蛇の魔物と愉快かもしれない仲間達
蛇の魔物とその他3匹ですが家族会議中です。
別に血の繋がってるとか結婚したとか、そんな訳ではないのですが。
運命共同体の契りを交わして家族という事になってます。
「さて、先ずはアレです。何から話して良いのか困りますが。
兎に角、意見を出し合いましょう。先ずはネーサンからお願い!」
こうして最初に話を向けるは、蜂と似た姿の魔物であるネーサン。
椅子代わりに自身の腹の上で足を組んで座る様は、なんとも可愛い。
しかしそんなネーサンの口から出てくる言葉で印象が変わるのは何時もの事である。
「アレよ。平和に暮らしていた村娘が魔物に魅入られて自らも魔物の姿となり…
身も心も魔物となって番いの魔物との生活を満喫している中。
ついに元人間だった、その魔物が村を襲い始める。
人的な被害も出てしまい、村側が人を雇ってどうにか討伐しようとした結果。
やってきたのは村を出て行った筈の、村娘と幼馴染だった青年。
ちなみに番いの魔物に寝取られていた。青年は知る由もなし。
これはちょっと残念な点ね。知っていた方が良かったわ。
折角だから魔物同士でヤってる現場とか目撃してたりしても良かったのに。
剣で引き割いた腹から魔物の赤ちゃんでも出てくれば最高だったんだけどなー。
まあ、それはそうと番いだった魔物は青年に惨殺され、
怒り狂った幼馴染の元村娘は青年に襲い掛かる。
死闘の末、青年の剣は魔物を貫き…それが致命傷となりて魔物はこんな状態。
青年も重症を負ってしまい最期の望みが幼馴染に会いたいだったので、
優しい私達は、その願いを叶えてあげた。良い顔してたわね。滾るわぁ…
ちなみに青年の名前はコイン・ギルバスで数年間村を離れて神殿騎士になり。
村側の討伐依頼を受けてここへやってきたみたいね。
村娘の方は至って普通の村人。ラノア・エクレールって言う名前らしいわ」
興奮冷めやらぬネーサンの説明は異常でした。違った…以上でした。
さて、これをどう次の話に繋げるべきか。
反応を返そうにもネーサンはダメだ。悦に入ってしまっている。
そんな魔物は暫く放置するしかあるまい。
となれば残るお二方へ話を振りましょう。
「リフよ、あの魔物の出来ってどの程度だった?」
そう目の前の魔物娘っぽい、下半身が植物系触手娘なリフへ聞く。
何やら自身の作った魔物は自信作だったようですし。
一月と持たずにこんな状態となってしまい、それなりに落胆しているようですし。
モチベーションの低下は著しい。となれば慰めてやらねばなりません。
そしてもう一匹のスライム状の魔物であるサプは今現在、
ネーサンに弄られ腹を裂かれている最中でした。
あの状態となったネーサンに話をかけるとあの様な状態へ持ち込まれるので注意が必要です。
まあサプはスライムなので裂かれても大丈夫でしょう。
中から子供というかミニチュアサイズのサプが産まれてましたし。
なんて考えいると、リフも考えが纏まったようで説明を開始した。
「まずは魔物のランクでいう所のC-といった程度の強さは持っていたと思います。
リーチフォックスというEランクの魔物がベースでしたが、
特異なスキルを持っていたようで一頭抜けた強さを持っていて能力も高く、
魔物としての進化を果たせる個体であったと思いますが機会が無かったのでしょう。
それ故に、素体としては中々に良い物でした。
そして人間と合成する際、人間側の同意も得られましたので思う存分スキルを使用し、
ヨルン様のご要望に沿うような改造も行っております。
農作業の出来る者が欲しいという事で村娘の知識から、
鎌を体の部位に追加して戦闘も作業も両立出来るようなフォルムへと調整。
思ったより人間側の肉体が優秀でしたので、
色々と無茶な融通が利いたので素体の望み通りにブレス攻撃も追加です。
それに比べると、オマケで作ったもう一方の作品は地味な物でした。
番いの魔物は…まあ並みです。精々Eランクにプラスが付いた程度。
やられて当然とは思っていましたが。
まさか…たった一人の人間に両方共倒されてしまうとは。
やはり人間を混ぜる際に知識を引き出す方法はもう少し改善の余地が。
うう…申し訳ありません。期待に沿えられずこんな結果になってしまって」
うむ、リフの発言は異常でした。違った…以上でした。
とりあえず必要な部分を抜粋しましょう。
なんだかんだで村娘って変態だったんじゃ?
ブレス攻撃を望むとか、気持ちは分かりますけども。
いや、素体と言っていたし、もう片方の魔物の要望だったのかもしれない。
リフの考えも、ヨルンの立場を上に考えていて悪い気はしていないようですな。
ついでに作った魔物もランク的にC-程度のモノが出来上がっていたという訳ですか。
所謂ちょっとした災害クラスですな。
思えば野生時代もCランク系魔物との遭遇率は低めだった。
むしろCランクで出会った魔物としては、覚えのある魔物が多めでしたし。
あの森の中では、Cランクともなれば森の主的な位置付けだったのかもしれない。
なんだかネーサンは最近の森の様子はランクCの魔物を偶に見かける程度の
平和な世界になったものよ~とか言ってましたし。
Bランククラスが出たら女神が踏み潰しに行くとか言ってましたし。
この辺は間違いなさそうね。平和かどうかはともかくとして。
今までに得た情報を整理すれば、やっぱりというかなんというか。
ゲーム感覚な世界でみるのであれば、
王道な魔王が根こそぎ倒しつくされた後の様な世界なのかしら?
ヘイトを集めてくれる悪党系な存在もヨルンの記憶には全くありませんし。
気になる事と言えば神様が死んだとか聞いてます。ふむ…管理者不在?
犯人。というか当事者っぽい女神さんはあんな感じですし。
一体何があったのか。女神としてどんな役割を背負っているのか?
ともあれ一つの神がいなくなったのは間違いないようで、
それに伴う問題はヨルンには想像が出来ません。
疑問だけが湧き上がるのみなので情報を得るまで思考は破棄方向へ。
考える程にヨルンの立場が危うくなりそうですしな。
良くあるファンタジー的なRPGであるならば、
どう考えてもヨルン側が障害となりそうな魔物達の集まりとなってますし。
魔王復活させましたし、レアなのが今この場に揃ってますし。
世界を闇に包んだと思われる魔人さん問題も解決していません。
どこかヨルンの知らぬ所で勇者的な何者かの新たなる冒険が始まっていた…
なんてイベントが発生していても不思議でもなく、それっぽい舞台は整っている。
一旦の平和を迎えた後の数十年後には次の物語が始まるなんて良くある設定ですからね。
それにしても冒険という言葉を出して久しく懐かしい思いで心を震わせる。
思えば自分にとっての世界はまだ見ぬ要素がたんまりと残っています。
野生時代は十分に満喫しましたし、魔法的な戦闘行為も程よく堪能出来ています。
交流もそこそこに楽しめて、ひっそりとこの世界の人間生活も観察することも出来て…
ドラゴンやら女神様やらとも相対し、中々に楽しめました。
そろそろ死亡フラグでも立つんじゃないかとも思いましたが自分は不死な肉体持ちでありまして。
今の所、特別に脅威と感じる物が身近にある所為か他に視野を向けた所で何も見つからず。
何を目的としてこのヨルンは何処へ行くのか。
哲学的な思考となって参りましたがこんな考えが沸いてくるのもリフの話が長い所為である。
モブ達扱いでしたが、面と向かって話せば意外と面白い一面も見えてくるものですな。
―――そして魔物の説明が再開する。
スキルを増やすために他の魔物の部位を大量に使ったとか。
人間を使うのだから人化出来るようにとネーサンに言われてたとか。
でもその後に人間の自我は無くした方が良いかもなんて言われてしまい結局無駄になったとか。
何の計画もなく即興で作ったが為に色々と問題は出ていたようですが。
リフ的には満足のいく仕上がりだったようで、
それが1人の人間相手に折角作った自信作がこんな状態ですものね。
こうして話を聞いてあげる事で色々と吹っ切れての会話となっている?
リフの話にはヨルン様のお陰で材料の持ち運びに何の心配もいらなくなりました…との事。
依然と容量の底が見えない空間収納スキル。
どうやらモブ達が羨む程…相当に便利なスキルのようだ。
ちなみにネーサンもこのスキルは持ってはいるが空きはもう残り少ないらしい。
そんな空間収納スキルに自分達は襲い来る野生の魔物達を倒しては収納を繰り返し。
収めた容量。実に魔物100匹を超えている。
内訳をするのも面倒なので大まかにランクごとに分類し、
獣とか虫とかでも区分けし、取り出しやすいようにはしているが…
数が多いのでやはりというかゴチャゴチャになって対象物を取り出し辛くなっている。
整頓スキルはよ。
―――確認 マスターのレベルアップに期待します。
はい、がんばります。
便利なスキルですから思い通りに使いこなせるようにしないとですね。
しかし収納するモノが今現在で魔物ばかりというのもなんですな。
そんな魔物達も、今現在で追加オーダー。
やはりというか、魔物は馬鹿な個体が多く、
自分達に勝てる訳がないのに突っ込んでくる系ばかり。
例外は勿論いましたが向かってくる魔物に比べれば少ないもんだ。
後で知ったがあの魔物達の殆どを暇を持て余したサプが引き寄せていたらしい。
思えば旅の道中も妙に遭遇率が高かった。後でお説教である。
探索中なら構わないけれども、今はやるべき事があるのですからね。
何もイベントの無い時であれば、命の危険が殆どない冒険の中でのひとスパイス。
程よい刺激をプラスしてくれるサプさんって事で良いでしょう。
思えば森の中を久しぶりに冒険だ~…と意気揚々とPTを組み。
気の赴くままに散策するものの、危険の無い危険な森を巡るばかり。
やってくる魔物は全てを解体。敵意を剥き出しでやってくるんですもの。
ヨルンの癒しのオーラも本能赴くままに動く系な魔物には効果が薄かった?
そんな材料を集めながら回っていたので大量の収穫を得られたモブ達が喜んでいたのを思い出す。
まあ、レベル上げ過ぎたらこうなるわ…的な状態なのかね?
そういえば一応この森が未開部分が多く残っているとか聞いた覚えもありますけど。
未開部分にひっそりと高ランクな魔物がいる可能性は否定できませぬ。相当な広さですしな。
魔物と言えば守護者的な情報であれば魔物の絶対数的な何かを大まかに調べるスキルも持っているようですし。
それをネタにじっくり話すのも楽しそうではある。
それは後の楽しみにしておくとして。
世界のヨルン的な仮説を一つ立てるのであればアレですな。
経済やら何やらを回す為、冒険させる的な。
ほどよい危険を残して生活を手一杯にする系の調整を行う何とやら。
きっと隠密裏に裏でその辺を調整するなんとかの組織が存在しているに違いない。
という妄想ですが、普通にいるでしょうな。大なり小なりと。
まあ、ヨルンには難しい事は分かりませんから気楽に行動しますけども。
力を持ったが故に変に陰謀や企みに巻き込まれても困ります。
面倒事はまっぴら御免ですが、十中八九何かしらに巻き込まれる事でしょう。
蛇の王だか魔王だったかとかのアスピクも昔は兎に角ヤバイ系の魔物だったようでしたし。
それに係わりのある自分も巻き込まれる事になるのは覚悟せねばならぬ。
大体はネーサンが何とかしてくれそうですけれど自身でも対処出来なくては話にならぬ。
そんなネーサンからも気になる情報は幾つも貰ってましたね。
話す気はあるようなので、まだまだヨルン的に得られる情報は山ほどにあるのです。
何もせねば魔人と呼ばれる者が世界を闇に染める的なイベントも残されてる訳でして。
難易度的には既にイージーモード。と考えるのは早計。
その昔に自分がスネークリングという魔物の頃だっただろうか?
自らの能力だけを磨きつつ、日々を坦々と過ごしていたあの頃。
とある日を境に発生した謎のイベントは忘れかけていたが記憶には残っている。
ヨルン的な説明をするならば、RPG的なゲームで良くある所の…
所謂ラストバトル前の空が異常な状態となっていくあの演出。
そして一般人視点で見たあの訳の分からなさよ。
自身は魔物であったが故に心が躍るという正体不明で危険な感情が湧き上がりましたが、
人間視点で見たら世界の終わりか?
等と不安と絶望感が込みあげる空模様だった思われます。
あの後は確か、蛇の仲間を引き連れ国を観光しつつの戦争に巻き込まれ、
指揮官と思われた一人の魔人さんと遊んだ後にロードをしてしまったのだった。
今に思えばその後の世界がどうなるかと、最期まで見届けるべきだったのだろうか。
やり直すにも枷が出来てしまった今だからこそ思う。
この湧き上がる感情もまた一つの楽しみだと。
ふと空を見上げれば、気にもしていませんでしたが今現在の空模様もなんだか不穏です。
なんというか空が割れてます。魔法的なエネルギーが逃げ場無く溜まった結果のようです。
人間や魔物にとっては直ちに影響は無いようで、別に女神やアスピクなんかが
ぶつかり合わなくても、自然現象でこのような気象現象が稀に起きると聞きました。
いやあ…綺麗ダナー。不思議ダナー。自分でも出来るカナー?
そんな現象はどこかの女神とデカイ蛇が争った結果…こうなったと。
特に景観が変わるだけで目立った影響も無く、暫くすれば元に戻るそうです。
無論、凡人や普通の魔物には再現しようとしても真似は出来ないそうですが…
自身には出来てしまうんだろうなという自覚はある所が恐ろしい。
さて、とりとめのない思考も程ほどに熱の入った説明も終わりを迎えた魔物リフ。
名前を呼ぶと、なんだか傷薬代わりに使ってしまいそうなイメージが脳裏を過ぎりましたが
とりあえず他者への回復は得意な部類らしいです。
この世界の回復魔法としては、素質が無ければ扱えない。
素質とはスキルを得るために生まれ持っての適正みたいなものの事なのだが、
素質が有ると無いとでは取得難易度に差ができるというのだから格差が広がりますな。
その所為か、その適正があればある程度の怪我や病気を治す事は可能とはいえど人手は幾らあっても足りない状態。
それでもそんな魔法が存在する所為か、医療技術は程ほどで収まっている。
一つ例を挙げれば、外科的な手術は一応可能とかなんとか。
可能ではあるのだが、麻酔は基本、薬では行われない。主に医療外の元素魔法で行われる。
そして術中と術後は結局回復魔法便り。ネーサン曰く。確実に寿命は縮むだろうなとの事。
それなら初めから回復魔法で良いじゃんと思ったが、
結局回復魔法が扱えても、素質や練度がある訳でして。
それに応じたレベルまでしか治療が出来ず…
人手も足りないというのは荒事が蔓延する剣と魔法な世界に限らず世の常ですな。
しかも剣やら魔法やらのファンタジーですが、
あんなものでボコスカしてればサクっと死んだりも良くある事。
自分は残機がちょっと無限に近い程度の不死身で感覚が薄いですが回復関連は重要そうです。
生き返らせるとか系の蘇生方法もあるにはあるようですが…
どこぞの寺院のように、ささやいて いのって えいしょうして ねんじる系の如く、
二度と復活出来ません的な状態になるのも珍しくないとか。
その他生きてさえいれば大丈夫という訳でもなかった。
手やら足やら部位欠損なんて起こした日には傷口だけ綺麗に処置され、その部分はサヨナラです。
あとは体内に異物が混入したりした場合、回復すると一緒に体内に残ってしまうから取り除かないとならんとか。
その辺は上位レベルの回復となるとポンポン外に飛び出ていくからある意味楽しいとか聞いている。
そんな回復魔法も簡単なレベルでなら傷を閉じる程度。体力がちょっとずつ回復する程度。
ある程度までなら病気を治したり解毒する事も回復魔法で成しえる。
イメージ的に風邪とかちょっとした感染症とか。ウイルス的な何かも治せるらしい?
便利だなー魔法とか思っていたら、魔法で治せない系の病気も勿論あるようで。
RPG宜しくそれ用の収集アイテムがどこかの危険な場所に生息しているので取ってきてくださいクエストまで完備されているとか。
それ等の薬を調合する職業もあって、錬金術の一部として伝わっているようです。
ついでに回復魔法と合わせて錬金術で作成した道具を使う場合もあるのでセットで覚える人が多いとか。
無論、片方だけを極めてお互いにお得意様なんて事になる関係も普通にある。
というのが女神さん情報とネーサン情報。
そして回復魔法の使い手であり高レベルの能力を持っていたエレナから得られた情報を合わせた結果、纏め上げられた知識である。
では改めて、そんな回復魔法が得意というリフにお伺いしましょう。
「それでリフよ、彼等を治せるかい?」
それはあまりに遅すぎる宣言な気がしますがまだ間に合います。
眼前には既に事切れたかの様に見える生き物達ですがまだ間に合います。
重要な事なので2度言いました。決して遊んでいた訳ではありません。
…出来る限りの事をしましょうか。
助けられる者を眼前にして何もしない訳にはいくまいて。
かく言う自分は呪術にて命を繋ぎ続けるぐらいしか出来ないのだが…
そう思っていた時期もありました。
やはりというか、自身の知識には偏りが多かった…という事なんだろうね。
―――確認 出番が少ないので答えません
そして守護者が自己を主張するかのように反応する。
ヨルンの思考を先読みしたのだろう。拗ねた守護者の一言がヨルンの胸を抉った。
別に守護者のせいにするつもりはなかったのだが。
ともあれ、仲間が増えた事により知識が増えるのは喜ばしい事である。
久しくヨルンは仲間達に感謝の言葉を贈るのだった。
* * *
ちなみにヨルンは特に回復魔法の必要性を感じておらず体力を回復したり切り傷を治す程度で習得が止まっているようです。




