刀剣協会本部
「ん...」
「あ、編集長目覚ました」
「...どういう状況?」
「如月様が倒れられたので、手当もかねて車にで刀剣協会本部にお連れしている最中になります」
私は車の後部座席に乗せられていた。腕や顔に目立った外傷はないが、体に妙な倦怠感がある。
「私に何が起こったの?」
「すみません、私達に詳しいことは知らされていないんです」
「えっと...つまり、あなた達の主の姫?に会えば聞けるってこと?」
「お手数ですがお願いします」
すると車が停止する。
「ここ?」
車が止まったのは小高い丘の上に立つ神社の鳥居前であった。
「あ、如月様降りなくて大丈夫ですよ」
その言葉と同時にアクセル全開で鳥居に突っ込んでいく。当たる!と身構えた時、視界が歪み、いつの間にか車は湖上に立っていた。
「ようこそ刀剣協会本部へ。すみませんがここからは徒歩になります」
清水くんがいつの間にかドアを開けてくれると、私はおそるおそる湖の上に足をおろす。感触は水なのに、靴やズボンは一切濡れていない。私は4人に案内されるがまま湖上を歩いていく。霧が視界を遮っていたが、5分ほど歩いたところで突如として霧が晴れると、目の前には巨大な屋敷が現れた。枯山水が屋敷を囲み、桜の花びらが舞っている。
「わ〜!」
思わず感動の声が漏れる。
「桜姫様への謁見を申し込んだ神上守です」
「はっ!伺っております。どうぞ中にお入りください」
清水くんが門番らしき人に話しかけると、すぐさま門を通る許可が降りる。
「如月様、湖上と同じように何があっても我々から離れないようにしてください」
私が頷くと、前に清水くん、左に椎名さん、右に佐藤くん、そして後ろに神崎さんが立ち門をくぐる。
玄関を開けると靴を脱ぐスペースがあるが、その先にあったのはお出迎えの人でもなく、廊下でもなく、一対の障子だった。通常の建物であればおかしいと感じる構造だが、湖上でのことやここへの来方から、ただの建物ではないことを考えると自然なことであるとも考えられる。
皆が靴を脱ぎ、最初の障子を清水くんが開くとそこには薙刀を持った2人の人物が6畳ほどの部屋の左右に控えていた。
「如月様、こちらが刀剣協会本部の防衛を担っている、防人楓様、雷華様姉妹です。屋敷の内外に様々な術を施し、侵入者の感知、妨害、制圧を手掛けています。湖の霧も彼女達が出したもので、許可なきものが通ると永遠に霧から出られなくなります。またこの屋敷内には、この部屋と同様の部屋が無限に続いていて、許可なきものが部屋を移動すると2度と出られなくなりますのでお気をつけてください」
「姫様は四季の間におられる。このまま真っ直ぐ進めば着きます」
「ありがとうございます楓様、雷華様」
清水くんはお礼を言うと進み始める。しかし次の部屋に進むと左右にまったく同じ格好をした人物が座っていた。私が思わず後ろを見ようとすると、神崎さんに視界を遮られる。
「ダメよ〜、通ってきた部屋を見たら頭ぶっ壊れちゃうわよ〜」
「え、」
「ふふ...思い出すわね、鈴音ちゃんが振り返っちゃって三日三晩高熱出したのを」
「ちょ、なにいきなり人の失敗談話してるわけ」
「ありがとうございます紅音姉さん、すっかり忘れていました」
「安心しろ、ちゃんと如月様は対象外にしてある」
「あ、そうなんですねありがとうございます楓様」
「はあ!対象外とかできたわけ、ならあの時も私達を対象外してくれればよかったじゃない」
「はっ、姫様への客人と分家の子供を同等に扱うわけないだろ」
「うう腹たつ...1個上だけど楓も雷華も同期じゃない!」
「それとこれとは話が別だ」
「鈴音さんその辺にした方が...謁見の時間まで後少ししかないです」
「ありがとう光輝。鈴音、そのぐらいにして行くぞ」
「べーだ!」
6人の会話はまるで学生の仲良しグループのようであった。そしてそこに自身が加われない現状に、息の詰まるのような気分になった。顔には出さないが、早く会話が終われと心の中で願ってしまった。
障子を30回近く通り抜けたところで、姉妹以外の人物が障子前に座っている部屋にたどり着いた。
「ふう、ようやく着いた。長すぎ...」
「自分も疲れました...」
「如月様は疲れてな〜い?」
「ありがとう神崎さん、大丈夫だよ」
「鈴音も光輝ももう少し鍛えろ」
「いや、編集長の体力が化け物なだけよ守」
「無駄話は控えよ。この先は桜姫様がおわす場所、武器の類はこちらで預かる」
4人は腰や背中に背負っている刀を男に渡すと、隣の部屋から出てきた女性達に身体検査を受けていた。
「あの、私はいいんですか?」
「姫様からそのまま通せとの命です」
私の友達に姫なんていない、なのになぜ特別扱いされるのか疑問に感じていると、皆が身体検査を終えて戻ってきた。
「如月様、準備は大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
私は4人に再び囲まれながら障子を通り抜ける。




