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寝る蛇は育つ

 夢の中では一匹の蛇が他の魔物と対峙している所だった。

 蛇側は自分だねー。という事がなんとなく分かっていた。

 ソレは小さい蛇だねー。リトルスネークって奴だねー。

 魔物のランクで言えはFで一番低めだったかしら?


 とりあえず魔物が二匹対峙してるって事は何が起こるか察しは付く。

 相手側は狼のような魔物で蛇さんに飛び掛かってきましたねー。

 あっさりと蛇さんは狼さんのお口に咥えられ、そのままもぐもぐごっくんでした。

 

 はい1回目ですね。今回もダメだったよとか聞こえてきましたけど…


 場面が切り替わり同じようなシチュエーションで空中から鳥さんが向かってきています。

 カウンター気味に立ち向う勇敢な蛇さんは力及ばず上空高くに連れ去られ、高所から解放されての。

 動かなくなりましたな? 戻ってきた鳥さんは蛇をそのままお腹の中に招き入れたとさ。


 ほい。2回目でした。(HP残量5割の筈?)…ふむ?


 おっと今度はオークですな。圧倒的な体格差です。

 なんというか無謀に正面から挑んでおりました鈍重な相手でしたし

 良い具合に回り込んだり攻撃を回避してたりしましたが、

 足首の肉を噛み千切った辺りで捕まっちゃいましたね。

 そのまま尻尾から噛み千切られております。

 うわぁ…嫌な事思い出したわー。

 なんでオークなのよ…常識ねぇなぁー。


 という訳で3回目ですか?(呪いの力が止まらない?)……むむ?


 あれは、蜘蛛さんいっぱいですねー。石に擬態していたその蜘蛛は不意打ちに成功。

 わしゃわしゃ音が聞こえそうなぐらいに蛇さんは集られて暴れ続けています。

 身動きが取れなくなった辺りで詰みです。

 まあ…あんな状態になったら終わりでしょう。

 蜘蛛糸でぐるぐるに巻かれて巣へと運び込まれてその後は割愛。


 うむ。4回目。(そろそろ飴が必要そうだ)………やっぱり何か聞こえます。


 今度はゴブリンですかー。手には粗悪な金属製の剣ですな。青銅辺りですか?

 見た所、血錆やら何やらで切れたもんじゃなさそうですけど結構な重量がありそうです。

 得意げにそれを振り回すゴブリンは蛇を見つけて襲い掛かってきましたな。

 蛇さん逃げてー♪

 今回も死ぬかなーっと思った所で意外な逆転劇。

 華麗なるサイドステップにて振り下ろされた剣を避けると、魔力を込めた尻尾をゴブリンの喉笛に突き刺したではないですか。

 初勝利ですな。おめでとうございます。


 気を良くした蛇さんは自分よりちょっと大きめの虫っぽい長物さん。フォレストワームでしたっけ。

 続けてやってきた魔物に挑みました。

 結果は惨敗でしたね。無残にも頭を噛み砕かれて敗北です。


 5回目ですな。(精神的ダメージ軽微)……アレで? グロテスクな光景も今更か。


 犬顔の2足歩行のコボルトを発見しました。 

 ゴブリンよりは強敵ですけど、なんというかコボルト側が引いてます。

 蛇が苦手なのでしょうか? あっち行けの仕草で追っ払っています。

 蛇側も困った顔して渋々と引き下がりました。

 うむ。平和ですなぁ。と思った矢先にコボルトの頭が吹き飛びましたよ?

 何かと思えば高ランクの魔物がお目見えです。

 そのまま蛇さん隠れておけば良かったものを、下手に動いてガサガサするから。

 敵の正体が判断付く間もなく蛇は爆裂四散。ワザマエッ!


 これで6回目ですか。(精神に影響無し 耐性が付いてる?)…もうつっこみませんぞ。


 蛇さんは蜥蜴さんを発見したようです。

 挨拶は毒液ぶっかけです。

 ベトベトにされて毒の痛みに悶えて身動きの取れなくなった蛇さんは怒り心頭。

 気合で暴れる蛇を見て、距離を置く蜥蜴は焦った様子でカサカサ音を立てて木を上る。

 怒りの火が消えぬ蛇は気合で体を動かし蜥蜴を追って木を登り、登頂成功です。

 対峙し逃げ道を失う蜥蜴さん。意を決した蜥蜴は蛇に飛び掛かる。

 しかし何の偶然か、毒によって感覚の鈍った蛇は自ら高所より落下したではありませんか。

 対象を失ってバランスを崩した蜥蜴は木にぶら下がるも、勢いが付いた所為か音を立てて枝が折れた。

 2匹揃っての落下する様は笑いでも取れそうなぐらいな流れでしたが当事者達は必死です。

 痛みにもがく蜥蜴と違い、慣れていた蛇はこれ幸いと蜥蜴にかぶりついたとさ。


 あれ、勝っちゃってますな?


 しかし蜥蜴の味が今一つだったらしく毒のお陰で体調は悪くなるばかり。

 口直しに何かを探していると、可愛らしい兎さんを発見したではないですか。

 アレも魔物ですね。頭部が恐ろしく硬いハンマーラビットだかいう種です。

 本能赴くままに突っ込んだ蛇さんは無残にも返り討ち。

 頭部を叩き潰されてその一生をまた終えたとさ。


 7回目。8回目、9回目とまだまだ死んでます。


 変な声も聞こえているが精神状態がどうのこうの、スキルを与えるだのなんだの言ってましたね。

 どうにも蛇さんに何か干渉するモノが別にいるようです。覚えはあるのだが。はて?

 蛇さんの方も死んでいく内に、蛇としての動きを学び、関節部分に巻き付いて圧し折れるぐらいには力がある事も覚え

 スキルとしてあれやこれやと開眼していく様は見ていて面白かったものです。

 しかし相手取る魔物もスキルを持っている訳ですから一筋縄ではいきません。

 何せ、手の内を見る暇もなく蛇さんの意識が刈り取られている事も少なくありませんでしたからね。

 ランクが格上の相手を見誤り、成す術なく完全敗北な蛇さんは学習してもハードモードには付いていけずと。


 そして10回目。


 魔法的な行動も覚えてきたらしく、相手の体を麻痺させたり静止させたりする能力を得ていた。

 まるで別人というか別蛇のように同ランクの魔物帯でなら勝ち越し気味となっている。

 そして動きを止める状態異常を使えるようになった蛇は調子にのって1ランク上の魔物へと挑んだ訳ですが。

 動きを止めても攻撃力が足らず首を圧し折ってやると意気込み憎きオークの首に巻き付いた所、

 善戦するも引きはがされてまたもや尻尾から噛み砕かれて蛇はオークのおやつとなった。


 いっぱい…沢山…シンデイル。流石にオークに食われるのはダメージが大きいようだ。


 そのお陰か精神的に病んでしまった時期が発生。

 憂さ晴らしするかのようにゴブリンやコボルトを狙い

 中途半端に生かしたままの人体実験もとい魔物実験を繰り返していました。

 どの程度で死ぬかな? どんな叫び声をあげるのかな? 何か発見ないかな?

 得られた知識の中にはそれなりに役立ちそうなモノもありましたね。

 魔物についての魔石関連もこの時に知る事が出来たようです。

 しかし蛇さんにとっては狩った相手を残さず食べるのが流儀となっており、さして気にもしてなかった様子。

 持ち運ぶ事も蛇の体では難しいですからね。

 

 そして様々な種類へ実験を行い、蛇は最後に崖から飛び降りやがりました。

 自殺した場合にどうなるかの実験だったようです。


 蛇さん自身の耐久力テスト中。


 自傷に自殺を繰り返しておりました。

 傍からみたら正気を疑うレベルですな。

 ついにおかしくなったかな?

 と思ったら3度目に死んだ辺りで平常運転に戻ったようです。


 調べて知識を得た事で満足ですな。気分良く獣道を進んでおります。

 そして調子に乗った蛇さんの末路は高ランクな魔物の手によって打ち砕かれての流れがお約束ですね。


 …まだまだ続くよ死亡シーン集。

 慣れてきたと思えばまた死んでの。この蛇さん弱い?むしろこれが普通?

 短いような長いような夢の中で行われている過去に起きたような出来事の終わりは未だに見えず。


 なんとなく死亡数を数えていましたが、数えるのも面倒になりました。

 面倒になった所で、あえて触れてなかった一番に気になった部分。

 蛇さんを殺した相手がもれなく全部消滅している謎が残される。

 なんかこの世のモノとは思えない程に強大で凶悪な姿の蛇が現れて食らい尽くすみたいな?

 呪いの力がどうこうと聞こえていましたし。

 思い出せそうで思い出せないこのモヤモヤがどうにも…もどかしい。


 考えるも夢から覚めた影響か、なんとなくでしか覚えてませんし。

 いつの間にか起こされていたお陰で、また殺されるんじゃないかと警戒モードに入ってしまいましたよ。


 そんな自分を見て飼主さんが驚いてました。

 すぐに気が付いてキョロキョロと首を振り辺りを見渡して首を傾げる演技を敢行。

 悪い夢でも見てたか? なんて心配されました。

 これから戦わされるのに変に優しく心配されても困るんですが。

 どういう意図があって戦わせているのか全てを理解した訳ではないので警戒心が強く出てしまいますよ。



 しかし…夢の中の蛇も散々よね。

 自身より高いランクの魔物から逃げられずに追い詰められて死んだり…

 不意打ちにて訳も分からず殺される危険が常に纏わりついてました。

 死ぬ度に学習して数は減っていってましたが。

 そこまで考えて…ふむ。何度でも死ねるのか。なるほど。


 とりあえず、実際に数えた数以上にも死んでいる様子がありましたな。

 2桁で足りるんでしょうか?

 それが自分であると理解していたが故に。

 今の自分の経験はあれだけの死を乗り越えたが故に持っているものだったと理解が出来た。

 この妙な余裕も所謂、死んだとしても問題無いという体験からくる余裕なのだろうか。


 しかし夢に出ている自分。この蛇さんは別の種族であり。

 今の自分はリトルスネークではなくサーペントエッグなのである。

 死んだらそれまで…という可能性が高い以上はしっかりと生き延びる手段を選択しなければならぬ。


 決意を新たに与えられた木の実を丸ごと呑み込むと、

 飼主は自分の膨らんだお腹部分に手を置いてポンポンと叩き始める。


 フッ…飼主はもう木の実を丸ごと呑み込んだとしても怒らない。

 そして無理矢理吐き出させられて自分もストレスを感じる事はない。


 なあに、簡単な事だった。

 木の実を殻ごと消化出来る事を証明したら驚かれはしたものの、

 消化出来るならそれで良いかという事になったのだ。

 

 それにしても食べる…行為に関するスキルがあったような気がするんですが。

 中途半端に叩き起こされた所為で忘れてしまいましたよ。

 まあ食べてればそのうち思い出すでしょう。

 しかし食べる事を考えていたら、なんだか物足りなさが追加されました


 飼主っ! もう一個木の実!

 ギャースギャースと騒ぐと渋い顔をして一つぐらいは木の実を追加してくれます。

 飼主優しい! 飼主最高!

 キュイーキューイと猫撫で声を上げるとお腹をさすってくれます。


 さあて、お腹も一杯になりましたし夢の続きを…

 しかし数時間後にはまたグラディエーターもどきが始まります。

 眠気を覚ます為に動くべきか。むむむん。


 そうだ、お次の相手はなんじゃろな?

 前回のオーク戦は相手がドジっ子だからなんとかなったもんだし。

 次の相手は何を基準に選ばれているのか。今の所、複数戦ばかりなのも気になる所。


 そもそもにこの闘技施設とやらのレベルはどんなもんなんだろうか。

 逃げられない以上は、暫く続けるつもりですし…知っておきたい所よ。

 ぶっつけ本番で何が出てくるかのドキドキ感を楽しむのもまた一興なんだけどね。


 その言葉が蛇の最期の言葉だった。

 といった事にならないように頑張るつもりですが…何が起こるかは分かりませんし。

 飼主さん、何とかなりません?

 喋れないので上目使いに顔色を伺いますが意図は思うようには伝わらず。


「もっと欲しかったら戦って来なさい。勝ったら食べさせてやるぞ」


 どうにも食い意地が入った蛇と自分は認識されておるようです。

 まあ…実際そうだし仕方ないね。

 一応大金はたいて買われた身ですし我が儘は言い辛いですけども。

 その払った分の価値が意味する所ぐらいは知るべきかな?


 何より今は優先する目的も定まらず…

 何をして良いのかも何が出来るのかも分からずな所ですし。

 折角グラディエーターみたいな事をしているのだ。

 チャンピオン的な位があれば目指してみるのも悪くないね。


 戦闘経験だけは何故か豊富なのだ。可能性はあるだろう。

 そうと決まれば沢山食べて強くならねばならぬ。

 

 そんな意思が伝わったのか飼主が思い出したかのように袋を漁り、

 眼前にカラフルな石っぽい物を差し出してきた。

 ふむ。所謂アレですな。魔物の中で生成される石ですな。


 出所を知ってしまうと取り込むのに多少の抵抗があります。

 モノにもよりますが、何をもって魔石というのか分かりませんがとにかく種類が豊富なんですよ。


 魔物にとっての魔力やスタミナ的な予備電池扱いの物もあれば。

 排泄物扱いの物もあります。どこかしらの穴から出るんですよね。

 他にも体を千切ったらその部分が魔石ですっていうのもありますし

 魔物としての核として心臓とか脳味噌部分扱いのモノもある。


 飼主さんの知識はどの程度なのでしょう?

 不思議そうな顔をして見上げれば説明してくれます?


「ほら、お前の戦利品だ。食うならコレを食え。」 


 さいですか…自分の戦利品でしたか。

 ふむ。戦利品とな?

 勝ったから貰えたんですかね?

 今一度確認してみましょう。


 ひいふうみい。4つの緑色に3つのピンク色ね。

 形は丸っこくて…ええと。この綺麗さと数には覚えがあります。


 ゴブリン4匹にオーク3匹のモノですね。

 それ等の魔物の核みたいなもんです。


 ………ああ。察しました。


 アレ等は自分と戦った後に処分されたって事ですか…

 こんな事になるなら全部食べてあげた方が良かったのか?

 いや…処分されたとか、そう決まった訳じゃありませんし。

 …魔石だけでも頂いてしまうとしましょうか。


 一つずつペロンとしてゴックンとな。

 程よくお腹も一杯になりなんとなく満足。

 呑み込んでいくうちに足りないモノが少しだけ補われた感覚がプラシーボ効果で沸き上がります。



 うおォン!…オレは蛇の火力発電所だぁー!



 そうそう、足りない物の一つにこの感覚。

 普通の食べ物だけじゃ物足りないと思ってたのよね。

 プラシーボ効果というには実感がありすぎるので…

 漲る力は確実に自身を強くしている…筈!


 グラディエーター蛇はレベルアップした。

 テーテケテテーン。とセルフ効果音。


 この手のタイプの綺麗な魔石ならば食べてしまえば魔物として強くなれます。

 そうじゃなくても疲れが取れたり傷が治ったりと回復効果もありますからね。

 深い事は考えずに得られたご褒美に感謝しましょう。


 強さも数値化できりゃ分かりやすいのに、してくれる方がおりませぬ。

 せめて強いとか弱いとかアバウトなものでもいいですし。

 何かグローバルな基準や指標はありませんかねー。

 飼主さんに視線を送ります。チラッ…チラッ?


「ホラ。水だ」


 いや…嬉しいですけど、そうじゃないんですよ。

 ぐいぐいとポンプのように銀色のお皿に溜まった綺麗なお水を吸い上げながら考える。

 やっぱり何か足りない気がする。

 思い出そうとするも食べて飲んでと済ませれば、眠くなるのが赤ん坊の習性です。

 魔物ですし、どの辺までが赤ん坊とか大人子供とか分かりませんけども。


 いよいよもって眠気の海に沈みそうなので自身の力では抗う事は不可能。

 車輪の付いた箱の内側から全力で押した所でなんの意味も無いのですよ。

 外側から押し戻して貰わないとね。


 そんでは飼主~始まる前に起こして下さいな。

 寝る子は育つなのです。むにゃむにゃ。

 安全な時に眠る。これ、野生に生きていた時の鉄則です。

 飼主が一体どういう人物なのか。

 自分が眠る事はとりあえず良しとしたようです。

 薄れゆく意識の中。


「試合は最後に回してくれ」


 なんていう言葉が聞こえてきたので少しぐらいは甘えられる面はあるようです。

 であるならば、暫くの間は従ってあげる事にしましょうか。

 少なくても鞭のみの関係じゃなさそうですからね。



   *   *   *

普通なら飼主を女キャラより選ぶ中、隠しで男を選べてほもぉな展開になるゲームがあった覚えがあるのだけど。うろ覚えです。

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