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【普通の一般的とはちょっと違う村だった所に戻ってきた青年】

ぽっと村に帰ってきた青年

 村で対処出来ない程の、村にとっては強大な魔物が現れた。

 それは4つ足の獣の様な姿。体躯は人間を少し上回る程の大きさであり。

 さらに巨大な鎌の様な部位を対にして両の手代わりに扱う魔物だった。


 魔物が犇めく森の中へ位置する村であったが故に、

 生き延びる為に魔物と相対する能力は有していた集落ではあったが。

 村の中では最も腕利きの者が数名犠牲となり、事の重大さを村人達は理解した。

 幸いな事にその魔物には縄張りのような意識があるらしく、

 とある村人の土地一帯を我が物とし徘徊していた。

 広すぎる土地故のせいか、はたまた別の理由か分からないが、

 幸いにもその場所は村の最端に位置していて、

 今はまだ村の集落部分にまでは攻め入られてはいなかった。


 村人達の経験から、その魔物の行動が集落の様子を観察している事は間違いない。

 人の集まる集落部分へやってくるのも時間の問題。そんな状況と判断された。

 もし攻め入られる事があれば、さらなる犠牲は必死であろうと。



 教会の騎士達も今はもう当てには出来ず。

 新たに傭兵や冒険者等を雇うにもアンデッドの襲撃以来、蓄えが底を付きかけている状態だった。

 つまりは、今の村の現状では報酬が満足に出せない状態である。


 なんとか金銭を捻り出そうと村長が家に戻ると、

 食卓に使うテーブルの上に無造作に置かれた革袋。

 誰かの忘れ物か? そう思うも記憶に無いその袋は一体誰の物なのか。

 手掛かりは無いだろうかと思い中身を確認した所、金貨が数十枚と入っていたではないか。


 これはどうしたものかと村長は悩む。

 忘れ物にしては金額が多すぎる。誰かを家に招き入れた覚えもない。

 そもそもにこれは本物なのだろうか?

 妖精か何かに化かされているのではないか?

 物が無くなるどころか増えているというのもおかしな話だ。


 仕方がないので酒場の主人へ相談しに向かえば、

 村のあちこちで食料が無くなったという情報が行きかっていた。

 一件や二件ではない。

 耳にした情報、全ての家から無くなってるとは、不思議な事もあるものだ。


 酒場に着くと普段以上の人数で賑わっていた。

 理由を聞けば準備していた食事が軒並み消えていたので定食も出しているココへやってきていた訳だ。

 あまり目立つような状況で用件を切り出したくはなかったのだが仕方あるまい。


 村長は金貨の詰まった袋をカウンターに置く。

 中身を見せれば案の定、驚かれるものの。

 コレを元手に魔物を退治してくれる者を雇えるか?

 という意味に捉えられたのだろう。

 話は手早く済まされ、金額の確認が始まる。


「十分すぎる額だとは思うが…念の為に本物かの確認を願う」


 酒場の主人にだけ、ある程度の経緯を曲げ、村長は説明する。

 不透明な金故に、使わずに家に置いてあった金という説明を付けて。

 この場所へ来る道中、村人達の話を聞きながら自身の記憶が曖昧である事に疑問を持ちつつ、

 袋の出どころの経緯を思い出し続けた所。


 おぼろげながら、何者かに迷惑料として貰った覚えがある。

 変な記憶だけが残るものだと、遂に頭がボケてきたのかもしれないと自嘲気味に小笑いする。


 何はともあれこれで荒事専門の者を雇う事が出来る。

 しかし人を雇うにも時間がかかるという問題点が残る。

 対処出来る者がやってくるまではどうにか持ちこたえなくてはならないのだから…

 村長である立場とはいえ、村の為に死ぬ為だけの戦いを強要する事は出来ない。

 都合よく勇者様がやってくるまでイベントが停滞します…なんて事はないのだ。



 ごく最近まで村を悩ませていた、アンデッドの襲撃の傷跡は未だに残っていた。

 村の者達の疲労も溜まる一方で未だに生活が安定せずに保護を受けている者もいる状態は続いている。


 幸いにも村の者達の多くはこの場に集まっている。

 勿論、この場に居合わせなかった者にも話をしにいくが…


 村を捨てて他へ逃げ延びるか…。

 そう提案もしたが、村を去る者は誰も現れなかった。

 今…この時まで残る村の者達の総意は村の存続だったのだから。

 



   ウオォォォォォーーーン。。。




 獣のような魔物の遠吠えが聞こえる。

 昼夜を問わず警戒を強化し続ける村人達。

 大量のアンデッドが襲撃してきたあの時と比べた場合どちらが楽だったのだろう。


 対処の出来る魔物が大量に現れたあの時。

 個として強力な魔物が村に目を付けたこの時。


 恐怖の感じ方の度合でいえば前者が真新しい記憶として村人達の脳裏に焼き付いていた。

 しかしこれから起こるであろう被害のを考えれば後者が最も大きくなるのは想像に難くない。


 腕に自信のあった筈の村人が複数名で様子を見に行き全てが逃げる事も適わず無残にも惨殺された時、

 村人達は自分達の力が及ばぬ存在であったと悟る。


 その魔物が2匹揃っての番いであるとの情報を得た時、

 村人達の絶望感は生きる気力を失いかけた程の者も現れてしまった。

 時は村を救って貰うための人間を雇うために魔物の討伐依頼を行った後の情報であった。



 村人の死者は様子を見に行った者達が5名。

 土地の持ち主であった者とその場に居合わせた者と合わせれば7名。


 そして…数日の時を経て。魔物はついに、村を襲い始めた。

 簡易な柵を張っていたものの効果は無く、あっさりと突破され酒場が襲われた。

 人的な被害は無かったものの商品の一部を荒らされただけで済み、魔物は縄張りへ戻っていった。


 その時、丸々一つの酒樽を軽々しく持ち去っていく魔物の姿を目撃されている。

 それは日常で良く見た光景であった覚えがあるのだが、

 覚えがあるのみでその部分の記憶はすっぽりと村人達の記憶より抜けていた。

 恐怖する村人達だったが今回は誰一人として犠牲が無かった事に安堵する。

 アレの目的はなんだったのか。まさか本当に酒が目当てだったのだろうか?



 何はともあれ、今回の被害は軽微であった。

 幸いにも酒の備蓄は十分に残っている。

 金銭の問題も例の金貨により十分に賄える範囲であった。


 間もなくやってきた2度目の襲撃も酒場が荒らされる程度で済んだ事から、

 魔物の行動範囲が酒場までの範囲まで伸びていたと推測される。

 村の者達は知っている。魔物の行動は基本的には単純なものが多いと。



 縄張り意識のある魔物はその領域に侵入すると敵対する事もあれば、

 魔物によってはある程度まで近寄っても大丈夫なモノもいる。

 獲物を見つける為に縄張りから出る事はあれど、

 その移動の法則も良く観察すれば似たような動きをする事が多い。

 獲物の対象に人間が入っていなければ視界に入る程度では襲われず、

 下手に刺激を加えたり、目当ての者が手に入らなくなった等の…

 大きく変わった状況とならねば一定の行動が変わる可能性は少ないと…

 希望的な観測となってはいるが、村長は尤もらしく説明し村人達を落ち着かせようとする。



 3度目に酒場が襲撃された事から、

 魔物にとってはこの場所がお気に入りとなってしまったようだと判断された。

 つまり、この酒場をその魔物のお気に入りの場所として継続させてしまえば…

 少なくても暫くは持ちこたえられそうだと信用を得る事が出来たのだ。



 酒場の主人も、店が壊される訳じゃあねぇ。

 金は村長から貰ってるし酒樽ごと持ってかれるのなんざ見慣れてるしなぁ。



 そう言って快く快諾してくれた。

 しかしあの中身の入った酒樽が軽々しく持ち運ばれる様を見慣れているとは。

 そう言われれば見慣れているような覚えがあると記憶を探るも該当する記憶は掘り起こせない。


 目の前の魔物が視界から消えて各々が安心する中。

 今必要なのは魔物の対処である。

 どうすれば長く留めておくことが出来るか。


 誰も依頼を受けてくれなかった時の事も考え、

 自分達だけで対処する事も視野には入れなくてはならない。


 罠を仕掛ける事を考えるか?

 魔法の道具で何か、掘り出し物は残ってないか?


 夜も眠れず心労も溜まる中、

 最悪の事態に備え出来る事を各々がこなしていく。 


 そして、あの魔物が現れてからどのぐらいの日数が経ったのだろうか。

 依頼を受けてやってきた冒険者の素性を知った時。その事実は村中を驚かせた。



「村が大変な事になってると聞いて戻ってきました」



 村から歓声が上がった。

 神殿騎士に成り上がれた元、この村の者だった男が今目の前にいるのだから。


「コイン! 生きとったんかいワレェ!」


「しかも神殿騎士に成り上がったってたなんて…」


「おお…あの頼りなかった青二才がこんなにも立派になって!」


「うー。連絡ぐらいよこしなさいよ」


「何から話せば良いのか」


「全て話すべきなのだろうけど…」


 

 立派な金属の装備に身を包んだ青年の姿は騎士として認められた者の証。

 しかし村人達にとってはなんだかスゲーと思っている程度。

 彼等にとっての神殿騎士とは村の護衛だった者達であり身近な存在だったのだ。

 とはいえ、その強さは騎士なだけあり相当な者だとの認識はある。

 そんな騎士達と目の前の青年を同格と捉えるのであれば現状を打破してくれると期待が湧き上がる。


 だが、その後の話を聞けば仕えるべき場所が無くなった。

 つまり聖都が消え去ったとの衝撃の告白を受け、村人達は現状を忘れ答えも出ない問答を繰り返した。


 村に居座る魔物の存在も忘れ懐かしき村の友人の話を堪能しつつ現状を話す村人達。

 大人数の会話で情報が交錯し収拾が付かなくなった頃、村長が話を纏める為に家に招き入れる。



 話を聞く内に村の現状を理解した青年は怒りに罪悪感。

 魔物に対する憎悪を滾らせたと思えば空虚感をも覚える青年。

 不幸な事に彼に関係する親しき者達の大半は既にこの世を去っていたというのだから。



 青年は決意した。村を襲撃した魔物は自分が倒し村を救うという決意を。

 しかし青年の状態は冷静であるとはいい難い。

 村人達から期待はされているものの、

 そのような状態で魔物の前に送り出すのは得策ではないと諫められるも、

 特に青年の心を変える事もなく魔物の元へと向かっていった。



    *   *   *

ヨルン「お腹空いた!」

リム「さっき食べたばっかりでしょう?」

モブ達「今一度村に戻ります?」

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