狼と蛇はEランクらしいです
本当に最後に回されてしまったのか?
ゴールデンタイムが終わったのか観客は少なくなってしまったとか?
なんとなくでしか分かりませんが時間帯によって観客層は変わる様です。
ガコンッ。ガシャコン! ジャラララッ…
檻が解放されました。そういえばこの檻、前回よりも装飾が金交じりでなんか豪華でしたな。
音もなんだかグレードアップしてた気がします。
なんとなくそれを感じて、どっしり構えつつゆっくりと檻より這い出てしまいます。
ふむ、開けた場所で視界に収まる限りの集まりを見る限り…
裕福層だか貴族層だとか。その辺の顔ぶれが集まっているように感じます。
あの連日続いてた騒がしい喧騒も今は聞こえない。
拍手やら近く並んでいる者同士でコソコソ話していたり。
流石に何を話しているかまでは聞こえませんでしたが少なくても、
闘技場の印象が変わってしまいそうなぐらいの変わりっぷりです。
何かのイベントなんでしょうか?
いつもと違う雰囲気に戸惑い少し考えてしまいましたが…
不思議な事に今回は相手の檻が開いていないようです。
相手さんの檻も似たような感じで記憶にあるモノよりちょっとだけ豪華ですね。
しかし檻が開いてないという事は、ええっと…どういう事なのでしょう?
ガコンッ。ガシャコン! ジャラララッ…
疑問に思っていたら開きましたよ。
中身はなんじゃろな?
そうだ、自分が出てくるまで檻が閉じてたって事は。もしかして?
不穏な気配を感じたので、いつでも動けるよう蛇の体を傾けておこうとした矢先の出来事だった。
ガンッ…ガガン!
金属音が先か、飛来物が先か?
音が遅れてやってきたと錯覚するレベルの速さというのは一体どういう了見ですか。
流石に光の速さとまでは行きませんでしたが、この速度はまさしく魔物の所業ですな。
ゴウッ…だとか轟だとか。効果音を出すならその辺の力強い音が出ていると思われます。
闘技場を吹き抜ける一陣の風が自分を巻き込きこむ様な勢いで通り過ぎ、
砂埃を舞い上げ距離を置いて弾丸のような何かが急停止した事を確認出来た。
回避が出来たのは運が絡んでましたよ。
殆ど見えねぇ…体に触れるか触れないかって所で体を捻らせる事に成功し、鱗数枚削らせて回避出来たって所か?
轟音と共に放たれた弾丸を彷彿とさせる速度で突っ込んで来たソレは狼のような姿をしていました。
記憶にあるのは。ふむ…アートウルフリーダーっていう魔物ですね。
知る限りにソレはEランク個体であります。
補足として…まあ芸術的な見た目はしております。
抱き枕に一つ欲しいかもしれません。最近寒いですし温かそうな毛皮は羨ましい。
しかし記憶にあるソレとは大きさが…少し大きい気がします。
同じアートウルフ系列でリーダーが付くか付かないかで見た目大きい程度の姿なのですが。
全く別の個体なんですよね…アレは。
それにしても、今目の前にしているそのアートウルフリーダーは何かが違う…ような気がします。
見ている体躯の大きさよりも…内面に秘めた何かが大きいような。
ふむ、しかしそれを感じただけで委縮する訳にもいきません。
まずはアートウルフリーダーの情報ですが。
なんというか、一種の集合意識体。的な?
配下のアートウルフと繋がるスキルを持っているのがアートウルフリーダー。
リーダー無し種との違いとして体内に存在する魔石の数が通常個体と比べて数が多いのがリーダーの証。
一見しただけでは分かりませんが。
白い毛並みに浮かび上がる赤い線の数の数を比べてみれば一応見分けがつきます。
では比べてみましょう…檻の中にはまだ狼さんが残ってるんですよ?
リーダーが出てきたって事は。檻の中に配下が残っているのは当然の事であり。
その数…ひい。。。ふ………一匹?
あれ、一匹だけのようです。
なーんだ。たった一匹だ…け?
なんて喜ぶのは早計。
お供が一匹だけ?
リーダーがあの強さで?
嫌な予感がこの身に危険があるという事を本能レベルで知らせています。
危険感知スキルって奴ですよ。Warningワーニング。
前に相手をしたオーク3匹なんて目じゃないぐらいの危険レベルです。
同じEランクだっていうのに。この差は一体…
いや…Eランクに+評価されていた種族でしたっけ?
さて、状況は最悪です。
なんといっても…挟み撃ちっていうのは怖い状態。
それでいてあの速度だ。
目を離せば弾丸のように飛んでくるスキル持ち。
さらには鱗が削れた事から分かるように、自分にダメージを与えられる攻撃力も持っている。
速度と攻撃を両立していて尚、この闘技施設においての戦闘経験者となれば。
グラディエーター初の魔物な先輩さんと言える相手なのですね。
胸を借りてお相手願いましょう。
と言っても、どうしたものか。
速度勝負には持ち込めませんし。
かと言って動かなければ良い的です。
一定の距離を取りつつ、自分の周囲をぐるぐる歩き始める狼達。
うーん、これは狩られる側のポジションですな。
こうして確認してみると、敵の数が2匹というのが何とも引っかかる。
アートウルフリーダーは常に視界に入れておくとして。
直にでも襲ってこない理由として考えられる事。
それは初撃を回避されたが故か?
そして今も余裕の構えで睨み合いをしている蛇を警戒しての事か。
もしくは…先程の突撃にクールタイムが存在しているというのもあるか?
もしもアレを連続で使える。配下のアートウルフも同時に使って波状攻撃してくる。
そして自分がソレを完全に対処出来ないという事がバレたら。即ゲームオーバーです。
さて、そんなこんなで状況が動きました。
周囲を回っていた狼達は2匹一緒に正面にいます。
あれ? 挟み撃ちじゃないの?
疑問が沸き上がったその瞬間。
首筋がゾワゾワ危険信号をあげました。
密着するアートウルフとそのリーダー。
魔力の高まりを感じます。
その視線は蛇を真っ直ぐに見据えており、一瞬の隙も逃すまいと前傾姿勢となるリーダーさん。
あ、これヤバイ奴だ。
それは攻撃系スキルの前準備なのだろう。多分だが先程の体当たりの筈。
でも距離的に最初の状況とは距離が違う。
こんな至近距離で放たれたら…ほぼ防げないね!
いや…逆に考えるんだ。
不意打ちとは違うし、前準備も察知可能。
コレを防げたら勝てるんじゃね?ってね。
どう考えても一発屋な技ですし。
種が明かされれば発動前に防ぐ事も選択肢に加える事が出来ます。
リーダーと配下とで配下の方がお手をするかのようなポーズでリーダーをペタペタ触ってイチャ付いているように見える行動ですが…
その実アレはリーダー側が配下を密着させる事により魔力を高めています。
となればあの弾丸のような速度は配下よりサポートを受ける事によりあの速度が出せるってスキルなんです?
となれば…覚悟を決めますか。
相手さんの準備も宜しい様で、後はタイミング次第。
それにしても相手さん。魔物にしては慎重な相手ですよね。
そういう方が生き延びる率は高いんですけども。
こんな大技をガンガン使う辺り、後先考えない豪胆さも持ち合わせております。
そんな相手さんがもう一押しの所で踏み込めない理由。
やっぱり…自分が怖いんですよね。うん、分かってます。
自分の中で確定です。この技を防げれば自分の勝利です。
蛇の回りをぐるぐる狼が回ってたのって、格上の回りを格下が回るっていうアレだったんですよ。
ふんすっ! どこからでもかかってくるが良い。
ゴガンっと大地にタマゴを振り下ろし音を鳴らす。
相手さんが踏み込めない理由。
それは自分のタマゴが盾となり、蛇を攻撃する部位が隠れていた事に有り。
それを廃した今、リーダーさんが突っ込んでくるのは必然であり。
タイミングを把握した自分がそれを受け止める事もまた…
ガゴンッ…と重厚な音が狼を跳ね飛ば…す?
その瞬間自分の視界も反転した。
うっひょぉ…弾として飛んできたの配下の方じゃねえかい…
アレだよ。部下は逃げ回ってリーダーの補佐とばっかり思ってたのだが鉄砲玉ですかい!
この一瞬、何がどうして視界が反転したのか…
理解は出来なかったが不味い状況なのだけは分かっている。
自分の体は地にあらず。浮いておりますよ。蛇さん飛んでおりますよー!
リーダーが健在です! 配下さん吹っ飛んでますけどリーダーが健在です!
これは、アートウルフリーダーの攻撃だ…部下を弾丸のように飛ばした後に。
自分の攻撃がその部下を横殴りに体当たりする事を選択したのを確認した直後。
その隙に足元。つまりタマゴ部分へリーダーさんが体当たり。
頑丈なタマゴに感謝か? 打ち上げられたダメージは殆どない。
しかし打ち上げる力を込めたリーダーの一撃にて今の自分は宙を舞っている。
逆らう事はせず、力の流れるままに体を丸くし回転運動を付け、一瞬だが視界に映ったその先は…
着地狩りって奴ですね。分かります。
リーダーがあの弾丸のような突撃を自分に向けて再度行おうと力を溜めているのが分かります。
単品でもあの速度が出せるというのは…別に不思議でもなんでもなかったですもん。
うーむ、万事休すか?
というのにはまだ早い。
成功するか否か。自信はありませんでしたが使う以外に選択肢は見当たらない。
自分にはスキルとして相手の動きを止めるスキルが知識として残ってる。
であるならば?
『蛇眼』発動。
おう。オウ! ちょーしこいてんじゃねーぞコラー!
亜竜様に喧嘩売ってんじゃネーゾコラー! ザッケンナーコラー!
ナンオラー! スッゾコラー! わんわんお! わんわんお!
相手の神経に向けての魔力を込めた睨み付け攻撃。
なんとなく凄んだ方が効果があるというのは夢知識。
記憶に残る、親っぽい竜の威光をイメージして叩き付けるかのように発動。
その瞬間。相手も突進スキルの発動瞬間だったのは狙い通り。
飛び掛かろうとするモーションから動作に移る際に『蛇眼』の効果が現れたのだろう。
狙いを外したリーダーさんの突進は勢いそのままに地面を擦り、激しい回転運動を交えながら自分の真横を転がり過ぎて行きました。
無論、過ぎ去るその瞬間にテールハンマーを打ち込んでおきましたから起き上がる事はもう無いでしょう。
フッ…上手く行ったぜ。完璧である。
と言った所で我が勝利。タマゴと共に!
…なんて事が進む訳が無いんですよね。
リーダーではない方のアートウルフなんですが。健在です。
説明しましょう。アレ等の特性は知ってますし。
なんというかコレがアートウルフリーダーとの戦いにおいて面倒な事なんですよ。
一種の集合意識体と少し前に説明してましたが所謂アレです。
簡単に説明すればアートウルフリーダー戦。第2ラウンドが始まります。
相手さんに何を受けたかの知識が残ったまま…配下のアートウルフに記憶が引き継がれ。
そのアートウルフがリーダーと化すのですから。
追加情報で、その身に受けた状態異常の耐性も得られてる可能性が有り。
安全牌を選ぶなら『蛇眼』はもう使えませんな。そして今の自分に体力的な余裕は…もう残ってません。
いやあ、本能が知らせる危険信号がレッドゾーン的なイメージで反応しております。
前リーダーと出会った時よりもそれはもう激しく。
ゾワゾワからゾクゾクに変わってますよ。
その敗北した記憶と魔石を受け継いだ魔物の佇まいはE+ランクの魔物とは思えませんな。
さらなる+評価を加えて++評価を付けても良いぐらいです。
もしかしてDランク評価にまで上がりましたか?
まあそうなったら勝ち目がさらに遠のきますけれども。
不味ったな。配下が一匹だけって所をもっと気に掛けるべきだった。
最後の一匹。あの巨体。配下でさえもあの能力。
全ての得られた情報を合わせるならば
人間の知識が加わって効率的に育成され続けたアートウルフという可能性がある。
それも今のが最後の配下だとしたら…もっとヤバイかもしれん。
何がヤバイかって? 進化条件満たしてるんだもん。
戦闘中に進化して逆転勝利なんてされたら自分…完全に敵役じゃないですか?
こんな相手に出会ってしまうなんて…
悠長に眠って最後に対戦を回してもらう事なんかせずに早めに戦って、
手早く終わらせたらもう寝る感じにしとけば良かった。
後悔するも逃げ道などない。なのであれば…やるしかないよねぇ。
互いに警戒しあう者同士。
蛇と狼が睨み合う。
視線を逸らした側が負ける勝負という訳でもないが、あながち間違いでもない。
反らした瞬間、自分が攻撃されて負けちゃう可能性が濃厚ですからね。
そんな自分はどっしり構えて余裕を見せつつじりじり近寄る蛇さんです。
相手の中では自分という存在が大きく見えていると踏んでのハッタリですが効果は有り。
その証拠に狼側は、一定の距離を保ったまま。
じりじりと蛇とは逆の方向に狼が後退していきます。
しかし油断はならぬ。この程度の均衡が崩れるのは一瞬。
その一瞬後に倒れているのは自分。
二度と目覚める事はありまえせんでした。なんて事になるのは御免ですし…
その一瞬がやってこないように、全身全霊の集中力をもって挙動は逃しません。
そんな状況で意を決し、均衡を崩すのは…蛇側ですよ。
待ってばかりなのは性に合わん。
どうせ危険…危険の何を選んでも危険があるのだ。
先に動いて掻き乱してくれよう。
行動を模索した結果。なんとなく思いついたタマゴの殻に籠る戦法。
出入り口の穴部分を大地に押し付け体をバネのように扱い大ジャンプ!
ジャンプ攻撃ですぞ! びよよーんとね。
アートウルフの新リーダーもこれには驚いたようだ。
効果的な対空攻撃手段を持たない狼は避けの一手を選んだ。
着弾地点から猛ダッシュして距離を置く狼さん。
それを確認しつつの、着地してから転がる攻撃~!
良い具合に転がる事が出来ています。
これはスキルとして『ころがる』でも覚えたか?
ゴロンゴロンと加速していくタマゴは狼に向かっていく。
この速度は気持ちいい。爆走できますぞ。楽しい移動手段を獲得しましたな。
しかし一度は驚いたものの転がってくるタマゴを見て一度は狼自身が跳ね飛ばしたタマゴ。
その程度…何の事もない攻撃だと向かってくる狼さん。
それこそが狙いなんですよねー。
互いに衝突するその瞬間。
狼側は再びタマゴごと自分を打ち上げる算段だったのでしょう。
ぶつかる瞬間ってのは分かってるとタイミングを変えたり流れを変えるのも…むずっかしかったー!
ズゴンッ…タマゴは急に止まれない。
どんだけ重いのでしょう、このタマゴは?
引きずり回す事には慣れてましたが、中に籠ってしまうと行動が大きく制限されちゃう訳だ。
ですが跳ねる事が可能だったようで、ある意味狙い道理に事は進む。
いやあ、危ない危ない。狼さんのお腹に蛇の体をぐるぐるまきつける事に成功ですよ。
本当なら首にまきつきたかったんですけどねー。
相手さんが噛みつく事を考えずに体当たり勝負を挑んで来てくれたので何とかなったわー。
それでも相手さんの方がぶつかる力は強かったお陰でヒヤヒヤものでしたが。
体が千切れ飛ぶかと思いましたよ。
咄嗟に自分から跳ねたお陰で打点をずらす事に成功。
体当たりをそのままに受けての勢いだったならと思うと…
まあ…ココまで来たら後は圧迫しちゃうんだぜ。
体を巻き巻き~足の自由を奪っての尻尾部分が余りましたな。
どうよ、狼さん。自分の尻尾重いでしょ?
アートウルフリーダーの背に自身の重量物であったタマゴを寄りかける。
片側に寄ったタマゴの重量をその身に受けてバランスを崩す狼は全体でみれば自分より体重がありそうだが。
ミシミシッ…
踏ん張る狼が片側に掛かる重量により大地に倒れ伏すのも時間の問題。
その筈だった。この時点で蛇の勝利は揺るぎない筈だったのだ。
ザグッ…
何かが刺さる音と奇妙な触感が蛇の体の動きを鈍らせて…
その一瞬を狼側が逃す筈もなく、弾かれたかのように蛇の拘束を脱する事に成功した。
カラダが痺れて…う・ご・か・な・い?
…なんてこった。何かされたのか?
違和感の元に視線を向けてみれば…有り得ないモノが自身の体より生えていた。
短刀である。紛うことなき人工物であった。
…ほえ? まじで?
狼さん武器使うの?
グラディエーターだもんね。
仕方ないね。隠し持ってたのー?
でも狼の体でまきつかれたあの状況…刺せる訳ないよねー。
もしかして念動力とか使えたのかー。油断したわー。
なんて…冗談めいた考えが出てくる程に思考がヤバイ。
咆える狼が自分に向けて歩みを進めてくるのが分かる。
動けない。
距離を置いて狼が蛇を観察しているのが分かる。
蛇の体は動かない。
体を蝕む何かが毒であるのか魔法による拘束なのか分からないが。
とにかく動く事は出来ない。
あー、大口開けて狼が迫ってくる様子が見えますよ。
スローモーションです。アドレナリン的な何かがブースト状態で脳内に沸いて出来てますかな?
あーあー、第三者からの介入だなんてルール違反なんじゃないですかねぇ?
そんな事するとー。怒りに狂ったヨルンさん…何をするか分かりませんよー?
っとー、ヨルンって覚えがありますな。
そうそう、ヨルンが自分の名前でしたよね。
まあ…狼さんは悪くないよ。
悪くないけど…ゴメンネ。
ここで死んじゃう訳にはいかないんだ。
名前を思い出したヨルンに不思議な事が起こった。
少しだけ体が軽くなる感覚を覚えたその瞬間。
狼の顎が蛇の頭を噛み砕こうと閉じる瞬間でもあったが。
まるで無くなった体力が引き上げられたかのような。
レベルアップ時には最大HPが上がるとかあるじゃない?
その上がった分だけのHPが回復されたかのような。
なんというか、気休めばかりの回復だったけれどもそのお陰でちょっとだけなら体が動きそう…
つまり、最後の足掻きが出来るぐらいにはね?
その僅かな足掻きで何が出来るって言ったらアレよ。
攻撃も出来ない。防御も出来ない。逃げる事も適わないっていうのならば。
ぐぽぉーっ…ズリズリズリ…
んー、アレだね。お口の中、くっさいなー。
歯磨きしてるー? 舌磨いてる~?
まあ狼さんだし出来る訳~ないよねー。
あーでも…もうお口の中じゃないか。もっと奥だよねー。
短刀による謎の拘束を免れたヨルンの現在地は狼さんの中でございます。
簡単な事ですよー。体が何とか動くようになったので何が出来るか考える事もせずに、
アートウルフのリーダーさんの狼口の中に蛇の頭を強引に捻じ込んだのでした。
そのままぐいぐいと突っ込みます。
ほーら、食べたいんでしょう?
遠慮はせずにー、まるっと頂きましょうよ~?
ヨルンさんお腹の中でお昼寝大好きです。
ほれほれ、顎が閉じれない?
ならば此方から進んで差し上げましょう。
ぐんぐん進めー、ガンガン進めー。
奥まで進めー、入口狭いぞ押し広げろー、拡張するのだー。
蛇の頭が穴の奥深くまで突き進むのじゃー。ずっぷずっぷ! 前後前後はしませんぞー!
体格差がちょっぴり無茶なレベルですが…為せば成るでしょう!
体液に塗れて潤滑十分。
鱗もまだ自分が子供の体とだけありプニっとしていていますし。
なにせ短刀が刺さるぐらいの柔肌です。
少なくても観客席側? そんな距離から投擲? されて突き刺さるぐらいの柔らかさですし。
まあ、そんなこんなで狼側の胃袋に到達ですねー。
胃の中ですし暗い筈なのですが視界もクリアで胃カメラ映像直接見てる感じですよ。
中にはナニモナイようですが人間に管理されてるならば戦闘前に食べてるなんてあり得んか。
このままお昼寝モードでも良いのですが、
流石に眠ってしまって胃液浴びての、もみくちゃにされればグズグズになって死んじゃいそうですからね。
こうまでされても動く気配のない狼さんは、蛇の体で感じられる限りに、
痙攣していて尚、倒れこんじゃってますし、意識も無くなった頃ですかね。
であるならば胃カメラモードも終わりにする頃合いでしょう。
腫瘍無し。出血なし。つまり…異常なし!
健康診断を終えたヨルンは蛇の体を引き抜くべく努力する。
このまま抜け出せずに一生を終えたなんて笑い話にもなりませんしな。
尻尾のタマゴを支点とすれば抜け出す事等容易い!
タマゴごと飲み込める相手だったならば…素直に諦めるしかありませんでしたけれどね。
暴れていた狼さんは既に力無く横たわっており、ずぷりと汚れてしまった蛇が狼さんの中より顔を出す。
だらしなく舌を垂らした狼さんは戦闘不能でしょう。
となればこの勝負はヨルンの勝利ですな。
んん? 文句はあるまいて?
体に刺さった短刀を自らの口で引き抜いて天高く掲げて勝鬨を上げる。
こいつを放った不届き者は誰なのか。その処遇はどうしたものか。
犯人は分からず仕舞い…戦闘に必死だったので、ヒントも何にも無く見当もつきません。
その辺は施設側に任せるしかないのでしょうか?
短刀については…飼主さんに預けるとしましょう。
貴族事情も何も分からない一匹の蛇がどうこう探った所でややこしくなるだけだもの。
しかしまぁ…今後もこういう事があるのなら。ちょっと考えねばなるまいね。
緊張の糸が解かれたヨルンは念願の狼抱き枕で眠りにつくのです。
ぐるぐるに巻き付いてるこの姿を傍から見るならば、
今まさに狼側が捕食されるんじゃないかの状態に見えるのではないでしょうか?
そういえばトドメヲサスノダーの声も今回は聞こえませんな。
客層が違うからですかね~?
ダメージから来る眠気も限界ですし…これ以上難しい事を考えるのは難しい。
素直に子供はおやすみなさいって事ですよ。
檻が開こうが誰かがやってこようが狸寝入りです。
慌ただしく人の出入りが激しくなったり絡んだ蛇と狼を持ち運んだりと一悶着あったようですが…
微睡んできた蛇の意識が全て拒否しておいたのでイベント情報が不足してしまいましたな。
いつもの事です。この辺の情報を纏めてくれる…何だったかな。
何かが傍にいてくれたような覚えがあるのに。
それがいないとなると、自分がやるしかないんだけれど。
眠気には勝てなかった…無念。
* * *
どこかの世界には闘技場に颯爽と現れ呪文を唱えようとした魔物の口を塞ぐ商人がいるそうな。




