もあるから、警戒ついでに令嬢は避けておこう」
怪しげな物ってなに??初耳なんですけど!
「リーネも自己評価を正しくしないと、皆がリーネにどんな視線を向けているかに、気が付けないんだからね?リーネは確かに強いけど、薬を使われるとか手に負えない状況だってあり得るんだからっ。これ以上、人目を奪って信奉者を増やさないでくれっ」
ラウルからの執拗な愛情を受け、婚姻という形になってから、私は何となく自分を信じられるようになってきた。
他人の言葉や行動で勝手に傷ついていた自分とは「さよなら」出来たと思う。
私はラウルが言っているような魅力な人ではないけれど、そう思って見てくれるラウルが居るだけで、私は救われたんだ。
「流石に子供でも出来たら、魔術討伐には呼ばれないので……。その内、そう言う仕事も出来なくなっちゃいますから、今のうちだけ大目に見てくださいね」
「リーネ……。僕にそうこと、言っちゃうの?」
ラウル殿下の迷いのない目が私を射抜く。
あぁ……、本当はもう少し、迷ってくれても良かったんだけどな。
了




