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約束されし進化の触手

 蛇の魔物育成計画。

 無計画ですがなんとかなってます。


 体感にして長々と1ヵ月。

 対話も交えて親睦を深め。

 飴と陰ながらの鞭を与え続けております。


 蜘蛛糸地獄にも負けず。

 蜜塗りたくりのベトベト刑にも負けず。

 上位蛇からのぐるぐる拘束にも屈さず。


 楽しみといえば肉体強化がお気に入りの様で脳筋スタイルを貫いている。

 魔法も覚えれば使える筈なんだけど、とも話したが結局触手一本である。

 そんなニルンは各上な魔物に敗北する事も多々あったものの、成長を続け。 



 ついに念願の分岐点。



「ニルンよ。いよいよ魔物として進化の条件が揃ったぞ!

 レベル100突破である! 進化先は3つあるぞ!」

 


 『アサシンヴァイパー』『エビルパイソン』『スネークリング』



「名前だけだとこんな感じだけど。説明欲しいかい?

 ついでに進化しちゃうと戻れないからね。

 Bボタンキャンセルする間もなく進化だから気を付けるべし」


(勿論説明は欲しい! 出来ればどんな姿になるのかも…)



「OK。個人的な主観だけど。」



・アサシンヴァイパー

 蛇にしてはイケメンな方。蛇の騎士っぽい。行動はニンジャ。

 物理的に凄く強くなる。動きやすいし体力も相当に高い。

 そして触手も増える。さらに隠密活動可能。やっぱり忍者。

 鱗飛ばして飛び道具。回転しながら高機動。

 煩くは無いので忍ぶ者だね。

 素直に自分がオススメする進化先かな。



・エビルパイソン

 生命力溢れる巨体。故に始めは動くのに手間取るかも。

 魔物的な見た目で冒険者の大半は逃げ帰る系のヤバさ。

 毒性が強くて放屁でも他の生物を殺せるレベル。

 一応毒関連は慣れると操作可能で色々と応用可能。

 毒に対する耐性も相当なもので状態異常対策バッチシ。

 人間と係わる気が無ければ選択肢に入るかな?



・スネークリング

 白くて綺麗で可愛い蛇ちゃん。だけど魔物だからデカイ。

 他の蛇からモテる。他の魔物も戸惑うらしい?

 魔法寄りの能力でファンタジーな元素魔法を操れる。

 だけど、この魔物の素材が高級品らしくて人間から一攫千金で狙われる対象。

 一応個体をそのまま欲しがる貴族もいるらしいけど真偽は不明。

 でもまあ、普通に強いからオススメする枠だね。



(そんじゃアサシンヴァイパーに進化したーい)


 そんな説明を聞いたニルンのテンションは最高潮。

 やはり進化して強くなれるというのは良いものだ。

 魔物にとって強くなれるのは最大限のご褒美です。


「即決だねぇ。理由は聞いていい?」


 折角なので理由を聞いてみよう。

 迷う間もなく即決しちゃったし。

 自分だったら、戻れないと聞いて迷いそうなものなんだけど。


(イケメン! 触手! 飛び道具! ニンジャ!)


 あらやだ。この子しっかり考えてるわ。

 食いつきそうなワードを入れた結果、全部拾いましたよ。


「流石は自分の分身。他のがダメな理由は?」


 折角なので検証も交えてその辺も聞いてみよう。

 テンションあげあげなので快く答えてくれるでしょう。

 ちょっぴり考えたようですが直に答えが返ってきました。


(んー。エビルパイソンは即却下した。デカすぎてもねぇ)

(生き抜くに毒とか頼もしいかもしれないけど。元々不死身っぽいし)

(でもそういえばヴァイパーって聞くと毒のイメージあるんだけど)


 ほうほう、自分と似たような理由で却下しおった。

 実際進化してみると、そのデカさがなんとも癖になる。

 本能的にもタガが外れて暴虐無人に振る舞えるから意外と好きなんだけどねー。

 他よりランク低めで能力劣り、毒に頼り気味というのが難ですが。

 とまあこの辺は実際になってみないと分からない訳でして。

 一先ずニルンの疑問には答えてあげましょう。


「んー、アサシンヴァイパーも牙で毒持ってるよ。

 エビルパイソンのが毒霧出したり色んな毒作れたりするっぽい。

 口から毒液飛ばす系もエビルパイソン側だね。

 むしろ触手の先からも飛ばせるのが魔物」


(ふーん。スネークリングは魔法が魅力だけど)

(やっぱり物理的に分かりやすいのが自分にはあってそう)

(戻れないってなると…その辺が決め手になったかな)


 成程、自分は好きな時に好きな種族になれたが故にこうして魔法寄りになったけれど。

 それが出来なければ目の前のニルンと同じように

 アサシンヴァイパーの道を選んだかもしれないな。

 …物思いに耽るが、それだけの意味しかない思考であった。

 さて、満足したし最終確認と行こうぞ。


「OK。じゃあ意識すべし。

 間違えて選択しても後戻りは出来んぞ」


 気持ちを切り替え、後戻りは不可能であると念を押す。

 『セーブ&ロード』は教えてませんし。一発勝負なのですよ。


(やりかた分かんないんですけど! ヘルププリーズ!)


 その瞬間思考がフリーズ。

 脳内にブルースクリーンが表示される。

 再起動に数秒の時を要し、周囲にお花畑が広がった。

 どうすれば良いのか。この辺は守護者に任せっきりであった。

 ある程度意識はしたものの…正確な方法が分からない。

 突如広がったお花畑に戸惑うニルンがいるが、そんな事より進化の手順だ。

 考えるも伝える事の出来ない感覚勢。

 しかしそう考えれば目の前の分身もそういう類の筈である。であるのなら。


「んー。と言いましても。正直分からんのですよ。

 条件は満たしてる筈だから後は。

 進化するという決意が足りないのかもしれん。

 自分の時も進化出来そう! そんな感じでなんとかなったし」


 出来るという事だけ伝えれば何とかなるだろうという他力本願思考。

 いや、自分を信じているのだ。自分の分身を信じているからこそ。

 説明など要らぬ。不要。無駄である!


(むむむ。。。確かに力が湧き上がってくる感じはするような)

(うむ。理屈はいらん! 気合と根性! 信じる心!)


 そんな思いが通じたのかニルンはやる気だ。

 その意気や良し。ほんのり魔力の流れが変わった気がするぞ?

 ついつい出してしまった花畑の所為かもしれないが良い流れの筈だ。


「よし良い子だ!

 ボクも魔力をガンガン注ぎ込んでやろうぞ!

 アンデッドにならない程度に。加減しらんけど」


(おう。もっと熱くなる! むしろ体が熱い! 力が目覚める!?)


 なんだか上手く行きそうね?

 ガンガン魔力が上昇しておるぞ。まだまだ送り込めそうだ。

 流石に自分の分身だけあって、魔力を蓄える容量は大きいようです。


「まあ熱いのは魔力送り込んでるからだけども。

 あ、尻尾燃えた? 見てみ、火柱上がってらあ」


 そして調子に乗っていたら、あら不思議。ニルンの尻尾が燃えました。

 どういう理屈で燃えたのかは分からないけれどとっても熱そうです。


 演出用にその辺で光らせてた火花にでも触れてたかな?

 視野が全体を見過ぎて距離感を掴めないが故にこういう事故もあるものさ!


(うっぎゃあー! 燃えてる? 焼け死ぬ!)


 絵に描いたような騒ぎっぷりで辺りを駆け回るニルン。

 傍には例の故郷のあの泉があると言うのにその手前で駆け回るとは。

 なんとも間抜けな蛇よのう。


「おめでとう。ファイヤースネークに進化したよ。

 正直スマンカッタ。演出の花火で引火するとはねー。

 ほれ、泉にダイヴじゃ」


 言うが早いか泉の中に飛沫をあげて蛇が飛び込んだ。

 少々調子に乗り過ぎたようだ。反省せんとね。


(あー…ていうか進化って。ん。ンン?)


 そんなこんなで困っていた所でニルンに変化が訪れた。

 体が光の粒子に包まれておる。

 別に死ぬ訳ではないと思うのだが。


 魔力の送り過ぎでアンデッドに!?

 正直に一瞬ヤっちまったか?

 なんて思ったのはニルンには内緒だ。


「お? なんか感じ取れた? 良い感じに光っとるで」


(おお。こんな感じか。言葉ではワカランが。感じ取れた!)


 こうしてひと悶着ありましたがニルンの体が変貌する。

 なんというか予想通りというか狙い通りというか。

 アサシンヴァイパーに進化しまし…た?


 と思ったらなんか違う。これってアレだったか。

 一つ前の進化形態っぽいアイツ。


 確か名前はソードヴァイパーさん。

 ともあれ狙いと近い進化は出来たようだ。

 傍から見てたけど、進化する時はあっさりよね。

 魔物って不思議! さて褒めに褒めて褒めちぎろう。



「よしよし。おめでとう。

 ニルンはソードヴァイパーに進化した!」


 とりあえずは伝えてやらねば。

 ソードヴァイパーとやらに進化した事を。

 正確なやり方が分からずとも、やれば出来るもんだ。


(あれ? アサシンヴァイパーとか言ってなかったっけ?)


 やっぱり疑問に思われるよね。

 だけどなってしまったものは仕方なし。

 もう一回進化すれば多分アレになるし何も問題は無い。

 自分であればそう思う。故に何も問題は無い。筈である。

 多分原因は称号とかその辺の関係だろうし。深くは考えぬ。


「んーとね。自分の場合は飛び級してアサシンヴァイパー行っちゃったの

 多分その一つ前の進化がそれ。もっかい進化すれば大丈夫よ!」


 問題は無い筈なので。自分がどうなったかを伝えてあげよう。

 一応進化は出来たのだ。その先も頑張って貰わねば。

 そういえばステータス閲覧させるのはどうするんだろうか。

 守護者がやっていたようには…

 そういえば『視覚的呪術』があるな。

 一丁やってみるか? モチベが上がるかもしれん。


(おう。不思議な感じだけど。かなり強くなった気がするぞコレ?)


 何気にニルンも強くなったのは実感しているようだ。

 『解析』スキルで今のうちに様子を伺っておかねばならぬ。


「そりゃあ…ランクF-からランクDだし。2ランク上っぽいね。」


 調べてみればランクはDに分類。

 能力もそこそこ高めであるな。

 開示準備もそこそこに会話を進め、タイミングを伺う。


(へい。ランク分けされてるなんて今聞いたぞ。詳しく!)


 そしてニルンは食いついた。

 予想通りである。なんとも分かりやすい奴ですな。

 では要望通りにご開帳ですよ。


「んーとね。今から説明するけど。こんな感じ。」



――――――――――――――――――――――――



名前:【ニルン】ランクD 種族名『ソードヴァイパー』


Lv:* HP256/256 MP400/400


攻撃:330

防御:280

魔法:220

速度:255



特性

『不死の肉体』『熱源感知』

『触手-Lv1』『硬質化』


通常スキル

『危険感知 - Lv2』『追跡能力 - Lv2』

『隠密 - Lv2』『毒の牙 - Lv1』

『急所狙い - Lv1』『受身 - Lv3』


攻撃スキル

『まきつき - Lv2』『かみつき - Lv2』

『回転乱舞 - Lv1』『捕食-Lv3』『吸血-Lv1』

『触手剣技 - Lv4』『首狩り-Lv3』『ガード-Lv3』『見切り-Lv2』


耐性スキル

『魔法耐性 - Lv1』『精神抵抗 - Lv1』『熱耐性 - Lv1』

『呪術耐性 - Lv*』『肉体変化 - Lv*』


称号

『ヨルンの僕』



――――――――――――――――――――――――



 そして解析してみた所。分かった事が幾つか出てきた。

 やはりというか、ステータスが高めであるという事。

 妙に耐性が付いてる事。

 そして称号に『ヨルンの僕』なんて付いてる所。

 『森の主』ぐらい付いてても良いのにねー。

 とは思ったけれど、再現したループ空間の中の森だから付く訳ないか。



 結果、ニルンは他の同種よりも強いと。

 ん…強いと言えばネームドモンスターだったか。成程!

 さっくり苦もなく名付けられてそれがどういう意味かも忘れてたよ。

 でもレベルが変なのはどういう事だろうか。


 もしかして。カンスト? カウンターストップ? 吹っ切れた?



「さってと、正確な情報じゃないのは申し訳ないけど。

 ねえ、もっかい進化するよう頑張ってみてくれる?」


 もしかすると…魔力を上げ過ぎたのかもしれない。

 他にも理由がありそうだけど。自分の分身という所も大きいのかも?

 見た所、さらに進化しそうな雰囲気ではあるし挑戦あるのみである。



(ん…分かったけど。さっきと同じでいいの?)


「うん、やってみて良いよ。レベルおかしいし。もっかい進化出来そう。」


(あいよ。この姿でもちょっと動いてみたかったけど。先も気になるし!)


「おっけい。今度は応援だけしてるー。」


(気になると言えば、ヨルンの僕とか。どういう事よ?)


「なんか付いてた。自分が作っちゃったから…付くのも仕方ないね!」


(自分で付けたんじゃないんかい。まあ良いけど。)


「そんな事より進化! 進化! 気になるよー。」


(ほいほい。やってみるさ!)



 連荘で進化であるが…自分も経験があるので自然な事よ。

 多分できる。気分的に出来ると信じてる。

 むしろ可能であるとの確信がある。

 ニルンならやってくれるだろう。がんばれニルン!


 そんな応援が通じたのか。早速ニルンは光に包まれ。

 今度こそ『アサシンヴァイパー』に進化した。


 効果音を鳴らせるのであれば鳴らして祝福するのだが。

 出来ない事もないか。今すぐ姿を現して演奏すれば良い。


 だけど…今はまだ早い。

 目の前のニルンが一つの完成形を迎えるまで姿は見せぬのだ…


 今すぐ愛でたい…だが我慢だ。

 成長を阻害する恐れが高いという理由の一つである。

 今はこうして守護者のように対話出来る程度が丁度良いのだ。


 そして一番の理由、明晰夢のような感覚で作れている森の空間なのだが。

 目覚めるような感覚で意識を切り替えてしまうと、その森フィールドは消え去り

 あっさりと何もない空間に戻るのだ。


 そして戻るだけではなく、結構な問題も起こるんです。

 理屈は分かりませんが、この空間とスキルの問題でしょう。

 ヨルンが目覚める事により、安定していた環境が一転し暴走が始まるのです。

 魔力の奔流が巻き起こり自分以外の魔物は苦しみ、のたうち回り。

 そして死んでいくのを何度も目にしてしまったという経験がある。


 中でも実験の為に肉体を与え、愛でていた魔物の頭部が急に破裂して

 アンデッド化したモノ達が擦り寄ってきたのは怖い思い出だ。

 やっぱり…この空間は異常なのですよ。


 ともあれ責任をもってアンデッドな魔物達は胃袋に収めましたよ。


 折角名付けた初めての成功体なニルンにそんな思いをさせる訳にはいかぬ。

 また作れば良いじゃん? となって愛情がなくなってしまう。

 ニルンをモノにしてはいかんのだ。

 見れば当のニルンは堂々としたドヤ顔を決めている。


 守りたいこの笑顔。

 早速話しかけて、その笑顔を崩してやろう。



「ニルンよ。やっぱり進化出来たね!」


(おお…さらにヤバイ)

(何がヤバイって聞かれたら。全身がヤバイとしか言いようがない)


「語枠が少ないのは流石は自分。確かになんかヤバイよね!」


(うむ。ヤバイヤバイ。何コレ凄い)


「うんうん。自分も進化した時そんな感じだったから分かる」


(全く別の体になった。ふわふわする…)


「全力を出したらぶっ飛ぶから気を付けてね」


 そして当人達にしか分からない対話が暫く繰り広げられた。

 さらに暫く後。ニルンがステータス開示を求める。

 ちょっと調べて大体こんなもん。

 過去の自分はどうだったかな?

 そう思いながら開示し見比べてみると、やはりというか何というか。

 ステータスは飾りです。数値だけが全てではありませんよ。

 それは身をもって自身が体感しております。




――――――――――――――――――――――――



名前:【ニルン】ランクC+ 種族名『アサシンヴァイパー』

Lv:1 HP1024/1024 MP1300/1300


攻撃:812

防御:612

魔法:999

速度:1024


・『隠密』→『暗殺者』

・『隠蔽』『スケイルシュート』取得

・『物理耐性』取得

・『触手』が3本に増えました

・各種耐性が強化



――――――――――――――――――――――――



 スキルの取得が控えめに見えますがこれが普通のようです。

 飛び道具が増えて物理攻撃に結構な耐性を得るってだけで

 それはもう…人間にとっては、とんでもない事なのですよ?


 一言でヤバイというのも仕方無し。

 ランクAに上り詰めたが故のチートっぷりに感覚がマヒする所であった。


 そもそもランクがAと言えば本気で行動すれば、

 世界の動向が変わるぐらいの魔物っぽいのですから。

 こうして…生命作って弄ぶ程度にはチートなのですし。

 ランクにしてBの魔物だって…人間達の国も大打撃受けるぐらいに強いようなので。


 災害クラスと呼ばれるCランクだって破格の強さを持ってる筈なのです。

 ソレ等をRPGにおける上位にまで上り詰めた勇者だか英雄とか廃人だとか、

 そんな呼ばれ方をするような人種がですね、

 軽々しく魔物達を狩る様子を見せつけてくれたりするから、

 なんだかんだで見方によっては弱く見えるのかもしれないだけなのですよ。


 正直に…ランクAに分類される自分でも

 今目の前に悠然と佇むニルンはちょっと怖く見えます。

 実際に戦う事になるのなら、勝てるとは思うんですけどね。


 さてと、そんな思いをニルンに伝える訳にもいくまい。

 向こうさんもステータスの確認を終えたみたいですし対話と勤しみましょう。



「うん。正直驚いてる。普通の同種より数段強いわ」


(マジで? そんな凄いの自分?)


 凄いも何もHPが2倍である。

 その他も1.2倍以上ありおる。

 それがどのぐらい凄い事なのか分からないが。

 少なくてもこの種族一本でやっていくだろうニルンの可能性に期待しよう。

 まだまだ先の進化もあるみたいだからね。


「マジよマジ。能力的にランクBぐらいある」


(ほえー。というかどうやって表示してんのコレ?)


 まあそういう疑問も抱くよね。

 守護者がこういった情報をどうやって見せていたかなんて

 今となっては分からないけれども。


 自分がこうして『視覚的呪術』によって

 ニルンへ見せている方法と似た感じでやっていたのか。

 それとも脳内に直接? むしろ眼球に直接。なのかもしれないが。

 魔法を知らないニルンにとっては理解は出来んだろう。


「自分の魔法の効果よ。ついでに能力値は大体の値だけど。

 正直に数値だけじゃ図れないモノも多いから過信はしないでね」


 ともあれ様々な出来事をニルンに体験させ覚え込ませねばならぬ。

 魔法関連もある程度伝えておかねば、あっさりと足元救われる事にもなりそうだし。


 ちょっと過保護にしちゃいそう。

 少しばかり急ぐ必要がありそうな予感が沸いて出たから尚更だ。


 やはりというか、なんというか。

 このループな空間の中。人間が異様に多く確認出来た。

 所謂、蛇の勘が働いて不安が込みあげ、気になる事この上ない。


(うむ。大体把握した。油断せずがんばる)

(というかさ。強くなってるのは良いんだけど)


「うん。なになに?」


(改めて聞くけど。自分。何すれば良いの?)


 どうにも落ち着かず。空間内の観察をしている間にニルンがそう聞いてきた。

 何をすれば良いか? 答えは自分の暇つぶし。それだけで良かった筈なのだが。


「先に謝っとく。分かんない!」


 なんとなく先に謝っておいた。

 謝っておかねば、ならない気がしたからである。

 むしろ謝る以外に何がある? 一体何に謝っている?

 暇潰しにニルンを作った事か。何も考えてなかった事についてか?

 それともこれから起こるであろう事象についてだろうか。

 人間らしき反応が一つ。また一つ。うむむむ…騒がしい。


(OK。知ってた。だけどアレでしょ?)

(突き進んでいけば何かあるかもって思ってるんだよね?)


 そんな内心露知らず。なんだか信頼されてるような発言ですな。

 性格面の育成は成功かもしれん。

 やはり育成パートはイージーモードだった。

 それ故に、ちょっと怖いですな。

 失敗した時の反動に対処できるか否か。


「うん。何か出来そうな気がするのよね。所謂ただの勘ってやつ」


(なら…進化して楽しくなってきたし聞いてみるよ。お次は何すれば良い?)


 さてと、どうやって切り出そう。

 現状は大体把握した。

 この人間達。察するにループ空間の外からやってきたようです。

 原因はそうだね。アレですよ。

 ニルン育成の為に無理やり押し広げちゃった所為ですよね?

 別の要因かもしれないけれども。情報は相変わらずに足りません。

 向こうさんから意図的に入ってきた可能性も捨てられませんし。


 だけどもし自分の所為であるのなら。

 今後の展開は容易に想像が付く。

 向こう側から御用があった場合の想像もし易い。

 どちらにしても…悪いイメージばかり沸いてきます。


「そうだねー。なんかこの森に人間一杯いるし。

 無双してみる? ある程度は誘導したりも出来るけど。

 自分は冒険者達相手に100パーティぐらい無双した経験あるんだよね」


 まずは軽いジャブで牽制を。

 なあに自分だって人間相手に結構な数を相手どり頑張れたんだ。

 目の前にいる自分の分身であり能力的に上回っているこのニルンであるならば。

 生き残るぐらいは容易であろう。

 問題は…性格が歪んでしまわないか。それが心配である。


(んー、気は進まないな。報復怖いし)

(向こうから襲ってくるならまだしも。ねえ?)


 そうそう、自分の度胸はグラスハートなのですよ。

 自ら打って出るような性格はしておらんのだ。

 一度砕かれた心は直に再生しますが、再生される度に歪になっていく訳でして。

 これは育成方針を見直す必要がありそうです。


「まあ、そりゃそうだ。そうなんだけど。

 そのー。なんというか。人間側の敵意と恐怖感が半端ないの。

 自分の時にはこんな事…なかったんだけど。もっかい謝っとく。ゴメン」


 さて、何も考えずに現状を伝えてしまうついでに謝ってしまったけれども。

 選択肢として選べる択は幾つあるだろう?


(………つまり。人間側に見つかり次第襲われると?)


 しかしあの程度の一言で何かを察したらしいニルンは流石である。

 穏便に済ませられる状況はどう考えても作れそうにないし。

 ループ空間内であるが故に…互いに逃げられぬ。

 むしろどの程度まで広げてしまったかも覚えてないが故に現状把握がし辛い事。



 Q.どうしてこうなった? 

 A,閉じ込められたからこうなった


 Q.人間側の数は?

 A.いっぱい


 Q.人間の質は?

 A.民間人っぽいのも多い


 Q.ソレ等の反応は?

 A.現状を理解できずに混乱状態


 Q.対応してる人間は?

 A.冒険者風や騎士風の人間達の中には魔物相手に奮闘している者もいる。


 Q.死傷者は出てる?

 A.勿論です。野生の魔物相手ですから。


 Q.責任問題

 A.オレは悪くねぇ! 囚われの蛇ですもの。



 改めて確認してみた所。

 状況は大分悪いようですな。


 一番重要な部分は。

 このヨルンを閉じ込めた側が悪い!

 考えれば考える程にオレは悪くねぇ思考へ向かう。

 むしろ向ける。向けてしまえ。悪くないんです。


 冷静に考えれば自分の魔力で生み出した魔物が被害を生んでいる訳ですし。

 巻き込まれているであろうモノ達を助けてやりたい気持ちはある。


 しかし訳が分からん状況で、どうにも出来ないのもまた事実。

 さらにはこの場へニルンもいる訳でして。

 自分単品であるのであれば幾らでも無茶をするのですよ。

 ニルンがいるが故に…迷う所なのですよ。

 万が一、この『ラプラス感応』による森林地帯の再現が解除されようものなら。


 もれなく阿鼻叫喚の地獄絵図。

 意図せずともに外的要因で覚醒するだけで、空間内の魔力が荒れ狂い。

 ユグドラシル・ティアのヨルン様は巻き込んだ人間達をミナゴロシ。

 魔王的な凶行に及んだと人間側に認知される事でしょう。

 むしろもう手遅れかもしれんぬ。


 そんな事よりもと、今の自分は全てを一蹴し、

 一番重視する事はニルンです。最優先でニルンを死なす訳にはいかぬ。

 今の最重要事項である。勝利条件である。むしろ防衛条件と定める。



「多分。襲われたりもするし。逃げられたりもするだろうし。

 友好的に出来るような感じでは…ないです。正直ニルンも危ないかも」


 少し考え込んでしまったが現状は伝えよう。

 冒険者の質は分からんけれども。

 騎士風の者達の装備が半端ない感がする。

 ありゃあ…マジックアイテムの類であるな。

 魔法の力を感じるよ。冒険者もソレ等を持っている率が高そうである。

 つまり…ニルンにとってちょっとばかりハードな難易度かもしれんね。


(えーと、もう手遅れ?)


「うん。どうこう出来るレベルじゃなさそうです。

 そもそもになんでこんなに人間がいるのか…ありえん。

 冒険者どころか民間人まで多い事…非戦闘員っぽいのも多いですよ」


 正直に…全部話したい。

 話したいが。話したいが…話してしまおう。そうしよう。

 もういっそ全てをぶちまけて楽になり。真なる許しを乞おう。

 悩むのは止めである。細かいやり取りなど不要だ!



 いざ。暴露タイム! 今までの自分が馬鹿みたいだ!



 …

 ……

 ………

 …………

 ……………



「はい。信じられないかもしれませんが。あらかた話しました。

 ゴメンナサイ。心の底からの謝罪の言葉を送ります。スマン!許して!」


 かくかくしかじかかくかくと説明を終えました。

 様々な界隈で便利なこの表現。一体誰が考えたのでしょう。

 話せば1話2話軽く吹き飛んでしまいそうなぐらいの説明を一瞬で終えました。


 このヨルンが作り出した空間で。

 ヨルンが生み出した魔物達を相手にニルンは奮闘していた。

 さらにはヨルンの空間が妨害されると暴走して全ての生き物が死ぬでしょう。

 ねっ…説明は簡単でしょう?


(うむ。色々とおかしいと思ってたんだ)

(そもそも、おかしい事ばかりだったし)

(むしろ何もかもが、おかしい訳でして)


 あまりに突拍子もない話を受け入れたニルン。

 流石は自分の分身。おかしいとしか思ってない。

 しかし思う所はあったようで、理解はしたようです。


「うん。もうなんでも聞いていいよ。必要あれば出来る限りサポートもするよ」


 状況が良くなったとか悪くなったとか考える必要等ないのだ。

 行き当たりばったり。魔物なのだからゴリ押し思考。

 知的な魔物役は自分以外の他に任せればよい。

 考えぬいて失敗する方がダメージが大きいのだから。

 今現在は存分に落ち込むのです。


(聞きたい事が多すぎる。だから今必要な事だけお願いするよ)


 対してニルンは平常運転。変わった様子はない。

 多少キリっとした顔つきになったぐらいである。


「えーと。怒ってない? 許してくれんの?」


(逆に聞くけど。ヨルンの意向次第で森に生きる命の全てが死にます)

(そんな事を平然と言ってのける奴に逆らえるかい?)

(むしろ死にたくないから媚びへつらう側なのは自分)

(それが出来るって理解もしたし。怖いのはこっちなんですがねぇ?)


 なるほど。それもそうか!

 ニルンに教えられて現状を理解した。

 ほんのりニルンが怒り顔なのは許そう。


 反省点は多いが、盲蛇に怖じず…って所ですな。

 だけど取り返しの付かない事態とはならん筈である。


「あー。ゴメン。色々見せすぎたし話しすぎたかも。

 だけど今の所そんな選択はしないから。信じてね」


 まずは謝る。何度でも謝る。

 謝罪パートである。言葉だけでの謝罪ではない。

 次に生かすべくヨルンは甘んじて全てを受け入れるのだ。


(非常事態だってのも理解したから。とりあえず質問タイム)

(このアサシンヴァイパーっての。どのぐらい強いの?)


 そうしてニルンは先に進むべく質問を投げかけてくる。

 状況を打破する為に必要な情報が欲しいのですな。分かります。

 であるならば、答えてあげるが余の情け。


「人間側が定めるランクにしてC+。

 ちょっとした災害クラスの魔物に分類されてる系の魔物です。

 国側の騎士を面と向かって100人以上切り伏せる野生の個体も情報に有り」


(うむ。自分でも理解してるけど。相当なゴリ押しも出来る体みたいだね)


 ランクにしてC+の魔物はまさに災害クラス。

 対策出来てなければ小さな街ぐらいであれば全滅するレベルだ。

 尤もその魔物にその気があるのならの話だが。

 何にしても例外という存在は常にありうる。


「だけど人間の中には例外もいるんで注意。

 自分の経験で、あっさり首を跳ね飛ばされたり素手で圧倒されたりもした」


(むむむ。油断ならんね。見かけたらどうすりゃ良い?)


 逃げるんだよぉー。という選択を押したいが。

 正直な所。開幕一番の、その選択肢は廃したい。

 目の前のニルンが面と向かって戦うのであれば負ける構図は思いつかないし。

 触手を戦闘に扱う事に関してはこのヨルンより上なのではないか?

 見ている分にはそう思えてしまうのだ。


「正直。ニルンは自分より肉体的に強そうだし。なんとかなりそう。

 戦い方も遠慮なんて全然しないタイプに育ったみたいだからね」


 故に戦わせてみる方向へ修正をかけてみる。

 とりあえず褒めて褒めて褒めちぎればその方向へ向くのが自分だからね。

 何より逃げるだけだなんて楽しくはない。

 正面切って打ち破って貰うのが良いのだ。

 なんて思考が向いたが、別に人間相手に蹂躙しろと思っている訳ではない。

 ニルンはどう思っているのか聞きたい所だけど質問パートはまだ続く。


(強さは大体理解したし慣らして覚えてくよ)

(後は、サポートっていってもどのぐらい出来るの?)


 そういえば考えてなかったな。サポートするとは言ったものの。

 出来る事といえば、考えながら答えてみようか。


「助言に生体レーダー役にも。森林フィールドをある程度操作可能。

 魔物の思考の向き方を変えてある程度の安全地帯も作れる。

 他には意図した場所に死の呪いをふりまける。もしくは魔力の奔流にて滅せる」


 この辺は可能だ。前半はまあ普通だが。

 後者は二つはどうしてこうなった。

 ついつい出来るが故に伝えてしまったが

 困った時のボム扱いで使って貰えれば良いかもしれん。

 確実に使いますフラグではない筈だし。多少はね? 


(OK把握。使う時は言う。最後に言葉の問題!)

(人間相手なら一方通行でも何言ってるか知りたい)


 華麗にスルーされた気もするけど、本命の質問らしい。

 確かに人間が何を話しているか、それは知りたいものだ。

 どうやら、問答無用で無双蛇をするつもりはないようだね。

 そんなニルンへプレゼント。あらかじめ用意しておきましたとも。


「通訳。と思ったけどこれを受け取れい。

 知恵の実である。実験最中に出来た副産物ですぞ。コレは言葉が覚えられる」


 あらまあ。なんて便利なアイテムなのでしょう。

 翻訳食べ物もびっくりのユグドラシル製の木の実でございます。

 使用方法は至って簡単。今からご説明いたします。 


(なんだいその便利アイテム)

(でもまあ、覚えられるなら嬉しいことこの上ないな。食べればいいの?)


「いんや。食べてもお腹が膨れるだけよ」


(ん。ならどうするの?)


「こうするの。こっち向いて動かないでね?」


(これでOK?)


「OK」ズドン!


(ぬわー!)


 使用方法は至って簡単。2度言いました。

 対象の頭部へ直接埋め込みます。

 ねっ? 簡単でしょう?


「頭部に直接打ち込む事により脳に馴染ませ、直接記憶を埋め込むのです」


 目の前では体を弓なりに反らせ、ビクンビクンと痙攣する蛇がいる。

 そのうち痙攣も止み。全く動かなくなった頃。

 HPが0になった事を確認しました。

 その後は元気に復活です。流石ニルン。なんともないぜ。


(オイコラ。やるなら言えよ。今のは痛かったぞ? 死にかけたんだぞ…)


 当のニルンは怒り心頭。

 戦闘力が50万を超えてそうな台詞が飛んできました。

 しかし得たものは大きいのですよ?

 ニルン相手にしかできない物理的勉強法である。

 何かを得るには代償が必要なのです。


 実際の所。出来るからやってみたくなった。

 耐えぬける相手がニルンしかいなかった。

 故にやってみたくなった。なので私は謝らない。


「だって、痛いし。普通は死ぬし。HPが0になるのを確認致しました」


 しかしあのダメージは肉体的というよりも。

 精神的に受けたダメージが大きそうだ。

 何度も繰り返しやって良い事ではなさそうです。

 死なないと分かっていても死ぬまでの過程を長々と…

 生々しく鑑賞してしまいましたし。


(痛いどころのレベルじゃなかったぞ…今度は言えよ? 絶対だぞ?)


 そして必死に主張するニルンがいる。

 余程に嫌な体験をしたのだろうか?

 心なしか、前振り的なアレを感じる。

 もう一度ぐらい良いかもしれない? 試してみるか? 聞いてみよう。


「うん。魔法的な能力が欲しい場合は同じようにするから。覚悟してね」


(いや…もう要らない。というか。本当に。アレだ。理解出来そう。何これ凄い)


「そのうち癖になるかもしれないよ? 死なないから。痛み受けるのも快感に」


(いえ、謹んでお断りします。痛いのはヤです。OK?)


「OK」ズドン!


 おっと手が滑った。手は無いけれども正確無比に次なる弾丸もニルンの額を穿つ。

 一瞬の静寂が訪れた。時間にして数秒でしたが先ほどよりも長い間があった。


(ふぅわー!)


 突如身を震わせ体を大きく反らせたニルン。

 悶え苦しみのたうち回り。泡を吹きだし痙攣を続けていた。

 あれ? さっきより酷い。与えた内容は確か。


「今度の知識は魔法の障壁と、それを切り裂く魔力付与(エンチャント)ね」


 とりあえず与えた魔法は実用的なものである。

 ニルンにとっては重要になるであろうスキルを授けたのだ。

 これが有ると無いとでは生存率は相当変わるだろう。

 故に無駄ではない。心からの感謝を頂きたいです。

 しかし…言語よりも魔法の方がダメージは大きいのか?

 それとも精神的なダメージが蓄積してしまったか。ふむ。でも大丈夫そうだ。


(オイコラ。やるなら言えと言っただろう? 殺すつもりか?)


「そんなつもりはないさ。魔法は怖いぞぉ。防ぐ手段も必要だろう?」


(本当これで終わりにしてくれな? OK?)


「OK」ズドン!


 おっと手が滑ったパート2。

 流石に反応して避けてくるかと思ったのだが。やはり弾丸は眉間に直撃。

 血飛沫が放物線を描き、大地を染める。

 ニルンは渋い顔をして虚空を睨み付けていた。


(………)


 見るからに怒りを堪えておる。

 今度は慣れたのか。それとも与える情報がアレだったが為か。

 大したダメージではなかったようで、すぐに落ち着きはしましたが。


「うむ。ゴメンよ。OKって言うと打ち込みたくなるんだ」


(やるなよ。絶対やるなよ…ふりじゃないぞ。ほんとにやめて。頭が割れそう…)


 流石に参ってしまったようですね。反省!

 思えばニルンからしてみればこの自分に逆らう事は出来ない関係だったのだよ。

 じゃれあってるつもりが一方的に押し付ける構図だったのですね。


「うん。ゴメン。調子に乗り過ぎた。自分の分身なら分かるでしょ?」


(分かったから。アレだ。最後のは何送ったの? 全然理解できん)


 む? 理解できんとな? ちゃんと送れたか心配ですな。

 大したダメージも受けてなかったみたいですし。

 言葉に出して確認してみましょう。


「ネーサンの変顔スクリーンショット集」


 そうです。ニルンには所謂画像集を送り付けました。

 完全に役に立ちませんが、これも一つの検証です。


(誰だよネーサンって。こんなの見る為にあんな痛み味わったのか!?)


 ふむ、どうやら反応を見る限り画像の確認は出来た模様。

 しかし、こんなのとはこれいかに? 修正が必要かね?


「なんだよ。可愛いじゃん? 感謝しろよ」


(いや…まあちょっと可愛いけど。蜂の魔物娘?)


「世界に一匹しか存在を許されないレアモノだよ」


(ううむむむ。。。横道に逸れてる! 詳しくは後で!)


 何やら気になる様子でしたが。今は別の目的がありました。

 ニルンが言うように横道に逸れてはいかんかった。

 どれ…軌道修正スイッチON。

 真面目に行かねばならん頃合いだ。

 その為に魔法に対抗するスキルも与えたのだから。

 ともあれニルンは『魔法付与』『魔法障壁』そして言語も覚えました。


「了解した。そんじゃま。死なない程度に頑張ってね」


(あい。簡単には死なないみたいだし様子見てくるわ)



 こうしてヨルンの分身であるニルンは行動を開始した。

 ループ空間に巻き込まれた人間達の様子と動向を探りに行動する。

 当のニルンは何をすれば分かってないが

 好奇心の赴くままに間もなく蛇の魔物は人間と接触するだろう。


 ヨルンには予感があった。

 この空間を抜け出す為に巻き込まれた人間達が役立つかもしれないと。

 ニルンの行動に口を出すつもりはなかったが、そもそもに何も考えてはいないのだ。

 なるようになる思考でヨルンは広く浅く。知覚の及ぶ限りに観察する。


 人間達の様子が思わしくない。

 空間に充満する魔力の濃度に彼等人間は対応しきれないのだ。

 濃すぎる魔力は、酔いともにた症状を引き起こす。

 それだけでなく、それが要因で死を迎えるとなればアンデッド化する恐れもある。


 その広さは規模にして。過去に自身が引き起こした一国の滅亡。

 それ以上の広さでこの空間が広がっている事を把握した時。


 ヨルンの脳裏に過ぎる答えは。

 この空間より脱出する方法は他に任せよう。であった。


 そしてヨルンは思考を破棄し考え直す。


 巻き込まれた人間達を観察し状況の把握を優先し。

 ループ空間の中で湧き上がる魔力でダメージを与えぬように調整を始めた。

 なるべく人間が生きられるように、尚且つ自然に、

 これ以上に何かが起きていると感じさせないように集中しながらヨルンは思う。


 行動を縛られた!

 ループ空間の魔力の調整する事しかできない!

 状況を観察する事しかできない?

 あとはニルンと話すぐらい!?


 今…自分が行う魔力の調整を諦めると人間側は遠くないうちに全滅である。

 そんな危険性があると認識し。改めてヨルンは選択肢を考える。


 人間側を破棄するのは簡単である。

 簡単だからこそ、その道を選択肢に加える。

 だが今は選ばない。ニルンがやる気になっているからである。

 ニルンを助ける事だけなら簡単なのだ。

 結界を張るなり張り付いて魔力の調整を行ってやれば良い。

 だけど、人間と戯れる道をニルンは選んだ。ならば手助けしよう。

 決意を胸に秘めた時、片手間に自然と発生した野生の魔物であるならば。


 ある程度の思考を操作可能な事を思い出した。

 別にニルンだけのサポートに使う必要はないのだったと。


 空間内の魔力の調整を続け、蛇の家電製品はフル稼働状態。

 その結果。体調の不調を訴えていた人間達の幾分かが復帰を始める。

 手の届く範囲で魔物の動向を調整し、人間達より遠ざける。


 ヨルンは密かにループ空間内の調整を続けていた。

 そして一方。ニルン側は派手に事を構えていた。



 蛇無双の始まりであった。



   *   *   *

次回。蛇無双。ポロリもあるよ(首)

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