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どうやら調査されるようです

「おい。ちょっと待て。コイツは」


「調査費用は、まけてやる。今は。待て」


 覚悟を決めたヨルンを前に横やりを挟んだ飼主は素直に諫められた。

 邪魔はするなよと念を押され、嘴人間はヨルンに向き直り、

 少しばかりズレてしまったのだろうマスクを顎に手を当てるかのような動作で調節しながら対話を試みてきましたよ。


「言葉も…理解、しているな?」


 …少々迷ったが、ここはもう。首を縦に振ろう。うんうん。


「解剖して良いなら。。。首を縦に振れ」


 …そんな事言われたら首を縦に振る訳ないじゃないですか。

 まあ…確認ですよね? 反射的に振ってる訳じゃないのかの確認。ですよね?

 横に振りますよ。それはもう、高速で。光の速さを目指して。


「冗談だ。分かるようだな?

 言葉を、理解。してるなら、それだけで…価値がある」


 最後に舌打ちみたいな音が出てましたが。まあ良いでしょう。

 なんとなく頷いておきます。解剖も冗談だって分かりましたし。

 価値があるとか言われましたし。悪いようにはされないでしょう。

 それにしても、頷いたり首を振ったりで通じるんですな。


「よし。オマエは。私が。買取る」


 何の気なしに頷いたらこの台詞である。

 あらやだ。ヨルンさん買取られそうです。

 えっ…どういう事ですか? この嘴人間が?


「おい! 勝手な事を。それは私の!」


 先程の解剖台詞といい。身の危険を感じた所ですが。

 事が事ですから、飼主が食って掛かるのも当然です?

 しかし、嘴人間は無骨な掌を正面に出して飼主を制し、

 プラチナタグの代金であったモノと同じ白金貨を複数枚、指に挟み飼主に言葉を割り込ませた。

 …そういえば、アレの代金どうなったよの? 壊れた高級品らしきアイテムの損害は誰持ちなの?

 そんな疑問も現在突き付けられている問題にしてみれば些細な問題だ。

 そう…些細な問題であってほしい。ヨルンが壊したわけじゃありませんからね?

 喋れぬヨルンはクギュウクギュウ鳴くばかり。


「白金貨。5枚だ。倍以上の…値の筈。だ」


「金でどうにかなるとでも?」


 そんなヨルンは既に両名の眼中にはなかった。

 互いに難しい顔をしながら向かい合い、二人だけの空間とも似た状況が出来ている。

 しかし、飼主は凄んでいるものの…ペストマスクには敵わない。

 何この嘴人間? 飼主さんも威圧され、押しに押されてます。

 どうやらマスクだけの威圧感って訳では無いようですな。


「だが。お前には。扱えん」


「そんな事、お前に言われる筋合いはないぞ?

 私はな、コイツを使って上り詰めてやるんだ」


 追い詰められた飼主がヨルンの頭を撫でてきます。

 上り詰めるの意味は分かりませんが。

 察するに今戦わされてる闘技場の事ですよね?

 それとも、その先を見て別なモノを見据えているとかも考えられますが。

 現状のヨルンの状況で詳細を知る事は叶いません。

 ねぇねぇ、教えてよ。そんな視線を向けるも飼主は嘴人間に押されてそれ所ではない様子。


「コイツを…使って? か。なら。無理だ。諦めろ」


 そして嘴人間は…扱えない。無理です。諦めろと。すっぱり切り捨てましたな。

 自分に見込みがないのか、飼主が微妙なのか分かりませんが。

 嘴人間側がなんとなく只者ではない雰囲気が漂って参りました。

 威圧感が半端ないですな。強キャラのオーラでも見えてきそうなぐらいですよ。

 そんなヤバイ気配を漂わせる嘴人間に臆する事無く意見する飼主さん。

 こちらも怪しさでは負けてませんし、こうして喧嘩腰に話すぐらいなのだから…

 もしかすると親しい間柄なのかもしれませんな。

 一度は押されたものの、今度はあんなにも顔を近づけて、嘴が刺さりそうです。


「何を言っている。試合の結果を知っているだろう。

 コイツは特別なんだ。コイツなら…あいつ等を叩きのめしてやるぐらいの強さには」


 飼主側は、自分の事は良く思ってくれているようですな。

 勝率100%ですもの、当然ですよね。

 でも、負けたら死にます的な展開はありましたから。


 まあそうなるのも当然です?

 しかし。なんというか、愛情が無い。ラブが無い。

 飼主の発言にはどうにもこのヨルンをモノ扱いしてるとしか思えません。

 どうにも扱いが中途半端で…もしもですよ。

 このヨルンが動くモノ全てに襲い掛かる系の魔物だったらどうするですかと…

 見上げれば飼主はもう嘴人間しか見てませんし。


「もう一度、言う。コイツ。では…無理だ。諦めろ」


「オマエが言うんだ。その理由はあるんだろうな?」


 そして嘴人間が繰り返し無理だ諦めろ宣言をしてくる件について。

 飼主さんが聞いてくれました。ヨルンも抗議しますよ。

 ギーギー、クークー。キュルルルルーン。


「単純に。その気がない。生まれた、時から…だろう。

 能力以上に…見える、のは。頭が…良い。からだ。

 そっちに。能力が…向いて。しまっている。

 使い潰す…には、勿体ない」


「馬鹿いえ。タマゴを自力で破るサーペントエッグだぞ?

 対戦相手は殆ど一撃で仕留めてるし。魔石も勝った分は与えている」


 頭が良いヨルンさん。そう褒めないで下さいまし。

 調子に乗っちゃいますぞー。嬉しさの余りに尻尾をガンガン振り回しております。



 ぶおん、ぶおん。ぎゅるんぎゅるん。グオォォォォォォォン。



 この感覚は…やりました! この簡単に振り回せる感覚はスキルですな。MPが減っております!

 うおー! ショーターイムですぞー! グルングルン回せます!


 足枷鉄球のような重さなんてなんのそのですよ。今ならプロペラと化して空だって飛べるはず!

 でも飼主さん。アートウルフ戦の魔石は頂いておりません。今思い出しましたぞ。

 ゴブリンの時も忘れて次の試合まで持ち越されましたし。

 実はわりとポンコツなのかもしれん。この飼主。


「言った…だろう? 頭が、良い…って。

 戦闘の…勘。という、意味で…だけどな?

 相手を、殺して。ない。つまり。そういう、事だ」


「つまり…ってどういう事なんだ?」


 飼主に同上。つまり。どういう事なんだってばよぅ?

 嘴人間が尻尾を振り回す自分を見て言葉に詰まって言い直した気がしますが。

 まあ良いでしょう。とりあえず褒められてはいるようですし。

 振り回すのも疲れましたから息を切らしてぐったりモードへ突入です。ぐでーん。


「そいつの。試合は…見て、いる。

 殆ど、自分から、動く事は。無かった。

 動きも…最小限、だ。自分から動いたのは、狼の時に、転がった。ぐらいか?

 体力が。無い。からだろう。闘争の本能も、薄い。

 トドメを。刺すのも…疲れるだろうから。

 こんな、短期間で。これは。異端だ。異常だ。

 この…蛇は、普通に。動くのにも。疲れてる、ようだしな。

 タマゴが。重い所為も、ある。がな?」


「異端だの異常だのなんだの。オマエはいつもそんなんだな。

 タマゴだってそんなもん。いずれ脱ぎ捨てるだろ」


 いえ。脱ぎませんよ。飼主さん?

 タマゴは完全に死守です。王様ベッド並の寝具と代わりの武器を用意してくれるなら考えないでもないですが。

 伝える術は無いので、タマゴを自分の体で巻き抱いて意思を分かりやすく伝えますぞ!


「だが。脱ぎ捨てたく。無い。ようだぞ?」


 そんな自分の意思は嘴人間が代弁してくれましたな。

 飼主がタマゴに蹴りをいれてくれやがりました。

 さっきも相手さんを蹴ってましたし、足癖悪いじゃないですか。ヤダー。

 飼主への好感度が下がりましたよ。むしろ下がり続けてます。

 口を開けて威嚇行動です。クルヌギャー!


「それに…な。無理な、試合を。組みすぎて。

 目を…付けられた。だろう? おとなしく。するべき…だ。

 と、思うが? 私に。買取られた。なら。アレ等も。文句は。言うまい」


「クッ…しかしコイツを手放す訳には!」


 ふむ? 何やら雲行きが怪しくなって参りました。

 妙な情報ですな。無理な試合に。目を付けられた。

 心当たりは試合中の妨害工作。ヨルンさんの体に短刀が生えましたからね。

 しかし飼主さん…さっき自分の事を蹴ってましたよね?

 大事そうにする割には扱いが雑ですよ!?


 ヨルンは根に持ちます。忘れません。呪っちゃいますぞ!

 忘れた頃に足の小指がぶつかって痛がる呪いを!


 その瞬間…ポワンと体から何かが抜け出る感覚を覚え、飼主さんへ吸い込まれていくのが見えました。

 …あれ、ちょっとスキルっぽい。しかも…お二人方、どちらも気付いた様子はないようです。

 ふむむ? 気になりますが…嘴人間がとんでもない事を口走ったお陰で思考が其方に向いてしまいました。


「ヨルンに決めて貰うというのはどうだ?

 先に、聞いた。だろう? こいつは。言葉も。既に理解…している。」


「そうなのか? 理解出来ずに阿保面してるように見えるが。

 選べる頭があるなら…良いだろう。どっちにしろ手放した場合、金は貰うぞ」


 マジっすか。選んで良いんですか?

 予想だにしなかった展開ですが…二人の顔を見比べます。

 一応、現飼主は女性のようです。

 黒フードにアクセサリー的な物もジャラジャラ身に着けてますし、ちょっと怪しい雰囲気ですが。

 対するペストマスクは………多分男?

 彼等の話していた内容も何か変な奴等と係わってるんだなぐらいにしかヨルンは思ってません。

 この選択でそれ等と関わり合いになるかならないかも…決まるでしょう。

 えーと、もう少し情報を。キョロキョロと何か話して下さいなとアピールしますよ。


「それこそ。今の…やりとり。だけを聞けば。そうにも…なる。

 お前だって。知らない、ヤツラの…話をされて。分かるか?

 考えろ。お前は。この。貴重な。生まれながらに。名のついた。

 ヨルン。という。魔物の。意味を。知らずに。使い潰す。つもりか?」


「だがな。私はコイツに可能性を見たんだ!

 コイツならいずれ、進化を果たして闘技場を征服してくれるって」


 どうやら嘴人間側は、自分の事を貴重だのなんだの、大事にはされるようですな。

 対する現飼主は、闘技場で戦わせ続けるようで、それ以外の厄介ごとも抱え込んでいるようですね。

 それ等をふまえて、ヨルンが選択肢を選ぼうとするも二者の口論が続いております。


「コイツ。ではない。ヨルンだ。

 それに。勝手に…突っ走って。オマエは…馬鹿か?

 このまま、一足飛びに…続けたら。進化する。前に。死ぬぞ?

 そうでなくても。ほら。例のモノ。調査が済んだ」


 互いに言い合いをしていましたが、その最中。嘴人間が思い出したかのように例のモノとして取り出したモノ。

 それはヨルンの体に突き刺さっていた短刀ですな。

 どうやらこの嘴人間が調べていたようです。


「ピリタスの毒だ。ナイフに塗る、だけでも。十分に。死ぬかも…だな」


 そうかー、毒だったのかー!

 ああ、死ぬような…毒だったんだな。

 ヨルンさん…解毒も受けてませんし、もしかしたら死ぬかもしれません…

 ああ。なんだか体が痺れるような? 意識も薄れていきます。


 がっくーん。ぱたり。ヨルンはしんだ。


「あ。死んだ?」

「うむ。死んだな。解剖。しとくか」


 嘘です! 起きますよ! 解剖を脅し文句に使うなんて。

 …解剖を脅し文句に使うなんて? なんかデジャブ感がありますな。

 しかし解剖される訳にもいきませんから、起きますよ。

 特に体調の変化も…むしろ良好なぐらいですし、きっと毒なんて効かなかったんですねー。

 魔物ですからねー。耐性が付いたのでしょう!

 見よ、この元気なヨルンさん! キリッと体を伸ばしますよ!


「あ。起きた」

「よしよし。念の為。解剖。しとくか」 


 よし。逃げよう。身の危険を感じた。

 コマンド選択。逃げる。ピポッってね。ガサガサガサとセルフ効果音。


「あ、逃げた」

「ポチッ。とな」


 ビリビリビリビリビリビリッ!

 電気のような刺激がビリビリィ…

 ヨルンは痺れてしまった。

 もう動けない。目の前が真っ暗になった。パタンキュー…。 


「あ、また死んだ」

「ほら。台に乗せろ。サービスだ」


 ああ…ヨルンはこうして台に乗せられ解剖されてしまうのですね。

 お父さんお母さん。先立つ不孝をお許しください。

 むしろ親は誰なのだろうか。そもそもに自分は普通に生まれたのだろうか。

 ヨルンの謎は深まるばかり。で、本当に解剖されちゃうの?

 飼主さんなんとかしてー! そう訴える事も出来ずに祈るばかり。

 現在置かれているヨルンの状況で少々焦るものの、まあこの流れなら大丈夫…だよねー?


「解剖じゃないだろうな?」

「ただの調査だ。調べてやる」


 こうしてヨルンは一匹、嘴人間に預けられ。

 調査とやらを受ける事になった。


 結果はどうあれ。

 どちらを選択するべきか。

 ヨルンは考えねばならぬ…




 ああ、そうだ。セーブしとこうかな。

 心に深く刻み込む感覚で。復帰地点としてセーブする。

 データは3つ。クイックセーブ枠がさらに一つ。

 自由セーブ枠が2だった覚えがあるからそれに書き込んで。


 確認の為、ロードもしておこう。



 ザッ―――



 ………あれ、何してたんだっけ。

 ……まあ良いか。夢心地で変な気分だもの。

 …体が痺れて。眠気に逆らえませぬ。


 注射をプスリと刺された感覚を最後に覚え、

 ヨルンの意識は深き眠りの海へと沈んでいく筈だったのに。



 飼主の絶叫が響き渡る。

 な…何事ぞ!



 注射針が刺さったままのヨルンは跳び起きる。

 飼主は地面を転がり足を抱えて涙声となり、な、何なのよ。これは!

 そう誰に言うでもなく言葉を漏らしていた。


 嘴人間も、ヨルンから注射針を引き抜く事は忘れなかったものの。

 ソレを見て呆然と立ち尽くしている。


 飼主のいる地面は、ほんのり血に塗れていた。

 起き上がる素振りを見せない飼主の顔色は先程までの勢いが嘘であるかのように蒼白だ。


 気が付くのが遅れたからだろう。

 服の内側からの出血。

 衣類を傷つけることなく発生した肉体へのダメージ。

 ヨルンの観察眼は飼主のダメージの具合がどの程度のモノなのか理解が出来た。



 これは…右足の指に甚大なダメージを受けているようだ。

 


 嘴人間の服を引っ張り、飼主の足へと注意を向けさせる。

 何かを伝えたいという事を理解した嘴人間は、ヨルンの身振り手振り…いや、尻尾振り。

 嘴人間は、察して飼主の異常が足にある事を見つけたのだろう。

 慌てた様子で急ぎ靴を脱がせて確認を始めた。


「失礼…する。…ッ。これ、は?」


 靴を脱がせてあらわになる素足。靴下なんて履いてなかった。

 なんとなく残念だと、変な思考が働くのも一瞬。


 流れ出る血の量は、明らかなる異常が飼主の身に起こっていると一目で見て理解が出来る。

 さらなる異常が分かるのは、即座に治療に当たろうとする嘴人間がとった行動の後に知る事が出来た。


 足の小指が…無い?

 綺麗さっぱりと切断されたかのように。

 元からその位置に指が無かったと錯覚してしまうかのように。


 切り口が閉じられる事もなく、変形する訳でもなく。

 断面図がくっきりと。それが確認出来るぐらいに異常な事態であると感じられた。

 とにかく、切断されたというのならば、傍に転がっている筈では?


 探してみるも、そんなモノなんて何処にもない。

 嘴人間も、脱がした靴の中を見たり服を払ってみたり、探してみるもそんな部位は見つからない。



「一体どういう事なのよ…!」


「分からん、ぞ? 何か、引っかけたり。

 オマエが、蹴った、時に、違和感。違和感?」


 そう違和感と2度言い直した嘴人間の視線がヨルンへ向けられた。

 そういえばタマゴを蹴られましたね。

 ヨルン自身も、その視線をタマゴへと向けました。

 嘴人間も、同じくタマゴが気になったようで、それを注視しています。


「どんな…力で蹴った、のだ?」


「か、軽くしか蹴ってない! それより。どうなってるの!?」


 どうなってるもなにも。嘴人間と顔を見合わせます。

 指が無いなんて、言うべきか。否か。

 しかしそんなものは直に分かる事態。嘴人間は状況を直に伝えた。


「小指が。無い」


 ヨルンは地を這うように無くしたであろう指を探し。

 嘴人間は、出血を抑えるべく回復の魔法を行っておるようです。

 その無骨で変な…突き刺さりそうな形の妙に尖った手より、密着した部分が暖かな光を放っているのが見えますよ。

 効果はあるようで、触られた部位からの出血量は少なくなってきてますな。


 おお、魔法だねぇ。そう感激するも今は探し物なんですよ。

 地面を這って、熱源も感知してみるが一向に見つかる様子がない。


 暫く後に、ヨルンは収穫無しと首を横に振る。

 嘴人間もそうか…と、落胆してしまう。

 結果は出ませんでしたが、意思の疎通がある程度出来るというのは助かりますな。

 

「何でなの? 一体何なのよ!?」


 まあ、これは蹴られただけですが、ヨルンの所為って事になりますよね?

 伝える言葉がありませぬ。


 クギュウ…クギュウ…鳴く事しか出来ません。


 しかし…なんだってこんな事になってしまったのか。

 飼主は痛みで、どうこう出来る状況ではないようです。

 嘴人間も治療に手一杯でした。

 ヨルンが手を出しても…手はないので口を出し…声も出ませんし。

 特に何も出来ないと悟ります。


 考える時間が十分に出来た所でヨルンはふと思い出しました。

 確か、蹴られた時に、小指をぶつけて痛がる呪いをかけませんでしたっけ?


 その時に確か、スキルを発動したような感覚を覚えて飼主さんに呪いのような力が吸い込まれていったような。 

 ヨルンの中で何かが確信に変わったような気がします。

 この感覚に間違いがないのならば、飼主さんの足の小指はもう…


 この世から消え去った。という事で間違いないでしょう。

 ヨルンが食らい尽くしてしまった訳ですからね。


 やっぱり。これはヨルンの所為って事です。

 呪いの力。対象を食らい尽くさんばかりの恐ろしい力。そんな力をヨルンは持っていた。

 なんか、やっぱり変ですよね。こんなのバレてしまったら…どうなることやら。

 …表立ってのこの能力は封印ですな。

 それにしても、何をどうして発動してしまったのか。


 嘴人間がヨルンの調査を開始するあのタイミングでの叫び声。

 多分、その時…飼主が動いて何かの拍子に小指をぶつけたのでしょう。

 痛がる呪いをイメージしていた筈が、小指そのモノを消し飛ばす程の呪いとなるなんて…

 痛みをイメージしましたし、加減の効かない呪いが飼主を襲ってしまった、そういう事でしょう。


 確かに今も…それはもう悶えて苦しんでと見るからに痛がっていますから。


 この呪いの力が自分の意思以外で発動するとなれば…手に負えないスキルであり枷にもなりえそうだが。

 今の自分はある程度、自分の意思で扱えるようだ、要検証事項ですな。

 

 さて、他に自分に出来る事は特になく、考えを纏める時間も終わりです。

 状況はある程度落ち着きました。

 治療も代わりの小指をはめ込む的な治療で事なきを得た…みたいですね。

 治療代に、またもや白金貨が支払われていたようですが…


 飼主も嘴人間も、両者共にヨルンが意図しての犯人であると思ってないのが幸いか。

 しかし、原因の一つとしてヨルンが影響している事に察しはついているらしい。

 調査は入念のに行われるとの意思を伝えられ。

 逃げるという選択肢は元から与えられていません。

 受け入れるしかありませんな。一体どんな結果が出るのだろう。


 胃の辺りがキリキリ痛む中。

 再び湧き上がるこの問題。


「ヨルンは、私が…買取る。良いな?」


「くっ…いいや。私はコイツ…ヨルンを連れて行く!」


 あんな目にあっても飼主にヨルンを手放すという選択肢は生まれなかったようです。

 ヨルンの仕業と気が付いていないのか。

 それとも気付いていながら、考えがあるというのか。


 両者の視線はヨルンへと向けられていた。

 どうやら…どちらを選ぶかは自分が決めなくてはならないようだ。


 …で? どうやって選べば良いの?

 言葉を声に出せぬヨルンは首を傾げ、状況を打破するべく考えるのであった。



   *   *   *

2話分に分割しようかと思ったけれど丁度良い区切りが無かった。

飼主はどちらを選ばせようか。感想が来るなら選択制とかも考えたけど柔軟に方向性を変える事が難しいので下手な真似は出来ないからやめとく系の凡人であった。

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