知恵ある魔物の日常
疲れた。いろんな意味で。
新たなフェチに目覚めそう。
生きながら解体されて…
傷口に蜜を塗りたくられながら…
肉体の再生を阻害されながらも癒され続け…
切り取った部位を嬉しそうに見せつけてくれる
あの狂喜に満ちたネーサンの顔が忘れられない。
死なないって良いね!
前向きに考えねば、精神が壊れる、むしろ何故壊れなかった!
理由はやっぱり死なない、復帰可能という所にある訳です。
そんな前向き精神のお陰か。
―――確認 『痛覚耐性』を獲得
これを取得した後には、痛みは感じるものの。
行動を起こすのに支障が出ない程度に意識を切り離す事が容易になったのだ。
今までは根性と気合だけだったものが。
今度はそれにプラスして『痛覚耐性』にてさらに不死身となったか。
多分これの上位のスキルに『痛覚無効』があるのだろう。
確か『ワールドイーター』時に取得していたらしいけど。
でもそう考えると…あれ?
なんで今まで耐性すら取得出来てなかったの?
―――確認
マスターが痛みで喜んでいるものと思い
取得を後回しにしていました
んなわけあるか?
戦闘時とか、これ程助かるスキルはあるまいて。
―――確認
冗談です。
マスターが取得を望んでいなかったが為
取りませんでした スルーしていました
ん…確かにそれはあったかも。
痛み感じなくなったら。そりゃもう…
『ワールドイーター』とまでは行かないまでも。
理性の枷を外れて、暴れまわりそうだったもんね。
今なら…多少の事ならどうとでもなりそうだ。
生きたまま解剖されて平常心保てるぐらいだもの。
ともあれ、今はそのスキルを取得しつつも。
ネーサン式解剖術の後遺症で。"綺麗"な台座の上で寝込んでいる所です。
うへぇ…体中がピリピリする。
ネーサンがその気だったら今頃自分はどうなっていたのやら。
自分の体が自分の物じゃなくなるような感覚を教え込まれて。
呪いが発動しなかったのが不思議なぐらいだ。
そして肝心のネーサンなんだけど。
自分自身の体中に針を刺し、固定させて無理やり自制しているようだ。
一体何事かと思ったが。
どうやら、ああやって無理やりにでも自分自身を止めないと。
衝動を抑え込めないようで、なんとも魔物って大変なんだなあ…
自分にも覚えがあるので、しみじみと思う。
こんな姿見せられたら。もう大抵の事は信じよう。
自分も正直、今この場で動ければネーサンを食べちゃいたいなんて思う始末だし。
可愛い子は食べたくなっちゃうのよ! 捕食的な意味で!
でも…自制しないといかんな。
泣きながら謝られる姿を見たら…
その自制心が跳びそうになったのはなんとも我ながらに怖い。
守護者がスキルを取得しましたなんて声を掛けてくれなければ危なかった。
…ティアちゃんだっけね。
つまり、前の子は本能赴くままに他の種族を食いつくしてしまったのだろう。
他のユグドラシル種を食った…らしいが。
この種は、そんなに強かったのかな?
まあ…自分と同じ種、能力と考えれば。
出来ないこたぁない、気がする。
残りのユグドラシル種は4種までしか存在できない事を前提として。
自分がその1種類に入れ替わった事は確定。
ネーサンを加えてさらに入れ替わった2種類が別で存在してるという訳で。
そう考えれば一番の古株がネーサンか。
そのネーサンの話と守護者の情報とを合わせれば。
とりあえずその情報は信じて良さそう。加えるのであれば。
さらにその2種とは敵対関係になるというネーサンのお言葉もある。
理由は前述のユグドラシル種を食ってしまった奴と
自分が同じ姿であるという事ね。
実際会ってみない事には展開がどうなるかなんて分からないけど。
ネーサンが事細かに説明してくれたからまあ。そうなんだろう。
何者なんだろうね。ネーサンって。魔王とか言われてるみたいだし。
変な趣味持ってるし、同郷人らしいし。
同郷人だが、やっぱりロードを挟んでの前回の記憶はないようだ。
ともあれ一つの転生としての形を知ることが出来た。
元人間…他にもそういった境遇の者はいるのだろうか?
もし転生しても自分のようなとんでもスキルを得て
生れ落ちねば生き延びられるのかは怪しいが。
ネーサンも相当凄い能力を持っていたに違いない。
それにしたって魔王とは…
少しぐらいぶっとんでた方が魔王らしいとは思うけど。
あんな姿見せられたら、やっぱり魔王であるな。
魔王としては十分過ぎるぐらいの威厳が備わってる。
ネーサンはその姿こそ可愛らしいのだが。
何というかやっぱり中身が魔物なのだ。
生きたまま解剖、解体を平然と人間にやってのけるその姿を想像してみよう。
助けを求めても無慈悲な肉屋との称号を持つ
魔王様の気分を高揚させるだけであり。
さらなる行為を助長する事にしかならない。
ネーサンに捕まってしまえば、待っているのは確実な死。
じっくりと解剖。解体され、弄ばれ長らく続く苦しみを味わいながらに…
無論…そんな解剖行為をされていた自分も泣き叫んでみたが。
やっぱり理性が感じられない程の興奮状態をみせるだけで
ネーサンのぶっとんだ一面が見れた。
自分はどうせ死なないし、詰んだらロードすれば良い。
という逃げ道が残されているので。
遊び半分。
むしろノリノリで泣いて許しを乞ってと演技を続けていたのだけど。
その所為でネーサンの興奮冷めやらぬ。
挙句の果てには自分の3つある心臓のうち。
一つを艶かしい表情で口に運ぶ姿を目の当たりにし。
ついついそこで、意識を失ったふりをした所。
正気に戻ったようで、筆舌に尽くし難い物凄い顔をしていた。
写真が撮れるのであればパシャッと一枚収めていた所なのだが。
―――確認 心のスクリーンショットに収めておきました
グッジョブ守護者!
とノリで喜んでみたけど、見れるのそれ?
―――確認 勿論 心の画像フォルダへ保存しておきます。
なんとも、これは細かい所で嬉しいスキルであるな。
後でじっくり鑑賞しよう。
ともあれ、そんなネーサンの変わりようを察するに。
もしかするとティアちゃん殺しちゃった?
呪い発動しちゃう!? なんて思ってたのかもしれないけど。
そんな事とは露知らず冗談だよ、そんぐらいじゃ死にはしないさ~っと
普段通りのテンションで声をかけなおした所。
その時点で気分が萎えてしまったのか、自分をようやく解放してくれたのだ。
しかしその後も痛みで動けぬ自分を見つめ続けると
衝動再び湧き上がってきたのか。
自らを針で固定し始め
自分の真横で大の字になりお互い寝転がっている状態なのである。
しかし大の字というよりは魔物の体の所為で
違う字と似ているがそれに突っ込みを入れるのは無しだ。
魔物が二匹。
異常な行動を。我慢できない。
異常な状態は。大歓迎。
異常な能力を持ってるから。生き延びられる。
異常な魔物であるからして。それが普通。
つまりは、やっぱり変なんだ。
どこかがおかしい、ぶっとんでる。
しかもそのぶっとぶベクトルが変だ。
人間側と一緒になって、普通に過ごせる気がしない。
ハイエルフのエレナと別れたのも、今になって思えば正解だったのかもしれない。
どうにか物理的に抑え込める環境がなければ、暴走する可能性のある魔物である今の状態を察するに。
人間側との共存関係は不可能である。
これは困ったが。
思えばネーサンも元々人間だったのだろう?
人間側との交流、考えなかったのかな?
「ねえ…ティアちゃん?」
(ボクはヨルンだよ~?)
「…間違えた。ゴメン。だけど、本当…姿だけはティアちゃんなのよねぇ」
(そのティアちゃんだけど。仲良かったの?)
「ん~半分半分。嫌いじゃなかったけど。
ハチミツあげれば言う事聞いて。人間相手にも愛想ふりまいて
かと思えば、たまに人間連れ込んで食べちゃったりもしてたわね。
しかもその人間。すっごい喜んでたわ。眷属化でも使ったんだろうけど。
…でも私には仲良くもしてくれたし。ティアちゃんは好きな方だったわ」
(蛇が着られる服なんて用意するぐらいだし結構長く付き合ってたんでしょ?)
「そうよ10年以上は付き合ったわね。
可愛いしずーっと手元に置いておきたいっても思った」
「だけど…なんていうか。酷いイベントが起こったのよね」
(酷い…イベント?)
「ユグドラシル種を討伐しましょうキャンペーンって奴?
人間側が力を付けてた時期になにかあったらしくて、
私たち殺して素材剥ぎ取りましょうっての?」
(うわぁ…マジなん?
でも…正直こっち側が負けるビジョン全然見えないんだけど?)
「まあ昔は人間側も相当強かったわよ。
最近だとアスピクが暴れてから人間側が大分やられたから
今じゃ聖都に少しヤバイのがいる程度ね」
(そういえば聖都ってアスピクもなんだか恨み持ってた気がするよ)
「ふーん。魔物相手にはかなり厳しい所だからね。
アスピクを討伐したっていう奴が聖都の女神役やってるみたいだし」
(という事はアスピクの奴…リベンジするつもりかな)
(それで、さっきのイベントって?)
「思い出すのも嫌なんだけど。ココまで話したし。続けてあげるわ。
アレがあった後は、自分とティアちゃん以外のユグドラシル種は逃げて、
どこかへ姿をくらませて。音沙汰無し。
勿論私とティアちゃんも逃げたんだけど。
人間側が、その時まで殆ど無害だったユグドラシル種を
本気で襲ってくるなんて思わなかったし。
発見するなり殺せ!もしくは捕まえろ!
そんな人間側の事情なんて。知る訳ないじゃない」
(さっきティアちゃんが人間連れ込んで食べてたって言ってたじゃない)
(もしかするとソレ関連かも?)
「ああ。今になって思えばそれもあるかもしれないわね。
魔物になってからそういう感覚。かなり薄くなっちゃったし」
(うんうん、分かる。自分も…覚えがありすぎて共感しちゃう!)
(えっと、それでその後どうなったのさ?)
「でも正直、人間の一人や二人死ぬぐらいは、この世界じゃ日常よ。
とりあえず、イベントの結果で言えばティアちゃんがみんな返り討ち。
その時は私も魔王じゃなかったし。
誰一人として敵対も殺すもしてなかった。
人間側と仲良く出来るかな~なんて頑張ってたものよ。
ほら、一応私も姿だけは可愛いじゃない?
多少なりとも人間側と交流もあって。
蜂蜜作りに精を出してたりしてた時期もあった。
お陰で人間側が軍隊総出で討伐しに掛かってくるなんて思わなかったわね。
それで単純に私が馬鹿だったから
普通に人間側に捕まって国側に献上されちゃったの」
(献上って事は、捕まって…もしかして?)
「別に、その辺は話したくないから終わりね。
それでさっきも言った通りにティアちゃん怒って私の事助けたのは良いけど。
がんばりすぎて頭のネジがどっかに飛んでちゃったのよ。
生きるもの全てを世界樹に献上しようなんて思考になっちゃって。
あの時は私も食べられるかと思ったわ」
(それでも…ネーサンの事を助けたんだね?)
(ボクに優しくしてくれるのって…やっぱり?)
「ただの気まぐれよ。懐かしくて。ついつい昔を思い出しちゃっただけ」
(…うー。ボクにはそのティアちゃんと違う…とだけしか言えないよ)
「ティアちゃんが死んじゃったってのは受け入れてるから。
別に…気にしなくていいわ。今のアナタの方が楽しいし」
(うん、演じろって言われなくて助かったよ)
(でも…そのティアちゃん。その後はどうしたのさ?)
「あの子だけだったのよ。私に優しくしてくれたの。
他のユグドラシル種も食べちゃったのに私にだけは優しくてね。
それで残ったユグドラシル種は私とティアちゃんだけ。
といっても、あの時からのティアちゃんは…
最後の最後に好きな食べ物を残しておく…あの感じだったわ。
結局私を見る目が今のヨルンちゃんみたいに、
今すぐにでも食べちゃいたいみたいな感じで葛藤してた」
(あっ…バレた?)
(食べていいよなんて言われたら本当に食べちゃうから気を付けてね?)
(癒しが欲しかったのも。この感情抑え込みたくて…)
(争い事と無縁な生活を送るぞ!って思ってた所だったの)
「それ無理よ無理。私も考えたんだけど。
どうにも一人じゃ無理って結論付けたわ。
300年間ずーっとよ?
ティアちゃんと普通に過ごせてる間なら、なんとかなっていたけど。
一人になったらもう、人間達解体しながら内臓おつまみに蜂蜜酒飲んで寝る生活になったわ」
(そりゃあ…もう人間辞めてますね)
(ボクもそんな感じになっちゃうのかなぁ~)
「なるわ、断言するわ!
だけど…私にとっての転機がやってきたみたいだし。
良い機会よ。暫く一緒に過ごさない?
人生…もとい魔物の先輩として色々と教えてあげるわよ」
(うん、願ったり叶ったり!)
(だけど…そのティアちゃんって子と自分が被ってるんだよね?)
「まあ正直に言うとそれもあるわ。
でも、似てるのよ。ヨルンちゃんとティアちゃんと。どことなくだけど。
本能的な部分で混ざり合ってるんじゃない?
例えば、ユグドラシル種になった事で前世のティアちゃんの記憶が入り込んだとか?」
(今んとこそんな様子はないけどねー)
(平常運転。いつも通りに自由奔放としてるし)
(何より、アスピク解放しちゃったから。むしろ解放感溢れて)
(他のユグドラシル種探しも。ネーサン見つけちゃったし)
(目的も何も無くなって。今に至ってるよ)
「そうなると、私と一緒に暮らすの断る理由もないわね?」
(勿論!こんな可愛い子と過ごせるようになるなんて思わなかった!)
(ロリババアだったけど。それはそれでポイント高いし!)
「今度ロリババアっていったら、解剖して解体して蜂蜜漬けにして全部食べてあげるからね?」
(だめだめ!そこまでされたら呪い出ちゃう!ほどほどに!)
「分かってるわよ。でもなんなの? その呪いって。詳しく見たいわ」
(えー。切り札の一つだし)
(そうそう見せられないというか。まだ制御できるか怪しいし)
「それなら…実験材料なら集めてくるから。そいつ等相手に見せてよ」
(実験材料って?)
「勿論、その辺の冒険者ひっ捕まえて。
と思ったら丁度地下牢に捕まえてあった所だった。
物足りないなら私の眷属使っても良いわよ?」
(ああ…やっぱり癒しが遠のいていく…)
「今のうちに慣れときなさい。
私を殺せるかもしれないスキルを持ってるんだし。
運命共同体とまでは行かないまでもヨルンちゃんの事も知っておきたいの。
アナタと違って私不死身じゃないんだし。
…って考えれば何これ? ティアちゃんの能力に不死身までついてんの?
自覚ある? 私でも苦労するわよこんな能力」
(おおー。ネーサンでも苦労する強さをボクは持ってるのかー)
「じっくり育て上げてみようかしら。もしかすると…
ねえ?いっそ他のユグドラシル種…ぶっつぶしてみる?」
(ネーサン。おだやかじゃないですね!)
「そりゃあ。ティアちゃん絶対殺す種なんて生かしておく価値ないし。
知ってる?『スネークリング』だったっけ。アイツ等が狩り尽くしたのよ?」
(………そうなの? 絶滅したって。それが理由?)
「知ってるなら話しが早いわ。
アイツ等…ティアちゃんみたいな種が生まれないように狩り尽くしてるのよ。
しかも人間側に賞金付けて。あの蛇皮が高級品とか…
酷いわよね。許せないわよね?
眷属もいるけど、アイツ等複雑な命令はこなせないし。
使い捨ての眷属を作るぐらいじゃ全然上手くいかなくてね」
(むむむっ…やっぱりネーサン長生きしてるだけあるね)
(ボクより大分情報知ってるわ)
「なに? またロリババア呼ばわり? 解剖してもらいたいの?」
(言ってない言ってない!)
(だって…本当の事言うと。この世界の情報なんて殆ど知らないし)
(ずーっと森の中だよ自分の行動範囲?)
「そういえば…聞くけど。スネークリングにはなった事あるのよね?」
(うん、あるよ? その時。この世界の言葉覚えたの)
「へえ、どうやって過ごしてた?
というか…見つからなかったの?
他のユグドラシル種とか。賞金稼ぎの人間とか?」
(んー、なんというか。得体のしれないじいさんと10年間過ごしてた)
(後で知ったけど、魔術師ギルドの元ギルド長だとか言ってたね?)
(魔法関連も書物読めるようになって、かなり理解出来た)
「………どういう経緯よ。全然情報入ってこなかったわ。
確かに変なやたら強いじいさんが居るから、
その付近は近寄らないようにしてたけど。
それでも様子ぐらいは見てた。
でもスネークリングの情報なんて一切入ってこなかったわよ?」
(それについては、なんとも言えないねー)
(でもお陰で錬金術とか、元素魔法に呪術。その他生活の知恵一式を学べたよ)
(今じゃ自分も蛇の家電製品ってね)
(家事のあれこれ。細かい所に手が届く体に!)
(まあ手が届くっていうよりは。触手が届くに言い直すけど)
「信じるわ。そういう経緯でもなければ…生き残れる訳ないもの。
盲点だったわ…人間側に匿われてたなんてね。
そのおじいさん…今どうしてるの?」
(んー、もうボクの事なんて忘れて研究に没頭してるかな?)
(別れも告げずに出てきちゃったからね)
(そういう事情があったなら。ボクの事死んでると思ってるかも)
「そう…ならもう関わらない方が良いかも。
流石にあんな大樹作られたんじゃ。逃げも隠れも出来なくなるから」
(あっ…そういえばそんなのも作っちゃったっけ)
(ボクの誕生記念。凄いでしょ?)
「なんであんな馬鹿な真似したのよ。
ヨルンちゃん…やる事もティアちゃん以上ね。
でも…逆にあんなモノ作れるって事は。
相手からしてみたら手を出し辛くなるかも。暫くは様子見ね。
ともあれ、スネークリングが一番、
ユグドラシル種に進化できる可能性があるって言われててね
ずーっと駆逐され続けてたの。生まれてるのが確認され次第ね?」
(そりゃあ…もしかして蛇の魔物ってすっごくこの世界で酷い扱い受けてる?)
「世界を滅ぼしかけた回数が3回。程ほどに疎まれてるんじゃない?」
(というか知ってる限り8回滅びかけたなんていう逸話を聞いたけど)
(ネーサンは何回か体験してるん)
「3回体験したわ。我ながら良く生き残れたものよ。
ちなみに3回中。2回が蛇の魔物関連っていうね。
どっちもアナタが知ってる。ティアちゃんとアスピクの奴。
折角だし次の世界崩壊へ突き進む魔王役。アナタがやってみる?」
(いいえ。遠慮しとく!)
(夢の中で実行に移すぐらいにしておくよ!)
「あっそう。別にその方が良いから。この話はおしまい」
(おっけい。一応聞いとくけど。アスピクの事は?)
「ああ、突拍子もない話だったから無視してたけど。
もっと詳しく聞かせてもらうわ」
(じゃあ…一息つかない?)
(正直、お腹が空いちゃって)
(ネーサンを前におあずけくらってるみたいで…理性飛びそう)
「その時は、また解剖台に置いて。
お腹の中に無理やり蜂蜜詰め込んであげるから安心してね」
(せめてお腹の中に直接じゃなくて。お口の中にちゃんと詰め込んで!)
「んー。もう1ラウンドぐらいやってもいいって事?」
(出来ればやめて下さい! 普通に食べよ?)
「ちょっと残念だけど。私もお腹空いてきたし。私の部屋に戻りましょ」
(やったー。…で。ネーサン改めて前にすると。凄い状態だよ?)
「あら。そういえば貼り付け状態だった」
(もしかして。今ならネーサン食ベラレル?)
「ちょっと。やめてよ。本気?」
(半分本気だから。否定してて。お願い!)
「分かったから迫らないで! 今外してるから!」
(じゅるり…)
「ほら。動けるようになったわ。
流石に食べられるのは愛があっても困るのよ」
(うん。大丈夫だよ。魔物式ジョーク。愛があっても解剖もほどほどにね?)
「居候なんだから。少しぐらいは我慢なさい!」
(ぜんぜん少しじゃない気がするんだけどー?)
「気のせいよ気のせい。私へのお客さんはみーんな解剖してるんだし」
(うわっ…生還者は?)
「今の所。ヨルンちゃんだけ」
(一体何人やってきたのさ…?)
「こーいう場合は。アレよね。千人から先は覚えてない。でいい?」
(おっ…分かってるねー。桁をさらっと追加する辺り)
(やっぱり同郷人だわこりゃ)
「そういうの好きな方だったから。結構覚えているものよ」
(ボクも好きだったから。気が合うかも?)
「そう願いたいわ。私もティアちゃんと喧嘩したくないもの」
(ヨルンだってばー)
「分かってるわよ。言い間違えただけ!
ユグドラシル・ティアなんだからティアちゃんでも良いじゃない!」
(むー。分かったよ。どっちも好きな方で呼んでね)
「じゃあ。今のところはティアちゃんで。
そのうち慣れてヨルンちゃんって呼ぶようになるわ」
(はーい。ボクも名前覚えるの苦手だからその辺おおらかだよ)
そんなこんなで、蜂の魔物であり人間からの転生者だというネーサンと
一緒に過ごす事が決まりました。
しかも初めての同郷人というから驚きです。
言葉が話せるだけでなく、同じネタが通用する。それだけで確信が持てた。
なんて便利な用語なのでしょう。
広く浅く知っている程度なのだけど。
ネーサン側からふられてもある程度は反応出来そうなので
残った記憶の全てがプラスに働いています。
しかし脳裏に過ぎる300歳。
うーん、普通に考えたら有り得ない。
転生すると時間軸ぶっとぶのかな?
もしかすると自分がこの世界へ転生するまでの時間が
凄く長かったのかもしれないし、深くは考えないようにしよう。
多分その事についてはネーサンも承知の筈だ。
そのうち同じ疑問を話題にする事があるだろう。
何はともあれ運が良かった。
それでいいだろう。
ふと運が良いと思ったら。スキルに『幸運の卵』があったね。
大きく関係しているとは思わないけれど。実際運が良いのだ。
あって良かった『幸運の卵』!
感謝しよう。とりあえず守護者に。
この場合は、ユミルにかもしれないけど。
―――確認 心からの喜びを感じました
癒されるわぁ…最早この行為は恒例行事となっております。
ところで守護者よ。やっぱりネーサン。スキル隠蔽してるよね?
―――確認 ほぼ確実にしていると思われます。
まあ、その辺は自分も隠してるし。
相手側からしても手札は幾つか残しておきたいものね。
信用はしているけど。全てを見せるとまではいかないか。
―――確認 お互いに悪くは思ってないようですが 底が見えません
そりゃそうだ。会って間もないし。
さらには魔王で転生者の同郷人ときた。
守護者情報で、異世界からの転生者なんて例はある?
―――確認 特に目立った例はないようです
ふーん。あ、蜂蜜美味しい。
本当にローヤルゼリーっぽい。
何コレ、もうこれしか食べられそうにない…
―――確認 始祖竜とどちらが良いです?
あ。それを比べられると。
もうあっちは食べるつもりないし。
やっぱり蜂蜜でいいや。ネーサン最高!
―――確認 蜂蜜>ユミル
ちょっと、本人には言わないでよ!?
―――確認 そうかそうか。後で分かっておろうな?だそうです
え? マジで聞いてた?
―――確認 嘘です。何の反応もありません
それは良かった。聞いてたらどうしたものかと思ったよ。
とりあえずお腹も一杯になったし。
ネーサンとのお話しに戻るね。
―――確認 もう少し 蜂蜜お願いします ローヤルゼリー的な物を
え? なに? 守護者も食べれるの?
―――確認 暇なので蜂蜜を調べます
ふーん。まあいいけど、もうちょっと食ーべよ。
そんじゃまた後で。至福の時間は始まったばかりである。
魔物飯…プラス蜂蜜がこれほどまでに合うとは思わなかった。
嗚呼…もうこの生活。やめらんないかもしれない。
* * *
魔物飯に、こうご期待(嘘




