蛇奴隷って感じですか?
83話を割って投稿した事に伴う修正をしました。
こんな狭っ苦しい中にはいられない。
殻をぶち破れば、未だに狭く、何かが自身の邪魔をする。
意識も虚ろで体の自由も効かず、これは夢の中といった所だろう。
だけど何というかこの光景には覚えがある。
眼下では何かが大地を這いずり回り、空を飛ぶ羽虫がチクチクと体に針を刺していた。
しかしながらにそれ以上の事は分からず、自身に何をされようが構いはしない。
そんな事より重要なのは、それから先が全く無い事だ。
同じ場面を何度も繰り返される夢の中。
壊れた動画のデータが中途半端にループするかのように、
断片だけが次々と自身の脳裏に浮かびあがり続ける。
「まさかこんな状態になるなんてね」
小さき羽虫は蜂の様な姿をしていた。
「一体どういう状況なのじゃ?」
これもまた小さき人だが、その蜂と同じぐらいの大きさだった。
「我々では手に負えません…です」ぷるりぃ…
プルプル動く者も何かを言っていた。
スライム娘だろう。何となく覚えている。
「本来ならアレが私に使われてた訳か」
蜂は宙を舞い、その姿が視界に入ればやはりどこか覚えがあるような気がした。
「話が違うではないか…アレは流石に不味いのじゃ」
何度も繰り返される夢の記憶の中で、人っぽいのが毎度の様に焦っている。
良くみれば、その体勢は土下座のような姿勢であると分かったが、
その上に蜂が座っているのだから、その様子はなんとも奇妙であるな。
「あの大きさは規格外というか。記憶にはないです」
そして発言をする葉っぱ。何か蠢いている足。見るからにな魔物。
しかしながらに可愛い部類に入るでしょう姿。
これもまた他の者達と一緒に、見下ろしている自身を観察しているようだ。
「私の知識によるとアレはワールドーイーターという魔物のようです」プるッ!
幾重にも繰り返し耳にする事になった単語。
プルリンと震えるスライムの言葉は何とも記憶に叩き込まれる名前の一つ。
「で、アイツの守護者は?」
「何の反応もありませんな」ぷるんっ…
蜂とスライムは何かを気にするかのように辺りを見回し、
ヒビ割れたかのようなノイズが夢の中で記憶を断裂させた。
「いつかの魔王アスピクが暴れてた時みたいな絶望感ね」
頭痛こそしないものの、何かが抜け落ちた感覚というものは何とも不思議な感覚だ。
蜂からの言葉に、魔王とかアスピクと言う名が繋がっているがそれは多分目の前のアレの事だろう。
「ふむ。我と比べるか。嬉しい事を言ってくれるではないか!」
デカイ蛇。物凄く覚えのあるその姿がアスピクである。
断言するが、何だったかな。この後が、それ以外が全然覚えていない。
夢である事を理解しているから仕方ないとは思っているのだが、
思い出そうとすればその瞬間に意識が飛んでしまうのだ。
「いや、褒めてないけど。アンタならアレ止めれる?」
「ンなの分かるか! いや…やってみなければ分からぬ!
しかしヨルンが相手となると…ぐぬぬ!」
なので何も考えずに流れに身を任せて得られる情報といえば2匹の会話のみである。
とりあえず仲は良いようだ。何だか嬉しくなったが、悲しい思いも沸き上がる。
「ま、とりあえずは情報収集よ」
そうそう情報集だ。蜂の言葉に気合を入れるも、それをすれば目を覚ましてしまう。
何とも不便な夢の中。記憶の深みに感応するように意識を流しどの程度まで潜れるのか。
探れる終焉は近いと感じるが、これがまたどうにも納得がいかない最後なのだ。
「一体どういう事なんじゃ…なんでこうなったのじゃ…」
打ちひしがれる人間の体勢は形として綺麗な”orz”
「それは我が知りたいぞ!魔人よ!」
デカイ蛇が普通に喋りつつ、蜂はその”orz”に蹴りを入れる。
「そうよ一番知ってるのはアンタよ」
遠慮も無しに何度も何度も尻を叩く蜂はドSですね。
「アスピク様。経緯をお話しします」
そして真面そうな植物娘がデカイ蛇に寄り添い頭を下げる。
「ああン?ちょっと黙…じゃないな。後で纏めて話を聞こう。」
相変わらずな対応の蛇に安心感を抱きつつ、問題はこれからだ。
(お腹空いた!)
大音量で響き渡る声。
「ほら、蜂蜜よ。これで暫く我慢なさい」
蜂は瓶詰の蜂蜜を投げつけ、デカイ蛇の頭から落ちた何かがソレをキャッチした。
「ふははは。収拾が付きませんな!我等は向こうで元気な子を!」ぷるルン!
そしてスライムが突飛な事を言い出す。
なんだかコレもまた、いつもの流れのように感じたが、その瞬間だった。
自分に向かってであろう、高速で飛来するスライムが反応する間もなく着弾したのだ。
理解するまでに3回程のループを体験する羽目になった。
それによっての結果だろう。自身の記憶はぷっつりと途切れる事になる。
覚醒し始める意識の中で聞こえた言葉は、悲痛な感情を感じられる言葉だったが、
何となく良い気分にもなれたので何も問題は起こらなかったのだろう。
「儂の…城が……民が………全部失ったのじゃ…」
* * *
眠りが浅い…その所為か睡眠中の疲れが抜け辛い。
なんと言いますか記憶を整理する為の睡眠となっており、眠るたびに記憶が蘇ってくる気がします。
今回の夢は覚えのある声が何やら話し合っていたけれども、のじゃっ子はなんだか記憶に新しい。
しかし夢に見ている程度の感覚で以外の事を思い出す事適わず。
なんとなく大変なんだなー程度にしか思い出せませんでした。
何か。自分に親しいような面々だったよね?
何か、自分の知っていた所でとんでもない事が起こっていたような。
何か…自分自身にも何かが起きていたような。
でも今の状態で何が出来る訳でもなし。
出来る事と言ったら飼主の言う事を聞いて殺されないようにするだけなんですよね。
という訳で今日もバトルです。グラディエーターと化すのです。
檻から放たれし蛇の魔物は古代ローマのコロッセウム(仮称)へ降り立ったのだ。
というのもなんだし、えーと。確か。
飼主やその他の拾えた情報源からの言葉を整理するにこの場所は【アースガルム】っていう国の地下らしい。
ジメジメしてますし。お掃除はされてますけどやっぱり魔物臭いです。
そんな匂いがするって事は魔物がそこそこに管理されて捕らえられているという訳ですな。
それ等の使い道はその魔物同士で争わせたり、人間と戦わせたりしている事を確認済み。
観客もいますし野蛮な争い事を楽しむ者達を集めて荒稼ぎしてるっていう事です。
ついでに賭け事有りの、さらにはお国自体が公認してる娯楽施設。
国が公認してるって事は、一介の魔物がどうこう出来るもんでもないですよね。
どうしたもんかねー。戦ってお金稼げば自由を得られるんかな?
でも自分、魔物ですし。飼主いますし。
稼ぐだけ稼いじゃったら不味いかな?
味を占めた飼主やこの施設にとっての使える道具扱いされて一生手元に。なんて嫌ですし。
何か考えないといけないかもですねー。
ともあれ、自分が檻から解放されたという事は。
向こうさんの檻も開封済みです。
今回の相手も魔物ですな。
どーれ、知識にあるその姿は。
2足歩行の人型な豚ですな。のっしのっし歩いてくるその姿は圧巻である。
まさに壁。とにかく太い。ゴブリンなんて目じゃないね。
フゴフゴ鼻を鳴らし、見るからにパワフルそうなその太腕に掴まれれば
骨を圧し折られたり体ごと潰されたりなんていう被害が予想されます。
アレ等の豚顔達。ステータスにして。どんなもんだろ?
ふむ。数値化。できたっけ?
数値化? 何を基準に?
ふむむ。分かりやすい値が欲しいのぅ。
ゴブリンと違ってわざと攻撃を受けるのが怖い相手です。
殴られるならまだしも、掴みかかられて一方的に引っ張ったり叩きつけられ続けたりなんてしたら嫌ですものね。
確かオークはランクがEぐらいだったと思いますけれども。
自分もEに分けられてますし今回のランク差は無しですな。しかも…なんでしょう。
もう一つ影が見えます。二匹です。オークが二匹です。いえ、さらに追加で一匹。
肥満体型の人型が三匹。流石に後続はないようです。
前回のゴブリンといい…1対3が流行っておるのですか?
まあ前回は1対4になる筈だったようですが。
戦闘に関係のない事を考えている時間はもうないです。前回よりデカイ魔物が3匹。
のっしのっしと腹肉をブヨンブヨンしながら此方に向けて歩いて来るではないですか。
ゴブリン達とは違い、オークは貫禄抜群。しかも自分は1匹です。
3匹に勝てる訳ないじゃないか!
グラディエーターなら武器が欲しいですよ。
色んな武器が欲しいのですよ。
でも魔物ですし。蛇な体ですし。そもそもに使い辛くなる?
どうしたものかと焦りが見え始めた所でした。後続の一匹がすっ転ぶ。
巻き込まれた他のオークはバランスを崩してあたふためいている。
あれ、あいつ等ドジっ子属性持ちじゃん。
一気に緊張感が解れ、機会を逃さず先頭の一匹に尻尾を勢いを付けて突き出した。
この感覚は懐かしい。
生まれたばかりで懐かしい行動を行うという不思議な感覚。
前にもこんな感じの攻撃方法を使っていた覚えがある。
感慨に耽るのも一瞬。
良い感じにスキルとして流れが汲み込めた感覚を覚えたので折角だ。
命名:テールハンマーと名付けたその一撃はオークの顔面を陥没させる攻撃となり一先ずの形を得た。
攻撃を受けたオークは膝を折り。そのまま前のめりに崩れ落ちた。
驚きの豚声を上げる後続に、これは好機と続け様に攻撃を敢行しようと思いましたが体力が続かず息を整える羽目になってしまう。
(うわぁ…タマゴでぶん殴るのも結構疲れるわぁ。)
どうやら全力での行動を続けるには鍛え方が足りなかったようだ。
いやまあ…タマゴから生まれて数日ですし。仕方ないよね?
相手にバレないように余裕たっぷりにどっしりと構えつつ息を整える。
転んでいたオークが立ち上がりつつも怯んでいるのを確認したら、尻尾をガンガン打ち鳴らし威嚇をするのも忘れない。
ほーれ、近寄ったらテールハンマーですぞい。ほれほれほーれー。ガンガン!ぐおーん!
お互いのオークが顔を見合わせる。
うむ、不味い。動作を見ただけで何をされるのか理解してしまう自分が恨めしい。
拳を握りしめるのではなく両の拳を広げ、全面に突き出しながら二匹のオークが迫ってくる。
殴るのではなく、掴みかかってくるスタイルですな。
しかも全面に盾のように突き出された肉の塊。あれでは頭部に対する攻撃が難しい。
腹部へ攻撃するにもあれ程までに肥えているとなると一撃では倒れない可能性もある。
狙い所は足元が良いか?
一匹だけならこの体力でも、どうにかなるのだが…
二匹となると対処に困る。
片方を倒しても、もう片方に捕まったら…甚大な被害を受けてしまうだろうし。
素早く動き回り場を掻き乱そうか?
否…今の体力では移動と攻撃の両立は不可能である。
もう少し、尻尾の重りが少なければ可能だったかもしれないが。
そうなると殻を脱ぎ捨てるという選択肢が一つ加わる。
しかし、このタマゴは手放したくない。
攻撃手段が一つ無くなっちゃいますし。寝床が無くなりますし。
そんな思いがその選択肢を廃する。
となれば、行動は一つ。
この一合にて片方を倒し安全圏に離脱するヒット&アウェイ戦法。
蛇の体躯を地面に平伏し機会を待つ。
それはもう、地を這うように。自分は蛇ですからなんら動きに支障は出ません。
それに釣られてオークが両手を大地に傾ける。
十分に引きつけ機会を待つ事数秒間。
余裕が無い所為か、観客の叫び声も気にならない。
イヤらしい手付きで、迫りくるオークの速度が上がるその瞬間が狙い目です。
伏した蛇に掴みかかるという事はですね。
つまりは頭が下がる訳でして。予想通りの好機が訪れるのも必然ですな。
飛び掛かって捕まえにやってくるオークの巨体は圧巻でしたよ。
反応が遅ければ捕まってましたね。
だけれど来ると予想し構えておいた自分に対処出来ない速さではなかったという事です。
カウンター気味のバックステップから勢いを利用し、尻尾を振り上げる。
遠心力を付けて尻尾の先の鉄球。そんなイメージの武器であるタマゴを一匹のオークの脳天に叩き付ける。
掴みかかる勢いで、前屈みに転んでいるようにも見えるオークに避けられる様子は見られない。
素直にゴスッと鈍い音を立てて直撃を受けたオークはそのまま動かなくなった。
残る一匹。強引に掴みかかってくるが、なんともまあ運が良い。
倒れ伏したオークが邪魔で、足元を取られた巨体は地べたへと転がった。
またもや好機!
お互いの位置は丁度良い。
体力も微妙な所だけど、無理をしてもう一発。
テールハンマーですぞ!
ゴガンッ…と良い音が出ましたよ。
突き出すのではなく重量に任せて振り下ろす一撃。
これだけでも十分だったようでオーク達の意識は刈り取られたようです。
これにて勝利?
3匹叩きのめしたけれど…こんなんでOK?
そんじゃ勝鬨を上げよう……と?
その瞬間体がふわりと浮いた。
ミシリと力が籠り、肉厚な感触が自分の体を締め上げた。
ああ…油断しちゃったか。
どうやら最初に顔面を陥没させたオークが健在だったようです。
死んだふりとは…一杯食わされたわ。
タマゴの殻を片手に持ち上げられ。
さらに尻尾の付け根辺りを力任せに握りしめられた。
成程ね。タマゴ部分を丁度掴まれていたから感覚が鈍くて反応が遅れていたか。
触られてる感じは一応するのよね。
タマゴな部分でも自分の体の一部であるかのような感触がね。
あーあー、タマゴ部分が先じゃなければ即座に逃げられる自身はあったのになー。
うーん、それにしてもピンチです。いやあ…その尻尾の付け根辺りを握りしめられるのはちょっとご勘弁を…
まあ殺るか殺られるかの強制されてますし、お互い必死なのは分かりますけど。
色々と考える程にピンチですな。考えてる時間分ミシミシと骨が悲鳴を上げてます。
まあ、まだなんとかなりますし。考えるよりは行動あるのみ。
なにせ上半身は健在な訳でして。
頭と尻尾を持たれて、自分以上の力で締め上げられたとしたら焦りもしますけれども。
しかし。今の自分の上半分以上はフリーであり、締め上げられてる下半部も無事でまだまだ耐え抜けます。
であるのなら。
牙もあれば、まきつく動作もそれなりに可能。
相手さん…両手塞がってますし。
持ち上げるんじゃなくて、その巨体を生かして押し倒しながら両手で押さえつけてりゃ…危なかったものを…ねえ?
という訳で巻き付いちゃいましょうね。ぐるぐる~っと。
選択肢としては先程の考え通りに牙でガブリ。自由な部分でぐるぐる巻き巻きの刑が即座に思い浮かびました。
むしろ攻撃的な選択はその二つしか選べませんし。蛇の体は単純で良いものです。
そんな流れでQTE気分でしたよ。くいっくたいむいべんとーって奴ですよ。
選択肢が少ないので即座に実行。まきつきました。思考より先に体が動いてます。
自分は生まれたてっぽいですが歴戦の蛇ですぞい。
まあ…一応まきつくという行動を選んだ理由は、尻尾に続いて頭まで掴まれたら危ないんですもの。
今は目の前で必死になってるオークの首に巻き付けるチャンスなのです。
完全に密着してしまえば掴まれはしないとの判断でガッチリホールドですな。
ぐいぐい。ぎちぎち。ブヨンヴヨン。
見てください。この密着具合。
オークの肉が余り過ぎて自分の蛇の体に豚肉が覆いかぶさってます。
しかし蛇の体は首の隙間にはしっかりと収まり、首回りを一周する事に成功。
念の為に自身の頭部をオークの背面に。
今の自分の頭部は痒い所に手が届かない位置だと思われます。
このオークさん、背中をかこうとしても届きそうにない腕をしてますし。
背中が痒くなったらお仲間さんがやさしくかいてくれる妄想が沸いて出ています。
つまり平常運転な思考が出来るぐらいの余裕が出来たという事ですな。
一応これ以上の油断はせずにしっかりと締め上げて意識を絶ってあげる事としましょう。
そうそう、オーク側は自分を持ち上げたら振り回してやろうと考えていたようでしたね。
結構な力で引っ張っていましたが、もう手遅れですよん。
残りの時間は最後の力を振り絞るかのようにオークが両手を使い首に巻き付く自分を引き剥がそうと試みるショーが残されるのみ。
血が滲み爪が剥がれるまでに暴れる余裕を与えてしまった事を少し後悔しました。
体中がオークの血と汗に塗れてしまいましたよ。
うーん、今更ですがこれは無視出来ないぐらいに臭い。匂い落ちるかな?
そうそう…一応オーク達は死んではいないようです。
手加減という手加減は出来ませんでしたがトドメを刺すという意思をもって行動を起こさねば
命を絶つとまでは持っていく事が出来ない相手でしたな。
観客は…まあ見た目が地味な勝利で騒ぎは少ない気がしますが…中には喝采を送る者も少数いるようです。
暫くすると観客からは殺せーだの食っちまえーだのとか言ってましたが自分は魔物です。
そんな言葉聞こえませんよー。あーあー、ナニヲイッテルノカワカラナーイ。
そんな自分は勝利したので悠々と闘技場の外へズリズリとタマゴを引きずりながら外へ出ていくのであった。
無論、外へ出ても自由などなく数名のいかつい兄さん達が待ち構えていました。
そのまま檻の中へ誘導されれば、食べ物が用意されていますな。
ふむ。暫くはこんな流れなのかねぇ?
集まる兄ちゃん達の言葉は自分に向けた言葉ではなかったが集まる数名で話し合う言葉はしっかりと聞こえている。
何話してんだろねと耳を傾ければ。彼等のお仕事のお話をしてるようです。
次はどうする? 檻の回収は済んだ。ココ片づけとけよー。とかその辺を話しつつ動いてますな。
うんうん、木の実美味い。トロトロしてちょっぴり甘め。甘味は疲れた身には良い物だ。
嬉しいねぇ、でもやっぱり量的な意味で物足りない。
もっと貰えないかなーと思い視線を上げれば、気が付いた人間が自分についてのお話を始めましたよ?
「躾ける必要が全然無いんだが…」
「なんか大人しいよな?」
「馬鹿いえ。どこが大人しいんだよ」
「いや、だって勝手に檻に入ってくし」
「見ただろ?アレ。オーク3体ぶちのめしちまったんだぞ? 襲い掛かってきたらどーすんだよ?」
「飼主が優秀なんだろ。暴れてもコレがあるんだから大丈夫だよ」
「ああ、しっかしオークがコイツをぶん投げ続けるショーが始まると思ったんだがなぁ」
「今夜の酒代無くなっちまったぜ」
「いーや。オレは大穴だったから蛇に掛けといたぜ?5倍だぞ5倍?」
「5倍…って幾らかけたんだよ」
「銀貨1枚」
「阿呆が。酒場で使ったらすぐに無くなっちまうじゃねえか」
「畜生、もうちょっと賭けてればなぁ」
「やめとけやめとけ。同僚からの忠告だ。
賭け事なんか小銭賭けて騒いでりゃ良いんだよ。
大金が動く賭け事なんざ裏で調整されるぜ?」
「まあそりゃそーなんだけどよ。そもそも大金なんざ持ってねーし」
「ところでさっきから蛇が唸ってるぞ?」
「腹減ってんだろ?」
「さっきの豚共食ってりゃ良かったのに」
「あれだろ。蛇って偏食激しいとか聞いてるが。もうコレしか食わないんじゃねーか?」
「蛇じゃなくて魔物だろ。亜竜種だっけ?」
「おい、次が始まるぞ」
「おお、今行く」
「ほら、蛇ちゃんもう一個だけだぞ」
「おい、急げ急げ。お貴族さんの機嫌損ねるぞ」
ふむ? 彼等もお仕事でお忙しい事です。
色々と情報も得られラッキーです。何気に木の実がもう一個追加されました。
檻の中で自由に動けぬ身としてはその辺で雑談してる程度の情報でも嬉しい限りよ。
どうにも、彼等にしてみればさっきの戦いは自分が負ける側の筈…だったらしいね。
考えてみれば今の自分ってどのぐらいの強さなんだろね。
まあ、オーク3体は倒せましたよ。かなり疲れましたけれども。
沢山運動したのでお腹が空いてます。
うんうん、木の実が美味しい。中身がトロトロ。
殻はやっぱり硬い。でも物足りないし今回も残った殻を呑み込んでしまいました。
吐き出させる飼主は見当たりませんぞ。
木の実が2個もお腹の中に殻ごと収まっております。
なんだか満足したのでこれ以上何も出来ませんし眠りに付くとしましょうか。
試合開始で響いてた歓声が今度は一瞬で終わったような気がしますがなんでしょな?
まあ静かになる事は良い事です………と現実逃避。
歓声が一瞬で終わったって事は試合が一瞬で終わったって事ですし。
化物って奴はどこにでもいるもんだ。出会わない事を祈るしかない状態ですよ。
強くなるべきか。逃げ出すべきか。
この変な電気ビリビリ装置がある以上は難しい所だが。
こういう道具には何かしら外す方法もある筈です。
本来なら焦るべき事態なのですが頭のどこかで、
こんなもんどうにでもなると思っているのがマイナスな感情を抑制しておりますな。
実際問題、どうにもなってない状態ですけどね。
そう言えば戦闘中に閃いた、スキルだったか。
妙に馴染んだ攻撃が繰り出せたアレは…うん。スキルだ。
この世界だと便利なスキルという形で恩恵を得られて何でも出来た覚えがあった。
テールハンマーと名付けたアレがスキルの感覚だとしたら。
この状況を打破出来るようなスキルも覚えられるかもしれないね。
そうと決まれば。
今日は寝よう。明日から頑張る。
お腹も一杯ですからね。
蛇はタマゴの中で丸くなり未だに続く物足りなさに違和感を覚えつつ微睡んでいく。
間もなく飼主に叩き起こされる事になり、無理矢理押されるお腹がなんとなくキモチイイ。
だけど吐くのは嫌です。嫌なのです!
キシャーフシャー!
こうしてまた一つ、些細なバトルが繰り広げられる事となる。
抗議の鳴き声を上げる蛇と飼主とのやり取りもこの日が最期であった。
* * *
メインイベントよりサブイベント。
オープンすぎるワールド系のゲームって大体そうなる感。




